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2023.08.28

住宅瑕疵担保履行法とは?知っておきたい内容をわかりやすく解説

住宅瑕疵担保履行法とは?知っておきたい内容をわかりやすく解説

安心して住宅を購入するために、知っておくべき法律が「住宅瑕疵担保履行法」です。しかし、「内容が難しそう」「住宅購入でどう役立つのかがわからない」と思っている人は多いでしょう。

そこで、この記事では、住宅瑕疵担保履行法についてわかりやすく説明をします。住宅を購入する上で最低限知っておくべき内容なので、マイホーム取得のためのこの記事を最後まで読んでください。

住宅瑕疵担保履行法とは

住宅瑕疵担保履行法とは

住宅瑕疵担保履行法とは

住宅瑕疵担保履行法の正式名称は、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」です。瑕疵(かし)とは「本来あるはずの機能・性能・品質が備わっていない物件」を指す用語、いわば欠陥のことです。

 

※2020年4月の民法改正によって、「瑕疵」は「契約不適合」という用語に変更しています。

 

住宅瑕疵担保履行法は、取得した新築住宅に欠陥があっても住宅取得者の利益を保護してくれる法律です。

 

住宅品質確保法によって、住宅事業者は10年間の瑕疵担保責任(※1)を負います。しかし、事業者の倒産や、事業者に修繕費用の支払能力が欠如している場合、責任を履行できなくなります。

 

上記の事態に備えて、事業者に対して「保証金の供託」や「保険の加入」による資力確保措置を義務付けているのが、住宅瑕疵担保履行法です(※2)。事業者が倒産した場合でも、住宅取得者は欠陥に対する補修費用を受け取れます。

 

いくら注意しても、欠陥マンションを購入してしまうケースがあります。万が一に備えて、以下の記事もぜひ確認してみてください

欠陥マンションに出会ってしまったら?見分けるためのポイントも解説

住宅瑕疵担保履行法が適用される対象は?

住宅瑕疵担保履行法が適用される対象は?

住宅瑕疵担保履行法が適用される対象は?

住宅瑕疵担保履行法が適用される物件は「新築の住宅のみ」です。仮に、中古の住宅に欠陥が見つかったとしても、住宅瑕疵担保履行法は適用されません。

 

新築の住宅のみが、住宅瑕疵担保履行法の対象になるものの、どんな条件を満たした物件が「新築の住宅」として扱われるのでしょうか。また、これから住宅購入を考えている人にとっては、「住宅瑕疵担保履行法がどんな種類の住宅に適用されるか」が重要です。

 

そこで、住宅瑕疵担保履行法の対象になる物件の条件を知るために、以下の項目について解説します。

 

  ・新築の定義

  ・住宅の定義

  ・対象となる住宅の種類

 

住宅瑕疵担保履行法が適用されるのは、新築かつ住宅の定義を満たした物件に限りますので注意しましょう。

新築の定義

新築とは、以下の2つの条件を満たす物件を指します。(※)

 

  ・建築工事の完了から1年未満の物件である

  ・まだ誰も入居したことのない物件である

 

誰も住んだことがなくても建設工事の完了日から1年以上経過している物件や、1年が経過していなくても誰かが居住した物件は、新築とは言えません。

 

つまり、上記に該当する場合は、住宅瑕疵担保履行法の対象外になります。ちなみに、建築工事の完了日とは「建設工事後の完了検査が終了した日」のことです。

 

不動産の売買契約を結んだ時点で、建設工事の完了日から1年未満かつ誰も居住していない物件であれば、新築物件の売買と言えます。その物件は、住宅瑕疵担保履行法の対象となります。

 

売買契約の時点で経過日が1年未満であれば、引き渡し日が1年を超えていても新築扱いになるので覚えておきましょう。

 

※ 参照:住宅の品質確保の促進等に関する法律

 

対象となる住宅の種類

次に、住宅の定義について説明します。

 

住宅の品質確保の促進等に関する法律によると、住宅とは「人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分」(※)です。つまり、戸建住宅や集合住宅(マンションやアパートなど)はもちろんのこと、賃貸住宅(公益住宅や公務員宿舎なども含む)や投資用のマンションも住宅と言えます

 

住宅として該当しないのは、以下の物件です。

 

  ・事務所や倉庫

  ・ホテルや旅館

  ・特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、老人福祉法に基づいて設置される施設

 

ただし、事務所と住居が混在した併用住宅の場合は、住宅全体の共用部分が住宅になります。新築であれば、共用部分のみ住宅瑕疵担保履行法の対象となるでしょう。

 

また、老人福祉関連施設の中でも、グループホームや高齢者向け賃貸住宅などは「人の居住の用に供する家屋」に該当するため、住宅として扱われます。

 

※ 参照:住宅の品質確保の促進等に関する法律

 

