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更新日:2023.08.21
登録日:2023.06.26
不動産鑑定評価書の基本的な読み方は?押さえておくべき項目を解説
不動産の適正な価値を把握する際に、必要になるのが「不動産鑑定評価書」です。不動産の相続・贈与・遺産分割などで、公的な証明として活用できますが、読み方がわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、不動産鑑定評価書の基本的な読み方を紹介します。重要なポイントも解説しているので、不動産鑑定を依頼する方はぜひ参考にしてください。
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不動産鑑定評価とは
不動産鑑定評価とは
不動産鑑定評価とは、国家資格を有する不動産鑑定士が行う業務です。国土交通省が定める「不動産鑑定基準」をもとに、不動産の価値を決定します。
不動産鑑定評価は、不動産査定とは異なり、明確な基準にもとづいて不動産鑑定評価額を算出する業務です。そのため、公的機関や第三者に対して「適正な価格であること」の証明となります。
不動産鑑定評価が必要となる場面は、不動産担保融資を受けるときや相続時の遺産分割、離婚時の財産分与を行うときなどです。
個人や法人からの依頼だけではありません。「地価公示評価額」や「固定資産税評価額」など、公共機関が公表する不動産評価額の決定の際にも鑑定評価を行います。
ただし、不動産鑑定士への依頼には、数十万円の費用がかかります。詳しい費用については、以下の記事を参照してください。
不動産鑑定評価書とは
不動産鑑定評価書とは
不動産鑑定評価書とは、不動産鑑定の結果をまとめた文書のことです。不動産鑑定の依頼者に交付します。
不動産鑑定評価書は、第三者や公的機関に対して、不動産の価格を示す証拠や証明として提出できます。不動産売買を円滑に成立させる交渉材料にもなるでしょう。
混同されやすいものに「不動産査定書」がありますが、不動産査定は不動産会社が独自の基準で査定を行うことです。
国が定めた基準に則って、価格を決定する不動産鑑定評価書の方が、提出書類としては効力が高いと言えるでしょう。
鑑定士コメント
鑑定評価には「価格時点」「鑑定評価を行った年月日」という2つの概念があります。鑑定評価額は「鑑定評価を行った年月日」における「価格時点」の不動産の適正な価格となります。厳密には求められた鑑定評価額が妥当とされるのは上記条件の時点のみというということになりますが、実務上はあまりにも有効期間が短くなりますので、大きな社会情勢の変化が無い場合は、「鑑定評価を行った年月日」から1年は有効とされることが一般的です。地価公示や地価調査も1年に1回ということも指標となるでしょう。ただし、あくまでその評価額がいつの時点のものかという「価格時点」は鑑定評価書に記載された日時になります。
不動産鑑定評価書の見方
不動産鑑定評価書の見方
不動産鑑定評価書には、以下の通り、さまざまな項目が記載されています。
・価格や賃料の種類
・不動産鑑定評価の条件や鑑定評価額決定の理由
・対象不動産の所在地
・権利の種類や価格時点
・不動産鑑定評価を実施した年月日
・不動産鑑定評価の依頼目的
・縁故または特別の利害関係の有無
各項目が何を表しているかを解説するので、不動産鑑定評価書を読む際の参考にしてみてください。
価格の種類
不動産取引は「売買」と「賃貸」の2つに分類され、不動産売買の場合は「価格」として、鑑定評価額が記載されます。
価格には4つの種類があります。以下の表で、それぞれの価格について把握してください。
正常価格は、一般的な不動産鑑定評価で使用されています。
賃料の種類
不動産の賃貸においては、鑑定評価額は「賃料」として記載されています。賃料には、3つの種類があります。
不動産鑑定評価の条件
不動産鑑定評価の条件
不動産鑑定評価の条件とは、「鑑定評価を行う際の前提条件」のことです。
前提条件によって鑑定評価額に差が出るため、条件を明らかにする必要があります。たとえば対象の不動産が更地である場合は、土地全体を評価するのか、土地の一部分を評価するのかで鑑定評価額が異なります。
不動産鑑定評価の条件は、次の5つ(※)です。
・現状所与としての鑑定評価
・独立鑑定評価
・部分鑑定評価
・併合または分割鑑定評価
・未竣工建物等鑑定評価
上記の条件は、「対象確定条件」と呼ばれる対象の不動産を確定する条件です。他にも、「地域要因または個別的要因に関する想定上の条件」や「調査範囲等条件」を設定する場合もあります。
条件の項目から、どのような条件で鑑定評価が行われているかを確認しましょう。
