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更新日:2023.09.26
登録日:2023.09.21
手付解除とは?いつまで解除できるのか、手付金がどうなるかも解説

不動産を売買するとき、売買契約書には「手付解除」という項目が記載されています。契約解除の際にはこの手付解除が大きな役割をはたすため、あらかじめ確認しておくことが重要です。
しかし、「手付解除が何かわからない」「仕組みがあまり理解できていない」と感じている方も多いのではないでしょうか。トラブルを避けるためにも、不動産の売買における手付解除について理解しておく必要があります。
本記事では、手付解除や手付を解除する仕組みについてまとめました。手付解除期日や期日の定め方、契約を解除した場合の手付金がどうなるのか、手続きの流れとあわせて解説します。
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手付解除とは

手付解除とは
手付解除とは、手付金により不動産の売買契約を解除できる制度です。手付の放棄もしくは倍の金額で返すことによって、不動産売買契約を解除します。
手付金とは、不動産売買契約を締結する際に交付される金銭のことです。手付には「解約手付」「証約手付」「違約手付」があり、契約解除ができるのは解約手付に限られます。
民法における手付とは原則的には解約手付のことです。一般的な取引で交付された手付のほとんどは、解約手付と考えてよいでしょう。
宅地建物取引業法の第39条第2項(※)では、消費者保護の観点から手付に関する強行規定を設けています。売主が宅地建物取引業者である場合、売買契約で交付される手付は解約手付とみなすことが可能です。これは「解約手付性の付与」と呼ばれています。
なお、手付金と似通った解釈をされがちな「頭金」は、総費用から住宅ローンの借り入れ分を差し引いた金額のことです。手付金との詳しい違いを知りたい方は、こちらもあわせてチェックしてください。
手付金と頭金の違いは?不動産購入時に知っておきたい知識を解説
手付を解除する仕組み

手付を解除する仕組み
買主が売主に対して交付した解約手付によって、不動産契約を解除するのが基本の仕組みです。一般的な売買契約書には、手付解除に関する条項が記載されています。
買主側が契約の解除を申し出た場合は、手付金を放棄すれば契約の解除が可能です。このようなケースでは、手付金は全額売主のものになります。手付解除期日以内であれば、理由に関係なく無条件で手付の解除が可能です。
売主側が契約解除を申し込んだケースでは、買主から受け取った手付金に加えて一定の金額を支払います。こちらも決まった金額以外を支払う必要がなく、手付解除期日以内ならいつでも契約解除が可能です。
ちなみに、手付金には不動産契約を円満に進めるという意味もあります。手付解除が行われず売買契約が成立したときは、売買代金の一部として充当される仕組みです。買主側から契約解除を行わない場合は、手付金が返還されることはありません。
手付解除期日とは

手付解除期日とは
民法557条第1項では、「手付の交付により契約は解除できるが、契約の履行に着手したあとはこの限りでない」としています(※)。手付解除期日以前なら、売主や買主が書面で通知することで不動産契約の解除が可能です。
つまり民法上では、「売主や買主の一方が契約履行を着手する以前」までが手付解除期日と考えられるでしょう。引き渡しや代金を支払うまでの準備は履行の着手にあたりません。
手付解除期日に間に合うように手続きをするには、「契約履行を着手するまで」がいつなのか、確認しておくことが重要です。例えば売主によって移転登記の手続きが行われた場合、買主は手付解除ができなくなります。買主が「内金」や「中間金」を支払えば、売主は手付の解約ができません。
「契約相手が契約の履行に着手するまで」が、正確な手付解除期日と考えられます。自分が契約の履行に着手していたとしても、相手が着手していない状態なら手付解除が可能です。
※参照:民法|e-Gov法令検索
手付解除期日の定め方

手付解除期日の定め方
民法の手付解除期限日を補完するため、双方が合意のうえで定めることが一般的になっています。残代金支払日からスケジュールを考慮して、手付解除期限を決めておきましょう。
例えば、契約から決済まで期間が1ヶ月以内なら、残代金支払日の7~10日前が目安です。1ヶ月以上の場合は、契約日から決済日の中間が基準になります。
ただし、これらの基準はあくまでも目安なので、契約内容や双方の事情を考慮して決定することが重要です。買主が一方的に決めることがないように、十分に注意してください。
定めなかった場合、移転登記の手続きや内金や中間金の支払いなど履行の着手が手付解除期日とされます。売主と買主の解釈の違いで判断が分かれることがあるので、注意が必要です。
契約履行に対する考えの違いにより、スムーズに手付解除ができないことが考えられます。トラブルを避けるためにも、具体的な手付解除期限を定めておくことが重要です。
契約を解除した場合の手付金