住宅瑕疵保険とは

住宅瑕疵保険とは

住宅瑕疵保険とは

住宅瑕疵保険とは、住宅の欠陥を補修する費用を賄うための保険制度です。

 

新築住宅に欠陥が見つかり、補修工事や損害賠償などを行った事業者(建設業者や宅建業者)に対して、保険金が支払われます。

 

住宅瑕疵保険の締結は住宅事業者が行い、保険料も事業者が支払います。住宅取得者は、特別な手続きをする必要はありません。ただし、住宅瑕疵保険の料金は物件価格や工事代金に含まれるため、実際に負担しているのは消費者側と言えます。

 

住宅に欠陥が見つかった場合、通常は事業者が対応します。しかし、倒産といった理由で事業者が補修を行えない場合には、事業者が加入する保険法人に対して住宅取得者が補修費用を還付請求できます

 

不動産の契約時には、「住宅瑕疵保険に加入しているかどうか」や「保険が適用される限度額」をチェックしましょう。

 

住宅瑕疵保険の保険会社

住宅瑕疵保険は高額であり、かつ保険の適用時には建築士による現場検査が必要です。

 

そこで、住宅瑕疵担保では、国土交通大臣から指定された「住宅瑕疵担保責任保険法人」と契約を結びます。住宅の瑕疵の補修を行った場合には、事業者が「住宅瑕疵担保責任保険法人」に費用を請求して、保険金を受け取ります。

 

住宅瑕疵担保責任保険法人は住宅専門の保険会社で、令和4年11月現在では、以下の6つの保証会社が対象(※)です。

 

  ・株式会社住宅あんしん保証

  ・住宅保証機構株式会社

  ・株式会社日本住宅保証検査機構

  ・株式会社ハウスジーメン

  ・ハウスプラス住宅保証株式会社

  ・(一財)住宅保証支援機構

 

住宅瑕疵保険の手続きは住宅事業者が行いますが、国土交通大臣指定の保険法人と締結していることは知っておいてください。

 

※ 参照:国土交通省

供託とは

供託とは

供託とは

住宅瑕疵担保履行法によると、事業者は「住宅瑕疵保険への加入」か「保証金の供託」のいずれかで資力確保措置を取ることが義務付けられています。(※)

 

新築住宅の瑕疵に対して住宅事業者は補修を行うなどの責任がありますが、事業者の倒産や支払い能力の欠如によって、その責任を果たせない可能性があります。

 

供託とは、上記の事例に備えて、事業者があらかじめ現金や国債などで「瑕疵担保保証金」を供託所に預けておく制度です。保証金は、住宅事業者が過去10年間に引き渡した新築住宅の供給戸数に応じて算出されます。

 

住宅に欠陥が見つかった時に、すでに住宅事業者が倒産していた場合でも、供託制度により住宅取得者は還付請求ができます。受け取った金額で住宅の補修を行えるため、安心して住宅購入に踏み切れるでしょう。

 

※ 参照:国土交通省

供託金の受け取り方法

住宅事業者が資力確保の措置として、「供託」を選択していれば、欠陥が見つかった住宅取得者は供託金の還付を受けられます。

 

まずは、国土交通省に申請を行い、国土交通大臣の確認を得た上で供託所に還付請求をしましょう。その後、住宅の欠陥を調査してもらって、補修などに必要な費用が還付されます。

 

ただし、供託を行うのは、新築住宅を引き渡した日以降の基準日(3月31日・9月30日)までと定められています。(※)事業者が供託を行う前に、倒産してしまった場合には、保証金を受け取れません。

 

契約時には、住宅事業者に「いつ供託をするか」や「いくら供託するか」を事前に確認しておきましょう

 

※ 参照:国土交通省

 

住宅瑕疵担保責任を負う対象者は?

住宅瑕疵担保責任を負う対象者は?

住宅瑕疵担保責任を負う対象者は?

住宅瑕疵担保責任を負い、保険への入会や供託による資力確保措置の義務があるのは、新築住宅を引き渡す建設業者や宅地建物取引業者です。

 

通常、買主や発注者へ住宅を引き渡す事業者に、資力確保が義務付けられます。ただし、宅建業者が発注者・買主・貸主の場合には、引き渡す建設業者に資力確保の義務は課せられません

 

住宅の種類別に、資力確保が義務付けられる対象者を以下の表にまとめたので、確認しておきましょう。

 

 

住宅の種類

資力確保を義務付けられる事業者

例外となるケース

注文住宅

建設業者(請負人)

宅建業者が発注者のとき

分譲住宅

宅建業者(売主)

宅建業者が買主のとき

賃貸住宅

建築業者(請負人)

宅建業者が貸主のとき

 

前述したように、住宅瑕疵担保責任を負うのは、あくまで新築住宅の場合に限ることは忘れないでください。

住宅瑕疵担保責任の範囲はどこまで?

