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更新日:2024.07.20
登録日:2023.06.26

不動産鑑定評価基準とは?評価の方法や不動産価格の決まり方を解説

不動産鑑定評価基準とは?評価の方法や不動産価格の決まり方を解説

不動産は、その特性から適正な価格がわかりにくいものの1つです。そのため、不動産の価格を適正に決められるように「不動産鑑定評価基準」というものが設けられています。では、不動産鑑定評価基準とはどのようなものなのでしょうか。

本記事では、不動産観点評価基準とは何か、不動産の価格はどのように決まっているのかについて詳しく解説します。不動産の価格が決まる要因についても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

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不動産鑑定評価基準とは

不動産鑑定評価基準とは

不動産鑑定評価基準とは

不動産鑑定評価基準とは、不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行う際に準拠すべき評価基準のことです。1964年に国土交通省によって制定され、時代の変化とともに改正が行われてきました。不動産とは、「土地」とその土地に建てられた「建築物」などのことを言います。

 

参照:「不動産の鑑定評価に関する法律

 

不動産は、その他の一般的な諸財と異なり「その場所に固定されて持ち出すことできない」、「埋め立てなどを除いて新たに生産できない」、「同じものがない」などの特徴があります。不動産によって性質が異なるため、適正な価格を求めるのは容易ではありません。

 

そこで、適正な不動産鑑定評価を行うための規範として活用されるのが不動産鑑定評価基準です。不動産の価格は、一般的に下記のような要因を元に決められます。

 

・認められる効用

・相対的希少性

・有効需要

不動産鑑定士とは

不動産鑑定士とは、その名の通り不動産の鑑定評価を行うプロフェッショナルです。不動産鑑定法に基づいて制定された国家資格であり、試験に合格して実務修習を行ったうえで、国土交通省に備える不動産鑑定士名簿に登録されることで不動産鑑定士を名乗ることができます。不動産鑑定士の仕事は、主に下記の2つです。

 

・不動産の適正価格の算出

・不動産の適正利用

 

不動産の経済価値について、市場経済や法規制、地理的情報などのさまざまな要因を元に鑑定評価を行います。また、投機的な取引が行われないように、不動産が適正に取引・利用されるようにするのも不動産鑑定士の仕事です。

 

なお、不動産鑑定士の費用については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

不動産鑑定士の費用相場はいくら?鑑定と査定の違いや選び方も解説

不動産鑑定評価書とは

不動産鑑定評価書とは、不動産鑑定士が不動産を鑑定評価した際に、その結果を文書として記したものです。さまざまな場面で利用される公的文書であり、不動産鑑定法第39条に定められた通り鑑定評価を行った際に依頼者に対して交付しなければなりません。

 

不動産鑑定評価書には、不動産の評価額だけではなくなぜその評価額になったのか、理由や評価するうえで収集した物件の詳細についてまとめられています。

 

なお、不動産鑑定評価書については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

不動産鑑定評価書の基本的な読み方は?押さえておくべき項目を解説

不動産鑑定評価の目的

基本的に、個人が不動産を売買する際、不動産鑑定評価を行う必要はありません。不動産会社のもと、売主と買主の両方が同意した場合は基本的に売買は成立します。

 

しかし、ほとんどの人は適正な価格で不動産を売買したいと考えるでしょう。不動産はその性質上、個人での取引価格に適正な価格が反映されているとは言い切れません。

 

そのため、適正な価格で取引するためには不動産鑑定評価を行う必要があります。また、下記のような場合においては適正な価格が必要になるため、不動産鑑定評価を行う必要があるでしょう。

 

・不動産に掛かる税金を算出する場合

・不動産を担保にする場合

・相続時に複数人に分配する場合

・親族間で不動産取引する場合

・不動産を賃貸借する場合

不動産鑑定評価基準における価格の種類

不動産鑑定評価基準における価格の種類

不動産鑑定評価基準における価格の種類

不動産鑑定評価基準での主な価格には、以下の2つが挙げられます

 

