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2023.08.21

瑕疵物件とは?告知義務や瑕疵物件の調べ方までくわしく解説

瑕疵物件とは?告知義務や瑕疵物件の調べ方までくわしく解説

マンションの購入を検討する際、検討している物件についてさまざまなことを調べます。物件を調べる中で、「瑕疵物件」という言葉を見たことがある人は多いのではないでしょうか。なんとなく意味はわかるけど、詳しく知らない人もいるでしょう。

本記事では、瑕疵物件とは何か、瑕疵物件の種類や告知義務について詳しく解説します。瑕疵物件の調べ方も解説するので、物件探しで失敗しないためにもぜひ最後までご覧ください。

瑕疵物件とは

瑕疵物件とは

瑕疵物件とは

瑕疵物件とは、一般的に備えられているはずの機能・品質・性能などが備わっていない物件のことです。いわゆる「訳アリ物件」と呼ばれるような物件であり、居住者が住むうえで直接的にマイナス要因となるような欠陥や不具合などがあることが多いです。

 

賃貸契約や売買契約を行う際、対象の物件が瑕疵物件かをよく調べておく必要があります。瑕疵物件はトラブルの原因になりやすく、事前にきちんと説明を受けたうえで契約を結ぶことが大切です。

瑕疵物件の種類

瑕疵物件の種類

瑕疵物件の種類

不動産取引において、瑕疵物件は下記4つの種類に分けられます。それぞれどのような瑕疵物件か、詳しく見ていきましょう。

 

・心理的瑕疵物件

・物理的瑕疵物件

・環境的瑕疵物件

・法律的瑕疵物件

心理的瑕疵物件

心理的瑕疵物件とは、過去にその物件や周辺で事故や事件などが発生した物件です。「事故物件」などとも言われ、自殺や殺人、事故死などによって物件内で人が亡くなっている場合、心理的不安を感じる人は多いでしょう。

 

ただし、心理的瑕疵物件には明確な基準がありません。人によって物事の捉え方が異なるため、心理的に影響を受けるかはその人の性格などによるからです。そのため、ほかの3つの瑕疵物件に比べて何を瑕疵とするかの判断が難しいでしょう。

 

告げなくてもよいケースは以下のように定められています。

 

・自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)

・共用部分で死亡が発生し、事案発生からおおむね3年が経過した後

・通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した死亡(※)

 

※参照:国土交通省

物理的瑕疵物件

物理的瑕疵物件とは、物件や土地に直接的な被害が発生している物件です。簡単に言うと物件そのものの不良による瑕疵であり、物件と土地それぞれで下記のような物理的瑕疵があります。

 

物件

土地

・白アリ被害

・雨漏り

・配管の詰まりや損傷

・建材の腐食

・アスベストの使用

・耐震強度不足

・産業廃棄物などの埋め立て地

・化学物質などによる土壌汚染

・軟弱地盤

 

物理的瑕疵には、一目見てわかる瑕疵とよく確認しなければわからない瑕疵があります。例えば、地盤が弱く物件が傾いている場合などは、外から見たり物件の中に入ったりすればすぐにわかります。

 

しかし、白アリ被害や配管の詰まりなどは自分だけではわからないため、専門家に調査を依頼する必要があるでしょう。なお、日常生活のなかで生じる床や壁への傷など、経年による劣化は瑕疵とはみなされません。

環境的瑕疵物件

環境的瑕疵物件とは、物件そのものに問題はないものの周辺の環境によって不快感や嫌悪感を抱いてしまう物件です。例えば、いわゆる嫌悪施設と言われる下記のような施設が周辺にある場合、環境的瑕疵物件と判断されるケースがあります。

 

・葬儀場

・火葬場

・墓地

・遊戯施設

・工場

・ガスタンクなどの危険物貯蔵施設

・原子力発電所

・下水処理場

・刑務所

・反社会的勢力の事務所など

 

また、鉄道や高速道路、工場などの施設からでる騒音や振動、異臭なども環境的瑕疵です。環境的瑕疵物件は、心理的瑕疵物件と同様に実害がなく人の感じ方によって瑕疵か瑕疵ではないかが決まるため判断が難しい瑕疵物件です。

法律的瑕疵物件

法律的瑕疵物件とは、法律に適合しておらず法律上何らかの障害や問題を抱えた物件です。法律的瑕疵物件は、主に下記のような法律に抵触している場合が多いです。

 

・建築基準法

・消防法

・都市計画法

 

例えば建築基準法の場合、建ぺい率や容積率の制限に抵触しているケースが考えられます。(※1)また、消防法では防火設備の設置義務を満たしていないなどがあります。(※2)都市計画法に抵触しているケースとしては、原則として建物を建築できない「市街化調整区域」に許可なしで立てられた物件があります。(※3)

 

