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更新日:2024.09.12
登録日:2023.06.02

耐火構造とは?防火構造や準耐火構造との違いをわかりやすく解説

耐火構造とは?防火構造や準耐火構造との違いをわかりやすく解説

万が一に備えて、できるかぎり火災に強いマンションに住みたいと考える方は多いのではないでしょうか。

建物の耐火性能を表す用語に、耐火構造や準耐火構造、防火構造などがあります。これらの用語は、建物価格や火災保険料にも関わる重要な知識です。

そこで、本記事では、耐火構造・準耐火構造・防火構造について解説します。耐火構造のメリットやデメリットも紹介しているので、マンション選びに役立ててみてください。

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耐火構造とは

耐火構造とは

耐火構造とは

主要な構造部(壁・柱・床など)が、基準となる耐火性能を備えた建物の構造を「耐火構造」といいます。耐火構造の基準は「通常の火災が終了するまでに、火災による建物の倒壊や延焼の防止に必要な性能を備えていること」(※1)です。

 

万が一の火災が起こった際にも、住民を安全に避難させ、消化活動を助けることを目的としています。

 

耐火構造では、建物の構造部ごとに基準が定められています。耐火構造の基準を以下の表(※2)にまとめたので、確認してみてください。

 

 

※横にスクロールできます。





建物の構造部

耐火時間

最上階および最上階から数えた階数


最上階から数えた階数

2以上で4以内

5以上で9以内

10以上で14以内

15以上で19以内

20以上の階


間仕切壁




1時間




1.5時間




2時間



2時間



2時間

外壁


2.5時間


3時間

はり

屋根


30分間

階段

 

建物の階数によって異なりますが、耐火構造では最長で3時間の耐火性能があります。

 

一般的には、鉄筋コンクリート造(RC)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)・鉄骨造(S造)・コンクリートブロック造などが、耐火構造に該当します。

 

※1 参照:建築基準法

※2 参照:建築基準法施行令

素材ごとの耐火構造の基準

素材ごとの耐火構造の基準

素材ごとの耐火構造の基準

ここでは、壁や床などの部位で使用される素材と耐火構造について解説します。それぞれの部位ごとに採用される主な不燃素材や耐火構造は下記の通りです。

 

部位

素材

耐火構造

外壁

鉄筋・鉄骨コンクリート

・鉄筋コンクリート・鉄骨コンクリート造

・補強コンクリート製ブロック造

・軽量気泡コンクリート製パネル

・鉄骨造+ラス・モルタル造

コンクリートブロック

軽量気泡コンクリート製パネル

石・レンガ

ラス・モルタル

鉄筋・鉄骨コンクリート

・鉄筋コンクリート造

・補強コンクリートブロック造

・鉄骨造+ラス・モルタル造

コンクリートブロック

鉄鉄材

石・レンガ

ラス・モルタル

屋根

鉄筋・鉄骨コンクリート

・鉄筋コンクリート造

・鉄筋コンクリート製パネル

・軽量気泡コンクリート製パネル

・ラス・モルタル造

鉄筋コンクリート製パネル

軽量気泡コンクリート製パネル

ラス・モルタル

階段

鉄筋・鉄骨コンクリート

・鉄筋コンクリート造

・鉄造

・石造

・レンガ造

コンクリートブロック

石・レンガ

 

壁などは、素材の厚みを変えることで耐火性能が変化します。基本的には、厚みが大きいほど耐火性能が上昇して耐火時間が長くなります

 

 

防火構造との違い

防火構造との違い

防火構造との違い

防火構造とは、外壁または軒裏(屋根の下面)が防火性能を備えた建物の構造のことです。防火性能は、「周辺の建築物から発生する通常の火災において、延焼を抑制するために必要な性能」(※1)のことを指します。

 

耐火構造と防火性能の基準を比較した違いは、以下の通りです。

 

・耐火構造:建物自体(主要構造部)に耐火性能がある構造

・防火構造:周辺の建物の火災が(外壁や軒裏に)延焼しにくい構造

 

耐火構造は建物内からの火災にも強いですが、防火構造は外側からの火災にのみ備えた構造です。そのため、建物内から火災が起こると、耐火構造よりも倒壊・延焼するリスクがあります

 

建築基準法施行令によると、防火構造には次の2つの基準(※2)が定められています。

 

・30分間は、構造耐力上支障のある変形・溶融・破壊などの損傷を生じない

・30分間は、加熱面以外の面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないこと

 

