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更新日:2024.09.24
登録日:2024.11.15
小津映画「東京物語」・紀子のアパートを探せ!!:最後に、調査を終えて
日本映画界70年来の謎を解き明かす“マンション図書館”の挑戦、ついに完結!
調査・検証内容は以下のとおりである。
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調査編
①小津安二郎監督の傑作“東京物語”とは
②鉄筋コンクリート造集合住宅の範となった“同潤会アパート”
③“紀子のアパート”室内の特徴
④“紀子のアパート”共用部分の特徴
⑤“紀子のアパート”外観の特徴
検証編
①“URまちとくらしのミュージアム”で「外観」の検証
②”紀子のアパート”内部の検証
最後に:調査を終えて
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【前回の記事】
小津映画「東京物語」・紀子のアパートを探せ!!:検証編①「“URまちとくらしのミュージアム”で「外観」の検証」
「もしや、内観と外観は別のところで撮影されたのか…?」日本映画界70年来の謎を解き明かす“マンション図書館”の挑戦、検証編②にてついにあの場所に特定!!
調査を終えて
“東京物語”の“紀子のアパート”はどこなのか、という日本映画界70年来の謎に全力で挑んだ結果、「外見は平沼町アパート/内部は山下町アパート」と一定の結論に達したわけだが、いかがだったであろうか。“紀子のアパート=(室内も)平沼町アパート”とする資料がかなり多かったが、階段室が多い=二戸一階段の“世帯向き”構造である時点で、六畳一間が内廊下沿いにずらりと並ぶ室内シーンと明らかに相違があるのに、定説となっているのは驚きを隠せなかった。
既に同潤会アパートは全16件が取り壊されていて実地調査のしようがなく、今回の平沼町・山下町に至っては1982年(昭和57年)・1987年(昭和62年)と、同潤会アパートの中でも早々に解体されてしまったことから、もはや研究されつくした(と思われていた)小津映画の“定説”を覆すだけの検証が進んでこなかったのだろう。
同潤会平沼町アパートの後身:モンテベルデ横浜
他にも、室内は“青山アパート”であるとか、“東京都中央区内の公営住宅”とするものもあったが、青山アパートには独居向きの設定が無いし、“中央区内の公営住宅”に至っては何を根拠としているのかがわからなかった。そもそも、1953年の時点で既に建っていた鉄筋コンクリート造の公営住宅は数えるほどしかなく、史上初となる“東京都営高輪アパート”が1947年=昭和22年竣工に建ったばかりであった(1990年=平成2年解体)。
加えて、高輪アパートをはじめとした戦後の公営住宅は、そもそも家が無かったり、粗末なバラック小屋での生活を強いられた戦争被災者の住宅難を救うのが第一義である(世帯数に対する住宅数自体が圧倒的に不足していた)。比較的生活に余裕がある層であった“独居向き”の給与所得者向け住宅などは、公が供給するにはまだまだ優先度が低かったし、あったとしても築数年ではピカピカ過ぎて、そもそも戦前に“昌二がここに帰ってきた”わけがない。よって、独居向きの公営住宅で撮影が行われたというのも、戦後8年という時期ではいささか無理がある。
その点、山下町アパートで内部の撮影が行われたというのは、映画のカットからわかることだけでも、一定の納得感が得られるのではないだろうか。平沼町アパートで外観の撮影を行い、横浜市内を少し移動し、山下町アパートで内部の撮影を行ったとすれば、撮影スケジュールの構成としても合点がいくものだ。惜しむらくは同潤会アパートの実物が1棟も現存せず、公開が70年以上前とあって小津監督や原節子ほか関係者の殆どが鬼籍に入っていては、これ以上の検証のしようがないことだ。
ただ、黒澤明監督と並び、世界的に影響を与えた日本人映画監督である小津安二郎監督の、それも代表作であっても、まだまだ未解明のことがあり、その長年の謎に対して一石を投じることができたのは、“マンション図書館”としても、私個人としても意義深いことであったと思う。
▲山下町アパートの最寄駅、みなとみらい線「元町・中華街」(2004年開業)。1953年当時の山下町に鉄道はなかったが、その後根岸線「石川町」(1964年)と並んで2駅が設けられた。
“研究し尽くされていると思われる定石”であっても、真正面から問い直し、研究を進めることで新たな知見が得られることを、今回の“紀子のアパートを探せ!”で学ぶことができた。また、取材に快くご協力いただいた“URまちとくらしのミュージアム”、UR都市機構の皆様に、改めて御礼申し上げる。“マンション図書館”では、引き続きマンションや集合住宅に関する謎について取り上げてゆきたいと考えているので、今後の展開にもぜひご期待いただきたい。
「マンション図書館」館長・井出 武 からのメッセージ
私は、世界的に非常に評価が高い『東京物語』が大好きで公開後生まれにもかかわらず、今も頻繁に観ています。仕事柄もあり「紀子の部屋」と窓から見える風景がどこにあるのかに興味を持ち、アパートがどこにあったのかがわかると良いな、と思っていました。まさかここまで調べられるとは思ってもみませんでした。当然ですが、この調査結果は一考察に過ぎず、世界の金字塔たる作品をいささかも傷つけるものではありません。まだ、ご覧になっていらっしゃらない方は、素晴らしい「東京物語」をぜひ一度ご覧ください。
マンション図書館館長 井出 武
“URまちとくらしのミュージアム”についてはこちらも参照
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※特記以外の画像は2024年5月筆者撮影。マンション図書館内の画像は当社データベース登録のものを使用しています。無断転載を禁じます。
※同潤会アパート関連の内容は、一部下記サイトを参考にしました。
https://hamarepo.com/story.php?page_no=1&story_id=1546
https://tanken.com/tatemono/code-85/index.html#google_vignette
https://hama80s.exblog.jp/26050890/
https://blog.goo.ne.jp/chuka-champ/e/2d0dc29999eec3fa7041e9213b5d745f
賃貸不動産経営管理士
佐伯 知彦
大学在学中より郊外を中心とする各地を訪ね歩き、地域研究に取り組む。2015年大手賃貸住宅管理会社に入社。以来、住宅業界の調査・分析に従事し、2020年東京カンテイ入社。
趣味は旅行、ご当地百貨店・スーパー・B級グルメ巡り。
東京カンテイ上席主任研究員
井出 武(マンション図書館館長)
1989年マンションの業界団体に入社。以後不動産市場の調査・分析、団体活動に従事。
現在、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員として、不動産マーケットの調査・研究、講演業務等を行う。
『BSフジLIVEプライムニュース』、『羽鳥慎一モーニングショー』、不動産経済オンライン、文春オンライン、日本経済新聞など多数のwebメディア、新聞、TV等へ出演実績あり。
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