LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/12/23

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

パリの手袋店「MURIEL」から届いたキッドの長手袋。 「blanc casse」(壊れた白)というオフホワイト

 

ずいぶん前になりますが、会社で部下だった女子にウエディングドレスを縫ってプレゼントしたことがあります。われながらなんて差し出がましいことをしたのだろうと、今となってはその後輩女子に申し訳なく思っていますが、その時、ドレスのデザインや縫製はもとより、ブーケや式場の花やテーブルデコレーションにまで口を出しコーディネートしました。

中でも忘れられないのは、どうしてもドレスにキッド(羊皮)の長手袋を合わせたくて、フランスから取り寄せたこと。

ネットなどないその時代、そのころ親しくしていたパリ在住のコーディネーター、ダグラス・ライオンさんに色々調べてもらい、彼が探し出してくれたのが上の写真の手袋店「MURIEL」です。

日本から注文するときに、サイズを測って送るのですが、「手の長さ」「指の長さ」「手の甲の周り」「手首の周り」など考えられるサイズは測って送ったのですが、ほかに何かサイズが必要か聞いたところ返ってきた答えはなんと「足の幅」。

 

私がデザインし縫ったドレスを着た新婦と私。「MURIEL」の手袋、これはハーフ丈。

 

お色直しのドレス。こちらの手袋は3/4丈。

 

足の幅、というのは「E」とか「EE」とか「EEE」とかいういわゆる「width」のことです。それにより、手の肉付きがわかる、というのです。

このことにはコーディネーターのライオンもビックリ。当時彼がリサーチャーをやっていたTV番組「なるほどtheワールド」のクイズになる!と面白がっていました。

 

結婚式はいまはなき「ホテル西洋」で執り行われたのですが、式場の係の女性が「キッドの長手袋、初めて見ました。触らせてください」と感激していた、ということです。

 

いろいろなところで買ってきた手袋たち。左上2点、黒とキャメルは「ペッカリー」。

 

結婚式の手袋は特別なものですが、クラシックな装いには欠かせない普通の「手袋」も昔から好きでした。

よく出張などでイタリアなどヨーロッパの街に行くと、季節にかかわらず手袋屋さんを覗いて、お土産に自分用に、手袋を買っていました。

しかし、男物の手袋は外国だとだいたい大きすぎて、僕はたいてい婦人物の手袋の中から選びます。かの地では「手袋をはめたまま、お札を数えられなければならない」ともいわれ、ぴったりフィットしたペアをきちんと試着して選びます。

まずタルカムパウダーを手にまぶされ、カウンターの上に置かれた「肘乗せ台」に肘を乗せ、店員さんに手袋をはめてもらいます。僕の手は人差し指が短く、人差し指の先が余ってしまうことが多く、「あなたの手に合う手袋はありません」と断られたことも。

そのくらいフィット感に気を使います。そんなところは日本の足袋屋さんに似ているかもしれません。

 

好きな素材は「ペッカリー」といわれる野豚の革のもの。裏のない一枚仕立てのものが好きです。縫い方はアウトステッチという、縫い目が表に出た縫い方がいいですね。そんなに寒くない東京の冬などはこれで十分です。

寒いとき用には裏にカシミヤのニットが張られているものがあります。これはさすがにあったかく、しかもカシミヤの肌触りが気持ちよく、はめるたびに寒かったミラノの冬などを思い出します。

 

裏にカシミヤのニットが張られた手袋。あったかいです。

 

そんなおしゃれな手袋ですが、最近は重要な問題が発生しています。そう、スマホ問題です。

先日とってもおしゃれなパーティがあり、そのパーティには特別なドレスコードがあったので、素敵なロンググローブをはめた女性が大勢いらっしゃいました。そんなかたたちが異口同音に言われたのが「写真が撮れない!!!」。

シャッターチャンスがあっても手袋を脱ぐのに間に合わず、結果写真が全然撮れなかった、と嘆いていらっしゃいました。

 

パーティではしかたないとして、普段向きの実用的な手袋にはスマホ対応のものも出ています。先日「UNIQLO」で買った手袋もはめたまま操作ができるような特殊加工がされていました。それはニット手袋でしたが、もしかしたら革の手袋にもそういう加工のものが出ているのかもしれません。そうなればもう怖いもん無しですね。

テクノロジーの進化はいろんなものを変えていきますね。

 

スマホがタッチできる手袋。ちょっとだけ色が違うのはわざとのデザインかな?

 

仲良くさせてもらっている歌手の野宮真貴さんは、もちろんおしゃれ番長としても有名ですが、彼女こそ普段のおしゃれにも上手に手袋を使ってらっしゃいます。

以前打ち合わせでお会いした時、彼女は装いに合わせて深いグリーンの手袋をしていました。

その手袋を外したり、手に持ったりするしぐさがとても素敵でエレガントで、今でも忘れられません。忘れていた美しさだと気づきました。

もちろん、「差し色」というビジュアルとしての効果もあります。手袋という小さな色の面積が、装いをピリッと締めるのです。

 

自分の場合、男の装いはどうしてもアイテムが少ない。特に冬はコートのダークな色がカラダのほとんどの面積を占めてしまいます。だからこそ小物で色を効かせたいのですが、そのために男も手袋を使ってもいいのではないかと思いました。

そうして買ったのが写真の赤い手袋。

ダークな冬の装いに、ダークな冬の街に、きれいな赤はピリッと小粋な一点として輝いてくれると思うのです。

黒や茶色の手袋にくらべ、失くしにくいんじゃないか?と期待もしているのですが。

 

ヴィンテージ建築として有名な目黒区役所で撮影された、野宮真喜さんのジャケット写真。50年代ふうにしたい、ということでコレクションしていた帽子や手袋をお貸ししました。

 

そのときに野宮さんがつけてくれた黒いキッドのロンググローブ。手首をボタンでフィットさせるようになっています。「なにかのときのため」イタリアで買ってきたもの。

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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