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更新日:2023.07.20
登録日:2023.07.20
抵当権抹消とは?手続きを自分で行う方法と必要な費用を解説
マンションなどを購入する際、多くの人が住宅ローンを利用するでしょう。住宅ローンを契約する際、ほとんどの場合「抵当権」というものが設定されます。また、住宅ローンを完済すると「抵当権抹消」を行う必要があります。では、抵当権・抵当権抹消とはどのようなものなのでしょうか。
本記事では、抵当権・抵当権抹消とは何か、自分で手続きを行う際の手順や必要な費用について詳しく解説します。抵当権抹消が必要な場面や注意すべきポイントについても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
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抵当権とは
抵当権とは
抵当権とは、住宅ローンを契約する際に貸付を行う銀行などの金融機関(債権者)が土地や建物を担保にできる権利です。住宅ローンの返済が滞るなど、必ずしも返済がスムーズに進むとは限りません。万が一お金を借りている側(債務者)がローンを支払えない状態になってしまうと、金融機関は大きな損害を被る可能性があるでしょう。
住宅ローン契約の際に抵当権を設定しておくことで、債務者が返済できなくなっても不動産を差し押さえて競売にかけることができます。住宅ローンの残金の返済は、不動産の売却代金から充当することになります。債務者が滞りなくきちんと返済していれば、抵当権が実行されることはありません。
抵当権抹消とは
抵当権抹消とは
抵当権抹消とは、言葉の通り不動産に設定された抵当権を抹消することです。抵当権は、住宅ローンを全額返済した場合でも自動でなくなることはありません。そのため、抵当権抹消を行うにはかならず手続きが必要です。
抵当権を抹消するためには登記が必要であり、これを抵当権抹消登記と言います。抵当権抹消登記を行うことで、登記簿上から抵当権を抹消することが可能です。
抵当権抹消は、司法書士に依頼するか自分で書類を作成して法務局で手続きを行うかの2つの方法があります。司法書士に依頼する場合、不動産によって異なりますがおよそ数万円の費用が発生します。
抵当権抹消が必要になる場面
抵当権抹消が必要になる場面
抵当権抹消は、住宅ローンの完済後任意のタイミングで行うことができます。ただし、抵当権を抹消していなければならない場面もあるため注意が必要です。抵当権抹消が必要になるのは、主に下記のような場面です。
・不動産を売却する
・新規のローンを契約する
・不動産を相続する
抵当権を抹消していないと、住宅ローンが残っている不動産と判断されてしまいます。そのため、不動産を売却できません。また、他のローンが残っていると判断されている状態では、新規のローンが通りにくくなってしまうでしょう。
また、住宅ローンを完済する前に不動産を売却したり借り換えなどを行ったりする人もいるかもしれません。その場合は、売却や借り換えと同時に抹消手続きを行うことになります。
抵当権抹消をしないとどうなるか
抵当権抹消をしないとどうなるか
不動産の売却を行わずに住み続ける場合、抵当権抹消手続きを行っていなくても特に問題は発生しません。抵当権抹消登記が残っている場合でも、住宅ローンを完済していれば債権者側の抵当権は消滅しているからです。しかし、長期間抵当権抹消手続きを行わず登記が残っていると、不動産の売買などを行おうと思ったときに必要以上の手間がかかる可能性があります。
一般的に、住宅ローンを完済すると住宅ローンの貸付元の金融機関などから抵当権を抹消するために必要な書類が送られてきます。しかし、基本的にそれらの書類には有効期限が定められているため、期間内に手続きを行わなければ書類を利用できなくなります。再度自分で書類を取得する必要があるため、手間や追加の取得費用が発生してしまうでしょう。
また、抵当権を抹消する前に不動産の所有者がなくなってしまった場合や、併合などによって貸付元の金融機関などがなくなってしまった場合もあります。そうなると、必要な手続きが増えてさらに時間がかかってしまうでしょう。