住宅瑕疵担保責任の範囲はどこまで?

住宅瑕疵担保責任の範囲はどこまで?

住宅品質確保法によって、住宅事業者は全ての新築住宅に対して、10年間の住宅瑕疵担保責任を義務付けられています。(※1)

 

そして、住宅瑕疵担保責任の範囲は、「構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分」(※2)とされています。該当する部分は、以下の通りです。

 

 ・構造耐力上主要な部分:住宅の基礎や屋根、外壁、土台などの建物を支える部分

 ・雨水の侵入を防止する部分:住宅の外壁や屋根、開口部に設ける戸や排水管などの部分

 

上記のように担保責任の範囲が限定されている理由は、居住する上で非常に重要、かつ10年程度の期間が経過しても不具合が発生しにくい部分であるからです。

 

※1 参照:住宅の品質確保の促進等に関する法律

※2 参照:国土交通省

 

鑑定士コメント

本文にあるとおり、住宅瑕疵担保責任の範囲は、「構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分」となります。具体的には、建物の構造上、欠陥があると「強度が弱くなる」「雨水が浸み込んでしまう」といった問題が発生すると考えられる部分です。例をあげると、住宅の基礎の沈下やひび割れ・床の傾斜やきしみ・外壁のひび割れや剥がれ・屋根の変形などです。ただし、補修してもらえる箇所は、事前の調査によって決まります。希望した箇所を直してもらえるとは限らないことを覚えておきましょう。

トラブルに発展しそうなときは?

トラブルに発展しそうなときは?

トラブルに発展しそうなときは?

住宅瑕疵担保履行法によって、住宅事業者は資力確保の義務を負うため、安心して住宅取得ができます。

 

しかし、引き渡しされた新築の住宅に欠陥が見つかったとしても、不動産業者や建設業者が必ずしも修繕してくれるとは限りません

 

「修繕が必要なほど重大な欠陥ではない」と否定される可能性もあります。反対に、軽度の欠陥でも住宅取得者が修繕費用を請求し、トラブルになるケースがあります。

 

こうした事態に備えて、「瑕疵保険付き住宅の取引に関する当事者間の紛争」を処理する制度を利用可能です。この制度により、全国の弁護士会に設置された「住宅紛争審査会」に申請をすることで、弁護士があっせん・調停・仲裁を行ってくれます。

 

弁護士に依頼すると聞くと、高額な費用がかかるイメージを持つかもしれませんが、費用は申請手数料の1万円のみ(※)です。また、弁護士や建築士などの専門家への住宅に関する相談もできます。

 

上記のような、万が一に備えた制度もあるため、住宅に関する悩みやトラブルの際にはぜひ利用してみてください。

 

※ 参照:公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター

 

2022年10月から専門家相談と紛争処理の対象が拡大された

2022年9月までは、以下の条件に該当する人が専門家相談と紛争処理を利用できる対象でした。

 

  ・評価住宅の取得者または供給者

  ・住宅瑕疵担保責任保険(1号保険)が付された住宅の取得者または供給者

 

2022年10月以降は、専門家相談や紛争処理の対象が拡大し、住宅瑕疵担保責任保険(2号保険)が付された住宅の取得者または供給者が新たに対象者になりました。2号保険とは、以下の保険を指します。

 

  ・新築2号保険

  ・リフォーム瑕疵保険

  ・大規模修繕瑕疵保険

  ・既存住宅売買瑕疵保険

  ・延長保証保険

 

2022年の9月30日以前に、上記の保険に加入していた場合も専門家相談や紛争処理を利用できます。(※)

 

※ 参照:公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター

 

既存住宅売買瑕疵保険については、以下記事でも紹介しています。

 

既存住宅売買瑕疵保険とは?手続きの流れやメリット・デメリットを解説

鑑定士コメント

「瑕疵保険付き住宅の取引に関する当事者間の紛争」を処理する制度として、全国の弁護士会に設置された「住宅紛争審査会」に申請をします。紛争処理の対象は、住宅の基礎のひび割れ・外壁の剥がれ・雨漏りなどの住宅の不具合、他にも、工事内容の認識の食い違いのような、住宅の不具合以外による紛争も対象となります。

まとめ:住宅瑕疵担保履行法を理解してマンション購入の不安を軽くしよう

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住宅瑕疵担保履行法は、欠陥が見つかった場合でも住宅取得者を守ってくれる法律です。建築完了日から1年未満、かつ誰も居住したことのない新築の住宅が対象になります。

 

供託がされていれば、たとえ住宅事業者が倒産してしまっていても、修繕費用を受け取れます。紛争処理制度や専門家への相談といった、住宅購入に不安を抱える人にも安心の制度があるので安心してマンションを購入しましょう

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

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