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更新日:2024.09.12
登録日:2024.08.26
質権とは?抵当権との違いや種類をわかりやすく解説
「住宅ローンを借りる際に耳にする質権ってなに?」
「質権と抵当権や担保物権との違いは?」
住宅ローンを検討する際、このような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
専門用語が多いため、内容を理解するのに時間がかかりがちです。
この記事では、質権という言葉の意味や抵当権・担保物権との違い、質権の種類などをわかりやすく解説します。
質権を設定することによる債務者の視点でのメリットやデメリット、質権が消滅する条件なども具体的にわかります。質権について詳しく知りたい人はぜひ最後までご覧ください。
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質権とは
質権とは
質権とは、返済がされなかった場合に、担保を処分することによって債権を回収する権利のことを指します。つまり、債権者は債務者または第三者から受け取ったものを、債務の不履行時に処分し債権の回収に充てることが可能です。
お金を貸す側には、貸したお金が返ってこないかもしれないというリスクがあります。しかし、質権により債権者は債務者から高価値のものをあらかじめ受け取り、その担保を処分し返済分に充てることが可能となるのです。
質権と似た言葉には、以下の2つが挙げられます。
・抵当権
・担保物権
以下では、これら2つと質権の違いを解説します。
質権と抵当権の違い
質権と抵当権では、債務者が担保物権を占有できるかできないかという点が両者の違いです。借金をして土地や建物を担保とした場合、その建物に住んでいる者がそのまま住み続けられるかどうかということになります。
質権では担保とした土地や建物を債務者が所持することはできませんが、抵当権では債務者が土地や建物を担保としたまま所持できるためです。
たとえば、住宅ローンを借り入れた債務者は、返済に滞りがない限り抵当権を設定した不動産に住み続けられます。一方で、住宅ローンを融資した債権者である金融機関は、担保物権を所持することができません。
抵当権は、債務者の支払いが滞ったときに、担保物権により弁済を受けられる権利のことを指します。抵当権は不動産のみに設定される担保物権であり、住宅ローンの担保物権では抵当権を設定することが一般的です。
質権と担保物権の違い
質権は、担保物権のひとつです。担保物権には、法定担保物権と約定担保物権があり、質権や抵当権が約定担保物権に当てはまります。概要は以下のとおりです。
担保物権とは、債務者に対し返済を促すため、債務者の所持するものの価値を利用できる権利のことです。
そもそも担保とは、債務の返済が滞ったときに備え、債権者が債務者から受け取っておく高い価値があるものを指します。つまり、担保物権は債務の不履行が生じた際に、質権者がその担保から債権を優先的に回収できる権利です。
まとめると、担保物権には法定担保物権と約定担保物権があり、質権と抵当権はどちらも約定担保物権に当てはまるということになります。
鑑定士コメント
先取特権と質権の違いは何でしょうか?先取特権は、法律の定めにより成り立つ法定担保物権であり、債権者と債務者での契約によって成立するものではありません。
言い換えると、契約せずとも民法で当たり前に成立するものとして規定されている権利です。
対して、質権は当事者間の契約でもって成り立つ約定担保物権を指します。つまり、契約があってはじめて成立する権利のことです。
質権の種類
質権の種類
質権は、金銭の返済が滞ったときに、担保を処分し弁済を受けられる権利です。さらに、担保として設定するものの種類によって、以下の3つに分類されます。
・動産質
・不動産質
・権利質
動産質・不動産質・権利質がそれぞれどういったものなのかについて、詳しく解説します。
動産質
動産質とは、不動産以外の物である動産に設定される質権のことです。質屋でブランド品を預かり金銭を貸し付け、返済されない場合に目的物を処分し債権を回収する事例が当てはまります。
動産質が実行される際は、「動産競売」にかけられるのが通例です。動産競売とは、裁判所の職員が動産を差し押さえ金銭にかえる制度を指します。
しかし、動産質によって債権を回収しきれるとは限りません。動産の価値が低く、競売にかかる費用を補えず費用倒れになることもあるからです。
動産競売が合理的でない場合は、「簡易な弁済充当」により債権を回収することもあります。担保の対象になった債権を履行する代わりに、その動産を取得して弁済に充てる方法です。
まとめると、動産質は動産に設定され、金銭が返済されない場合はその目的物を処分し債権の回収ができる権利を指します。費用倒れになるときは目的物の取得によって債務を消滅させる方法をとることも可能です。
不動産質
不動産質とは、土地や建物などの動かせないものに設定される質権です。
不動産質権を得た債権者は不動産を利用して利益を得られますが、債権の利息は債務者に請求することができません。
不動産質権においては、不動産による収益や不動産の使用が質権者に認められています(民法356条)。これによる利益は、被担保債権の利息とほとんど同価値とされているためです。
不動産質は、担保不動産の競売によって実行されます。担保不動産の競売とは、抵当権といった担保物権を設定した不動産の競売です。
担保不動産の競売は、たとえば住宅ローンの返済が滞った際に、抵当権を設定した住宅を競売する場合にも用いられます。
このように、不動産質は動かせないものに設定される質権のことで、不動産質を取得した債権者は不動産を使って利益を得ることが可能です。しかし、債権の利息については債務者に請求できません。
