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2023.02.10

定期借地権マンションとは?メリットとデメリットを詳しく解説

定期借地権マンションとは?メリットとデメリットを詳しく解説

マンションを購入するために物件を調べていた際に、「定期借地権付き」というなじみのない言葉を目にした方もいるのではないでしょうか。

定期借地権付きのマンションは比較的安く購入できる一方で、維持費が発生する、最終的には更地で返還する必要があるといったデメリットがあります。

しっかりと定期借地権の特徴を理解したうえで、マンションを選ぶと失敗するリスクを抑えられるので要チェックです。そこで今回は、定期借地権付きマンションの基礎知識をはじめ、メリット・デメリットについてをわかりやすく解説していきます。

定期借地権付きマンションとは

定期借地権付きマンションとは

定期借地権付きマンションとは

定期借地権付きマンションの定義は、借地期間終了時に建物を壊して更地にした後、土地を返還する必要があるマンションです。借地権とは、建物を建てるために土地を借りる権利で、土地を借りた人は地主に定期的に地代を支払う必要があります。

 

定期借地権は1992年8月に借地借家法で制定された借地権の一つで、主に「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3種類に分けられます。マンションの場合は、一般定期借地権が採用されるケースが多いです。ちなみに1992年8月から施行された新借地借家法では、借地権が「普通借地権」と「定期借地権」に区分されています。

 

一般定期借地権は権利の存続期間が50年以上かつ契約期間の延長のない借地権で、定期借地権付きマンションは、マンションの建つ敷地を土地の所有者から借りている、かつその借地期間は50年以上で延長のないマンションともいえます。

普通借地権マンションとの違いは?

定期借地権以外の一般的な借地権を指す普通借地権とは、借地期間が更新できるかどうかが大きく異なります。

 

定期借地権では借地期間が定まっているうえに更新が行われない一方で、普通借地権の場合は借地期間が30年以上となっていますが、地主(貸主)側に正当な理由がない限り自動的に更新されます。そのため普通借地権では、長期間土地を借り続けやすいのが大きな魅力です。

 

定期借地権は決められた時期がきたタイミングで、建物を取り壊して更地の状態で返還しなければならず、どちらかというと確実に返してほしい地主側に有利な権利ともいえます。ただし普通借地権と比べ、定期借地権は最低借地期間が長い傾向にあるのも特徴です。

普通借地権とは?定期借地権との違いやメリット・デメリットを解説

定期借地権付マンションには何年住める?

一般定期借地権では、借地期間が50年以上と定められています。実際の契約期間はマンションにもよりますが、最近では60〜70年程度の契約期間が多いです。

 

また契約期間には更地にするための期間(約1.5〜2年)も含まれており、契約期間が50年、解体期間が2年の場合は新築で購入すると48年間住めるという計算になります。定期借地権付きマンションを検討している人は、契約期間や解体期間なども含めて考えるといいでしょう。

鑑定士コメント

マンションの構造が進化して、耐久性が高く、長期間利用できる物件が増えています。また、特に都心では好立地で相当グレードの高い建物が目立ちます。このようなことから、以前は50年が多かったのですが、特に都心で60年や70年の契約期間が目立ってきました。契約期間が長いと、それだけ長く住めるので価値も高く、中古の流通も多くなります。

定期借地権付きマンションのメリット

定期借地権付きマンションのメリット

定期借地権付きマンションのメリット

まずは、定期借地権付きマンションのメリットを紹介します。自分の要望と合っているかをチェックしたうえで、購入するかどうかを検討してみてください。

 

主なメリットは以下のとおりです。

 

・価格を比較的抑えて購入できる

・固定資産税と都市計画税がかからない

・良い場所に立っている場合が多い

価格を比較的抑えて購入できる

通常のマンションと比べ、定期借地権付きマンションは比較的安い値段で購入できるのがうれしいメリットです。土地を持っているのではなく、あくまで借りて利用しているだけであるため、通常のマンションよりも安く購入できる傾向にあります。

 

地域やグレードなどにより異なりますが、一般的なマンションよりも約20〜30%も安い値段で購入できるため、できるだけ安く購入したいと考えている人におすすめできます。

