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更新日:2024.09.12
登録日:2023.08.21
瑕疵とは?隠れた瑕疵や瑕疵担保責任についてわかりやすく解説
「購入した物件に欠陥が見つかったけれど、どうするべき?」
「不動産売買でよく聞く瑕疵って何?」
このような疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。土地や物件の購入は人生で1番高い買い物でもあり、後悔しない物件を選びたいものです。
不動産における瑕疵とは、土地や建物の不具合や欠陥のことを指します。これらは購入前に事前に告知されるのが一般的です。
もし、告知されていなかった、売主も知らなかった欠陥があった場合は買主はその欠陥に対して補修や損害賠償を請求できます。
この記事では、瑕疵について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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瑕疵(かし)とは
瑕疵とは
瑕疵(かし)とは、「傷や欠点、欠陥のこと」を指す言葉です。法律においては、代理行為や占有、意思表示、契約の目的物などについて問題があることを指します。
例えば購入したものが故障していた、実は盗難品だった、契約に定められた品質よりも劣っているなどの場合です。
なお、不動産領域においては、土地や建物に不具合や欠陥があった場合を「瑕疵」と呼びます。
法律において瑕疵が問題となる場面
法律において瑕疵が問題となる場面
瑕疵という言葉は、法律用語としても用いられます。民法上で問題とされる瑕疵は、以下の5つです。
・意思表示の瑕疵
・代理行為の瑕疵
・占有の瑕疵
・契約の目的物の瑕疵
・土地工作物の設置・保存の瑕疵
それぞれの内容について、詳しく解説します。
意思表示の瑕疵
意思表示の瑕疵とは、取り引きなどにおける意思表示に問題があることです。民法の第96条には、以下2点が動機となる意思表示については取り消すことができるとあります(※)。
・詐欺
・強迫
それぞれの内容について紹介します。
※参照:民法 第96条
詐欺
詐欺とは、相手をだまして取り引きなどの判断を誤らせることです。例えば、土地の売主側が都合の悪い内容を隠して、実際より高値で相手に購入を促すことは詐欺にあたります。
だまされて取り引きを決定した場合の意思表示は、取り消すことが可能です。ただし、詐欺行為と意思表示との間に因果関係があり、社会一般的に違法性があると認められる場合に限られます。
強迫
強迫は、相手に恐怖を与えることで本心とは異なる意思表示をさせることです。例えば、取り引きしなければ危害を加えるなどと脅し、相手に不動産の購入・売却などを決定させれば強迫にあたります。
強迫による意思表示も、双方に因果関係がある場合に限って取り消すことが可能です。強迫を受けた者が恐怖を感じなかった場合は、因果関係がないとされ取り消しはできません。
代理行為の瑕疵
代理行為の瑕疵とは、本人の代理人が行った意思表示に問題があることです。民法では、代理行為に瑕疵があった場合、本人ではなく代理人について判断するとしています(※)。
例えば、代理人がだまされて何らかの意思表示をした場合、代理人に対しての詐欺が成立していれば取り消すことが可能です。反対に、代理人が詐欺を働いて取り引きした場合、本人がその事実を知らなくても相手方はその取り引きを取り消せます。
※参照:民法 第101条
占有の瑕疵
占有の瑕疵
占有の瑕疵とは、物の占有を開始したときに問題があることです。占有開始時の問題には、以下の5つが挙げられます。
・占有者が所有の意思を持っていない
・占有開始時の状況が平穏でない
・占有の開始を公然としていない
・善意のもとで占有を開始していない
・占有するに際して過失がある(他人のものと知りながら占有を開始したなど)
民法の第162条では、上記5つの瑕疵がない占有であれば、10年経つと所有権を取得できるとしています。占有開始時に悪意や過失があれば、20年間平穏かつ公然と自分の意志で占有を続けたときに限り、所有権の取得が可能です(※)。
また、民法の第187条によると、占有を継承した場合は前の占有者の瑕疵も引き継がれます。前の占有者に所有の意志がなければ、継承者も所有の意志を持たないと見なされる点には注意しましょう(※)。
※参照:民法 第162条・第187条
契約の目的物の瑕疵
