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2023.08.21

マンションの建て替え費用は住民も負担する?住民が取れる選択肢を解説

マンションの建て替え費用は住民も負担する?住民が取れる選択肢を解説

「マンションの建て替え費用は住民も負担するの?」
「マンションの建て替えが決まったら、住民はどんな行動をとるべき?」
住んでいるマンションの建て替えが迫っており、上記のような不安をかかえている人もいることでしょう。

本記事では、マンションの建て替え費用を住民が負担するケースと負担しないケースを徹底解説。マンションの建て替えまでの流れや、建て替え決定から竣工までにかかる期間も紹介します。

実情として、マンションの建て替えが実行されるケースは多くありません。マンションの建て替えが決まったときに住民が取れる選択肢も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

建て替え費用は住民も基本的に負担する

建て替え費用は住民も基本的に負担する

建て替え費用は住民も基本的に負担する

マンションの建て替え費用は、基本的に住民が負担します。住民がマンションの建て替え費用を負担するのは、以下2つどちらかを満たす場合です。


   ・容積率が低く建て替えで住戸数を増やせない
   ・住戸数が増加しても購入者が見つからない

 

建て替えが必要なマンションでは、多くの場合上記のいずれかが当てはまります。また、工事期間中の仮住まいへの引っ越し費用も住民が自己負担しなければなりません。

 

なお、毎月納めている修繕積立金は建て替えに使用できないので、注意が必要です。修繕積立金の使い道は、国土交通省のマンション標準管理規約に決められており、ベランダの防水加工や外壁補修などに充てられます。

 

修繕積立金とは何かは、以下の記事で紹介しています。

修繕積立金とは?相場や値上げ・返金はされるのかを徹底解説

鑑定士コメント

建て替えの決議が要件を満たして決定された場合、費用が支払えない区分所有者は、原則立ち退きになります。マンション管理組合から売渡請求権が実行され、住戸を建て替え組合に時価で売却しなければなりません。ただし、建て替え費用が払えない高齢者を考慮して、マンションの共用部分に住区画が作られた事例もあります。

住民が負担しないケースもある

住民が負担しないケースもある

住民が負担しないケースもある

場合によっては、住民がマンションの建て替え費用を負担しないケースもあります。マンションの容積率が高く、建て替えによって住戸が増設できるケースです。建て替えによって増設した部屋を売却することで、費用を相殺できるとわかった場合は、住民の費用負担が免除されるでしょう。

 

また、マンションが人気エリアに建っている場合も、住民が負担せずに済むことがあります。駅近やランドマークが近い人気エリアでは、建て替えによってマンション自体の資産価値が上がる可能性があるためです。この場合、マンション購入希望者の増加が見込まれるため、住民が負担しなくてもマンションの建て替え費用が賄えます。

マンションの建て替え時期は築40年が目安

マンションの建て替え時期は築40年が目安

マンションの建て替え時期は築40年が目安

建物は時間の経過や自然の影響によって劣化していきますし、災害のリスクもあり、マンションに寿命が訪れることがあります。一度購入したらいつまでも住み続けられるように感じてしまいますが、こうした理由で建て替えをするなど、マンションを離れることになるかもしれません。特に新耐震基準を満たしていないものに関してはマンションの耐久性も低く、建て替えや取り壊しの可能性があります。耐震基準に関しては1981年6月1日に建築基準法が改正された際に新基準となりました。つまり、築40年近いものは旧耐震基準にあわせて建てられていますので、建て替えが必要となる可能性があります。実際には建築されてからどのくらいの年数が経ったタイミングで建て替えられているのかと言うと、「マンション建替え寿命」にデータがあり、全国の建て替え事例202件の築年数と都府県をまとめています。これを見ると、建て替えられたマンションの築年数は、全国平均33.4年となっています。

マンションの寿命はどれくらい?過ぎてしまった場合はどうなる?