抵当権抹消手続きを自分で行う手順
抵当権抹消手続きを自分で行う手順
抵当権抹消手続きは、自分で行うことが可能です。ここでは、自分で手続きを行う場合の手順について詳しく解説します。
・必要な書類を準備する
・登記事項証明書を取得する
・登記申請書を作成する
・法務局へ申請する
必要な書類を準備する
先述した通り、抵当権抹消に必要な書類は貸付元の金融機関などから住宅ローンを完済したタイミングで送られてきます。なお、必要な書類は下記の3つです。
・抵当権解除証書(弁済証書や放棄証書など金融機関によって名称が異なる)
・登記済権利証または登記識別情報通知
・委任状
抵当権解除証書とは、住宅ローンが返済されたことを証明する書類です。また、登記済権利証または登記識別情報通知は、不動産登記が完了した際に発行される書類です。基本的に、金融機関で保管されて住宅ローンが返済された際に債務者に送付します。
抵当権抹消手続きは、債権者と債務者の双方で行う手続きです。そのため、債務者側で手続きを行う場合、債権者である金融機関などの委任状が必要になります。
登記事項証明書を取得する
抵当権抹消には、登記事項証明書が必要です。登記事項証明書とは、法務局の登記簿に記録された不動産の情報を記載した証明書です。登記事項証明書は、不動産の所在地に関係なく日本全国の法務局で取得できます。
登記事項証明書を取得する際は、建物の場合は「屋号」、土地の場合は「地番」が必要です。万が一屋号や地番がわからない場合でも、法務局で不動産の住所を伝えると教えてもらうことができるため確認しましょう。
登記事項証明書は、法務局に設置された交付申請書に必要事項を記入することで申請できます。また、オンラインでも申請できるため、手続きが行いやすい方法で取得しましょう。
登記申請書を作成する
抵当権抹消は登記の内容を変更するため、登記申請書を作成する必要があります。登記申請書とは、登記された不動産情報に変更があった際に必要な書類です。抵当権抹消のほか、相続などの場面でも必要になります。
登記申請書は、法務局に設置されています。また、インターネット上でもダウンロードできるため、自宅などで作成することも可能です。登記申請書には、下記のような項目があります。
・登記の目的
・登記の原因
・権利者(債務者)
・義務者(債権者)
・申請年月日
・提出する法務局
・申請人兼義務代理人
・不動産の表示
法務局へ申請する
必要書類の準備ができて登記申請書を作成したら、法務局に申請を行います。総務局への申請方法は、窓口で直接受け渡す方法と郵送する方法があります。また、委任状に「登記識別情報の暗号化に関する件」の委任事項がある場合は、オンラインでの申請も可能です。
オンラインで申請する場合、申請後に必要資料の原本を法務局に持参または郵送する必要があります。書き方や資料についてわからないことがある場合は、法務局で直接申請するのがおすすめです。不安な場合や申請書に不備があった場合に、すぐに確認や訂正ができます。
登記申請は審査が行われ、申請してから登録されるまでは1〜10日ほどかかるため、余裕を持って申請しましょう。
鑑定士コメント
不動産が共有名義になっている場合はどうすればよいでしょうか。不動産が共同名義になっている場合でも、共有者のうちの1人だけで同じ手順で抵当権抹消手続きが行えます。ただし、土地や建物全てが共有名義である必要があります。例えば、建物はAとBの共有名義だが土地はAが単独で所有している場合、B単独で抵当権抹消手続きを行うことはできません。
抵当権抹消に必要な費用
抵当権抹消に必要な費用
ここでは、抵当抹消を行う際に必要な費用について解説します。手続きでは、主に下記のような費用が発生します。それぞれどのような費用か、おおよその金額について詳しく見ていきましょう。
・登録免許税
・登記情報費用
・司法書士への報酬
登録免許税
登録免許税とは、登記手続きを行う際に納める税金です。抵当権を抹消するには、登記簿謄本から抵当権の記載を抹消する必要があるため登記手続きが必要です。
登録免許税の金額は、登記手続きを行う不動産1件に対して1,000円とさだめられています。なお、20件を超える場合は一律20,000円です。(※)