契約の目的物の瑕疵とは、売買・請負などの契約に基づいて引き渡された目的物が、契約時の内容とは異なっていることです。例えば、引き渡された物の品質・種類・数量が契約どおりではない場合などが挙げられます。
契約の目的物に瑕疵があれば、売主は買主に対して契約不適合責任を負わなければなりません。契約不適合によって買主に損害が生じた場合、売主は買主から損害賠償請求や契約解除などを求められる可能性があります(※)。契約不適合責任についての詳細は後述するので、参考にしてください。
※参照:民法 第三節・第二款
土地工作物の設置・保存の瑕疵
土地工作物の設置・保存の瑕疵とは、工作物に本来備えているべき安全性が欠けているなどの問題があることです。土地工作物とは、民家・公共施設・道路・橋などを含む人工的な設備を指します。
土地工作物の設置・保存の瑕疵によって他人に損害が生じると、工作物の占有者は被害者に対して損害賠償責任を負う決まりです。なお、占有者が防止策を講じていたにもかかわらず損害が発生した場合は、占有者ではなく所有者が損害賠償責任を負うことになります(※)。
※参照:民法 第717条
隠れた瑕疵とは
隠れた瑕疵とは
隠れた瑕疵とは、土地や建物の購入時に買主が知らなかった・発見できなかった瑕疵のことを指します。生活してから気づく欠陥は隠れた瑕疵と呼べるでしょう。
シロアリや雨漏り、アスベスト、床下浸水など生活してはじめて気づく欠陥、購入時に注意深く見ていたにもかかわらず発見できなかった欠陥はすべて、隠れた瑕疵です。
また、「心理的瑕疵」もあります。過去に嫌悪感を持つような出来事があった土地や建物のことを指します。
例えば「自殺者がでた」「孤独死があったなど」の事故物件などが当てはまります。さらに物件の周囲で事故や事件があったケースなどもふくまれます。これらは事前に売主が買主に伝えておくべき事柄です。
瑕疵物件とは
瑕疵物件とは
瑕疵物件とはいわゆる「訳あり物件」のことです。該当の土地や建物に不具合や欠陥があった場合を「瑕疵物件」と呼びます。
瑕疵と認められる具体的な欠陥は以下のとおりです。
・シロアリ
・アスベスト
・床下浸水
・雨漏り
本来の機能や性能が損なわれている場合も、瑕疵とされます。例えば、屋根や壁は本来雨や風をしのげる性質を持ったものです。雨漏りがする場合は、その基本的な性能を果たしていません。そのため、瑕疵物件と認められます。
瑕疵物件については以下の記事でも詳しく解説しています。
5つの瑕疵の種類
5つの瑕疵の種類
瑕疵には、以下の5つの種類があります。
・権利の瑕疵
・物理的瑕疵
・心理的瑕疵
・法律的瑕疵
・環境的瑕疵
それぞれの内容について、詳しく説明します。
権利の瑕疵
権利の瑕疵とは、売買等の契約において、売主が目的物の完全な所有権を持っていないことです。第三者が所有している土地だった場合、買主は本来の目的で土地・建物を利用できません。
民法では、売買の目的が他人の権利である場合、前提として売主がその権利を取得していなければならない決まりです(※)。権利の瑕疵があれば売主に対して担保責任が認められ、損害賠償や契約解除を請求される可能性があります。
権利の瑕疵の具体例は以下のとおりです。
・購入した中古車が盗難車だった
・第三者が購入した土地の借地権や地上権を持っていた など
※参照:民法 第611条
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、購入物の物理的な欠陥のことです。品質・数量・種類が契約内容より劣っているなどが当てはまります。
なお、建物の経年劣化については物理的瑕疵に含まれません。建物の完成時点での欠陥のみが物理的瑕疵と認められる点には注意しましょう。
不動産売買においては、具体的に以下のような状態を指します。
心理的瑕疵
心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、買主が購入物に対してストレスを感じるような欠陥のことです。主に不動産の売買において、問題が発生することが多いです。
心理的瑕疵は言葉のとおり、直接建物の機能などに関わる欠陥ではありません。しかし、買主が知らずに購入してあとから発覚した場合、トラブルになり契約不適合責任を問われるケースもあります。売主が把握している心理的瑕疵は、販売時点で伝えておくことが大切です。
不動産の売買契約においての心理的瑕疵は、主に以下のような例が挙げられます。
・過去に自殺や他殺があった
・孤独死が一定の期間放置されていたことがある
・迷惑行為をする人が近所に住んでいる
・火災や災害等による事故があった など