※1 参照:建築基準法

※2 参照:建築基準法施行令

準耐火構造との違い

準耐火構造との違い

準耐火構造との違い

準耐火構造とは、主要な構造部が「通常の火災による建物の延焼の抑制に必要な性能を備えた構造」のこと(※1)を指します。

 

耐火構造の基準は「倒壊や延焼の防止」ですが、準耐火構造では「延焼の抑制」が基準となっています。つまり準耐火構造は、倒壊を防ぐ構造ではなく、あくまで延焼を抑える構造です。

 

耐火構造と同様に、壁・柱・床・梁・屋根・階段などの主要な構造部は国土交通大臣が定めた・認定した仕様でなければなりません。建築基準法施行令によると、準耐火構造は、最長で1時間まで建物の延焼を抑制(※2)します。

 

壁、柱、床、梁の延焼抑制性能によって基準時間が45分と60分に決められており、それぞれ「45分準耐火建築物」と「1時間準耐火建築物」と呼ばれます。なお、軒裏を除く屋根や階段の延焼抑制性能は30分間で良いとされています。

 

以上のことから、準耐火構造と比較して、耐火構造はより厳しい基準で建物が建てられていることがわかります。

 

※1 参照:建築基準法

※2 参照:建築基準法施行令

鑑定士コメント

この章では耐火建築物、耐火構造、防火構造、と似たような印象の言葉が多く出てきます。ややこしいので整理しましょう。「耐火建築物」とは、建物の主要構造部に耐火性能のある資材を使用し、防火設備を備えた「建物」のことです。一方「耐火構造」とは、建物内からの火災による倒壊や延焼を防ぐ「構造」のことで、「防火構造」は周辺の建物からの延焼を抑制する「構造」を指します。つまり、耐火構造と防火構造の両方を備えた建物を耐火建築物という、と覚えましょう。

耐火構造のメリット

耐火構造のメリット

耐火構造のメリット

ここでは、耐火構造の建物のメリットを紹介します。

 

・防火地域に建築できる

・火災保険料が割安になる

・火が広がりにくい

 

3つのメリットについて、それぞれくわしく解説するので、マンション選びの参考にしてください。

防火地域に建築できる

防火地域とは、都市計画法で「市街地の防火対策のために指定される地域」のことです。主に、以下の地域が、防火地域の対象となります。

 

・住宅や商業施設が密集する地域

・人通りや交通量の多い市街地

・消防車や救急車などの緊急車両が通る幹線道路沿い

 

防火地域内にあり、建物の延べ床面積が100㎡を超える、もしくは3階以上(地階を含む)の建物は耐火建築物にすることを義務付けられています。(※)

 

耐火構造のマンションであれば、都市部の住宅地域にも建築できます。つまり、交通の利便性が高く、周辺に商業施設や病院が充実する地域に居住できるのです。

 

※参照:国土交通省

火災保険料が割安になる

耐火構造の2つ目のメリットは、非耐火構造の建物と比較して、火災保険料が割安になることです。

 

火災保険料の金額を決定する要因の1つに、「建物の耐火性能」があります。耐火性能が高い建物ほど、火災による被害を抑えられるため保険料金は安くなります

 

住宅物件の構造は、大きく分けて、M構造(マンション構造)・T構造(耐火構造)・H構造(非耐火構造)の3つです。H構造<T構造<M構造の順に火災リスクが低くなり、保険料も安く抑えられます。

火が広がりにくい

火が広がりにくい

火が広がりにくい

マンションは居住人数が多いため、戸建住宅よりも火災の発生リスクが高いといえます。しかし耐火構造の建物では、万が一、火災が起こった際にも火が広がりにくいのが特徴です。

 

耐火構造は火災による倒壊・延焼を防ぐ構造であるため、家族への被害はもちろん、近隣への被害も抑えられます。

 

耐火構造である建物であれば、火災に対する安心感が高まるでしょう。

鑑定士コメント

購入予定の建物が耐火建築物であるかどうかは気になりますね。どうやって調べることができるのでしょうか。確実なのは「建築確認申請書」です。建築確認申請書とは、建物を建てる前に行政に「こういう建物を建てたいので許可してください」と提出する書類のことです。行政が、建築基準法や条例などに適合している建物であることを確認し許可します。建物が竣工した後に発行される「検査済証」は確認申請どおりの建物が建ってますというお墨付きですので、検査済証まで確認するとなお確実です。この建築確認申請書の他にも、設計仕様書・設計図面・パンフレットなどから、建物の耐火性能を確認できます。