都府県別 建替え物件の築後経過年数分布

都府県別建替え物件の築後経過年数分布

都府県別建替え物件の築後経過年数分布

出典:東京カンテイ「マンション建替え寿命

建て替えまでの流れ

建て替えまでの流れ

建て替えまでの流れ

簡単にではありますが、建て替えまでの流れを把握してください。以下7つのステップがあります。

 

①準備・検討・計画

■耐震の診断。

■住民に対するアンケート調査の実施。

 

②建て替え決議(区分所有法)

■住民(区分所有者)の会議で5分の4以上の賛成で可決。

■再建建物の設計、費用の概算額、費用の分担、再建建物の区分所有権の帰属を決議。

 

③マンション建替組合の設立認可

■決議合意者の4分の3以上の同意で認可申請。

■事業主体となる建替組合を設立(デベロッパーも組合に参加)。

 

④反対区分所有者への売り渡し請求

■マンション建替組合が反対区分所有者の権利を時価で買取。

 

⑤権利変換計画の決定・認可

■従前マンションの区分所有権、担保権、借家権は原則として再建マンションに移行。

■申出による転出者は期日までに補償金を取得。

■居住者は組合が通知した期限までにマンションを明渡し。

 

⑥組合がマンションの権利を取得

■期日において権利が一斉に変動。

 

⑦組合による建替事業

 

マンションの建て替えについて、より詳しく知りたい方は国土交通省「マンション建替え等・改修について」をご参照ください。

マンションの建て替えにかかる期間は1年半ほど

マンションの建て替えにかかる期間は1年半ほど

マンションの建て替えにかかる期間は1年半ほど

工事日程が決まってから新しいマンションの竣工までの期間は、9カ月~1年半ほどです。工事は以下の流れで行われます。

 

  1. 旧マンションの解体

  2. 新しいマンションの着工

  3. マンションの竣工と引き渡し

 

工事の期間中は、住民は仮住まいに転居します。


ただし、上述の通り住民の集会から建て替え事業計画の決定まで含めると、5〜10年ほどかかることも。住民の意見がまとまらず、建て替えを断念するケースもあります。

建て替えは進まないことが多い

建て替えは進まないことが多い

建て替えは進まないことが多い

強制的に建て替えとなる可能性もありますが、それはごくまれなことです。多くの場合、マンションの購入費に加えて1戸当たり1,000万円もの費用を支払うのは非常に大きな負担となってしまいます。そういったこともあり、住民(区分所有者)の集会で5分の4の賛成を集めるのは難しいでしょう。特に高齢者の方の中は住宅ローンを払い終え、年金で管理費を払うなどして暮らしていて、建て替えにかかる費用を負担できない方も少なくないでしょう。さらに、建て替えをするとしても工事中に暮らす場所がないと不満を漏らす方もいます。

 

実際のデータを見ても、建て替えが行われている例は非常に少ないです。平成30年4月1日の時点で、建て替え工事が完了しているのが、237棟となっています。

 

出典:国土交通省「マンション建替えの実施状況

 

ただ、この数字だけを見ても、少ないかどうかは客観的には判断できません。そこで下記2つの表を基に全国に何棟くらいあるのかを概算してみましょう。

 

 

 

出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果

 

 

出典:国土交通省「分譲マンションストック戸数

 

上の表を確認すると、1棟につき平均で96.7戸であることが分かり、下の表では平成30年度の段階で全国のマンションは654.7万戸あることが分かります。

 

6,547,000(戸) ÷ 96.7(戸/1棟) = 64,704(棟)

 

概算ではありますが、全国には64,704棟あると推測できます。建て替え工事が完了しているのは平成30年4月1日の段階で237棟ですから、建て替えがされたマンションは全体の約0.37%となっています。建て替えが行われているのは1%にも満たないほど極わずかな例ということが分かります。

 

 

マンションの建て替えが進みにくい理由2選

マンションの建て替えが進みにくい理由2選

マンションの建て替えが進みにくい理由2選

マンションの建て替えが進みにくい理由は以下2つです。

  

  ・住民の同意を得にくい

  ・法律上建て替えにくいマンションが多い

 

 

マンションの老朽化が進むと、外観が悪くなり資産価値が下がるだけでなく、地震などの防災面で不安も生じます。それでも、実際に建て替えが実施されたマンションは全国的に1%未満。なぜマンションの建て替えは進まないのか、以下でその理由を詳しく解説します。

①住民の同意を得にくい

建て替えが進みにくい理由の一つは、費用の負担が大きく、住民の同意を得にくいからです。建て替え費用は物件によってさまざまですが、1,000万円以上かかることもあります。工事期間中は仮住まいも用意しなければならず、仮住まいからの通勤や通学の金銭面以外の負担も考えなければなりません。

 

また、年金で暮らす高齢者はローンの利用も難しく、建て替え費用を支払えないケースがあります。このような事情から、住民集会で5分の4の同意が得にくいのが実情です。

②法律上建て替えにくいマンションが多い

建て替えの必要がある建物は、法律上建て替えが難しい「既存不適格」であることが多いです。既存不適格とは、建築当時は合法的に建てられたものの、法改正などで現在の法律に不適格な部分が生じた建築物を意味します。


