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2023.11.22

大規模修繕で覚えておきたい法律とは?建築基準法を中心にわかりやすく解説!

大規模修繕で覚えておきたい法律とは?建築基準法を中心にわかりやすく解説!

「大規模修繕工事って何?」
「大規模修繕は必ず行わなくてはならないの?」
マンションの所有者・管理者なら、上記のように悩んでしまうこともあるのではないでしょうか。

本記事では、大規模修繕工事の法律における定義を説明しています。大規模修繕工事の実施義務のほか、建築基準法・区分所有法・マンション建て替え円滑化法・マンション管理適正化法など、関連する法律についても紹介します。

一部の大規模修繕で必要な建築確認申請についても詳しく解説しているので、ぜひ最後まで読んで、大規模修繕工事の必要性について理解を深めましょう。

大規模修繕工事の法律における定義

大規模修繕工事の法律における定義

大規模修繕工事の法律における定義

大規模修繕工事とは、建物の主要な部分の1カ所以上において、半分以上の範囲を修繕・模様替えすることです。建築基準法の第1章では、大規模修繕について以下のように定義付けています(※1)。

 

大規模の修繕

建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕

大規模の模様替

建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替

 

主要構造部とは、建物の構造上無くてはならない重要な部分のことです。具体的には、壁・柱・床・はり・屋根・階段とされています。

 

修繕とは、既存の材料と同じものを使って、建物内の劣化した部分を元の状態に近づけることです。模様替えは、既存とは違う材料や仕様で劣化した部分を造り替えることで、建物の性能を元どおり回復することを指します。

 

なお、大規模修繕工事の定義については、国土交通省のガイドラインにも記載があります。詳細は以下のとおりです。

 

「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう。」(※2)

 

大規模な修繕や模様替えは、住民の快適で安全な暮らしを守ることや、建物の資産価値を維持・向上することに繋がります。

 

※1 参照:建築基準法(第1章/第2条/第14号・第15号)

※2 参照:国土交通省|マンションの改修・建替え等について(15ページ)

鑑定士コメント

マンションの大規模修繕はどこまで行われますか?マンションの大規模修繕工事で対象となる部分は、共用部分全般です。具体的には、外壁・屋上・エントランス・エレベーター・ベランダ・廊下・駐車場などが含まれます。工事内容は、コンクリートやタイルの補修・外壁塗装・防水工事・各種設備の補修などが代表的です。ただし、対象範囲や必要となる工事はマンションによって異なるため、具体的な内容は管理会社や工務店などに確認してください。

大規模修繕が必要な理由

大規模修繕が必要な理由

大規模修繕が必要な理由

大規模修繕が必要な理由には、以下の3点があります。

 

・住民の安全確保のため

・建物の資産価値の維持や向上のため

・住民の快適性の向上のため

 

住民の安全を守るためには、大規模修繕工事が必要です。建物は築年数が古くなるにつれ、必ず老朽化します。古くなった外壁からタイルが落下したり、給水・排水設備の劣化によって漏水事故が起きたりすれば、重大な被害に繋がりかねません。

 

大規模修繕工事は、建物の資産価値の維持・向上にも効果的です。外壁や内装がきれいに補修されていたり設備が整っていたりするマンションなら、築年数が古くても住みたいと思う人も多いでしょう。

 

また、住民の暮らしの快適性を向上させるために、大規模修繕工事とあわせて建物の設備の改修工事をするケースもあります。改修工事の具体例は、耐震性向上のための工事・バリアフリー化のための工事・セキュリティー設備の更新などです。

鑑定士コメント

大規模修繕は義務なのでしょうか?大規模修繕自体は、義務ではありません。法律では定義が定められているのみで、実施義務については記載がないためです。しかし、マンションの管理者・所有者には、建物や敷地内を常に適法な状態に維持管理することが義務付けられています。マンションは共有部分など共用財産の性格があり、適切な維持管理を怠ると資産価値が目減りし、区分所有者全員の利益に反することになります。それらを考慮すると、必然的に大規模修繕工事は避けられないと言えるでしょう。

大規模修繕で覚えておきたい法律

大規模修繕で覚えておきたい法律

大規模修繕で覚えておきたい法律

大規模修繕についての法律で、覚えておきたいものには以下の4つがあります。

 

・建築基準法

・区分所有法

・マンション建て替え円滑化法

・マンション管理適正化法

 

それぞれの法律について、詳しく解説します。

建築基準法

建築基準法とは、建物を建てる際に守らなければならない最低基準を定めた法律です。主な内容には、建物の用途・敷地・構造・設備についての基準が挙げられます。建築基準法のなかで大規模修繕工事に関わる部分は、以下の2点です。

 

・大規模修繕・模様替えの定義

・建築確認申請についての決まり

 

大規模修繕・模様替えの定義は前述のとおりです。建築確認申請とは、対象となる建物の修繕計画が、建築基準法に沿っているかを確認する手続きです。

 

対象となる建物は、建築基準法第6条にて以下のように定められています(※)。

 

・映画館・学校・病院などの特殊建築物で、その用途に使う床面積の合計が200㎡を超えるもの

・木造の3階建て以上の建築物であるか、延べ面積が500㎡かつ高さが13mもしくは軒の高さが9mを超えるもの

・木造以外の2階建て以上の建築物であるか、延べ面積が200㎡を超えるもの

・上記以外の建物で、都市計画区域・準都市計画区域・景観法や都道府県知事が指定する区域内の建築物

 