固定資産税と都市計画税がかからない

定期借地権付きマンションは、固定資産税と都市計画税がかからないのもポイント。固定資産税は、土地を所有している場合に支払う税金です。土地とマンションのどちらも持っている場合は、土地と建物両方の税金が課されます。土地を所有していない定期借地権付きマンションにおいては、建物分のみとなっています。

 

土地にかかる固定資産税や都市計画税を負担するのは地主側で、マンションを購入した人は支払う必要がありません。そのため通常のマンションと比べ、税負担が少なくなっています。

良い場所に立っている場合が多い

定期借地権付きマンションは、地主にとっては売却したくない、手放したくないような土地に建てられるケースが多いのが特徴です。

 

そのため、好立地にあるケースが多く、都心部や利便性の高い場所にあるのも珍しくありません。

 

また地主側からすると、定期借地権は確実に土地が戻ってくる契約であるため、土地利用に協力してくれるケースも多いです。そのため、本来マンションを建てることが難しかったような土地にも建てることが可能となっています。

鑑定士コメント

特に都心ではマンション適地が限られ、なかなか土地の取得が出来ない状況です。
定期借地権付きマンションは、マンションディベロッパーが土地を手放したくないが貸すだけならよいという地主を説得する良い手段としても使われています。定期借地権だからこそ、良い立地を確保できたということが多く、ランドマークとなるようなグレードの高いマンションが多く見られるようになりました。

定期借地権付きマンションのデメリット

定期借地権付きマンションのデメリット

定期借地権付きマンションのデメリット

定期借地権付きマンションにもデメリットが存在します。デメリットもしっかりと理解したうえで、検討してみることをおすすめします。

 

主なデメリットは以下のとおりです。

 

・最終的に土地を返却しなければならない

・維持費が発生する

・将来的には住み替えが必要になる

・高く売却できない可能性がある

最終的に土地を返却しなければならない

定期借地権付きマンションは原則として、契約期間がきたら土地を返還しなければなりません。そのため契約期間が終了するまでにマンションから退去しなければならず、新たな住まいも探しておかないといけないのが大きなデメリットです。もちろん、子どもに遺産として残すことを目的とした購入にも向いていません。

 

また建物を取り壊して更地にしなければならないため、その際の解体費用がかかる点にも注意が必要です。マンションによっては毎月積み立てている場合もありますが、そうではない場合には一時的に多額の費用が発生するケースもあり、ある程度のまとまったお金を用意しておかなければなりません。

維持費が発生する

定期借地権付きマンションを購入した場合、マンションを維持するための費用が比較的高いところも特徴です。マンションにもよりますが、管理費や修繕積立金はもちろん、通常のマンションでは必要ない解体積立金という維持費がかかるケースもあります。

 

その他にも土地に関する固定資産税はかかりませんが、地主側に地代を支払う必要があります。契約内容によっては固定資産税よりも高いケースもあるほか、地価の変動や土地に関する増税などにより変動するので要注意です。

 

こうした維持費から、一般的なマンションと比べて割高となってしまうケースも多いので、しっかりと理解したうえで検討したほうがいいでしょう。

将来的には住み替えが必要になる

定期借地権付きマンションは最終的に解体されてしまうため、長期的に見ると住み替えについて考えておく必要があります。永遠に住み続けられるわけではないので、資産として残し続けることも不可能です。人によっては老後に住めないケースも考えられます。

 

いずれマンションが解体されるタイミングが訪れることを意識し、それまでに新たな住みかを考えておく必要があります。また契約期間の関係から、自分は最期まで問題なく住み続けられるとしても、将来的に子どもに引き継ぐ場合にはしっかりと説明しておくといいでしょう。

高く売却できない可能性がある

定期借地権付きマンションは借地期間の残りが短くなるにつれ、次に買う人が見つかりにくくなります。

 

たとえば借地期間が50年で、築20年の際に売却すると次の買い手は40年間住めますが、築40年で売却した場合には10年しか住めないうえに、建物が取り壊されてしまうのであまり買いたがりません。

 

そのためマンションを購入した後に、いずれ高く売却しようと考えている人には不向きで、特に借地期間の残りが短いケースには注意が必要です。ちなみに一般的なマンションと比べ、資産価値も低い傾向にあります。