一般的にマンションは土地と建物で分けて考えられているため、2,000円の費用が発生します。また、マンションによっては敷地がまたがって存在する場合もあるため手続きを行う不動産がいくつあるかを事前に確認しておきましょう。
※参照:法務省
登記情報費用
登記事項証明書など、登記情報を取得する際にも費用が発生します。登記事項証明書の発行費用は、発行方法によって金額が異なります。それぞれの発行費用は、下記のとおりです。
※参照:法務省
登記事項証明書は、抵当権抹消手続きのために取得するほか、手続き後に抵当権が抹消できているかを確認するために発行することもあります。できるだけ費用を節約したい場合は、オンライン請求がおすすめです。
司法書士への報酬
抵当権抹消手続きを司法書士に依頼する場合、登録免許税や登記情報費用とは別に司法書士への報酬が必要です。抵当権抹消手続きの依頼報酬は決められていないため、依頼する司法書士や地域によって異なります。
報酬金額は、一般的に14,000〜19,000円(※)ほどになることが多いです。報酬金額がいくらになるのかは、依頼前に司法書士に確認しておきましょう。
※参考:日本司法書士連合会
鑑定士コメント
抵当権の抹消を司法書士への依頼がおすすめなのは、どんなケースでしょうか。司法書士に依頼するもっとも大きなメリットは、プロに任せるため、自分で慣れない手続きを行わなくてよいということです。そのため、手続きに自信が無い方、忙しく手続きを行う暇がない人は司法書士への依頼がおすすめです。特に、住宅ローンが残っている状態での売却決済など、大事な局面で抵当権抹消手続きが複雑になる場合も司法書士に依頼することでスムーズに手続きが行えます。
抵当権抹消手続きをするときに注意するポイント
抵当権抹消手続きをするときに注意するポイント
抵当権抹消手続きを行う際、下記のような注意するポイントがあります。それぞれどのようなことに注意する必要があるのか、詳しく解説します。
・住所や氏名に変更があったとき
・相続と同時に抵当権抹消手続きをするとき
住所や氏名に変更があったとき
転居や結婚などによって住所や氏名に変更があった場合、必要な手続きが増えるため注意が必要です。住所や氏名が不動産の登記簿謄本の内容と異なる場合、抵当権抹消手続きと同時に変更があった内容の登記申請も行わなければなりません。
住所に変更があった場合、登記申請書に不動産登記を行なった住所から現在の住所に至るまでの転居履歴が確認できる住民票を添付する必要があります。また、氏名に変更があった場合は、戸籍謄本などの戸籍関係書類が必要です。住所や氏名も同時に行う場合は、事前に必要な書類を準備しておきましょう。
相続と同時に抵当権抹消手続きをするとき
抵当権抹消を行う前に不動産の所有者が亡くなってしまった場合、相続登記と抵当権抹消手続きを同時に行う必要があります。しかし、状況によって相続登記と抵当権抹消手続きの順序が異なるため注意が必要です。手続きの順序は、住宅ローンなどの債務が残っているか残っていないかで判断できます。
債務が残っていない場合は、抵当権抹消手続きから行います。債務を完済した時点で抵当権そのものは消滅しているため、不動産名義は被相続人のままでも手続きが可能です。一方、債務が残っている場合はまず相続登記を行う必要があります。保険の団信によって債務を完済した場合も、相続登記後に抵当権抹消手続きを行います。
まとめ:抵当権抹消は早めに手続きを開始しよう
まとめ:抵当権抹消は早めに手続きを開始しよう
抵当権とは、金融機関などの債権者が不動産を担保にできる権利です。基本的に、住宅ローンを利用する場合は抵当権が設定されます。抵当権は住宅ローンを完済した時点から抹消手続きを行えますが、かならず完済と同時に行う必要はありません。
ただし、抵当権抹消手続きを行っていないと、不動産売却の際に手続きが複雑になるなどのデメリットがあります。住宅ローンの完済時に契約した金融機関から申請書類が送られてくるため、できるだけ早めに抵当権抹消手続きを行いましょう。
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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