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更新日:2023.07.20
登録日:2023.07.20
瑕疵担保責任の期間は何年?隠れた瑕疵や民法改正のポイントも解説
民法改正によって、瑕疵担保責任の期間や損害賠償の範囲などが変更されました。
「瑕疵担保責任において責任を追及できる期間は何年なのか」、「そもそも瑕疵担保責任についてよくわかっていない」という方も多いでしょう。
そこで、本記事では、瑕疵担保責任について詳しく解説します。安心して不動産を購入するためにも、記事を読んで知識を身につけてください。
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瑕疵担保責任とは
瑕疵担保責任とは
瑕疵担保責任とは、売買取引において「売主や請負人が欠陥に対する責任を負うこと」です。瑕疵(かし)は、取引した目的物に必要な品質や性能が備わっていない状態を指します。
不動産売買における瑕疵担保責任とは、不動産に欠陥が発覚したときに、買主が売主に責任を追及できることです。「欠陥のある不動産によって買主が不利益を被らないこと」を目的として定められました。
通常は、売主から土地や建物の状態や周辺環境についての説明を受け、買主は納得したうえで不動産を購入します。しかし、実際に住みはじめてから、建物の欠陥や不具合などが発覚する場合もあるでしょう。
瑕疵が発覚した場合、買主は売主に対して損害賠償を請求する権利があります。瑕疵の程度によっては、契約解除請求も可能です。
民法改正で「契約不適合責任」に名称が変更
2020年3月までは「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、2020年4月1日の民法改正によって「契約不適合責任」に変更されました。契約不適合責任は、引き渡された不動産が契約内容とは異なる場合に売主が負う責任のことを指します。
対象となる範囲や損害の範囲が広がり、より買主が安心して不動産を取引できる内容になりました。契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは、のちほど詳しく解説します。
注意点は、改正民法の施行日以前に契約された取引については、改正前の民法が適用されることです。契約書に瑕疵担保責任の記載がある場合も、瑕疵担保責任の内容が用いられます。
※参照:法務省
契約不適合責任について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。契約不適合責任で買主に認められる権利について解説しています。
契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いや期限や買主の権利について解説
品確法では、「瑕疵担保責任」が残されている
住宅品質確保促進法(品確法)では、「瑕疵担保責任」が使用されています。
品確法では、「新築住宅において引き渡しから10年間は瑕疵担保責任がある」と定められています。(※)
瑕疵担保責任の対象となる部分は、次の2つです。
・構造耐力上主要な部分:住宅の基礎や屋根、外壁、土台などの建物を支える部分
・雨水の侵入を防止する部分:住宅の外壁や屋根、開口部に設ける戸や排水管などの部分
瑕疵担保責任の期間
瑕疵担保責任の期間
民法改正によって瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更され、それぞれで責任を追及できる期間が異なります。万が一、購入した不動産に瑕疵が発覚した場合、対処できるように瑕疵担保責任の期間について把握しておきましょう。
瑕疵担保責任(品確法)
品確法の瑕疵担保責任の期間は、不動産の引き渡しから10年間(※)と定められています。10年以内であれば、売主に対して損害賠償請求ができます。
しかし、不動産の引き渡しから10年を超過してから発覚した瑕疵に関しては、売主は責任を問われません。
契約時に買主と売主の合意があった場合、20年以内での期間の延長が認められています。
民法に基づく契約不適合責任(民法)
民法に基づく契約不適合責任では、瑕疵があることを知った日から1年以内(※)に売主に通知する必要があります。1年以内に通知しなかった場合、引き渡された不動産についての瑕疵担保責任の請求ができなくなります。
「瑕疵担保責任の期間は10年間もあるから大丈夫」と油断し、通知をしない状態のままでは、瑕疵担保責任の請求権を失ってしまうので注意しましょう。
一旦、通知を行い、あとから「売主に何を請求するか」を考えれば問題ありません。
ただし、権利の行使には時効があります。(※)
・権利を行使できることを知った日から5年間行使しないとき
・権利を行使できる日から10年間行使しないとき
どちらかの早い方のタイミングが優先され、契約不適合責任が失われます。
※参照:民法
鑑定士コメント
瑕疵担保責任の期間を超過したらなにも請求できないのでしょうか。期間を超過した場合でも、瑕疵に対して請求できる可能性があります。例えば、瑕疵を知ったうえで、売主が不動産を引き渡した場合です。瑕疵担保責任ではなく、債務不履行の責任として追及できる可能性があります。他にも、売主が瑕疵を知らなかった場合でも、売主に重大な過失があった場合にも、請求が可能です。
隠れた瑕疵とは
隠れた瑕疵とは
隠れた瑕疵とは、不動産の購入時には発見できない瑕疵のことです。隠れた瑕疵にも、売主は瑕疵担保責任を負います。隠れた瑕疵は、次の4つの種類があります。
・物理的瑕疵
・心理的瑕疵
・法律的瑕疵
・環境的瑕疵
