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2023.11.22

大規模修繕の周期は何年?マンションに適切な目安を中心に解説

大規模修繕の周期は何年?マンションに適切な目安を中心に解説

マンションを維持するためには、一定の周期での大規模修繕が必要です。適切な目安を知っておくことが、資産価値や安全性を保つことにつながります。

一方で「適切な周期はいつ?」「部位別で周期は違うの?」といった疑問をお持ちの方は、多いのではないでしょうか。大規模修繕の周期を見極めるためには、正しい知識を把握しておくことが重要です。

本記事では、マンションの大規模修繕工事を行うべき周期について解説します。部位別の修繕時期の目安や、周期を長くするための方法とあわせてまとめました。

大規模修繕工事の周期の目安

大規模修繕工事の周期の目安

大規模修繕工事の周期の目安

マンションの大規模修繕工事を行う周期の目安は「12年」です。一方で立地条件や構造、建物の状態によって適切な周期は異なり、「15年」や「18年」とするケースもあります。

 

建物や設備は時間の経過によって劣化します。定期的にメンテナンスを行い修繕・維持することが、大規模修繕の目的です。資産価値や安全性、暮らしの質を守るために行われます。

 

大規模修繕工事の対象になるのは、屋根・バルコニーや外壁、手すりの鉄部分など、マンションの共有部分です。区分所有者は毎月一定の金額を「修繕積立金」として支払う必要があり、大規模修繕の際には工事費用にあてられます。

 

大規模修繕工事を行う場合、数年前から準備を整えておく必要があるでしょう。マンションの資産価値や暮らしの質を維持するために、適切な周期を把握しておくことが重要です。

大規模修繕の周期が12年に推奨されている理由

大規模修繕の周期が12年に推奨されている理由

大規模修繕の周期が12年に推奨されている理由

大規模修繕の周期として12年を目安とする理由は、以下の通りです。

 

・国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインを準拠している

・特定建築物定期調査の実施に合わせている

・塗料や防水材などの劣化時期に合わせている

 

周期を把握するための基礎知識をチェックしておきましょう。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインを準拠している

12年とする根拠は「長期修繕計画作成ガイドライン(※)」に記載された数字です。「マンションの補修・修繕・改修の概念図」の項目では、1回目の大規模修繕の時期として12~15年程度と記載されています。

 

そのため大規模修繕の周期を12年とする考え方が、広がったと考えられるでしょう。長期修繕計画作成ガイドラインの「長期修繕計画の作成の方法(修繕周期の設定)」には、下記のような記載があります。

 

・新築マンションは仕様や立地条件などを考慮して設定する

・既存マンションは建物や設備の劣化状況の調査・診断の結果にもとづいて設定する

 

このことから12年はあくまで目安だと考えられるでしょう。12年に縛られず、適切な周期を見極めることが重要です。

 

※参照:マンション管理について(長期修繕計画作成ガイドラインコメント)

特定建築物定期調査の実施に合わせている

特定建築物定期調査の実施にあわせて、大規模修繕を行うケースです。特定建築物定期調査とは「特定建築物」を対象とする検査のことで、建物の所有者には定期報告が義務付けられています。

 

マンションが特定建築物に該当するケースでは、定期的な調査・検査と報告が必要です。特定建築物定期調査の対象となる建物や周期は自治体によって異なるので、事前に確認しておきましょう。

 

さらに特定建築物定期調査では、タイルや石張り(乾式工法を除く)、モルタルなどの外壁のタイル等の調査(※)を求めています。10年に一度の全面的な打診もしくは赤外線調査を行う必要があり、その後に大規模修繕を行うケースが多いです。

 

※参照:定期報告制度における外壁のタイル等の調査について

 

大規模修繕に関する法律については、下記の記事でも紹介しています。より詳しく知りたい方は、ぜひチェックしてください。

大規模修繕で覚えておきたい法律とは?建築基準法を中心にわかりやすく解説!