法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、購入物に法律的な問題があることを指します。法律的瑕疵も不動産の売買において、問題が起きることが多いです。
法律的瑕疵のある土地・建物を購入すると、希望の建物を建てられなかったり、住宅ローンを組めなかったりする場合があります。取り引き完了後に発覚すると大きな問題となる可能性もあるため、売主・買主ともによく確認しておきましょう。
法律的瑕疵の具体例は、以下のとおりです。
・建築基準法違反
・防火扉や避難ハシゴなどの設置義務違反
・認められていない場所に建てられている
・接道義務違反
・市街化調整区域による制限がある など
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、対象の建物の周辺環境に問題があることです。環境的瑕疵と認められる基準に、明確な決まりはありません。
あくまでも居住者が不快と感じるかどうかがポイントになるため、売主側が些細だと思うことでも伝えておくほうがよいでしょう。
具体的には、以下のような例が挙げられます。
・異臭や騒音、振動の原因がある
・周辺建物によって日当たりや眺望などが妨げられている
・近隣に墓地・火葬場・ゴミ処理場などの嫌悪施設がある など
なお、瑕疵物件については以下の記事でも詳しく解説しています。より詳しく知りたい方はこちらも確認してください。
鑑定士コメント
瑕疵がある物件は買主は事前に知ることができるでしょうか?売却する不動産に瑕疵がある場合、売主は買主に告知する義務があります。売主は把握している瑕疵があるのに事前に告知しておかないと、契約不適合責任を負う可能性があります。また、仲介をする不動産会社には重要事項説明にて説明義務があるため、把握している瑕疵については事前に告知してもらえる仕組みです。
瑕疵担保責任とは
瑕疵担保責任とは
瑕疵担保責任とは、瑕疵に対して売主が責任を負うことを指します。たとえば、雨漏りや水漏れなどが起きた際には、それらを防ぐ・修繕するための費用および、雨漏りや水漏れによって受けた損害賠償を負担することです。
瑕疵担保責任は、2020年4月に「契約不適合責任」に変更されました。名前が変わった際、いくつかの内容が変更されています。変更された点は以下のとおりです。
信頼利益とは、契約が無効であるにもかかわらず、有効だと信じたことで受けた損害のことです。瑕疵担保責任は、物件の引き渡しまたは、施工完了したタイミングで期間が定められていました。しかし、契約不適合責任では瑕疵を発見したタイミングで責任を負う期間がはじまります。
つまり不動産の購入後、数年経過してから瑕疵を発見した場合でも売主は責任を負わなければいけません。
また、損害賠償の請求範囲も拡がっています。契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いや期限や買主の権利について解説
契約不適合責任とは
契約不適合責任とは
前述で解説したとおり、瑕疵担保責任は契約不適合責任に改められました。瑕疵があった場合、売主は責任を負う法的責任があります。
下記のとおり契約不適合責任についてより詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
・契約不適合責任で買主が請求できる5つの権利
・契約不適合責任の追及期間
契約不適合責任で買主が請求できる5つの権利
契約不適合責任で買主が請求できる5つの権利
契約不適合責任で買主が請求できる権利は以下のとおりです。
・追完請求
・代金減額請求
・損害賠償請求
・催告解除
・無催告解除
買主にこれらの権利はあるものの、不動産の売買契約書の容認事項に契約不適合責任の対象外とする事項がある場合があります。その契約に同意している場合、記載事項については請求ができません。
不動産を購入する際には、容認事項や特約がないか事前に確認しておきましょう。
それぞれの項目について詳しく解説していきます。
※参照:民法 第562条
追完請求
追完請求とは、契約内容と異なる部分があった場合、その不足分の請求ができる買主の権利です。たとえば、「水漏れは無い」との契約内容で売買契約したにもかかわらず、水漏れが発生した場合は、売主に補修、損害賠償を請求できます。
不動産購入後に欠陥を発見した場合、売主に「直して欲しい」と要求できる権利と覚えておくといいでしょう。ただし、契約内容に欠陥が記載されており、事前に確認してから購入した場合は、この権利は利用できません。
代金減額請求
代金減額請求とは、追完請求をしても売主が補修をしてくれない、または補修が困難である場合に売買代金の減額を請求できる権利です。
