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2023.12.20

大規模修繕を行うときに確認申請は必要?条件をていねいに解説

大規模修繕を行うときに確認申請は必要?条件をていねいに解説

マンションを新築・増築工事をする際に実施が義務付けられている「建築確認申請」。確認申請は「修繕工事をするときにも必要なの?」「どのような手続きをすればいいの?」このような疑問を抱えている方は多いかもしれません。

一般的なマンションでは大規模修繕時の確認申請は不要ですが、特定の条件に当てはまる場合、確認申請が必要です。

この記事では大規模修繕時に確認申請が必要となる物件の条件や、手続きの流れについてわかりやすく解説します。ご自身のマンションでの大規模修繕時に、手続きが必要かどうかを確認するための判断材料にしてください。

そもそも建築確認申請とは

そもそも建築確認申請とは

そもそも建築確認申請とは

建築確認申請(以下、確認申請)とは、建物の工事計画が建築基準法や消防法などの法定基準を満たす内容であるかどうかについて、外部機関からチェックを受けるための手続きです。

 

一般的な流れとしては、着工前に物件のオーナー(建築主)またはその代理人(施工会社や設計士など)が申請書類を作成・提出し、工事計画についての審査を受けます。この審査に合格すると、建築計画が法に則っていることを証明する「建築確認済証」が交付され、着工が認められる仕組みです。

 

マンションの新築時には、着工前に必ず確認申請をしなければなりません。また後述するように、大規模修繕を実施する際にも確認申請が必要となるケースがあります

 

鑑定士コメント

大規模修繕は確認申請後に工事計画変更は可能でしょうか?確認申請後に工事計画を変更することは可能です。ただし、計画変更が生じる箇所に着工する前に「計画変更の申請」または「軽微な変更届」を別途提出する必要があります。変更内容や規模によって提出書類が異なるため、当該物件の設計士または施工会社から助言を受けましょう。なお計画変更の審査が完了し確認済証の交付を受けるまでは、着工できません。やむを得ない事情で計画を変更する場合、工期が延びる可能性も想定しておく必要があります。

大規模修繕時に確認申請が必要になる条件は2つ

大規模修繕時に確認申請が必要になる条件は2つ

大規模修繕時に確認申請が必要になる条件は2つ

大規模修繕時に確認申請が必要になるのは、以下の2条件に該当する場合です

 

・1号~3号建築物に該当する

・大規模の修繕・模様替えの定義に当てはまる

 

ひとつずつ解説します。

 

1号~3号建築物に該当する

建築基準法第六条の「第一号〜三号建築物」に該当するマンションの場合、大規模修繕時に確認申請が必要です。より具体的には、以下の条件に当てはまる建築物が該当します。

 

【第一号建築物】

「一 別表第一(い)欄(※2)に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの」(※1)

 

上述の「特殊建築物」の「用途」に関しては、「劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもので政令で定めるもの」が該当します。(※2)

 

【第二号建築物】

「二 木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの」(※1)

 

【第三号建築物】

「三 木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの」(※1)

 

一般的なマンションの場合、第二号または三号建築物に該当する可能性が高いでしょう。ただし自治体によっては、第一号建築物に分類されるマンションもまれにあるため、自治体の条例を併せて確認することをおすすめします

 

※1 引用:e-GOV法令検索|建築基準法 第六条

※2 引用:e-GOV法令検索|建築基準法 別表第一 耐火建築物等としなければならない特殊建築物(第六条、第二十一条、第二十七条、第二十八条、第三十五条―第三十五条の三、第九十条の三関係)

 

大規模の修繕・模様替えの定義に当てはまる

前述の第一号〜三号建築物を対象として、「大規模の修繕・大規模の模様替」の定義に当てはまる工事を実施する場合、大規模修繕時に確認申請が必要です。(※)

 

「十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。

十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。」

 

※ 引用:e-GOV法令検索|建築基準法 第二条 十四項・十五項

 

上述の「主要構造部」「修繕」「模様替え」「過半」が指す意味について、詳しく解説します。

 

主要構造部とは

主要構造部とは、壁、柱、床、梁(はり)、屋根、階段を指します。(※)これらの修繕を行う場合には、確認申請が必要です。

 

一般的な大規模修繕で実施されることの多い「外壁塗装」や「配管の整備」などを実施する際には、確認申請は必要ありません。これらは主要構造部に該当しないためです。

 

一方で注意が必要なケースは、上述の階段に加えて、エレベーターがあるマンションです。確認申請が必要となる工事の具体例については後述します。

 

※参照:e-GOV法令検索|建築基準法 第二条 五項

 

修繕とは

修繕とは、経年劣化した建築物の部分を、新築当初とおおむね同じ仕様で回復させる工事を指します。(※)

 

建築物に使われている建材は、それぞれの耐用年数(寿命)があり、経年劣化による安全性の低下や資産価値の減少を避けては通れません。建物全体の劣化をできるだけ軽減するために、修繕工事が必要となります。

 

※参照:国土交通省|参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度

 

模様替えとは

模様替えとは、建築物の構造・規模・機能の同一性を損なわない範囲で改造することを指します。(※)修繕との違いは、原状回復を目的としていない点です。

 

たとえば、住戸の間取り変更や共用部分のリフォームなどは、模様替えと見なされます。

 