塗料や防水材などの劣化時期に合わせている

塗料や防水材などの劣化時期に合わせている

塗料や防水材などの劣化時期に合わせている

長期修繕計画作成ガイドラインの「修繕周期の例」では、修繕工事項目ごとの修繕周期例が記載しています。たとえば外壁塗装の塗替えは12~15年、屋上防水(保護)の補修や修繕は12~15年(※)です。

 

建物や設備の修繕が必要な周期が、多くの項目で12年に集約していることがわかるでしょう。このことから12年を大規模修繕の周期とすることが、合理的だと考えられています。

 

※参照:マンション管理について(長期修繕計画作成ガイドラインコメント)

鑑定士コメント

大規模修繕を行わずに放置したらどうなるのでしょうか?大規模修繕を行わずに放置した場合、建物が劣化したり、設備の不具合や故障のリスクが高くなり、生活の質や安全性の低下をまねくでしょう。さらにマンションの資産価値低下にもつながります。売却や賃貸としての提供を検討する際に、価格や家賃が下がる可能性があるので注意が必要です。マンションでの快適な暮らしや資産価値を守るために、一定の周期での大規模修繕は避けられないのです。

大規模修繕を15年や18年で行う場合もある

大規模修繕を15年や18年で行う場合もある

大規模修繕を15年や18年で行う場合もある

大規模修繕の周期を、15年や18年とするマンションが増えてきています。工事で使用される工法や材料の進化により、劣化を遅らせることが可能になりました。

 

周期を長くすれば大規模修繕の回数を減らせます。区分所有者が支払う修繕積立金の削減につながるでしょう。回数を減らすことで、騒音やにおいによる住民のストレスも軽減できます。

 

ただし、ただ単に大規模修繕の周期を長くすると、マンションの劣化が進んでしまう可能性があるので注意が必要です。大規模修繕の周期を18年にするためには、特別な工法や性能が高い材料を採用する必要があります

 

性能が高い材料を使用すると長期的なコストは削減できますが、1回にかかる費用は高くなるでしょう。1回の大規模修繕にかかるコストと長期的なコストを算出して、総合的に判断してください。

 

鑑定士コメント

大規模修繕の周期が18年など長いマンションにはどのようなタイプがあるのでしょうか
周期が長いマンションには、高層タワーマンションなど建物のグレードが髙いもの、エレベーターのない低層マンションなど設備の更新が少ないものなどがあげられます。また、長期修繕計画の中で、周期を長くする分、1回の工事にかける金額を大きくするケースもあるでしょう。一方で18年など長い周期での大規模修繕に対応しているのは、一部の施工業者に限られます。実際に周期をで長くできるのか、見積もりの際に相談してみることが重要です。

マンションの部位別の修繕時期の目安

マンションの部位別の修繕時期の目安

マンションの部位別の修繕時期の目安

マンションの部位によって、修繕すべき時期の目安は異なります。

 

・屋根・バルコニー

・外壁

・鉄部塗装

・各設備改修

 

長期修繕計画作成ガイドラインにおける部位別の修繕周期例と、時期の見分け方をまとめました。

屋根・バルコニー

修繕項目

工事区分

修繕周期例

屋上防水(保護)

補修や修繕

12~15年

撤去・新設

24~30年

屋上防水(露出)

補修や修繕

12~15年

撤去・新設

24~30年

傾斜屋根防水

補修や修繕

12~15年

撤去・ふきかえ

24~30年

庇・笠木等防水

修繕

12~15年

バルコニー床防水

修繕

12~15年

※参照:マンション管理について(長期修繕計画作成ガイドラインコメント)

 

上記の修繕周期例があくまで目安です。上記の年数に満たなくても下記のような劣化があれば、修繕が必要だと考えられます。

 

修繕項目

修繕時期の目安

陸屋根

防水面の亀裂・膨れ

ボルトキャップの劣化やサビの発生(トタン)

軒天部やバルコニー下のシミやくすみ

勾配屋

塗膜の劣化によって発生する色褪せ

屋根表面のカビやコケの発生

雨漏り

素地自体の変形・ゆがみ

バルコニー・ベランダ

床面の防水のトラブル

結合部の破断や欠損

 

外壁

修繕項目

工事区分

修繕周期例

外壁塗装 (雨掛かり)

塗替

12~15年

除去・塗装

24~30年

外壁塗装 (非雨掛かり)

塗替

12~15年

除去・塗装

24~30年

躯体コンクリート補修

補修

12~15年

軒天塗装

塗替

12~15年

除去・塗装

24~30年

タイル張補修

補修

12~15年

シーリング

打替

12~15年

※参照:マンション管理について(長期修繕計画作成ガイドラインコメント)

 

