LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/5/16

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

「Oriental meeting」という名前のシリーズ。

 

Transferware(トランスファーウェア)という種類の陶器があります。いわゆる転写プリントのことですが、西洋アンティークの世界では19世紀前半のジョージアンからヴィクトリアン初期の時代に、イギリスで量産されたもののことを言います。

手描きで絵付けする代わりに、エッチングされた銅版で絵柄を紙にプリントしたものを陶胎に張り付けて、インキを写し取る手法だそうです。

エッチングならではの細かい柄が特徴ですが、絵付け職人ではなく原画を描く専門の職人がいたのだと思います、絵もなかなかうまく、その時代の特色が表れているのが面白いです。

 

そして何よりも好きなのはその色。コバルトの青が「ブルー好き」の心をそそります。トランスファーウェアにはほかにも黒や紫、茶色やグリーンやピンクなどいろいろなものがありますが、その多くは単色で、その「絵柄は細かいが色はシンプル」なところがストイックというかアカデミック。当時の学術書のページをそのまま写し取ったような真面目さが面白いです。

代表的なのはブルーですが、これにも濃いものや薄いもの、にじんだものなどがあります。なかでもブルーの濃いものは「Dark Blue Transferware」と呼ばれ、時代も古いものが多く、絵柄もよりクラシックで、僕が特に好きなものもそういうタイプです。

 

上の写真と同じ「Oriental Meeting」のティーカップ。 取っ手の無い古いタイプです。多分1830~40年代

 

トランスファーウェアは今でも作られている技法で、たとえばイギリスのメーカー「Spode」などは人気の柄のものを昔から一貫して作り続けていますが、同じパターンを使ってはいてもその色や仕上がりは機械的に均一すぎて味がなく、ものとしての魅力は昔のものにかないません。骨董好きの勝手な言い分ですが。

 

アメリカで買ったチュリーンと皿。皿6枚はセットですが、チュリーンとレードルは違うシリーズです。それでも並べると違和感なく収まります。

 

蓋のつまみは獅子の形。さすが大英帝国!!

 

こういったトランスファーウェアは天下の大英帝国から当時世界各地に輸出されていたらしく、アメリカやオーストラリアやカナダなどのアンティークショップでたくさん見つかります。

アメリカには専門の店やコレクターも大勢いますし、研究書などもたくさん出ています。

 

映画など見ていても、たとえば古い時代のダイニングのカップボードにこういった食器がずらりとディスプレーされている場面が出てきます。開拓時代や南北戦争などの時代、こういった食器は成功者の豊かさの象徴だったのかもしれません。

それでも優雅に洗練されたものというよりは、あくまで当時の量産品。新天地の「勢い」みたいなものが感じられ、食器なのに男性的な感じがします。ヴィクトリアンの優しさとはまた違う無骨な装飾性。そんなところも僕が好きな理由かもしれません。

 

出張で行ったニューヨーク、骨董市で帰国当日の朝買った大皿。直径50センチくらいあります。パッキングした荷物をまた開き、セーターなどに包んで持って帰りました。これはちょっと新しく、19世紀末のもの。花柄の優しさがわかりますか?

 

これらの食器には、シリーズのタイトルがついているものが数多くあります。当時のイギリスの国力を象徴するようなオリエンタルな図柄や、博物学的な図柄のシリーズも多いですし、イギリスらしい田園生活の図柄のものも見かけます。

まさにジェーン・オースティンの世界。ジョージアン好きの自分にとってはたまらない世界です。

 

「Oriental Sports」というシリーズ。 植民地インドでの狩猟のシーンが描かれています。

 

周りに描かれている動物なんかもすごくヘン。

 

同じシリーズの皿を、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館で見つけました。

 

「Pagota」というシリーズのティーセット。 時代のキーワードはやはり「オリエンタリズム」。

 

初めてトランスファーウェアを買った時のことはもう忘れてしまいましたが、昔から実家にあった白地にコバルトブルーのプリントの洋皿などがその懐かしさのルーツかもしれません。

うちではカレーの時は、カレーの皿と呼ばれていた白地にモダンな小花模様のノリタケの皿を使っていましたが、なぜかハヤシライスやハンバーグの時は濃いコバルトのプリントの洋皿でした。デミグラスソースの濃い茶色がコバルトに映え、おいしそうだったことを思い出します。

 

器が料理を選ぶのは当たり前ですが、こういうトランスファーウェアには、やはりちょっとクラシックで、あか抜けない懐かしい料理が似合うような気がします。

子供のころ母が作ってくれた、ハンバーグが食べたくなりました。

 

「Sheltered Peasants」というシリーズ。 嵐を避けて身を寄せ合う農夫の家族、っていう何かロマンチックな図柄です。

 

そして「あか抜けない料理」チキンのローストなど。

 

トマトサラダに冷たいジャガイモのスープ。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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