実際に住みはじめてから瑕疵が発覚した場合にも、適切に対処できるように4つの瑕疵について把握しておきましょう。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、居住する建物や土地に重大な欠陥があることを指します。具体的な内容は、次の表のとおりです。
物理的瑕疵は、専門家による調査で明らかになります。物理的瑕疵が発覚した場合には、損害賠償請求や契約解除などの責任を追求できます。
心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、不動産の品質や性能に問題はないものの、居住者に心理的負担を与える欠陥のことです。心理的瑕疵として該当する例は、次のとおりです。
・過去の所有者の自殺や殺人
・一定期間放置された孤独死
・近隣地域での火災や大事故
しかし、心理的瑕疵に明確な定義はありません。「居住するうえで何がストレスになるか」は、個人差があります。事件の大きさや事件発生からの経過時間によっても、居住への影響が異なるため、心理的瑕疵と判断することは難しいでしょう。
国土交通省では、宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインを定めています。ガイドラインによると「自然死や日常生活の中での不慮の死においては告知しなくてよい」と記載されています。
詳しく知りたい方は、宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインを参照してください。
法律的瑕疵
法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、建築基準法や都市計画法、消防法などの法令に触れている瑕疵のことです。
次のケースが法律的瑕疵に該当します。
・不動産の構造上、安全基準が満たされていない
・建蔽率違反や容積率違反である
・市街化調整区域にある違反建築物である
・設置すべき防災設備が備わっていない
法律的瑕疵の有無を確認するために、不動産の購入前には、区市町村の都市計画課や建築指導課で物件に関する法令を確認しましょう。都市計画図を閲覧することで、市街化調整区域であるか否かも判断できます。
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、不動産の周辺にある、生活に悪影響が出る環境要因のことを指します。具体的な例は、次のとおりです。
・ごみ処理施設による異臭
・鉄道や工場による騒音
・墓地や火葬場、刑務所などの嫌悪施設がある
ただし、心理的瑕疵と同様、人によってストレスに感じる基準は異なります。不動産購入の際には「騒音が苦手」「臭いに敏感」などを事前に伝えておき、快適に暮らせる不動産を紹介してもらいましょう。
民法改正による瑕疵担保責任の変更ポイント
民法改正による瑕疵担保責任の変更ポイント
民法改正によって瑕疵担保責任から契約不適合責任へ変更されました。変更点について、3つに分けて解説します。
・瑕疵の範囲
・損害範囲
・対抗措置
瑕疵の範囲
瑕疵担保責任では、不動産に隠れた瑕疵がある場合のみ、売主が責任を負うことを定めていました。一方で契約不適合責任では、瑕疵が隠れていることは関係なく、契約の内容に合っているか否かで判断します。
売主は、契約内容に沿っていない瑕疵に対して責任を負います。契約不適合責任に変更されたことで、売主が責任を負う瑕疵の範囲が拡大し、内容も明確になりました。
損害範囲
瑕疵が発覚した場合は、買主には売主に損害賠償を請求する権利が与えられています。民法改正によって、損害賠償を請求できる範囲が拡大しました。
・瑕疵担保責任:信頼利益のみ
・契約不適合責任:履行利益まで
信頼利益とは、契約が有効であると信頼したことで生じる損害のことです。たとえば、登記簿謄本の取得代や交通費などが該当します。
履行利益とは、契約で有効であり、かつ完全に履行された場合に得られる利益のことです。具体例を挙げると、不動産を利用した営業や転売による利益などが含まれます。
民法改正によって、損害範囲が拡大し、売主の責任はより重くなったといえるでしょう。
対抗措置
対抗措置
瑕疵担保責任では、瑕疵が発覚した場合の対抗措置は、損害賠償請求や契約解除のみでした。契約不適合責任では、損害賠償請求や契約解除にくわえて、追完請求や代金減額請求ができます。
追完請求とは、建物の修繕や代替物の引き渡し、もしくは不足分の引き渡しを請求することです。
鑑定士コメント
隠れた欠陥があれば誰の責任になるのでしょうか。契約不適合責任では、隠れた瑕疵についても売主が責任を負うことになります。近年では、こうしたトラブルを避けるために、取引時にインスペクション(建物状況調査)を行うことが国土交通省からも推奨されており、サービスを提供する会社も増えています。建物を売買する際には、建物状況調査を行い、瑕疵の有無を確認すれば、売主・買主ともに安心となるでしょう。
まとめ:瑕疵担保責任は法律によって範囲が異なるので注意しよう
まとめ:瑕疵担保責任は法律によって範囲が異なるので注意しよう
瑕疵担保責任によって、購入した不動産に瑕疵が発覚した場合でも、買主は売主に対して請求ができます。ただし、契約不適合責任へ変更されたことで、1年以内に買主に瑕疵があることを通知する必要があります。
快適に暮らすためにも、調査を依頼して、取引する不動産の状態を確認しましょう。
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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