※参照:不動産鑑定評価基準
不動産鑑定評価額決定の理由
不動産の価格は、経済情勢や周辺状況の変化など、さまざまな要因に影響します。この項目を見ることで、不動産鑑定士が評価額を決定した理由がわかるでしょう。
鑑定評価額の決定の理由では、以下の内容(※)を記載することが義務付けられています。
・地域分析や個別分析
・最有効使用の判定
・鑑定評価の手法
・試算価格または試算賃料の調整
・公示価格との規準
・当事者間で事実の主張が異なる事項
・その他
鑑定評価額決定の理由は、重要な項目であるため必ず確認しておきましょう。
※参照:不動産鑑定評価基準
対象不動産の所在地
鑑定評価の対象である不動産を確定させるために、以下の情報(※)を記載します。
・所在
・地番
・地目
・家屋番号
・(建物の)構造
・用途
・数量など
所在や地番は、法務局が定めるものであり、住所とは異なる場合があるので注意してください。
※参照:不動産鑑定評価基準
権利の種類
権利の種類
権利の種類とは、対象となる不動産に関わる権利のことを指します。鑑定評価書で確認できるのは、以下の権利です。
・所有権
・地上権
・借地権
・区分所有権
・賃借権 など
権利の種類には、土地の用途を表す「種別」や、利用状況や権利態様を表す「類型」も合わせて記載されています。
価格時点
価格時点は、鑑定評価額を判定した基準となる日を指します。
価格は流動的であり、価格時点がわずかに異なる場合にも、鑑定評価額に大きく差が出る場合があります。そのため、表示されている鑑定評価額がいつの価格であるかを明確にすることが重要です。
基本的には、現時点での不動産の価値を鑑定しますが、依頼内容によって過去時点の鑑定評価を行う場合もあります。
有効期間は、価格時点から1年以内であるため、鑑定評価書を公的機関や第三者に提出するタイミングに注意しましょう。
不動産鑑定評価を実施した年月日
鑑定評価書を作成した日が、鑑定評価を実施した年月日となります。
価格時点と鑑定評価の実施日が別々に存在する理由は、価格時点と鑑定評価の実施日での評価額が大きく変動していないことを証明するためです。価格時点と合わせて確認しましょう。
不動産鑑定評価の依頼目的
不動産鑑定評価の依頼目的
依頼者が、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼した目的が記載されています。
依頼目的には、以下のようなものが挙げられます。
・不動産売買の参考
・不動産の交換
・相続財産の評価
・担保評価や資産評価 など
鑑定評価書を受け取ったら、依頼した目的と合っているかを確認しましょう。
縁故または特別の利害関係の有無
不動産鑑定評価は、公的な証明となるため、適切に鑑定評価が行われる必要があります。
そこで、不動産鑑定を依頼した方と依頼された不動産鑑定士(もしくは不動産鑑定事務所)に利害関係があるかを明示します。
親子や親族の場合や業務上関係がある場合は、不動産鑑定評価額が意図的に調整される可能性があるためです。
鑑定士コメント
不動産の種別・累計にもよりますが、登記簿・公図・地積測量図・建物図面など法務局で取得するもの、固定資産評価証明や納税通知書の映しなど役所が発行するもの、収益物件の場合は、建築賃貸借契約書や、管理費・修繕費・保険料などの費用がわかる資料があげられます。詳しくは、依頼する不動産鑑定事務所に問い合わせてください。
不動産鑑定評価書で見るべきポイント
不動産鑑定評価書で見るべきポイント
不動産鑑定評価書を見る際は、対象不動産の所在地・価格時点・鑑定評価の条件の3点をチェックしましょう。「依頼した不動産の情報が一致しているか」や「依頼内容に間違いがないか」を確認します。
次に、鑑定評価額の決定理由に目を通しましょう。価格を決定するうえで、納得できる理由であるかを確認してください。
納得できない場合やよくわからない項目がある場合は、依頼した不動産鑑定士に疑問点を聞きましょう。
まとめ:不動産鑑定評価書は専門的な公的文書
まとめ:不動産鑑定評価書は専門的な公的文書
不動産鑑定評価書は、適正な価格であることを示す公的文書です。財産分与や遺産分割、不動産の売買を行うときの参考材料になるでしょう。
不動産鑑定評価書を受け取ったら、不動産の所在地・価格時点・鑑定評価の条件を見て、依頼内容に合った鑑定評価であるかを確認しましょう。次に、鑑定評価額の決定理由に目を通し、価格決定の要因を確認してください。
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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