追完請求の補助的な権利であり、あくまで追完請求をしても補修や修繕をしてくれない場合にのみ利用できます。
損害賠償請求
損害賠償請求
損害賠償請求とは、売主に責めるべき事由があった場合、損害賠償を請求できる買主の権利です。ただし、売主に責めるべき事由が無い場合は、損害賠償義務は発生しません。請求できる範囲は信頼利益と履行利益の2つとなります。
催告解除
催告解除とは、追完請求をしたにもかかわらず売主が応じない場合、買主が契約を解除できる権利です。追完請求に応じず、代金減額請求をする気がない、納得できない場合購入をやめることができるものを指します。
この権利を使えば、契約を無かったことにできるため売買代金が返ってきます。こちらも売主に責めるべき事由があった場合にのみ利用できる権利です。
無催告解除
無催告解除とは、催告せずに契約を解除できる権利です。ただしこの権利が使える範囲、状況は限られています。
「契約不適合によって契約目的を果たせないとき」のみに利用可能です。つまり、契約の目的が果たせる状態で無催告解除は請求できません。
また、これらの権利は瑕疵を発見してから1年以内であれば請求できます。売買契約から数年経過していても利用できる権利のため覚えておきましょう。
鑑定士コメント
「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと変わったことで大きく変化したポイントは何でしょうか?本文に説明のあるとおり、買主が請求可能な権利と範囲が増え、請求期間の負担も軽減されました。買主にメリットが大きい権利と考えられますが、事前に瑕疵について告知し納得して売買契約していれば、売主側はこれらの請求をされる可能性は低くなりますので、円滑な取引のために双方にメリットがあるでしょう。
契約不適合責任の追及期間
契約不適合責任の追及期間
契約不適合責任の追及期間は、対象となる住宅が中古か新築か、中古であれば売主が個人か不動産会社かによって異なる点に注意しましょう。
中古住宅の場合、売主の違いによる瑕疵保証の請求可能期間は以下のとおりです。
物件の瑕疵発見時に適用される瑕疵保証とは
物件の瑕疵発見時に適用される瑕疵保証とは
瑕疵保証とは、買主が購入時に知らなかった瑕疵を発見した場合、売主が買主に対して補修費用や損害を保証するものです。欠陥を知らずに不動産を購入した場合に適用されます。
民法上、売主は買主に対して契約不適合責任を負う決まりです。売買契約のなかで問題があれば、買主は瑕疵保証を理由に、売主に対して損害賠償や修繕費用などを請求できます。また、売主はその要望に対応しなければなりません(※)。
※参照:民法 第562条
瑕疵保証については以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
品確法にもとづく瑕疵担保責任
品確法にもとづく瑕疵担保責任
品確法とは「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略で、住宅の性能の表示基準や、新築住宅の売主への瑕疵担保責任について定めたものです。
品確法では、新築住宅購入時の瑕疵保証の請求期限は、引き渡しから10年間となります。ただし、品確法における瑕疵保証の対象は、壁・柱・屋根などの基本構造部分のみとなる点に注意しましょう(※1)。
新築住宅の基本構造部分以外の瑕疵については、品確法ではなく宅地建物取引業法が適用される場合があります。宅建業法による瑕疵保証の請求期限は、先述のとおり引き渡しから2年間です。(※2)。
※1参照:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」
※2参照:宅地建物取引業法 第40条
まとめ:瑕疵がないかどうか購入前の入念なチェックが重要
まとめ:瑕疵がないかどうか購入前の入念なチェックが重要
購入した不動産に瑕疵があった場合、売主に補修費用や損害賠償を請求できます。しかし、せっかく購入した不動産に瑕疵が見つかると残念な気持ちになります。できれば瑕疵の無い不動産を購入したいものです。
購入予定の不動産に瑕疵が無いかどうかは、事前にしっかりチェックしておきましょう。何度も内見に行き、雨漏りや異臭、騒音が無いかなど確認しておくのがおすすめです。
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不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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