住めば都も、遷都する2018/5/7

絶海の孤島や奥深い山中でない限り、私たちの住む近くには、いつも誰かが住んでいる。ご近所との関係は、住むということに大きく関わっているのですね。

 

「現在の地域での付き合いの程度」を聞いた調査(社会意識に関する世論調査・内閣府)によれば、「よく付き合っている」(18.3%)と「ある程度付き合っている」(49.4%)を足すと67.7%。約7割の人々は、ご近所とお付き合いがある。多くの場合、たまには、「おすそわけ」なんてこともしているのだろう。

 

小津安二郎監督の「秋刀魚の味」(1962)の中に、アパートのお隣にトマトを借りに行くシーンがある。主人公の秋子は、お隣の玄関口にある電気掃除機を見て「これ、どお。掃除機、具合いい?」と聞く。隣の奥さんは、「はい、これ冷えているわよ」と「うちには、冷蔵庫があるのよね」という思いを込めて、トマトを手渡す。秋子も負けてはいない。「うちも買うことにしたの」と答える。

 

 

高度成長期のご近所付き合いは、こんな見栄の張り合いもあったようだ。いまでも、こんな風に気を使うのは面倒だから付き合いたくないと思う人もいるだろう。

 

先ほどの調査によれば、「あまり付き合っていない」(25.3%)と「まったく付き合っていない」(6.8%)を足すと32.1%である。ご近所との付き合いの現状は、7対3という割合で、「付き合っている」が大半となっている。

 

 

では、望ましい付き合いのあり方とは、どのようなものだろうか。同じ調査によれば、「住民全ての間で困ったときに互いに助け合う」(41.5%)と「気の合う住民の間で困ったときに助け合う」(26.1)を加えると、先ほどの現状として「付き合っている」と答えた率に近い67.6%になる。このタイプは、何らかのカタチで、助け合いたいというHELP系である。

 

一方、残りの人々は、消極的でご近所とはおしゃべりもしたくないのかと言えば、そんなことはない。

 

「困ったときに助け合うことまではしなくても、住民がみんなで行事や催しに参加する」(16.0%)、「困ったときに助け合うことまではしなくても、住民の間で世間話や立ち話をする」(7.2%)、「困ったときに助け合うことまではしなくても、住民の間であいさつを交わす」(6.9%)ことを望ましいとした計30.1%の回答者は、ご近所とのコミュニケーションの大切さを認めているのだ。普段は、少し距離を置いていても、いざというときには、助け合える関係を求めている。いわば、TALK系と言えるだろう。

 

 

このようにHELP系とTALK系を足すと、97.7%。ご近所との人間関係を持ちたくないという人は、ほとんどいない。ちなみに同調査は、18歳以上に実施されている。若い人も含めて、ほとんどの人は、あいさつ以上の関係を持とうと考えているのである。

 

現状としては、3割が「付き合っていない」と答えたが、理想の姿としては、100%近くの人がご近所の人々とコミュニケーションを取りたいと願っているのである。

 

住めば都も、遷都する。転居とは、物理的に住まいを移るだけでなく、ひとつのコミュニティから別のコミュニティに移ることだ。それは、実家というコミュニティから自分の家族というコミュニティを作り出す結婚と似ている。結婚相手との相性を確かめるように、引っ越しの際も、まわりの人々とうまく溶け込めるかを考えた方がいいだろう。

 

 

関沢英彦

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

 

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