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2023.08.22

不動産登記とは?登記簿謄本の見方や必要な費用の相場について解説

不動産登記とは?登記簿謄本の見方や必要な費用の相場について解説

「不動産登記って何?」
「登記簿謄本の見方がわからない」
といった悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

不動産取引をする上では、不動産登記や登記簿謄本の見方について知ることが重要となります。登記は、司法書士や土地家屋調査士に依頼するのが一般的ですが、登記が必要なケースや登記に必要な費用は事前に把握しておきましょう。

そこで、この記事では、不動産登記や登記簿謄本の見方について解説します。記事を読んで、円滑に不動産を取引するための知識を習得しましょう。

不動産登記とは

不動産登記とは

不動産登記とは

不動産登記とは、「不動産(土地や建物)の情報や所有権や抵当権などの権利情報を公に記録すること」を指します。円滑に不動産の取引を行うために、必要な手続きです。登記手続きを行うと、法務局が管理する帳簿に登記情報が記録されます。

 

主に不動産の所有者が変更した時に、登記が必要になります。例えば、不動産の購入・相続・売買が行われた場合です。不動産の購入や取引を予定している方は、後ほど解説する登記が必要なケースを把握しておきましょう。

 

登記をすることで、不動産の所有権を主張できるため、勝手に不動産が第三者に引き渡しされるといったトラブルを防げます。

 

不動産登記は複雑な手続きであるため、司法書士や土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。

 

不動産登記簿謄本の見方

不動産登記簿謄本の見方

不動産登記簿謄本の見方

登記簿謄本とは、「不動産に関する物件情報や権利情報などが記載された公的文書のこと」です。物件の状態や権利情報が一目で把握できるため、登記簿謄本の見方を知っておきましょう。

 

登記簿謄本は、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の3つに分類されています。登記簿謄本の見方を紹介するので、不動産取引の際に各ポイントをチェックしてください。

 

・表題部

・権利部(甲区)

・権利部(乙区)

表題部

登記簿謄本の表題部には、不動産の物理情報が記載されており、「どのような土地や建物であるか」を把握できます

 

表題部に記載されている情報は、以下の通りです。

 

・土地:地番(住所)・地目(種類)・地積(面積)・所有者名など

・建物:地番・家屋番号・種類・構造・床面積・所有者名など

 

土地と建物で所有者名が異なると、土地や建物のどちらかのみが売られている場合があるため、表題部では「土地と建物の所有者が同一であるか」を確認しましょう

 

また、チラシやパンフレットで見た情報と、実際の物件情報と異なる場合があります。特に建物の構造・築年数・付属建物などは、登記簿謄本で必ずチェックしてください。

権利部(甲区)

権利部(甲区)には、不動産の所有者に関する情報が記載されています。「不動産の過去の所有者情報」や「不動産を取得した経緯」などを把握できます

 

甲区に記載されている情報は、以下の通りです。

 

・現在の所有者

・所有権が保存・移転された年月日

・所有権が移転した原因(売却・相続・贈与など)

・所有権の移転元と移転先

 

甲区には、差し押さえや仮処分などの不動産の状態も記載されています。

 

不動産を取得した経緯や差し押さえの有無などは価格交渉の材料となるため、不動産取引時にチェックしましょう。

 

以下の記事で、甲区の詳しい内容や読み方を解説しているので、気になる方はぜひ参考にして下さい。

甲区とは?内容と読み方、甲区がないケースについても解説

権利部(乙区)

権利部(乙区)

権利部(乙区)

権利部(乙区)には、所有権以外の権利(抵当権・地上権・貸借権など)について記載されています。

 

乙区では、不動産の「抵当権の有無」を確認しましょう。抵当権とは、住宅ローンを組む時に担保として設定する権利のことです。

 

乙区に記載されている抵当権の詳細(債権額・利息・債務者などの情報)を元に、当時の不動産の購入価格を予想できます。乙区を見ると、現在のローンの残債もある程度、見当がつきます。これらの情報は、不動産取引において有利になるので必ず確認しましょう。

 

以下の記事で、乙区の詳しい内容や読み方を解説しているので、ぜひ参考にして下さい。

乙区とは?内容と読み方、乙区がないケースについても解説

鑑定士コメント

登記簿謄本と登記事項証明書は、どちらも不動産に登記の内容を記載した公的な書類で、証明内容は同じです。以前は、登記情報を紙媒体で管理しており、原本を書き写したものを「登記簿謄本」と呼んでいました。しかし、現在はデジタルで管理しており、登記情報を専用の用紙に印刷したものが「登記事項証明書」と呼ばれています。