現法の基準に合わせて建て替えると大規模な工事になり、建設会社やディベロッパーにとって負担が大きくなります。特に建て替えの話が出やすい30〜40年前に建築されたマンションは、旧基準で建てられた既存不適格なマンションが多いのです。

マンションの建て替えに対する3つの選択肢

マンションの建て替えに対する3つの選択肢

マンションの建て替えに対する3つの選択肢

マンションの建て替えに対して住民が取れる選択肢は、以下の3つです。

 

     ・費用を支払い建て替えを受け入れる

     ・建て替えに反対する

     ・マンションを売却し立ち退く

 

 

築古のマンションを購入するときは、建て替えも視野に入れましょう。以下で住民が取れる3つの選択肢を、それぞれ詳しく解説します。

①費用を支払い建て替えを受け入れる

建て替えに賛成する場合は、費用を支払って新しいマンションに再入居しましょう。建て替え費用を支払うタイミングは、マンション竣工後、住戸の引き渡しの際です。

 

建て替え費用は、住宅ローンから出すことも可能です。ただし、住宅ローンの返済が残っている場合や、年金で暮らす高齢者は審査に通過するのが難しいこともあるので、注意しましょう。

 

自治体によってはマンションの建て替えに助成金制度が利用できるため、1戸当たりの建て替え費用の負担を軽減できます。マンションは建て替え後に資産価値が上昇するケースもあるので、長期的な視点で建て替えの賛否を判断しましょう。

②建て替えに反対する

建て替えに納得いかない場合は、住民集会で反対ができます。住民集会はマンション建て替えにおける最初のステップです。

 

実際のところ、マンション建て替えは住民の賛同が得られず断念されるケースがほとんどです。建て替えが否決された場合、大幅改修が実施されることもあります。大幅改修の場合は修繕積立金が利用できるため、住民の費用負担は軽くなるでしょう。


マンションの建て替えは、老朽化による不具合や事故を防止するために行います。反対の立場を表明するときは、費用だけでなく住環境を考慮した上でしましょう。

③マンションを売却し立ち退く

③マンションを売却し立ち退く

③マンションを売却し立ち退く

マンションを売却して立ち退く選択肢もあります。マンションを売却すれば、毎月積み立てていた修繕積立金を返還してもらうことも可能です。

 

ただし、立ち退きの際は「売渡請求権」に注意しなければなりません。マンション住民の5分の4の賛成が得られたあと、建て替えに反対し続けた場合にマンション管理組合から行使される権利です。売渡請求権が実行されると、住戸を時価で売却しなければなりません。

 

マンションを売却する際は、早めに計画を立てましょう。不動産販売会社に売却の仲介を依頼するのがおすすめです。

鑑定士コメント

築年数が40年以上経っているマンションを買う場合は建て替えの可否を調査するべきです。購入にあたって、マンションの総会の議事録や、管理組合へのヒヤリングが有効です。また、マンションの敷地面積と現在の建物の延床面積を確認し、使用可能容積率に対して、現在の建物の使用容積率が余裕があるのかも調べておきましょう。大幅に余裕がある場合、建て替え後の建物の一部を新たに分譲することが出来て建替資金の一部に充当できることから、建て替えは促進しやすい傾向にあります。

まとめ:建て替えが近い場合は資金を準備しよう

まとめ:建て替えが近い場合は資金を準備しよう

まとめ:建て替えが近い場合は資金を準備しよう

マンションを建て替えるための費用は、基本的に住民が負担します。負担額は1,000万円を超えることもあり、住民にとっては大きな出費です。ただし、建て替え後に住戸が増え、新しい入居者に売却できると住民の費用負担が相殺されるケースもあります。

 

マンションの建て替えが決まったとき、住民が取るべき行動は賛成か反対、売却の3つです。ただし、せっかく買ったマンションを売却することは不本意な場合がほとんどでしょう。売却は最終手段と考え、可能な限り他の手段での解決を模索しましょう。マンションの建て替えで悩んだら、ぜひこの記事を参考にしてください。

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

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マンションの住み替えについて、明らかに誤っている記述を下記より選びなさい。

答えは 2

「売る」と「買う」を同時に行うことは非常に合理的ではあり、それぞれのタイミングを同時に行うのは決して容易ではありません。

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