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2023.08.21
抵当権と根抵当権の違いとは?間違いやすいポイントを徹底解説

住宅ローンの契約などの際、「抵当権」という言葉をよく耳にします。抵当権と似たような言葉として「根抵当権」というものがあります。一方、根抵当権はあまり聞きなれない言葉であるため、「どのような権利かわからない」「抵当権と何が違うのか」と思う人も多いのではないでしょうか。
本記事では、根抵当権とはどのような権利なのか、対象となる債権や範囲など、抵当権との違いについて詳しく解説します。抵当権と比べた際のメリットについても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
抵当権と根抵当権とは

抵当権と根抵当権とは
抵当権と根抵当権はどちらも似たような言葉ですが、異なる権利です。ここでは、抵当権と根抵当権はそれぞれどのような権利なのか、詳しく解説します。
抵当権とは
抵当権とは、住宅ローンで融資を行う金融機関が、借入を受ける人が購入する不動産などをローンの担保として設定する権利のことです。
担保となる不動産などは債務者が利用できますが、もしローンを返済できなくなった場合は、代わりに担保に設定された不動産を金融機関に差し押さえられます。
なお、抵当権については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
抵当権とは?根抵当権との違いや押さえておきたい基本知識をわかりやすく解説
根抵当権とは
根抵当権とは抵当権の一種であり、複数回の貸付・借入を行う契約において利用されます。根抵当権では、担保となる目的物から貸付の限度額を定め、その範囲内で貸付・借入を行います。
抵当権は、一度の貸付・借入ごとに設定する必要があり、同じ債務者・債権者同士で契約を行う場合でも、その都度抵当権を設定しなければなりません。しかし、根抵当権であれば、貸付限度額の範囲で何度でも貸付・借入を行えます。
根抵当権は、住宅ローンなどの一般的なローンで採用されることは少ないでしょう。主に、会社や経営者が事業資金の融資を受けるために、所有する不動産を目的物として設定して借入を行う場合が多いです。
抵当権と根抵当権の違い

抵当権と根抵当権の違い
抵当権と根抵当権の違いとして、下記5つがあります。それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
・対象となる債権の違い
・権利の移譲の違い
・連帯債務者の違い
・登記にかかるコストの違い
・優先弁済の範囲の違い
対象となる債権の違い
抵当権では対象となる債権が明確であるのに対し、根抵当権は不明確であるという違いがあります。
例えば、住宅ローンの場合は不動産の価格が決まっているため、借入金額や返済の期間などが契約の時点で明確に定まっています。
しかし、根抵当権は債権者と債務者との間で貸付限度額は定めるものの、借入額や返済期間は貸付・借入の都度設定します。そのため、根抵当権では、債権が明確ではありません。
権利の移譲の違い
抵当権と根抵当権では、権利の移譲にも違いがあります。抵当権の場合、貸付・借入する金額、返済期間が定まっています。そのため、債権者は債務者の許可なく権利を移譲することが可能です。
しかし、根抵当権では元本確定の手続きを行うまでは、権利を移譲する際に債務者の許可を得る必要があります。元本確定とは、新たな取引を行わないことを前提に債権額を確定する手続きです。
根抵当権では、抵当権のように貸付・借入金額や返済期間が定まっていないため、都度返済などの調整を行わなければなりません。権利を債務者の許可なく移譲してしまうと、債務者が誰と調整を行うかがわからなくなってしまいます。そのため、根抵当権は権利を移譲する際に債務者の許可が必要です。
連帯債務者の違い
抵当権は連帯債務者を設定できるのに対し、根抵当権は連帯債務者を設定できません。連帯債務者とは、債務者とともに返済義務を負った人のことです。
例えば、債務者のAさんに加えてBさんを連帯債務者として設定すると、万が一Aさんが返済できなくなってしまった場合、Bさんに返済を求めることができます。根抵当権の場合は返済額や期間が不明確なため、元本確定前の時点では連帯責任者を設定することが難しいです。
登記にかかるコストの違い
抵当権と根抵当権では、登記にかかるコストが違います。抵当権の場合、取引の都度登記をしなければなりませんが、根抵当権は初めに登記しておけばその後何度でも取引が可能です。例えば、10回取引を行う場合、根抵当権を設定していれば初めの1度登記を行うだけとなります。しかし抵当権では、10回の取引においてそれぞれ抵当権を設定しなければなりません。
抵当権の登記では、登録免許税や司法書士に依頼する場合は、その依頼料などさまざまなコストがかかります。そのため、事前に何度も取引を行うことがわかっている場合は、根抵当権を設定しておくことでコストを抑えてスムーズに取引が可能です。
優先弁済の範囲の違い
優先弁済とは、複数の債権者が同一の担保から弁済を受ける際に優先して弁済を受けることです。確定した元本や利息、損害金などの弁済について、設定された貸付限度額上限まで優先弁済を受けられます。一方、抵当権では満期となった最後の2年分までしか優先弁済を受けられません。
鑑定士コメント
一般消費者が「根抵当権」を設定する場合はある?根抵当権は、主に会社や経営者への事業資金の際に設定されます。しかし、場合によっては一般消費者に設定されることもあります。例えば、土地と建物を別々で購入する場合は支払いが別れるため、根抵当権を設定して一度の契約で複数回の貸付を受けることができます。
根抵当権の極度額とは

