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2023.02.10

沖積層とは?マンションの地盤と耐震性の関係を解説

沖積層とは?マンションの地盤と耐震性の関係を解説

マンションを選ぶ際、耐震性などに注目する人は多いでしょう。マンションの耐震性は、マンションそのものの構造だけではなく、その土地の地盤も大きく影響します。沖積層などの地盤を、聞いたことがある人がいるのではないでしょうか。

本記事では、マンションの地盤と耐震性の関係や地盤の種類、安全性を調べるための資料などについて解説します。マンションの地盤の構造や新しくできた受託地の地盤、液状化が起こりやすい地盤についても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

マンションの地盤の重要性とは

マンションの地盤の重要性とは

マンションの地盤の重要性とは

免震マンションの耐震性において、とくに重要となるのが地盤です。マンションは、下記3つのいずれかの構造によって耐震性を確保しています。

 

  ・免振

  ・制震

  ・耐震

 

免振とは、建物と地盤の間に「免震装置」を設置する構造です。地震が起きた際、そのエネルギーを免振装置が吸収することで、建物の揺れを抑えます。

 

制震とは、建物の柱や梁などの主要構造部材に「制震装置」を設置する構造です。地震エネルギーを制振装置が吸収することで、主要部材が損傷することを防ぐとともに建物の揺れを収束します。

 

一方で耐震は、装置を設置するのではなく主要構造部材をより頑丈なものにすることで、揺れに耐える構造です。地震エネルギーを吸収する装置がないため、建物がおおきく揺れてしまう可能性があります。


マンションでは、さまざまな耐震構造によって地震への備えを行っていますが、地盤が弱ければその効果は発揮できません。たとえ構造のおかげで建物が無事であっても、地盤沈下などによって地面が傾いてしまう恐れがあるからです。

地盤の種類とは?

地盤の種類とは?

地盤の種類とは?

地盤には、さまざまな種類があります。とくに代表的な地盤は3つあり、一般的な地盤は上から順に下記の並びで形成されています

 

  ・表層地盤

  ・沖積層

  ・洪積層

 

それぞれの特徴や、マンション地盤としての耐震性について解説します。

表層地盤

表層地盤とは、地表から数十メートル付近までの地盤のことです。地域によってはローム層とも呼ばれ、後ほど解説する2つの層と比べるとはるかに柔らかく、マンションの地盤として向いていません。


表層地盤は地域によって形成している物質が違い、関東の場合は富士山の火山灰が堆積したものです。また、この赤土の部分は「関東ローム層」とも呼ばれています。

沖積(ちゅうせき)層

沖積層とは、約1万年前から現在にかけて堆積した土砂によって形成された地盤です。比較的新しい地盤であり、主に下記4つの層に分けられます。

 

  ・礫層

  ・砂層

  ・粘土層

  ・腐食土層

 

沖積層において、マンションの地盤として向いているのは「礫層」と「砂層」です。この2つの層は、よく締まっているため液状化が起こりにくい傾向にあります。ただし、なかにはゆるい砂層もあり、地下水位が高い場合は液状化が怒りやすくなるので注意が必要です。

 

「粘土層」と「腐食土層」は、地盤が軟弱なためマンションの地盤には向いていません。とくに水分を多く含む腐食土層は、地盤沈下が起こりやすい地盤です。

 

同じ沖積層でも、層によってマンションの地盤に向き不向きがあるため、よく確認する必要があるでしょう。

 

 

洪積(こうせき)層

洪積層とは、約100万年から1万年までに形成された礫層や砂層、または火山灰などが堆積してできた「ローム層」からなる地盤です。沖積層に比べて固い地盤だといわれており、マンションの地盤に向いています。

 

よく「台地」が住宅などを立てるのによい土地と言われていますが、これは洪積台地という土地があるからです。洪積台地は、川や海によって地表が削られた結果、良質な地盤である洪積層が台地として残った土地のことをいいます。

