住めば都も、遷都する2019/7/29

家のドアを閉める。いまいちど、鍵が締まったことを確かめる。さあ、旅に。この瞬間ほど、心が浮き立つときはない。

 

旅の良さは、解放感。自分をしばるものから、解き放たれて、前へ前へと進んでいく感じがいい。

 

でもね、不思議なことに、ふと、家を思い出すことがある。窓の外を通り過ぎていく風景を眺めながら、昨日の夜は雨が降ったから、わが家の植木たちも喜んでいるかな、などと。

 

いやいや、水やりは頼んできたのだから、心配しなくても大丈夫。旅に専念しようと思い直す。

 

世の中には、2つのタイプの人間がいる。まず、どこへ行っても、そこがわが家という人。「人生は、旅そのものさ」とつぶやいたりする。

 

 

一方、たぶん、こちらが多数派だが、落ち着ける住まいがあるから、旅に出る気力が生まれる人がいる。流浪タイプと定着タイプとでもいおうか。

 

寅さんは、流浪タイプである。いつも、旅に出ている。しかし、彼の場合も、葛飾柴又のさくらたちが住む家に帰れるから、旅に出ていられるのかも知れない。

 

帰るところもなく、旅から旅へは、結構つらいものがある。住めば都も遷都する。住み心地が良いわが家があるからこそ、旅は二度楽しい。

 

フルコースの食事で言えば、旅は出かけているときが、メインの料理。そして、自宅に帰り着いたときの、食後のコーヒーのような安堵感も味わい深いのである。

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

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