外壁劣化には日当たりや雨風など、環境的な要因が大きく影響します。外壁の種類ごとに、劣化のサインを以下で紹介します。

 

修繕項目

修繕時期の目安

モルタル・サイディング・パネル

被膜の粉っぽさ

カビやコケの発生

クラック(ひび割れ)

タイル・コンクリート打放し

打診もしくは赤外線調査で発覚した割れや浮き

雨水汚れ

カビやコケの発生

目地部分の欠損(タイル)

鉄部塗装

鉄部塗装

鉄部塗装

修繕項目

工事区分

修繕周期例

鉄部塗装(雨掛かり)

塗替

5~7年

鉄部塗装(非雨掛かり)

塗替

5~7年

※参照:マンション管理について(長期修繕計画作成ガイドラインコメント)

 

鉄部は定期的に塗装を行う必要があります。下記のような劣化のサインが発生する前に、修繕することが大事です。

 

鉄部塗装(雨掛かり/非雨掛かり)

表面の艶が失われている

色褪せ

被膜の粉っぽさ

サビ・腐食の発生

各設備改修

修繕項目

工事区分

修繕周期例

電灯設備等

電灯設備

取替

18~22年

配電盤類

取替

28~32年

幹線設備

取替

28~32年

自家発電設備

取替

28~32年

給水設備

給水管

更生

19~23年

取替

30~40年

貯水槽

補修

12~16年

取替

26~30年

給水ポンプ

補修

5~8年

取替

14~18年

排水設備

排水管

更生

19~23年

取替

30~40年

排水ポンプ

補修

5~8年

取替

14~18年

空調・換気設備

空調設備

取替

13~17年

換気整備

取替

13~17年

※参照:マンション管理について(長期修繕計画作成ガイドラインコメント)

 

各設備改修の周期をチェックして、工事を行う必要があります。上記の年数に満たない場合でも、なにか異常が発生したら適切に対処してください。

マンションの大規模修繕周期を長くするために必要なポイント

マンションの大規模修繕周期を長くするために必要なポイント

マンションの大規模修繕周期を長くするために必要なポイント

マンションの大規模修繕の周期は長くできます。コストを抑えるためにも、2つのポイントをチェックしておきましょう。

工事プランを比較する

多くの施工業者では複数のプランを用意しています。費用や使用している材料、工法が異なるため、十分に比較したうえで選ぶことが重要です。

 

たとえば外壁塗装の場合、塗料の種類によって耐久年数が異なります。より耐久年数が長い塗料を選ぶことで、長持ちさせることが可能です。

 

ただし、耐久性が高い材料を使用するプランは、費用が高い傾向があります。見積もりをとって費用と耐久年数を確認したうえで、工事プランを選択しましょう。

理事会役員の選び方も重要

大規模改修を行う際には、知識と経験を備えた人材を理事会役員に選出することが重要です。多くの分譲マンションでは、大規模改修の準備として理事会を立ち上げます。

 

マンションの区分候補者の中から数人を理事会役員に選出する仕組みです。大規模修繕の計画に携わり、工事費用の調整や施工業者の選定などの業務を行います。

 

建築関係の知識がある方や、以前の理事会に参加していた方からことがおすすめです。知識や経験を備えた理事会役員なら、適切な施工業者や工事プランを選定できるでしょう。

まとめ:大規模修繕は建物の状態をチェックして適切な周期で実施しよう

まとめ:大規模修繕は建物の状態をチェックして適切な周期で実施しよう

まとめ:大規模修繕は建物の状態をチェックして適切な周期で実施しよう

マンションの資産価値を維持するためには、大規模改修が必要です。12年を周期の目安とする考え方が一般的でしたが、工法や材料の進化により15年や18年とするケースも増えてきました。

 

屋根や外壁など部位ごとの修繕時期の目安を、あわせて確認しておきましょう。環境によっても劣化の進み方は異なるため、建物の状態を定期的に確認して適切な周期を見極めることが重要です。

 

マンションの大規模修繕周期を長くすれば、コストが抑えられる可能性があります。周期を長くするためのポイントも紹介したので、ぜひ参考にしてください。

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

簡易テスト

マンションの「修繕積立金」にみられる傾向として明らかに間違っているものは、次のうちどれですか?

答えは 1

「修繕積立金」は建物の劣化が進むにつれて見直され、変動することがあります。主に価格が上がることが予測されます。

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