 

関東では、武蔵野台地などをはじめとして多くの洪積台地があり、洪積層はマンションにかかわらず多くの建築物において良質な地盤です。

 

洪積層は、以下の記事で詳しくご紹介しているので、お読みください。

洪積層とは?よい地盤と悪い地盤を見分ける方法を紹介

地震への安全性を調べる資料

地震への安全性を調べる資料

地震への安全性を調べる資料

マンションを探す際、そのマンションの地盤がどのようなものか知ることは重要です。しかし、地面を見ただけではどのような地盤かわかりません。

 

その土地の地盤の良否を確認するには、下記3つの資料を確認するとよいでしょう。それぞれどのような資料か、詳しく解説します。

 

  ・表層地質図

  ・土質柱状図

  ・液状化予測図

表層地質図

表層地質図とは、国土交通省が「5万分の1都道府県土地分類基本調査」として公開している、地表5メートルから数十メートルの表層の地表がどのような状態かを表した資料です。各種国土の開発・保全や土地利用などの計画策定を目的として、土地の自然要素である地形や表層地質、土壌などを縮尺5万分の1相当の精度でまとめられています。

 

各県や市区町村ごとにまとめられているため、検討している土地の表層地質をピンポイントで調べられるでしょう。昭和27年から順次更新されており、表層地質図を見れば沖積層や洪積層などの層の違いによる地盤の強弱を把握できます。

土質柱状図

土質柱状図とは、ある地点の地質断面図を見るための資料であり、ボーリングなどによる地質調査の結果を示したものです。断面的な地質の構成や地層の硬さなどを知ることができ、該当の土地における地盤の構成や硬軟、支持基盤の深さがわかります。支持基盤とは、建物を支えるだけの耐力のある地盤のことであり、この地盤まで杭や基礎を設置することでマンションを安定した構造にできるのです。

 

土質柱状図で確認できるのは、あくまで過去に実際に調査したポイントのみの結果です。そのため、ポイント周辺は参考データとして見る必要があります。地下の地盤は、調査ポイントから数メートル離れると異なる場合もあるため、確認の際は注意が必要です。

液状化予測図

液状化予測図とは、地盤の液状化のしにくさ・しやすさを相対的に表した資料です。どの程度の地震で地面が液状化するかを、段階的に予測しています。

 

液状化とは、地震によって激しく揺さぶられた地盤が液体状になることです。砂層などの地盤は、砂の粒子が結びついて支えあっています。地震によって繰り返し揺さぶられることで地中の地下水の圧力が高くなってしまうと、その水分によって砂の粒子の結びつきが弱くなってしまい、地面が液状化してしまうのです。

 

地盤が液状化してしまうと、水よりも重い建物が沈んでしまったり、反対に軽いマンホールなどが浮き上がったりする場合があります。このような液状化の起こりやすさを知ることができるのが液状化予測図です。

マンションの地盤の構造

マンションの地盤の構造

マンションの地盤の構造

マンションの耐震性は、地盤の構造によって決まります。では、マンションのような大きな建物はどのような構造になっているのでしょうか。

 

まず重要なのは、マンションを建設する場所やその地面です。マンションを建設する際は、はじめにボーリング調査などによって地質調査を行います。地質調査を行うことで、支持基盤の深さがわかるでしょう。その後、基礎構造体としての杭を支持基盤まで打ち込みます。

 

支持基盤に打つ杭の本数は、マンションを設計する際の構造計算によって決まるのです。一般的には、先述したとおり洪積層などのような固い地盤の上にマンションを建設するのが理想ですが、かならずしも上層が固い地盤である必要はありません。


上層が軟弱な地盤であっても、その下にある堅固な地盤まで杭を打ったり地盤を改良したりすれば、マンションを支持することができるでしょう

鑑定士コメント

一番分かりやすいのが、マンションが分譲時に作られたカタログでしょう。1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災とそれぞれの契機により、マンションの耐震性はアピールポイントとして認知され、カタログに説明されることが多くなっています。支持地盤がどれくらいの深さで、杭を何本打っているか、という説明がビジュアル付で説明していることが多いです。

地盤の硬さはどのようにしてみるか?