契約を解除した場合の手付金
不動産の売買契約後に手付解除を行う場合、どちらが契約解除を申し出たのかによって詳しい方法が異なります。売主と買主に分けて、それぞれの手付金がどうなるのか解説します。
売主の場合
売主が手付解除を行う場合、買主が受け取った手付金の倍額が必要です。売主が主導する契約解除のことを、「手付倍返し」と呼んでいます。
購入した買主に対する迷惑料として、手付金の倍を支払って解除するのが基本の考え方です。手付解除期限日以前や買主が履行に着手する前であれば、手付倍返し以外に損害賠償は発生しません。
手付金の金額は買主との合意で自由に決められますが、相場は売買代金の5〜10%(※)です。例えば3,000万円の取引で10%の300万円を手付金とします。この場合、売主が契約解除を申し出たときに返す金額は600万円です。
買主から受領した手付金300万円をそのまま返還して、さらにあわせて300万円を用意することで契約を解除できます。ただし、買主に明確な契約違反があった場合、手付倍返しが不要とされるケースもあるようです。
鑑定士コメント
手付解除期日以降に契約解除したらどうなるのでしょうか?手付金を買主に返還したうえで違約金を支払います。付解除期日以降であっても買主の合意があれば契約解除が可能ですが、売主による一方的な契約解除は認められていません。売主が不動産会社であれば、債務不履行による契約解除の損害賠償額は売買代金の20%が上限とされます。違約金の具体的な金額は売買契約書に記載するのが一般的です。
買主の場合
買主が手付解除を行う場合、受け渡した手付金をそのまま支払います。「手付放棄」といわれており、手付解除期限以内など条件が揃っていれば、手付金を売主に渡すことで契約の解除が可能です。
例えば手付金として300万円を支払った場合、その300万円がそのまま売主のものとなります。手付解除をした場合でも売買契約は成立しており、売主に支払う仲介手数料をあわせて支払う必要があります。
契約は、手付解除期日以降や売主が履行に着手していない段階でないと解除できません。また、手付解除期日以降に買主から契約を解除するときは、手付金の放棄とあわせて違約金を支払う必要があります。
ただし、住宅ローン特約や買い換え特約をつけていれば、買主の申し出による手付解除であっても手付放棄や違約金の支払いは不要です。手付金はそのまま返還されます。この場合、契約が成立しなかったとされるため、仲介手数料も発生しません。
鑑定士コメント
住宅ローン特約を結び、その後に審査が通らなかった場合はどうなるのでしょうか?住宅ローン特約がある場合、融資審査が通らなくても手付放棄や違約金は発生しません。買主から契約解除を申し込めば、手付金はそのまま返還されます。買主が住宅ローンを借りる場合、売買契約書で住宅ローン特約を定めることが一般的です。住宅ローン特約では融資審査がおりなかったときの契約解除期日を定めており、期日までに通らなければ手付放棄を行わなくても契約を解除できます。ただし、申し込みをしないなど故意に住宅ローンを借りなかったと判断されるケースでは、住宅ローン特約による契約解除はできませんので注意しましょう。
手付解除手続きの流れ

手付解除手続きの流れ
手付解除手続きはおおむね次の手順で実施します。
1.不動産の会社に相談する
2.売主または買主に手付解除を伝える
3.書類を作成して通達する
4.手付放棄か手付倍返しを行う
手付解除を行う際は、なるべく早く不動産会社の担当者に相談しましょう。手付解除期日前や契約履行を着手する前に、手続きを終わらせる必要があります。
売主もしくは買主に、電話で手付解除手続きを行いたいことを通知してください。口頭だけだとトラブルにつながるため、伝えたあとは書類を作成して通達します。確実に通達したことを証明できるように、配達証明付きの内容証明郵便で発送するとよいでしょう。
あとは手付放棄や手付倍返しを行えば、売買契約の正式な解除は完了です。売主からの手付解除の場合は、通達のあとに買主の銀行口座を確認して、振込手続きを行ってください。
まとめ:手付解除は期日を決めてスムーズな契約を進めよう

まとめ:手付解除は期日を決めてスムーズな契約を進めよう
手付解除では、手付放棄もしくは倍返しによる不動産の契約解除が可能です。売主は受け取った手付金の倍額を支払い、買主はそのまま渡すことで手付解除が成立します。
ただし、手付解除には手付解除期日が設けられているため注意が必要です。手付解除期日以降に契約解除を行う場合、住宅ローン特約などの例外を除いて違約金を支払うことになります。
手付解除期日は「契約相手が契約の履行に着手するまで」とされていますが、売主と買主で解釈の違いが発生する可能性があります。契約の解除ができないなどのトラブルを防止するために、具体的な手付解除期日を定めることが大事です。
必ず売主と買主の双方が合意したうえで手付解除期日を設定しましょう。手付解除が必要になったときスムーズに手続きが行えるように、基本的な知識を確認しておくと安心です。

不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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