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更新日:2023.11.22
登録日:2023.11.22
長期修繕計画書とは?見るべきポイントや書き方を紹介
「長期修繕計画書には何が書かれているの?」
「長期修繕計画書の作成方法がわからない…」
マンションの長期修繕計画書を作成する際には、上記のように悩んでしまう人もいるのではないでしょうか。
本記事では、長期修繕計画書の具体的な内容や、見るべきポイントについて詳しく解説しています。作成手順や作成時の注意点などもあわせて紹介しているので、最後まで読めば長期修繕計画書の作成方法がわかります。ぜひ参考にして、自分の住むマンションに合った修繕計画を立ててください。
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長期修繕計画書とは
長期修繕計画書とは
長期修繕計画書とは、マンションにおける修繕工事の計画を、長期的に取り決めて記しておく書類のことです。国土交通省によると、マンションの管理組合には長期修繕計画書の作成義務が課せられる決まりです(※)。
マンションを含む建物は、築年数が古くなるほど、ひび割れやタイルの剥がれなどの劣化が発生しやすくなります。劣化した部分を放置すると後々重大なトラブルに繋がりかねないため、定期的な修繕工事で補修することが大切です。
長期修繕計画書には、修繕工事の時期や方法のほか、資金計画も記載されます。マンションの共用部分における修繕工事は、住民から集めた修繕積立金で補修工事をするのが一般的です。
※参照:国土交通省:マンション標準管理規約
長期修繕計画作成ガイドラインとは?基本的な内容や改正点について簡潔に解説
鑑定士コメント
.長期修繕計画の作成は義務でしょうか?長期修繕計画書の作成は、国土交通省の「マンション標準管理規約」によって、管理組合の義務とされています。また、計画書の内容を定期的に見直すことも管理組合の義務となります。住民が安全に暮らすためには、マンションの状況に合った長期修繕計画書を作成し、その後も内容が適切であるかを見直し続けることが求められます。
長期修繕計画書で見るべき3つのポイント
長期修繕計画書で見るべき3つのポイント
長期修繕計画書を見るときには、以下の3つのポイントを意識しましょう。
・長期修繕計画の概要を確認する
・必要な費用の全体を把握する
・修繕積立金がマイナスになるところはないか確認する
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
長期修繕計画の概要を確認する
長期修繕計画書には、主に以下3つの内容が記載されています。まずは修繕計画の概要を確認しましょう。
・建築工事計画
・設備工事計画
・資金計画
上記の内容を見れば、工事の項目や周期、どのくらいの費用がかかるかを把握できます。それぞれの詳しい内容については「長期修繕計画書の内容」にて解説するので、参考にしてください。
必要な費用の全体を把握する
長期修繕計画書内の「長期修繕計画統括表」には、それぞれの修繕工事にかかる推定費用も記載されます。修繕工事計画の概要とともに、必要な費用も把握しておきましょう。
特に大規模修繕工事が設定されている年は、まとまった費用が必要です。大規模修繕工事は、築15年以下・築26〜30年・築41年以上の周期で実施するマンションが多い傾向があります(※)。
修繕工事の総額がいくらになるのかをチェックし、資金計画についても確認しておきましょう。
修繕積立金がマイナスになるところはないか確認する
修繕積立金がマイナスになるところはないか確認する
長期修繕計画書内の資金計画には、修繕積立金の推移や累計が記載されています。資金計画を見れば、修繕積立金が過不足なく積み立てられているかの確認が可能です。
修繕工事の推定金額が、修繕積立金の累計額を上回れば、資金はマイナスになってしまいます。予算オーバーにならないよう、あらかじめ資金計画を確認しておくことが大切です。マイナスになる箇所がある場合は、住民から集める積み立て金額や、計画そのものを見直しましょう。
鑑定士コメント
長期修繕計画書は誰が作成し判断するのでしょうか?マンションの長期修繕計画書は、管理組合が主体となって作成します。実際には、管理組合はマンションの区分所有者によって構成されていますので、管理委業務に詳しくないため、委託している管理会社や外部のコンサルティング会社に作成を依頼するマンションが多いでしょう。ただし、修繕計画書の内容が実情に即しているか、最終的な判断は管理組合が行います。
長期修繕計画書の内容
長期修繕計画書の内容
長期修繕計画書の主な内容は、大きく分けて以下の3点があります。