権利質
権利質
権利質とは、財産権に設定された質権のことを指します。質権は通常、動産や不動産に設定されるものですが、株式や債権といった財産権にも設定が可能なのです。
もともと質権は、時計や貴金属などの高価な動産や、家といった不動産を目的として設定されていました。しかし、株式や債権なども質権の対象となるケースが増えたことから、財産権に質権が設定されることを権利質と呼びます。
財産権には、株式・債権・特許権・知的財産権などがありますが、土地・建物・動産を全面的に支配できる「所有権」は権利質には含まれません。
権利質の実行にあたっては、質権の目的である債権を直接取り立てることが可能です。
まとめると、権利質は株式や債券などの財産権に設定された質権のことで、権利質の例外としては所有権が挙げられます。権利質の実行においては、債権の取り立ても可能です。
※参照:民法
質権が消滅する条件
質権が消滅する条件
質権は、以下7つの事由のうちいずれかが発生することで消滅します。
1.被担保債権の弁済
2.目的物の滅失・混同
3.質権の放棄
4.質権者による消滅請求
5.不動産の第三取得者による消滅請求
6.期間の満了
7.不動産質の代価弁済
質権により担保されている債権である被担保債権の消滅により、質権は失われます。目的物の滅失によっても質権はなくなりますが、質権者は滅失によって債務者が受ける金銭などにおいて質権の行使が可能です(民法305条、304条)。
質権者は質権の放棄ができ、その場合質権は消滅することになります。また、質権者が質物の保管義務に違反した場合、質権の設定者は質権の消滅を求めることが可能です(民法350条、298条3項)。
さらに、質権が設定されている不動産の所有権を持つ者は、登記をした各債権者に対し質権の消滅を請求できます(民法361条、379条、383条)。
※参照:民法
鑑定士コメント
質権が消滅するとどうなるのでしょうか?質権が消滅することで、質権者は目的不動産を使用または収益できる権利を失います。さらに、質権設定者に対し不動産を返還しなければならず、競売によって優先弁済を受けることも不可能となります。
火災保険の質権設定
火災保険の質権設定
火災保険の質権設定とは、住宅ローンを契約する際、火災保険の保険金に対し金融機関が質権を設定することです。
住宅ローンを組むときに、金融機関から火災保険に質権を設定するよう求められる場合があります。理由は、金融機関は貸し付けたローンを回収できなくなることを避けたいからです。
たとえば、火災により住居が焼失すると、建物を競売にかけて残りの債権を回収することができなくなります。一方、火災保険に質権を設定しておけば、住居が消失しても保険金を受け取れるためローンの回収が可能です。
このように、住宅ローンを組む際は火災によりローンの支払いが滞るリスクに備え、金融機関から火災保険に質権の設定を求められることがあります。
火災保険の質権を設定するメリット
火災保険の質権を設定するメリット
火災保険に質権を設定する債務者としてのメリットは、以下の3つです。
・火災などの有事の際は金融機関に相談できる
・保険金を返済へすぐに充てられるため、かかる予定だった分の利息が減らせる
・保険金の余剰が出た分はローン契約者が受け取れる
火災が起きた際は金融機関の指示のもとで手続きを進めるため、保険の対応がスムーズにできる点はメリットです。
保険金から債権分が引かれたあとの余剰金を、契約者が受け取れる点も利点といえます。しかし、余剰金が出ない場合もあることは覚えておきましょう。
火災保険の質権を設定するデメリット
火災保険の質権を設定するデメリット
火災保険に質権を設定する債務者としてのデメリットは、以下の4つです。
・質権者である金融機関の同意がないと、火災保険の解約や契約変更ができない
・火災保険を利用するときは、金融機関に連絡しなければならない
・保険金を受け取るまでに時間がかかる場合がある
・ほかの火災保険に加入しても、損害額より多い金額の保険金は支払われない
火災保険に質権を設定すると、解約や契約変更などの際、金融機関の同意が必要になる点には注意が必要です。契約をしてから火災保険の料金が高いと感じる場合もあるため、質権設定をする前に契約の内容をしっかりと確認しましょう。
火災保険は火事のほかにも落雷などの災害や窃盗、水漏れなどの損害にも適応されます。こういった用途で火災保険を使う場合でも、金融機関に連絡が必要です。さらに、保険金は金融機関から受け取るのが一般的であることから受け取りまでに時間がかかります。
保険金の受取額を増やす目的で、別の火災保険に入ることは可能です。しかし、実際の損害額を超える保険金は受け取れないため、保険料の払い損になる可能性がある点には注意しましょう。
まとめ:質権は担保物権のひとつであると覚えておこう
まとめ:質権は担保物権のひとつであると覚えておこう
質権は、債務が不履行となった際、あらかじめ預かっておいた担保の処分によって弁済を受けられる債権者側の権利です。
質権では物件を担保とすると、その物件の住人は住み続けられなくなります。一方、抵当権では担保を物件に設定したまま住み続けられる点が両者の違いです。また、質権は担保の目的物の種類によって、動産質・不動産質・権利質の3つに分けられます。
住宅ローンを組む際は、質権という言葉の意味や、質権を設定するメリットとデメリットなどをしっかりと理解したうえで契約するようにしましょう。
#質権 #債権 #担保 #不動産 #抵当権
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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