LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/6/6

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

実家にあったノリタケのコーヒー椀皿。カップラックの丸い足も懐かしい。

 

ときどき名古屋の実家に帰るのですが、うちの実家は1963年ころの建物で、それからリフォームはしたものの建て直したりしていないせいか、はたまた単に貧乏性の物持ちがいいだけなのか、昔のものがたくさんとってあります。

「応接間」と呼ばれていた部屋、今は見る影もなくほぼ物置状態なのですが、そこを漁るといろいろなものが出てきます。

 

先日発見したのはこのコーヒーカップとソーサー。ノリタケ製です。

作り付けのキャビネットの奥にこのカップラックに吊るされて入っていました。

真っ赤なソーサーはノリタケらしい赤で、カップの下の黒い水玉模様とのコントラストがすごくモダンです。デザインからして多分昭和30年代のものだと思います。しかしこの椀皿、一度も見た記憶も使った記憶もない。まさにデッドストックです。

 

 

 

ほかに出てきたのは、このプードルのぬいぐるみとヘンなランプ。

ぬいぐるみは昔ピアノの上に飾ってあった記憶があります。赤い毛はアクリルでそんな素材感も昔っぽい。よく今までそんなに汚れずに残っていたな、と思います。

ランプはウイスキーのアートボトル。岡本太郎です。「シーグラム」と書いてありました。「グラスの底に顔があったっていいじゃないか?」の頃かもしれません。それに電球とシェードをつけてランプにしたのは父です。

 

この三つを発見し面白く思ったのは、みんな「赤い」ってこと。

僕は「昭和レッド」と名付けました。

多分家を新築したころ、もらったり買ったりしたものでしょう。

まだ若かった両親の元気な姿が思い出され、懐かしくなりました。日本という国もまだまだ若く、元気だったんでしょう。

 

以前、クニエダヤスエさんが何かのエッセイで「昔は骨董など目もくれなかった。アメリカンファーマシーでパイレックス買うのが憧れでした。」というようなことを書いてらして驚いたのですが、多分そういう時代。

そう、昔(戦前から戦後しばらく)の家庭にはそんなに色がなかったんじゃないでしょうか。もちろん着物や布のもの、紙のものなどはカラフルなもののあったと思いますが、家の中、居間や台所は、畳や柱の木の色、普段着の藍色、障子やふすまのすすけた白、などでずっと暗く地味だったのではないかと思います。

 

 

 

ここに上げたのは1970年代の「暮らしの手帖」。製品テストのページですが、ここに出てくる家庭用品もとにかくみんなカラフル。

戦後しばらくして景気がよくなり、同時にいろいろな化学材料や新素材がポピュラーになってきて、家庭用品はどんどんカラフルになっていったのでしょう。それらを初めて見た母たちの世代がそれに憧れ、飛びつき、長かった暗いトンネルを抜け出した気分を味わったであろうことは想像に難くありません。

「色」は平和の、幸せの象徴だったのだと思います。

 

今の若い人のなかにはこういうのを「昭和レトロ」などと面白がる人もいますが、ものごころついたときにはすでにこういったものに囲まれていた僕たちの年代は、「ケバケバしい」「ファンシーすぎる」「商業主義的」と嫌い、真逆なナチュラルやミニマムなものを志向したのです。

僕たちの年代はだからエスニック好きだったり、ハイテク好きだったり、とにかく「脱ファンシー」「脱カラフル」でした。

東急ハンズで実験器具を買い、ヨーガンレールの竹の籠に大枚をはたき、無印良品の素材感に共感したりしたのです。

こうやって見ると世代の好みって、結局ひとつ上の世代へのアンチテーゼ、「ないものねだり」なのだな、とあきれます。

 

実家にもあった「カラフル」で「ファンシー」ななべやかん。

 

実家のアルバムを久しぶりに開き、若かった父母の写真を見るときの懐かしさ、を超えたなにか不思議な気持ち。その輝くような若い笑顔に、むしろ過ぎてしまった時間を感じて悲しくなります。

明るくポジティブは「昭和レッド」のものたち。

そこにいまも輝いている母たちの時代の希望に満ちた明るさが、年をとったいまいっそういとおしいと思うのです。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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