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更新日:2023.12.20
登録日:2023.12.20
長期修繕計画がないとマンションはどうなる?購入前に調べておくべきポイントを解説
マンションを適正に管理してできるだけ寿命を長くするには、計画的に修繕を行うことが欠かせません。長期修繕計画は、長期間のマンション修繕計画を定めたものです。多くのマンションには長期修繕計画がありますが、中には長期修繕計画がないマンションも存在します。
本記事では、長期修繕計画がないとマンションはどうなるのか、長期修繕計画がないマンションは全国にどれくらいあるのかについて解説します。マンション購入前に長期修繕計画に関して調べておきたいことについても開設するので、マンション購入を検討している人はぜひ最後までご覧ください。
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長期修繕計画がないとマンションはどうなるか
長期修繕計画がないとマンションはどうなるか
長期修繕計画がないと、マンションでは下記のような問題が発生します。
・スラム化する危険がある
・その場しのぎの工事を行う可能性がある
・突然高額な修繕費を請求されることがある
それぞれの問題について、詳しく解説します。
スラム化する危険がある
マンションのスラム化とは、空き家が増えることでマンションが荒廃して衛生環境が悪化し、不法侵入やその他の犯罪が発生するといった懸念現象のことです。長期修繕計画がないと、マンションが修繕されずに環境が悪化してしまいます。
設備のメンテナンスなども行われなくなってしまうため、住環境が悪くなったマンションからは人が離れてしまい、新たな居住者も現れなくなってしまうため空き家が増えます。荒廃して空き家が増えたマンションは、不法侵入やその他の犯罪が発生する可能性が高くなってしまうでしょう。
一般的な鉄筋コンクリート造のマンションの耐用年数は47年(※)です。長期修繕計画がないマンションでも、初めのころは問題ないかもしれません。しかし、修繕されずに築年数が古くなっていくとマンションがスラム化する危険があります。
※参照:国税庁
その場しのぎの工事を行う可能性がある
長期修繕計画がないと、問題が発生した際にその場しのぎの工事を行ってしまう可能性があります。その場しのぎの工事は計画性がないため、どれくらいの費用がかかるかといった相場観がわかりません。
一般的な長期修繕計画は、およそ30年先までの修繕内容を計画します。30年先までの修繕計画をもとに修繕積立金の金額を決定するため、それぞれの修繕に対して計画的に修繕積立金を使用する必要があります。
しかし、その場しのぎの工事を続けていると、修繕積立金がなくなってしまい大規模修繕を行う際に資金がなくなってしまう恐れがあります。
突然高額な修繕費を請求されることがある
大規模修繕を行うタイミングで修繕積立金が足りないと、突然高額な修繕費を請求される恐れがあります。無計画に修繕すると、修繕積立金が足りなくなってしまいます。とはいえ、大規模修繕をしないわけにもいきません。
また、大規模修繕を行うタイミングではなくても、突然修繕積立金が増額する可能性もあります。長期修繕計画がないと計画的に修繕積立金を使用できないため、増額や一時徴収される可能性が高いでしょう。
なお、長期修繕計画については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ1度ご覧ください。
長期修繕計画とは?マンションの維持管理のために知っておきたい基本知識
長期修繕計画がないマンションは全体の10%以下
長期修繕計画がないマンションは全体の10%以下
国土交通省が平成30年に行ったマンション総合調査によると、長期修繕計画を作成しているマンション管理組合は90.9%(※)に上ります。つまり、長期修繕計画がないマンションは全体の10%もありません。
しかし、計画期間が25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定している割合は53.6%(※)と、およそ半分のマンションが適正な修繕積立金を設定できていないということがわかっています。
そのため、多くのマンションで修繕積立金の増額や一時徴収が行われる可能性があります。
そもそも、国土交通省が定めた「マンション標準管理規約」では、長期修繕計画の作成はマンション管理組合の義務とされています。マンション標準管理規約はあくまでも方針であり、かならずしもそれぞれのマンションがマンション標準管理規約の通りに規約を定める必要はありません。
しかし、多くのマンションでは国土交通省が定めたマンション標準管理規約に沿って規約を作成しています。
※参照:国土交通省
マンション購入前に長期修繕計画に関して調べておきたいこと
マンション購入前に長期修繕計画に関して調べておきたいこと