・正常価格

・特定価格

 

ここでは、上記2つの価格の意味に加え、不動産を売却するか保有するかの判断に用いられる市場価格と投資価値の違いを解説します。

 

正常価格

正常価格は、売り手と買い手の双方に特別な事情がない状況で、不動産の売買時に両者が承諾した取引価格のことです。

 

例えば、一般的な戸建て住宅の場合、売り急ぎや買い進みなど特別な事情のない場合に成立すると考えられる価格を指します。

 

つまり、一般人が普通に取引した際に、成立するであろう市場価値を表した金額です

特定価格

特定価格は、法令といった社会的な要請がある際に、それらを考慮して算出する価格のことです。

 

例えば、自己破産や倒産などのために、法令に基づき財産が処分されるというケースが該当します。

 

つまり、市場性のある不動産について、正常価格の前提となる諸条件に当てはまらない場合における不動産の適正価格です

 

市場価格と投資価値の違い

市場価格と投資価値の違いは以下の通りです。

 

市場価格

誰が投資・購入しても変わらない価値のこと

投資価値

投資・購入する人によって変わる価値のこと

 

市場価格の例としては、為替や債券、株式などの金融商品を対象にした投資が挙げられます。

 

市場での売却が想定される価格のことを指し、誰が投資家でも同じ価値をもたらすのが特徴です。

 

一方で投資価値の例としては、商業施設を建てるための不動産が挙げられます。

 

例えば、流通業のA社は進出済みで同業B社は未進出なら、その不動産の価値は進出意欲がより高いと想定されるB社のほうが高くなると考えられます。

 

このように、誰が取引するかによって異なるのが投資価値です。

 

上記の市場価格と投資価値は、不動産をすぐに売却すべきか保有しておくべきかの判断材料として用いられます。

不動産鑑定評価の方式

不動産鑑定評価の方式

不動産鑑定評価の方式

不動産鑑定評価の方式には、下記3つがあります。それぞれの方式について、価格の算出方法を詳しく見ていきましょう。

 

・原価法

・取引事例比較法

・収益還元法

原価法

原価法とは、再度対象の不動産を建築した場合に掛かる費用をもとに適正価格を算出する方式です。原価法では、下記の計算式で不動産の適正価格を算出します。

 

「再調達原価 - 減価修正 = 試算価格(積算価格)」

 

再調達原価とは、鑑定評価を行う時点の価格で不動産を再建築する際にかかる費用のことです。土地の場合、取得費用に加えて造成工事や付帯工事費、造成業者の適正利益なども加わります。

 

減価修正とは、経年劣化や設備の老朽化、市場価値の減少などによる差引額です。建物はどうしても劣化してしまうため、その分の費用を再調達原価から差し引きます。

取引事例比較法

取引事例比較法とは、対象の不動産と同条件の不動産が実際にどれくらいの価格で取引されているかという、市場によって不動産を評価する方式です。取引事例比較法で不動産鑑定評価を行う場合、まず多数の取引事例を収集する必要があります。

 

収集した事例から対象の不動産と近しい条件の事例を選択し、必要に応じて事情補正・時点補正を行って試算価格を算出します。取引事例比較法は、近隣地域や同一需給圏内の類似地域などにおいて類似の不動産取引が行われている場合に有効な方式です。

収益還元法

収益還元法とは、対象の不動産が将来生み出すと想定される利益をもとに価格を算出する方式です。具体的には、対象の不動産を賃貸に出した場合にどれくらいの賃料を得られるかを求め、そこから逆算して不動産の価格を求めます。

 

収益還元法には、「直接還元法」と「DCF法」の2つの算出方法があります。直接還元法は、一定期間の純利益を還元利回りで割ることで求めることが可能です。一方、DCF法は対象の不動産の保有期間における純利益と、不動産を売却して得られる価格を現在価値に当てはめた価格を合算することで求められます。