※1 参照:建築基準法

※2 参照:消防法

※3 参照:都市計画法

鑑定士コメント

経年劣化と瑕疵の違いは何でしょうか?瑕疵は物件を立てた時点で存在する欠陥であるのに対し、経年劣化は年数が経つことによって進行していく劣化です。基本的に瑕疵と経年劣化は別ですが、明確に線引きするのが難しいケースもあり、中には経年劣化が瑕疵と判断される場合もあります。例えば、数年で屋根の防水シートが劣化し雨漏りが発生するなど、通常予定される修繕計画よりも耐用年数が短かった場合などは瑕疵に該当します。

瑕疵物件の告知義務

瑕疵物件の告知義務

瑕疵物件の告知義務

物件の売買や賃貸の仲介を行う不動産会社には、該当物件が瑕疵物件であることを契約者に告知する義務があります。そのため、悪質な不動産会社でない限りは契約前に物件が瑕疵物件であるかを知ることができます。

 

ここでは、瑕疵物件の告知について、下記の内容を詳しく解説します。

 

・告知義務の内容

・告知期間

・告知義務の義務者

告知義務の内容

瑕疵物件の告知には明確な決まりがありませんが、契約者が瑕疵の内容について誤解せずに理解できる内容であることが大切です。一般的には、下記の内容が告知されます。

 

・どのような瑕疵か

・いつ瑕疵が発生したか

・物件のどこで瑕疵が発生したか

・瑕疵によって被る被害

 

心理的瑕疵物件については、国土交通省が定めた「宅地取引業者による人の死に関するガイドライン」(※)によって告知義務の範囲が定められています。例えば、病死や転倒事故などの日常生活における自然死や不慮の死については告知する必要がありません。

 

特に心理的瑕疵物件の場合、契約者側が内容を知りたくないと感じることもあるでしょう。契約者側の希望で内容を告知してほしくない場合、かならずしもすべての内容を告知してもらう必要はありません。

 

※参照:宅地取引業者による人の死に関するガイドライン

告知期間

瑕疵が発生してからいつまで告知の義務があるかについても、明確な決まりはありません。ただし、心理的瑕疵物件についてはガイドラインによって発生から3年間は告知する義務があります。(※)そのため、ほかの瑕疵物件においてもおおむね3年間は告知されることが多いです

 

また、瑕疵でも発生から3年以上経過した場合でも、事件性、周知性、社会に与えた影響などが特に高い事案については、契約者に告知する必要があります。告知の期間は明確に決まっておらず瑕疵の内容や影響度合いによって変わるため、瑕疵の内容ごとに判断する必要があります。

 

※参照:宅地取引業者による人の死に関するガイドライン

告知義務の義務者

マンションには賃貸契約と売買契約がありますが、どちらも基本的には不動産会社に仲介を任せることが多いです。そのため、瑕疵物件の告知を行うのは仲介を任された不動産会社であることがほとんどです。ただし、物件を所有するオーナーにも告知義務があります。

 

不動産会社が行った瑕疵物件の告知によって契約者とのトラブルに発展した場合、オーナーも責任を負う可能性があります。オーナーは不動産会社にすべてを任せるのではなく、告知内容について不動産会社ときちんと話をしておくことが重要です

瑕疵物件の告知義務を怠ったらどうなる?

瑕疵物件の告知義務を怠ったらどうなる?

瑕疵物件の告知義務を怠ったらどうなる?

瑕疵物件の告知義務を怠って瑕疵内容を告知しないまま契約を結んだ場合、契約不適合責任を負う可能性があります。契約不適合責任とは、契約した物件が契約内容に不適合な場合に、補償や減額、損害賠償、契約解除などの請求に対して責任を負うことです

 

瑕疵物件であることを告知されずに契約したのちに瑕疵物件であることが判明した場合、契約内容とは異なる物件であると言えます。契約内容に適合しない物件を契約させたとして、売買や賃貸額の減額や引越し費用などの請求を行うことができるのです。

 

なお、契約不適合責任については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いや期限や買主の権利について解説

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

契約不適合責任とは別に、「瑕疵担保責任」というものがあります。瑕疵担保責任とは、2020年4月に民法改正の施行によって契約不適合責任が生まれる前まで適用されていた制度です。

 

瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」があったとき、つまり買主が物件を契約する際に見つけられなかった瑕疵について売主が責任を負う制度です。一方で、契約不適合責任は気付いていた・気付いていなかったに関わらず、契約内容との不適合があった場合に責任を問うことができます。

 

また、契約不適合責任と瑕疵担保責任は、買主が請求できる権利にも違いがあります。瑕疵担保責任では、買主が請求できる権利は損害賠償、契約解除のみでした。しかし、契約不適合責任に変わったことで、補償と減額の請求も可能になりました。

 

 