長期修繕計画は今後のマンション管理に直結する重要な要素のため、マンションを購入する前には、下記の内容を調べておきましょう。
・長期修繕計画の有無
・修繕積立金の設定額
・大規模修繕工事が未実施かどうか
・長期修繕計画の見直しをしているか
長期修繕計画の有無
マンション購入を検討する際は、まず長期修繕計画の有無を確認しましょう。長期修繕計画がなければ、今後適正にマンションが管理されずにマンションのスラム化が進んでしまう可能性があります。
長期修繕計画の有無は、仲介業者や売主会社などに依頼することで確認できます。長期修繕計画がきちんと作成されており、適切に維持管理されているかを確認しましょう。
鑑定士コメント
長期修繕計画書は100%信頼してもよいのでしょうか?長期修繕計画は、あくまで作成時点での、予測に基づく計画であり、将来に渡って信頼できるというものではありません。マンションに関わる技術は日々進化しており、修繕工法も変わっていくことがあります。また、金額面においては、物価高・建築費高騰などの社会的な変化もあります。そのため、作成されてから時間がたっていると正しい長期修繕計画とは言えません。定期的な見直しをお勧めします。
修繕積立金の設定額
マンション購入前に修繕積立金の設定額を確認しましょう。修繕積立金の金額は、長期修繕計画に合わせて設定されます。しかし、中には計画に対して修繕積立金が安く設定してあるマンションがあるため注意が必要です。
修繕積立金が安いとマンションが購入されやすいため、販売当初は修繕積立金を安く設定している場合があります。しかし、安いままでは大規模修繕の際に修繕金が足りなくなってしまう可能性があります。
長期修繕計画に対して修繕積立金の設定額が安いと、徐々に修繕積立金が値上げされたり一時徴収されたりする可能性が高いです。事前に設定額が適正かどうかを確認しましょう。
なお、修繕積立金費用の目安の算出方法は以下の記事で紹介しています。こちらも一緒に読んでみてください。
マンション大規模修繕の費用はどれくらい?目安をわかりやすく解説
大規模修繕工事が未実施かどうか
長期修繕計画があるマンションでも、さまざまな理由から大規模修繕が未実施のマンションがあります。未実施の理由はさまざまですが、修繕積立金の設定額が低かったり滞納が多かったりなどの理由で、修繕積立金が不足することが原因であることが多いです。
長期修繕計画が作成されていても、計画通りに修繕されていなければ意味がありません。今後一時徴収などが行われる可能性も高いため注意が必要です。
鑑定士コメント
大規模修繕で重要なポイントはどこでしょうか?大規模修繕で把握すべきポイントとしては「最近行われた大規模修繕は何か」「外壁塗装、鉄部塗装、屋上防水などの工事が行われているか」「工事費は妥当であるか」などがあります。また、大規模修繕が計画よりも遅れている場合は、現在どのような検討が行われているかを確認しましょう。
長期修繕計画の見直しをしているか
長期修繕計画を定期的に見直しているかどうかを確認してください。
長期修繕計画は30年程度の長い期間の計画であるため、技術の向上や物価の変動などのさまざまな理由で当初の計画通りに進まない可能性があります。計画よりも修繕が必要ではなくなったり、少ない金額で修繕が行えたりするなどの良い意味で計画通りに進まない場合はそこまで気にする必要はないかもしれません。
しかし、工事費用や材料費の高騰などで修繕に必要な金額が上がってしまって計画通りに進まなかった場合、さまざまな問題が発生します。そのため、長期修繕計画は定期的に見直しすることが推奨されています。購入を検討しているマンションの長期修繕計画が定期的に見直しされているか、作成年度を確認しておきましょう。
なお、長期修繕計画の見直しについては下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ1度ご覧ください。
長期修繕計画の見直しは必要?タイミングや注意しておきたいポイントを紹介
まとめ:長期修繕計画のないマンションは要注意!事前にしっかり調べておこう
まとめ:長期修繕計画のないマンションは要注意!事前にしっかり調べておこう
長期修繕計画は、ほとんどのマンションで作成されています。しかし、中には作成されていないことや、作成されていても25年以内の計画であったり、見直しがされていなかったりすることがあります。
長期修繕計画が作成されていないとその場しのぎの工事になってしまい、突然一時徴収されたり修繕積立金が増額されたりします。
家計にも影響してくるため、マンションの購入を検討する際は適正な長期修繕計画が作成されて定期的に見直しされているか、修繕積立金の設定額に問題はないかなどを確認しましょう。
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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