不動産登記が必要になるケースとは

不動産登記が必要になるケースとは

不動産登記が必要になるケースとは

不動産登記が必要になるのは、登記情報に変更があるタイミングです。以下の4つのケースに該当する場合、不動産登記を行います。

 

・不動産を取得したとき

・住所や姓が変更になったとき

・住宅ローンを完済したとき

・建物を取り壊したとき

 

それぞれのケースについて、詳しく解説します。

不動産を取得したとき

売買・相続・譲渡などで不動産の所有者が変更された場合には、登記手続きが必要です。登記を行っていないと、スムーズな不動産取引ができなくなります。

 

所有権の移転を証明する手続きを「所有権移転登記」、新しく所有権の取得を証明する手続きを「所有権保存登記」と呼びます。所有権保存登記は、新築や注文住宅などの不動産を取得した時に行う手続きです。

 

所有権によって「この不動産の持ち主は自分である」という法的な証明ができます

住所や姓が変更になったとき

引越しや結婚などで住所や氏名が変更した場合には、不動産の所有者情報が変更されるため、登記手続きが必要です。なぜなら、不動産登記においては、「常に情報が正確であること」が求められるからです。

 

令和3年に改正された不動産登記法によって、令和8年4月までは不動産の所有者が住所や氏名を変更した場合に、登記申請が義務化(※)されています。住所や氏名が変更した場合には、必ず新しい情報を登録しましょう。所有者情報を登録することで不動産取引や相続などの手続きが円滑に進みます

 

※参照:法務局

住宅ローンを完済したとき

住宅ローンを完済したとき

住宅ローンを完済したとき

住宅ローンを利用した際には、購入した物件に抵当権が設定され、ローンの担保になります。支払いが滞るとローンの融資元が物件を売却し、売却益をローンの返済に充てるという仕組みです。

 

住宅ローンの完済後、物件購入時に設定した抵当権を抹消する手続きが必要になります。抵当権が付いたままでは、不動産の取引ができず、新居購入のために新しくローンを組むことも難しくなります。

 

ローンを完済しても、抵当権が自動で消去されるわけではありません。必ず、抵当権の抹消登記を行いましょう。

建物を取り壊したとき

不動産を取得した場合だけでなく、建物の取り壊し・火災・災害で建物を失った場合にも登記手続きは必要です。

 

建物を取り壊した後、登記情報が自然に消滅するわけではなく、登記手続きが完了するまで登記は残り続けます。登記が残った状態では土地の売却や建物の建設もできないため、建物滅失登記を行って登記を削除しましょう。

 

取り壊したまま放置していると、登記が存在するため、税金が発生し続けます。建物滅失登記を忘れずに行ってください。

 

不動産登記の期限

不動産登記の期限

不動産登記の期限

不動産登記は、種類によって期限があるものとないものがあります。期限が設定されているのは「建物の表題登記」や「建物滅失登記」です。

 

建物の表題登記は新築時や中古取得時に行い、建物の完成から1ヶ月以内(※1)に手続きを行います。建物滅失登記も同様に、建物の取り壊しから1ヶ月以内(※1)に申請しなければいけません。

 

登記の期限を過ぎると、10万円以下の過料(※1)を科せられます。

 

※1参照:不動産登記法

鑑定士コメント

表題登記や建物滅失登記には義務があり、1ヶ月の期限を過ぎると10万円以下の過料が科せられます。相続登記は、令和6年4月1日より義務化(※2)されることが決定しています。所有権移転登記は義務化されておらず罰則等もないのですが、移転登記をしないと、従前の所有者に税金を請求される場合があるため、トラブルの元になります。出来るだけ早めに手続きを済ませましょう。

※2参照:法務省

不動産登記に必要な費用

不動産登記に必要な費用

不動産登記に必要な費用

不動産登記を行うと、登録免許税が課されます

 

不動産登記は手続きが複雑であるため、司法書士・土地家屋調査士などの専門家に依頼し、報酬を支払います。

 

各費用の計算方法や費用の相場を紹介するので、費用の見積りに活用してください。

登録免許税

登録免許税とは、「登記を行う時に課される税金のこと」です。登録免許税は、以下の計算式で算出します。

 

登録免許税額 = (課税標準)×(税率)(※1)

 

不動産登記の種類別に税率が異なるため、以下の表を参考にしてください。

 