上記基準に該当する建物の大規模修繕工事では、着工する前に建築確認申請が必要です。建築確認申請の際は、まず建築主事か指定確認検査機関に確認申請書を提出しましょう。

 

修繕計画が建築基準法に即していることが認められれば、確認済証を受け取れます。確認済証を入手したら工事監理者を決めて着工し、工事途中に中間検査、工事完了後に完了検査を受けて検査済証を受け取ってください。

 

一連の手続きで受け取った書類は、金融機関から融資を受ける際や登記手続き、不動産売買や増改築の際に必要となります。失くさないよう保管しておきましょう。

 

※参照:建築基準法(第6条)

区分所有法

区分所有法とは、区分所有建物についての権利関係や、運営管理についての基準を定めた法律です。区分所有建物は分譲マンションやビルなどのことで、1つの建物内に独立した複数の部屋があり、それぞれ別個の所有権が成立する建物を指します。

 

区分所有法のなかで大規模修繕工事に関わる内容は、特別決議の必要性についてです。区分所有法によると、共有部分の形状や性能を大きく変更する際は、特別決議が必要とされています。

 

大規模修繕工事を実施するには、特別決議において区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要です(※)。大規模修繕工事はマンション管理において重大な検討事項となるため、過半数の賛成でよい普通決議に比べると、厳しい条件になります。

 

特別決議に参加する区分所有者の定数は、規約により半分に減らすことも可能です。また、大規模修繕工事によって専有部分に特別な影響を及ぼすときは、その専有部分の所有者から承諾を得る必要がある旨も記載されています。

 

※参照:区分所有法(第2節第17条)

マンション建て替え円滑化法

マンション建て替え円滑化法

マンション建て替え円滑化法

マンション建て替え円滑化法とは、マンションを建て替えたり取り壊したりする際の手続きを、スムーズに行う方法などが定められている法律です(※1)。マンションにおける快適な居住環境の確保や、老朽化による倒壊などを防止して国民の安全を守ることを目的としています。

 

マンション建て替え円滑化法は、大規模修繕工事とは直接関係がありません。しかし、耐震基準を満たしていないなど、大規模修繕工事で補えないほどの問題がある場合は建て替え・取り壊しを検討する必要があるでしょう。

 

マンション建て替え円滑化法の主な内容のなかには、以下3点があります(※2)。

マンション建替組合の設立について

管理組合と同様に住民によって構成される団体で、マンション建て替え時に設立できる

建て替え後のマンションへの権利変換について

住民の区分所有権などを建て替え後のマンションに移すこと

危険なマンションの建て替えについて

・火災や地震などへの対策が不十分で、安全性に欠けるマンションなどを指す

・市町村長は、危険なマンションの管理者に対して建て替えの勧告が可能

 

そのほか、マンション建て替え円滑化法には、建替組合による権利の買い取りや一括登記についても記されています。マンションの建て替えや取り壊しが必要となった際には、把握しておくべき法律といえるでしょう。

 

※1 参照:マンションの建替え等の円滑化に関する法律

※2 参照:マンション再生協会:マンション建替え円滑化法の概要

マンション管理適正化法

マンション管理適正化法は、管理業者がマンションの管理を適正に行うための基準を定めた法律です。マンション管理適正化法のなかで大規模修繕に関わる内容は、管理計画の作成・認定についてです。

 

管理業者が作成する管理計画には、修繕の方法や資金計画を記載しなければならないとされています。管理計画の認定を受ける際は、以下の4つの基準によって判断される決まりです(※1)。

 

・マンションの修繕その他の管理方法が国土交通省令で定める基準に沿っている

・資金計画がマンションの修繕その他の管理を確実に遂行するため適切である

・管理組合の運営の状況が国土交通省令で定める基準に沿っている

・その他マンション管理適正化指針及び都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切である

 

ほかにも、マンション管理適正化法の主な内容には以下の6点があります。

 

・マンション管理適正化法の目的や用語の定義

・マンション管理の適正化の推進を図るための基本的な方針

・マンション管理士資格の概要や義務など

・マンション管理業務の詳細

・マンション管理適正化推進センターの概要

・マンション管理業者の団体の概要

 

マンション管理適正化法が施行された背景には、築40年を越えるマンションの急増があります。古いマンションの老朽化を抑制し、周囲への危害などを防ぐために、管理業務の基準を定めて再生への取り組みを強化する必要がありました(※2)。

 

管理業務が適切に行われなければ、住民の安全性が損なわれるだけでなく、建物の資産価値が下がることにも繋がります。そのような事態を防ぐために、定められた管理基準を守ることは管理業者の義務といえるでしょう。

 

※1 参照:マンションの管理の適正化の推進に関する法律

※2 参照:国土交通省:マンション管理適正化法の改正概要

まとめ:大規模修繕は法律を正しく守って実施しよう

まとめ:大規模修繕は法律を正しく守って実施しよう

まとめ:大規模修繕は法律を正しく守って実施しよう

大規模修繕工事の法律上の定義は、建物の主要構造部の1カ所以上において、半分以上の範囲を修繕・模様替えすることです。

 

大規模修繕工事の施行は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、マンションの資産価値の維持・向上や住民の安全確保、そのほかのマンション管理に関する義務を考慮すると必然的に行うことになるでしょう。

 

大規模修繕に関わる法律には、建築基準法・区分所有法・マンション建て替え円滑化法・マンション管理適正化法などがあります。定められた基準を守って、適切に管理業務を行うことが大切です。

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

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