なお、瑕疵担保責任の期間については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

瑕疵担保責任の期間は何年?隠れた瑕疵や民法改正のポイントも解説

鑑定士コメント

告知がない状態で心理的瑕疵物件に入居してしまった場合、どうしたらいいでしょうか?まずは仲介元の不動産会社に相談しましょう。契約不適合責任であることを伝えれば、契約解除や家賃交渉などの責任を追及できます。ただし、告知義務のルールが明確ではないため、発生から年数が経っていたり、直前に他の入居者が住んでいたりなどの場合は告知義務がない可能性があるため注意が必要です。気になる方は、入居前にこちらから質問しておくことも防衛策として大事なことです。

瑕疵物件の調べ方5選

瑕疵物件の調べ方5選

瑕疵物件の調べ方5選

ここでは、瑕疵物件であるかを調べる5つの方法について解説します。それぞれの調べ方について、詳しく見ていきましょう。

 

・不動産会社に問い合わせる

・インターネットで検索する

・物件の相場を確認する

・告知事項有りの記載をチェックする

・近隣住民に話を聞いてみる

不動産会社に問い合わせる

瑕疵物件であるかを調べるには、不動産会社に問い合わせることが有効です。不動産会社には瑕疵物件の告知義務があるため、問い合わせに対して瑕疵物件であるかを回答する義務があります。告知を行わなければ責任を負う必要があるため、基本的に問い合わせに対して回答してもらえるでしょう。

 

ただし、問い合わせのタイミングには注意が必要です。例えば、インターネットで物件を調べて、いきなり電話で「この物件は瑕疵物件ですか?」と質問しても、冷やかしだと思われて回答してもらえない可能性があります。告知はあくまで契約見込みのある人に行うものであるため、物件に興味がある・検討していることを伝えておく必要があるでしょう。

インターネットで検索する

インターネットでの検索で、瑕疵物件であるかの確認も可能です。「(物件名) 事故」などで調べると、その物件で過去に事故が起きていないかなどを確認できます。ただし、マンション名で検索されることを避けるためにマンション名を変更している物件もあるため、マンション名が変わっていないかも確認が必要です。

 

また、インターネットで調べる際は、かならずしもその情報が正しいとは限らないということを認識しておきましょう。中には嘘の情報もあるため、複数のサイトで同じ記載があるか、不動産会社などの信頼できるサイト上に記載されているかなどを確認して情報が正確であるかを判断する必要があります。

物件の相場を確認する

瑕疵物件は、周辺の物件の相場よりも安くなっていることが多いです。気になるマンションがある場合、その周辺の相場と価格を比較してみましょう。ほかの物件よりも明らかに安い場合は、瑕疵物件である可能性があります

 

ただし、その物件だけ築年数が明らかに古い、交通のアクセスが悪いなど、別の理由で価格が安くなっていることもあります。そのため、一番確実に相場を比較するには、同じマンションのほかの部屋と比較することがおすすめです。

告知事項有りの記載をチェックする

不動産ポータルサイトで物件の概要が記載されているページを確認すると、備考欄に告知事項ありなどの記載がされていることがあります。告知事項があるということは、何かしらの瑕疵がある可能性が高いです。

 

不動産ポータルサイトによって記載の方法が異なるため、複数の物件を確認して不動産ポータルサイトごとにどのような記載がなされているかを確認しましょう。

近隣住民に話を聞いてみる

近隣住民に、物件について確認することも有効です。

 

インターネットで調べられることや、不動産会社から確認できることがその物件のすべてではありません。殺人事件などの大きな事件であれば、大々的にニュースになってインターネット上に記事が残ることもありますが、自殺や孤独死などは調べてもあまり情報が出てこないでしょう。

 

不動産会社も告知義務があるため瑕疵物件であるかは回答しますが、必要以上の内容までは回答してもらえない可能性があります。近隣住民に話を聞くことで、その物件で過去に発生したことやその当時の状況などを確認でき、信憑性の詳細な情報を得ることができるでしょう

まとめ:瑕疵物件を購入しないためにも事前調査はしっかり行おう

まとめ:瑕疵物件を購入しないためにも事前調査はしっかり行おう

まとめ:瑕疵物件を購入しないためにも事前調査はしっかり行おう

瑕疵物件とは、居住するうえで一般的に備えられているはずの機能・品質・性能などが備わっておらず欠陥がある物件です。そのため、マンションを購入する際は瑕疵物件であるかを確認することが重要です。

 

瑕疵物件であれば、基本的には不動産会社から告知されます。しかし、現状は告知に関するルールが明確ではないため、中には確認しなければ告知されない物件もあります。そのため、マンションの購入を検討する際は、その物件が瑕疵物件ではないかを不動産会社に確認しましょう。

 

また、インターネットでの検索や近隣相場の確認なども、瑕疵物件であるかを判断するのに有用な情報です。マンションを購入する際は、瑕疵物件を購入してトラブルにならないように事前調査はしっかり行いましょう

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

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