定期借地権付きマンションに向いている人

定期借地権付きマンションに向いている人

定期借地権付きマンションに向いている人

定期借地権付きマンションは、初期費用を抑えたい人や子どもへの相続を考えていない人などに向いています。

 

定期借地権付きマンションは、土地を持たない代わりに比較的安い値段で購入できるのが大きな魅力です。そのためとにかく初期費用を抑えたい人にはぴったりで、場合によっては好立地のマンションを選べるケースもあります。

 

また、子どもへの相続を前提としていない人にも選択肢の一つとしておすすめです。定期借地権付きマンションは最終的に解体されてしまいますが、将来的な物件の扱いについて心配する必要がないともいえます。

 

このように初期費用を抑えたい人や子どもへの相続を考えていない人には有益な選択肢となり得るので、定期借地権付きマンションも併せて検討してみることをおすすめします。

定期借地権付きマンションを購入する際の注意点

定期借地権付きマンションを購入する際の注意点

定期借地権付きマンションを購入する際の注意点

定期借地権付きマンションを購入する前に注意しておくべきポイントがあります。あらかじめ注意点を知っておくことで、マンション選びで後悔してしまうリスクを抑えられるので要チェックです。

住宅ローンの融資額が少なくなる可能性がある

定期借地権付きマンションを購入しようとした場合、住宅ローンの融資額が思ったよりも少なくなる可能性があります。住宅ローンの審査項目にはローンを借りる人の返済能力に加え、不動産の資産価値(担保価値)も含まれているので要注意です。

 

定期借地権付きのマンション価格は、通常よりも20〜30%程度安く購入できる一方で、担保評価は半分以下と判断されてしまうケースも多いです。

 

そのため、たとえ返済能力が高かったとしても受けられる融資額が少なくなる可能性もあります。どれくらいの融資を受けられるかを事前に確認しておくと安心して購入できるのでおすすめです。

長い期間の住宅ローンが借りにくい場合がある

定期借地権付きマンションでは、長期間の住宅ローンが借りられないケースも少なくありません。特に中古の定期借地権付きマンションを購入しようと考えている場合には要注意で、借地期間の残り年数が少ないと住宅ローンの長期設定は難しい傾向にあります。

 

マンションが解体された場合、銀行側からすると担保がなくなってしまうので、基本的に借地権の残存期間を超える住宅ローンは組めないため注意が必要です。

 

一般的なローン返済期間は35年程度であるため、新築で購入した場合には問題ありませんが、中古での購入を考えている人は注意したほうがいいでしょう。ただし、最近は定期借地権付きマンションも増えてきているので、住宅ローンを利用しやすくなっています。

一部が住宅ローン控除の対象外となる場合がある

定期借地権付きマンションを購入した場合、その費用の一部が住宅ローン控除の対象外となるケースもあります。住宅ローン控除とは住宅ローンを借りてマンションを購入した場合において、一定期間所得税や住民税を控除してくれる制度です。

 

ただし、定期借地権付きマンションを購入する際に、土地の賃料を前払いした費用を住宅ローンで補った場合、住宅ローン控除の対象外となってしまうので要注意です。また土地に関する費用もケースバイケースとなっているため、あらかじめ最寄りの税務署で確認しておくといいでしょう。

まとめ:定期借地権付きマンションのメリットとデメリットを理解して検討しよう

まとめ:定期借地権付きマンションのメリットとデメリットを理解して検討しよう

まとめ:定期借地権付きマンションのメリットとデメリットを理解して検討しよう

定期借地権付きマンションは土地を所有しない分、比較的安く購入できるのがうれしいメリットです。また都心部や利便性の高い場所に建っているケースが多いほか、土地にかかる固定資産税や都市計画税がかからないため、通常のマンションよりも税負担が少なくなっています。

 

その一方で最終的に土地を返却しなくてはいけない、将来的に住み替えが必要になるなどといったデメリットもあるので要注意です。

 

しっかりとメリットとデメリットの両面から検討することで、自分に合ったマンションを購入できるので、ぜひチェックしてみてください。

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

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いわゆる「定期借地権」マンションを所有している場合、支払う必要がないものは次のうちどれですか?

答えは 2

解説

土地を所有していないので土地の固定資産税は支払う必要はありません。

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