※横にスクロールできます。

 

登記の種類

内容

税率(※2)

土地

所有権の移転登記

売買・贈与・競売など

2%

相続・法人の合併など

0.4%

建物

売買・贈与・競売など

2%

相続・法人の合併

0.4%

所有権の保存登記

 

0.4%

抵当権の設定登記

 

0.4%

 

一定の要件を満たした不動産であれば、軽減税率が適用され、税負担を軽減できます。詳しくは、国税庁のホームページにある「登録免許税の税額表」を確認してください。

 

※1参照:法務局

※2参照:国税庁

司法書士・土地家屋調査士への報酬

不動産登記において、建物表題登記は土地家屋調査士へ依頼し、所有権移転や抵当権登記は司法書士に依頼します。

 

土地家屋調査士に建物表題登記を依頼した場合、報酬の相場は10万円前後(※1)です。司法書士への報酬の相場は、以下の表を目安にしてください。

 

登記の種類

費用の相場

所有権移転登記

5万円〜10万円(※2)

相続登記

5万円〜10万円(※2)

所有権保存登記

〜5万円(※2)

抵当権抹消登記

1万円〜2万円(※3)

 

ただし、費用は依頼内容や作業内容によって決定します。あくまで費用の相場は、登記のみ依頼した金額であることを覚えておきましょう。

 

※1参照:不動産の表題登記(表示登記)とは?登記をすべき理由と金額の相場を紹介

※2参照:司法書士に不動産登記を依頼する費用は?相場や軽減措置について解説

※3参照:【費用相場】司法書士の手数料はどれくらい?

 

不動産登記を自分で行う場合に注意すること

不動産登記を自分で行う場合に注意すること

不動産登記を自分で行う場合に注意すること

不動産登記では、登録免許税や専門家への依頼料が発生します。

 

専門家への依頼料を抑えるために、自分で不動産登記をしようと考える方もいるでしょう。そこで、不動産登記を自分で行う場合の注意点を3つ紹介します。

 

・取引のリスクが高くなる

・金融機関に相談する必要がある

・表題登記には図面作成が必要

 

それぞれの注意点について、もう少し詳しく解説します。

取引のリスクが高くなる

不動産登記では、多くの書類を揃える必要があり、申請書の作成・提出・登記完了証の受取までを自分で行う必要があります

 

登記に不慣れな人が登記手続きを行った場合、本来の契約内容と異なる登記が行われたり、登記が通らなかったりする可能性があります。誤った情報の登録による法律違反や、トラブルに巻き込まれる可能性もあるでしょう。

 

不動産登記を自分で行うのはリスクが高いため、不動産の買い手が見つかりにくくなります。

金融機関に相談する必要がある

抵当権の設定や抹消といった、住宅ローンに関わる不動産登記を行う場合は、金融機関とのやりとりが必要です。

 

登記は司法書士が手続きをするケースが多いため、金融機関に「自分で登記を行う」と伝えても、断られる場合があります。取引リスクが高いため、金融機関に「司法書士に依頼してほしい」と言われる可能性が高いです。

 

抵当権の設定や抹消登記は、金融機関の許可が必要であることを把握しておきましょう。

表題登記には図面作成が必要

表題登記には図面作成が必要

表題登記には図面作成が必要

建物の表題登記において、自分で行うのが難しい手続きが「図面作成」です。

 

図面作成では、不動産の境界線・地形・周辺環境などの情報を集め、その上で建物の大きさ・位置・形状を正確に記載する必要があります

 

法務局でアドバイスを受けられますが、それでも自分で図面作成を行うのは難しいでしょう。正確さが要求されるため、一度提出しても修正依頼を出されることもあります。

 

不動産登記を自分で行うことは、さまざまなリスクが伴うため、専門家に依頼することを推奨されています

まとめ:不動産登記の方法を理解して適切に対応しよう

まとめ:不動産登記の方法を理解して適切に対応しよう

まとめ:不動産登記の方法を理解して適切に対応しよう

不動産登記は、不動産の所有者情報や権利情報などを公に登録する手続きのことです。登記簿謄本の見方がわかれば、不動産に関わる情報を一目で把握でき、価格交渉にも役立ちます。

 

不動産の取得や売買だけでなく、住所や氏名の変更時や住宅ローンの完済時にも不動産登記が必要になります。自分で登記手続きを行うのはリスクが高く、労力や時間もかかるため、司法書士や土地家屋調査士に依頼しましょう。

 

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

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