耐火構造のデメリット

耐火構造のデメリット

耐火構造のデメリット

耐火構造にもデメリットが存在します。耐火構造のマンションを検討する際は、次の3点を把握しておきましょう。

 

・建築費用が高い

・リフォームしにくい

・デザインに制限がかかる

建築費用が高い

耐火建造は費用が高額であるのがデメリットです。

 

耐火建築物を建築する際には、国土交通大臣が認定した、耐火性能のある不燃材料を使用します。そうした資材は厚みがあるため、一箇所あたりの資材費用が高額になります。

 

さらに、耐火構造では、開口部に防火窓や防火ドアなどの設置が必要です。資材費用に加えて、防火設備を設置する施工費用も上乗せされます。

 

また建物自体も重いため、地盤や基礎の補強にも費用が発生し、建築費用が高額になります。

 

安心して暮らせるマンションに住める分、購入費用や家賃が高くなることを覚悟しておきましょう。

 

費用を抑えたい場合は、耐火構造のマンションの中でも、シンプルな間取りの物件を選んでみてください

リフォームしにくい

2つ目のデメリットは、リフォームを行いにくい点です。

 

耐火構造では、壁・床・柱・はり・屋根・階段などの主要な構造部に、一定の耐火性能があることを求められます。厳しい基準の中で、リフォームをすることになるため、思い通りに間取りの変更を行うことは難しいでしょう。

 

リフォームを行っても、通常よりも資材が厚い建物であるため、取り壊しや廃棄物の処分費用が高額になります。

 

出産や両親との同居など、将来的に家族構成の変化を想定できる場合には、大規模な工事を必要としない間取り変更を行いましょう。たとえば、「可動間仕切り」を活用することで、自由に間取りの変更が可能になります。

 

可動間仕切りのメリットやデメリット、設置費用については以下の記事から確認してみてください。

 

可動間仕切りとは?特徴やメリット・デメリットをくわしく解説

デザインに制限がかかる

デザインに制限がかかる

デザインに制限がかかる

3つ目のデメリットは、耐火構造の建物にデザインの制限があることです。

 

耐火構造の建物の外壁・屋根・軒裏には、厚みのある不燃材料を使用します。防火窓・防火ドア・防火シャッターの設置も必要となるので、非耐火構造であるマンションと比較して設計の自由度は下がります

 

耐火構造の物件を選ぶ場合、外観のデザインにこだわるのは難しいでしょう。

木造でも耐火・準耐火構造の建築物を建てられる

木造でも耐火・準耐火構造の建築物を建てられる

木造でも耐火・準耐火構造の建築物を建てられる

耐火と聞くと、鉄材やコンクリートなど燃えにくい素材で建てられた建築物に適用されるものだと考える人も多いでしょう。しかし、木造でも耐火・準耐火構造の建築物を建てられます

 

木造で耐火基準を満たす場合、国土交通大臣が定めた・認定を受けた工法で主要構造部に耐火構造を施すのが一般的です。木造の耐火工法として、下記3つの工法があります。

 

・被覆型(メンブレン型)

・燃え止まり型

・鉄骨内蔵型

 

被覆(メンブレン)型は、木材に耐火被覆を施して燃焼を抑える工法です。一方、燃え止まり型・鉄骨内蔵型は、木材に燃えしろ部分と耐火層を設けて、燃焼が一定に達すると燃焼を停止させる工法です。

まとめ:耐火構造の特徴を理解して、火災に強いマンションを選ぼう

まとめ:耐火構造の特徴を理解して、火災に強いマンションを選ぼう

まとめ:耐火構造の特徴を理解して、火災に強いマンションを選ぼう

耐火構造とは、住民の安全な避難や消化活動を助けることを目的として、一定の耐火性能を備えた構造のことです。耐火構造のマンションを選ぶことで「利便性が高い地域に住める」「火災保険料が安く抑えられる」などのメリットがあります。

 

ただし、リフォームがしづらく、建築費用が高額になる傾向にあります。こうしたメリットやデメリットを把握したうえで、耐火建築のマンションを選んでみてください。

#耐火構造 #耐火建築物 #防火構造 #火災

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

簡易テスト

マンションの構造体のうち、一般的でないものはどれですか?

答えは 4

解説

木造マンションも事例はありますが、建築基準法や消防法の厳しい規制をクリアしなければ建設が許可されないこともあり、一般的とは言えません。

  • 資産性が低くて
    売りたくても売れない
  • 安いという理由だけで
    中古マンションを
    買ってしまった
  • 修繕積立金が
    年々上がる
  • 子供が成人したから
    マンションを売って
    一軒家生活したいけど…
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