地盤の硬さはどのようにしてみるか?

地盤の硬さはどのようにしてみるか?

地盤の硬さは、先述した「表層地質図」などのほかに、土地の高低を知ることでもある程度予測できます。地盤が軟弱になる原因のひとつは、液状化などの原因にもなる水分です

 

周囲と比べて低い土地は、地下に水が集まってたまりやすい傾向にあります。また、過去に河川や湖、沼であった可能性も高いです。そのため、周囲と比べて地盤が軟弱な可能性があるでしょう。

 

地盤の軟弱さ以外にも、大雨の際などに浸水被害に遭う可能性も高いため、周囲と比較してできるだけ高い土地を選ぶのが無難です。地図を見ることで土地のある程度の高さはわかるため、一度確認してみるとよいでしょう。

新しくできた住宅地は地盤が良くないのか?

新しくできた住宅地は地盤が良くないのか?

新しくできた住宅地は地盤が良くないのか?

「新しくできた住宅は地盤がよくない」と聞いたことがある人がいるのではないでしょうか。結論から言うと、新しくできた住宅地だからといって地盤がよくないということはありません

 

新しく住宅地を建設する際、かならず事前にボーリング調査などによって地質調査を行っています。その結果、住宅地として問題ないと判断されているため、一概に地盤が悪いわけではないということを認識しておきましょう。

液状化が起きやすい地盤はどれか?

液状化が起きやすい地盤はどれか?

液状化が起きやすい地盤はどれか?

地震の際に問題となる液状化ですが、どのような地盤で起きやすいのでしょうか。一般的には、下記のような場所では液状化が起こりやすいとされています。

 

  ・粒度がそろった砂を中心とした地盤

  ・粒子の結びつきがゆるい地盤

  ・地下水位が高い土地

  ・埋め立て地などの臨海部や河川敷、低湿地など


液状化のポイントは、地盤を構成する粒子の結びつきの強さと水分です。粒子の結びつきが強ければ、少しの水分では結びつきがほどけず液状化しません。しかし、結びつきがゆるいと水分によって粒子がバラバラになり、液状化してしまいます。

鑑定士コメント

まずは記事にある通り、一般的に公開されている表層地質図、土質柱状図、液状化予測図

を確認することです。その上で、個別のマンションが建てられた時のカタログに記載された内容も参考になります。また、ここらの土地は地盤が良い、良くないという情報は案外その土地で語り継がれ、長く住んでいる人は知っていることが多いです。例えば何代にも渡ってそこで商売をしているお店など、その地域の長老的な存在の人に聞いてみるのもいいかも知れませんね。

まとめ:地震に対する強さは地盤の状況も大切

まとめ:地震に対する強さは地盤の状況も大切

まとめ:地震に対する強さは地盤の状況も大切

マンションの耐震性には、地盤の強さも大きく影響します。マンションを選ぶ際、構造による耐震性に目が行きがちですが、その土地の地盤にも目を向けて事前に確認しておきましょう

 

地盤にはさまざまな種類があり、特にマンションの地盤に向いているのは洪積層です。また、礫層や砂層の沖積層も比較的向いている地盤でしょう。ただし、砂層の場合は周囲との高低差や地下水位などにも注意する必要があります。

 

土地の地盤を調べる際は、表層地質図や土質柱状図、液状化予測図の3つがあるため、必要に応じて確認が必要です。地盤の状況を確認して、地震に強いマンションを選びましょう。

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

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マンションを建てる際の杭はどこまで打ち込みますか?

答えは 2

解説

マンションを建てる際の杭は支持地盤まで打ち込みます。

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