※参照:国土交通省|参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度

 

過半とは

過半とは、過半数(1/2超え)のことです。

 

壁や床、屋根であれば、面積の半分以上を工事する場合、過半と判断されます。柱や梁であれば総本数の半数以上、階段であれば各階の段数の半数以上の場合が、過半の状態です。

 

鑑定士コメント

確認申請をしないまま工事を行うとどうなるのでしょうか?確認申請が必要な工事において、確認申請をすることなく工事を進めた場合、建築基準法に違反します。違反が発覚した場合、建築主や施行会社、土地の所有者等に行政指導が入り、それに応じなかった場合、より強制力のある行政処分や罰金、刑事処分を受ける可能性があります。工事に携わる設計士や施行会社と連携を取りながら、必要な手続きを実施しましょう。

大規模修繕時に確認申請が必要な工事の具体例

大規模修繕時に確認申請が必要な工事の具体例

大規模修繕時に確認申請が必要な工事の具体例

大規模修繕時に確認申請が必要となる工事の具体例として、エレベーター周りの工事や耐震補強工事が挙げられます

 

エレベーターの修繕工事を実施する場合、全体を一新する「完全撤去一括改修」だけでなく、機器を部分的に取り替える「準撤去一括改修」を実施する場合にも、確認申請が必要となります。

 

また耐震補強工事を実施する場合にも、確認申請が必要となる場合が大半です。耐震補強工事では、一般的に、主要構造部にあたる「柱」や「梁」の過半の修繕が必要となるためです。

 

大規模修繕でエレベーターの修理や修繕や耐震補強工事を予定している場合は、確認申請が必要な施工内容か否かを施工会社に相談することをおすすめします。

 

確認申請に必要な費用

確認申請に必要な費用

確認申請に必要な費用

確認申請時の費用として、数万円から数十万円の申請手数料が必要です

 

確認申請そのものは建築会社などに依頼できますが、申請手数料はマンションのオーナー(建築主)が負担しなければなりません。手数料は各自治体で定められており、床面積が大きいほど手数料が高くなります。

 

たとえば東京都の場合、確認申請の手数料は床面積が2,000m2以内の場合は49,000円です。2,000m2を超えると146,000円となり、最大で474,000円の手数料が発生します。(※)

 

※参照:東京都都市整備局|確認申請・計画通知手数料

 

確認申請に必要な期間

確認申請に必要な期間

確認申請に必要な期間

申請期間は、最長で2ヶ月程度かかることを想定しておきましょう。確認検査は通常7日以内で完了しますが、確認済証が交付されるまでに最長で35日かかります。また確認申請に加え、構造計算適合性判定などの追加審査が必要となった場合、さらに1ヶ月ほどの審査期間が必要です。

 

確認申請にはそれなり時間がかかり、細則は自治体によって異なります。判断に迷う場合は、早めに自治体に問い合わせておくと安心です。

 

確認申請を行う流れ

確認申請を行う流れ

確認申請を行う流れ

確認申請では、「着工前」と「完了後」に2段階の審査が実施されます。おおまかな流れは、以下の通りです。

 

1.工事計画の立案

2.建築確認申請

3.着工前の書類審査

4.建築確認済証の交付

5.工事の開始

6.工事の終了

7.完了検査

8.検査済証の交付

 

確認申請書類を提出すると、民間の検査機関もしくは特定行政庁(自治体)による書面審査を経て、「建築確認済証」が交付されます。「建築確認済証」の交付を受けてから、着工しましょう。

 

工事の完了後、「完了検査」が実施されます。申請された書類の通りに工事が実施されたかを確認するためです。施工内容に問題がなければ、「検査済証」が交付されます。

 

なお、確認申請はマンションのオーナー(建築主)に義務付けられていますが、設計事務所や施工会社などの専門家を代理人として申請するのが一般的です。

 

一般的なマンション大規模修繕での確認申請は不要

一般的なマンション大規模修繕での確認申請は不要

一般的なマンション大規模修繕での確認申請は不要

一般的なマンションの大規模修繕工事では、確認申請は必要ありません。前述のように、大半の修繕工事は、「主要構造部の過半の修繕」に該当しないと考えられるためです。

 

たとえば、経年劣化に伴う防水シートの修繕工事や外壁の塗り替え工事などは、主要構造部ではなく表面の仕様変更と見なされます。そのため、外壁を全面的に塗り替える場合、確認申請は不要です。

 

大規模修繕計画の規模や施工内容にもよりますが、一般的な修繕に関しては、確認申請が不要となるケースが大半と考えて差し支えないでしょう。

 

まとめ:大規模修繕を行うときは、専門家に相談するのがおすすめ

まとめ:大規模修繕を行うときは、専門家に相談するのがおすすめ

まとめ:大規模修繕を行うときは、専門家に相談するのがおすすめ

大規模修繕を行うときは、建築基準関係の規定を熟知した人から助言を受けることをおすすめします。物件の条件や修繕内容によっては、建築確認申請が必要となるためです。確認申請を怠った場合、建築基準法に抵触し、行政指導が入る可能性があります。

 

設計士や施工会社などの専門家と連携を取りながら、必要な手続きをもれなく実施しましょう

 

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

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