鑑定士コメント

不動産鑑定評価を行う際、評価に用いる方式は1つではなく、原則3方式を使います。3方式により求められる価格はそれぞれ異なるのが通常で、どの方式で求められた価格が規範性があるか、どの価格を重視するかは不動産鑑定士の判断となります。また、1つの方式の中でも、どの事例を重視するかなど、不動産鑑定士の判断による部分がいくつもあります。これらが、不動産鑑定士ごとに評価額が異なる理由でしょう。信頼性が高いデータに基づいて、客観的視点で分析できる不動産鑑定士がより質の高い不動産鑑定士といえるでしょう。

不動産の価格が決まる要因

不動産の価格が決まる要因

不動産の価格が決まる要因

不動産の価格が決まる要因には、主に下記の3つがあります。それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。

 

・一般的要因

・地域要因

・個別的要因

一般的要因

一般要因とは、一般経済社会において不動産価格の水準に影響を与える要因のことです。一般的要因は複数あり、それぞれ下記のような要因があります。

 

要因

自然的要因

・地質、地盤等の状態

・土壌及び土層の状態

・地勢の状態

社会的要因

人口の状態

家族構成及び世帯分離の状態

都市形成及び公共施設の整備の状態

経済的要因

・貯蓄、消費、投資及び国際収支の状態

・財政及び金融の状態

・物価、賃金、雇用及び企業活動の状態

行政的要因

・土地利用に関する計画及び規制の状態

・土地及び建築物の構造、防災等に関する規制の状態

・宅地及び住宅に関する施策の状態

地域要因

地域要因とは、その不動産が立地する地域の事情などの要因です。都道府県や市町村などの自治体ごとに決められた条例など、地域特性が不動産価格に影響を与える可能性があります。地域の種類ごとに、それぞれ下記のような要因が考えられます。

 

地域

住宅地域

・日照、温度、湿度、風向等の気象の状態

・街路の幅員、構造等の状態

・都心との距離及び交通施設の状態

商業地域

・商業施設又は業務施設の種類、規模、集積度等の状態

・商業背後地及び顧客の質と量

・顧客及び従業員の交通手段の状態

工業地域

・幹線道路、鉄道、港湾、空港等の輸送施設の整備の状況

・労働力確保の難易

・製品販売市場及び原材料仕入市場との位置関係

個別的要因

個別的要因とは、不動産の価値に影響を及ぼすような個別性を生じさせる要因のことです。同じエリアにある不動産であっても、個別的要因によって価格が異なるということは珍しくありません。個別的要因には、下記のようなものがあります。

 

 

区分

土地

・地勢、地質、地盤等

・日照、通風及び乾湿

・間口、奥行、地積、形状等

・高低、角地その他の接面街路との関係

建物

・建築(新築、増改築等又は移転)の年次

・面積、高さ、構造、材質等

・設計、設備等の機能性

・施工の質と量

鑑定士コメント

不動産鑑定を依頼する最大のメリットは、客観的に専門家による対象不動産の適正な価格を知ることができることです。それを指針として動けますので、自己判断だけに頼って後で後悔することを防げます。売主と買主のどちらの立場においても、価格に納得して売買できるようになります。また、価格だけでなく、対象不動産の存するエリアの特性や将来動向、「最有効使用」と言われる不動産の一番有効な活用方法についても助言を受けられます。

まとめ:不動産鑑定評価基準の概要を理解し必要に応じて不動産鑑定評価を依頼しよう

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不動産鑑定評価基準は、価格を決めるのが難しい不動産の適正価格を決めるための評価基準です。不動産鑑定を行わなくても、不動産の売買は可能です。

 

しかし、正しい鑑定評価を受けた価格でなければ行えない手続きもあります。不動産鑑定士が基準に沿って算出した価格は社会的にも認められた適正価格であるため、必要に応じて不動産鑑定評価を依頼しましょう

#不動産 鑑定評価基準 #不動産鑑定評価基準 留意事項 

 

参考文献・サイト

選ぶまえに知っておきたいマンションの常識 基礎編

選ぶまえに知っておきたいマンションの常識 実践編

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

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