住めば都も、遷都する2017/12/11

 

若い頃は、駆け足の旅だった。だが、いまや、時間的にも金銭的にも、ゆとりを持ってどこにでも出かけることができる。加えて、旅行に出かける気力も体力も十分ある。この好機を活かさない手はない。

 

例えば、パリならパッサージュを歩いてみたい。有名な「ギャラリー・ヴィヴィエンヌ」に始まって、まだ、パリ市内に10カ所以上は残っているとか。19世紀にさかのぼる商店街をぶらぶらと。屋根付きだから、寒くもないし。

 

せっかくだから、シャンゼリゼのクリスマス・イルミネーションくらいは楽しむことにして。後は、観光客の行かないところで終日過ごそうか。これも、心にゆとりがあるからできる旅。スケジュールに追われないと、街の見え方も違ってくる。

 

友人がこんなことを言っていた。「できれば、パリを描いた小説を少しずつ読みながら、散策をするといいよ」と。そうすれば、好きな街が内からも外からも、しみ込んでくる。確かに、そうかも知れない。

 

かつて旅した街をていねいに回るのもいいけれど、行くのに時間のかかる南米とか、観光客の少ないバルト三国とか、旧東欧諸国とか、中央アジアとか、いまだから行ける国に出かけるのも楽しいだろう。

 

 

一方、年を重ねると、国内旅行の方が落ち着くという人も多いだろう。とくに目的地もなく、目の前の道をたどっていく。道に迷っても、いざとなれば、タクシーに乗れば、ホテルや旅館に運んでくれる。何といっても、気楽というのが、国内旅行の良い点である。

 

歴史小説を読んだ上で、古都を歩くのは臨場感がある。和歌を味わうにしても、実際の風景を見ると歌人の思いが伝わってくる。古戦場を訪ねることにはまっている友人がいる。彼は、戦いが始まった時刻に丘にのぼって、成り行きをなぞってみるという。

 

もちろん、難しいことは考えず、ただ、温泉につかっているのが旅の醍醐味という人もいるだろう。海や山を眺めながら、ひたすら、のんびりしよう。時には、風景や食事を撮影して、SNSに上げるというのも現代らしい旅の楽しみ方である。

 

若い頃以上に海外に出かける海外派、時間があるからこそ、じっくりと足もとを巡る国内派。どちらも、あわただしい駆け足旅行ではなく、ゆとりのあるスケジュールで、楽しみたい。

 

不思議なことに旅から帰ると、わが家を新鮮に感じられる。客観的に見られるといってもいい。もう少し、住み続けるのか、そろそろ転居を考える潮時かという気持ちの整理もできる。もしかすると、昔、都を移す遷都を決意するときも、旅に出て帰ったときだったのかも知れない。旅行をすると「住めば都」と思っていた風景も冷静に見直せるからである。

 

 

関沢英彦

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

 

 

 

 

 

 

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