根抵当権の極度額とは
極度額とは、根抵当権で担保として設定された目的物の価値をもとに定められた弁済上限額のことです。根抵当権は不特定の債権を担保するために不動産に設定する権利であるため、事前に極度額を設定しておく必要があります。
一般的に、極度額は貸付上限額の1.2~1.4倍で設定されます。返済が滞ってしまうと、利息や損害が発生します。利息や損害を回収するために、貸付上限額よりも高い金額が設定されるのです。
根抵当権を変更する際は、債務者の承諾が必要です。元本確定後は、現在の債権の額と以後2年間に生じる利息や損害賠償の合計額を合わせた額に減額できます。
また、根抵当権が設定された不動産を第三者が取得した場合、元本確定後の債務額が極度額を超えている場合でも極度額を支払うことで抹消できます。
根抵当権のメリット

根抵当権のメリット
根抵当権には、抵当権と比較して下記のようなメリットがあります。それぞれどのようなメリットか、抵当権との違いをもとに解説します。
・極度額の範囲内で反復借り入れできる
・さまざまな債権を担保できる
・手間と手数料が節約できる
極度額の範囲内で反復借り入れできる
根抵当権は、1度設定するとその後は反復して借り入れが可能であり、その都度抵当権を設定する必要はありません。そのため、急に資金が必要になった場合でもスムーズに借入を行えます。
さまざまな債権を担保できる
根抵当権を設定することで、さまざまな債権を担保できます。抵当権の場合は不動産購入の債権の担保になりますが、根抵当権では銀行取引や手形又は小切手上の債権など、担保にできる債権範囲が広いため、より柔軟に活用できます。
手間と手数料が節約できる
根抵当権は抵当権に比べて手間と手数料を節約できます。抵当権は取引の都度登記を行わなければなりませんが、根抵当権は1度登記するだけで複数回取引可能です。そのため、根抵当権であれば、取引回数が増えるほど手間と手数料などのコストを節約できるでしょう。
登記のコストとしては、登録免許税や司法書士への依頼料などがあります。登録免許税のコストは「借入額✕0.4%」(※1)、司法書士への依頼料は依頼する司法書士事務所や借入額などにもよりますが数万円(※2)はかかります。
また、自身で登記手続きを行う場合は司法書士への依頼料は発生しませんが、法務局へ行って登記申請書を作成するなどの手間がかかります。根抵当権であればこれらの手間や手数料などのコストを最小限に抑えられるでしょう。
※1参照:財務省
※2参照:日本司法書士連合会
鑑定士コメント
根抵当権のデメリットはあるのでしょうか?根抵当権は、債権が不明確なことから返済が終わっても担保権が消滅しません。抵当権とは異なり、根抵当権は抹消手続きを行う前に債権者との間で契約解除の手続きを行う必要があるため、抹消手続きが複雑になるというデメリットがあります。
まとめ:根抵当権と抵当権の違いをしっかり把握して活用しよう

まとめ:根抵当権と抵当権の違いをしっかり把握して活用しよう
根抵当権は抵当権の一種ですが、抵当権とは異なり1度の設定で複数回の借入を行えるという特徴があります。抵当権とは債権や移譲、登記のコストなどさまざまな面で違いがあるため注意が必要です。
基本的に、一般消費者が住宅ローンの契約などで根抵当権が設定されることは少ないです。しかし、土地と建物を別々に購入するなど、場合によっては根抵当権が設定される可能性もあります。それぞれの違いや特徴をしっかり把握し、状況に合わせて活用しましょう。

不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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