・建築工事計画
・設備工事計画
・資金計画
それぞれの内容について、詳しく解説します。
建築工事計画
建築工事計画とは、建物部分に関する修繕工事の計画です。建築工事の例としては、以下の5点が挙げられます。
・仮設工事(足場を組むための工事)
・屋根・床防水の補修・修繕などの工事
・外壁・鉄部塗装の補修・塗替などの工事
・建具・金物などの点検・調整・取替・補修工事
・共用内部の張替・塗替工事
国土交通省による修繕周期の例では、上記は12〜15年の周期で設定されているものが多い工事です(※)。大規模修繕工事では、壁・屋根など通常は手が届かない場所も修繕されるため、足場を組むための仮設工事が含まれます。
なお、鉄部などは錆びやすいため、5〜7年と比較的短い周期で塗装工事が設定されています。また、手すりや金物類などの劣化しにくい部分の取替工事は、34〜38年の周期となっています。
設備工事計画
設備工事計画は、マンションの設備に関する修繕工事の計画です。設備工事の例としては、以下の8点が挙げられます。
・給水・排水設備の更生・取替・補修工事
・ガス設備の取替工事
・空調・換気設備の取替工事
・電灯設備などの取替工事
・情報・通信設備などの取替工事
・消防用設備の取替工事
・昇降機設備の補修・取替工事
・立体駐車場設備の補修・建替・取替工事
上記の設備は住民の生活に直結する部分が多く、修繕周期の例も場所によって細かく設定されています。たとえば、給水・排水ポンプの補修は5〜8年、機械式駐車場の補修は5年など、頻繁に使われ劣化しやすい部分は短めの周期です(※)。
反対に避雷針設備などの劣化しにくい場所は、38~42年で取替工事が設定されています。実際に自分が住むマンション設備を確認し、それぞれの修繕周期が適切であるか確認しましょう。
資金計画
資金計画
資金計画は、修繕工事にかかる費用に関する計画です。主に記載される内容は以下の4点です。
・修繕積立金の残高
・1戸あたりの平均積立金の月額
・借入金額
・修繕工事にかかる推定費用
資金計画を見れば、修繕積立金の残高や工事にかかる費用がわかるため、収支が把握できるのが特徴です。修繕積立金は住民から集められますが、毎月集める金額が妥当であるかどうかもここで判断できます。
収支のバランスが崩れると、今後計画されている大規模修繕工事の資金が足りなくなることも考えられるため、内容の記録や見直しなどはこまめに行いましょう。
長期修繕計画書の作成手順
長期修繕計画書の作成手順
長期修繕計画書を実際に作成する際は、以下の4つの工程に沿って行いましょう。
・雛型とガイドラインを入手する
・データを変換する
・必要な項目を盛り込む
・内容を修繕計画に反映させる
それぞれの工程について、詳しい内容を紹介します。
雛形とガイドラインを入手する
長期修繕計画書を作る際は、国土交通省が公表している「長期修繕計画標準様式」と「長期修繕計画作成ガイドライン」のデータを入手しましょう。それぞれ、インターネットでPDFファイルがダウンロードできます。
長期修繕計画標準様式は、実際の文章例や表のフォーマットなどが記載されているものです。長期修繕計画作成ガイドラインには、長期修繕計画書の作成方法が記載されています。まずはこの2つをそろえましょう。
データを変換する
必要なPDFファイルをダウンロードしたら、変換ソフトなどを使ってエクセルデータに変換してください。PDFファイルのままでは、編集や修正ができないので注意が必要です。
長期修繕計画書を作成する専用ソフトのライセンスなども販売されていますが、高額である場合が多いため、PDFファイルを変換するのがおすすめです。エクセルデータに変換する際は、Adobe Acrobatなどのソフトを使えば無料で行えます。
必要な項目を盛り込む
必要な項目を盛り込む
PDFファイルをエクセルデータに変換したら、必要な情報を入力していきましょう。必要な情報には主に以下の3点が挙げられます。
・修繕工事の項目
・修繕工事の周期
・工事単価や数量
まずはどのような工事がどのくらいの頻度で必要か、長期修繕計画標準様式の例を参考にしながら検討してください。マンションごとに立地や設備が異なるため、標準様式の例はあくまでも参考とし、実情に即した内容に仕上げましょう。
工事項目や周期を設定したら、推定工事単価や数量などを入力してください。エクセルの関数を使えば、修繕工事全体にかかる費用の概算を簡単に把握できます。関数は自分で設定する必要がありますが、今後の記録の手間を軽減するためにも最初に設定しておくと便利です。
内容を修繕計画に反映させる
必要な情報を入力し終えたら、その内容に従って修繕工事の準備・依頼をします。修繕工事を依頼する際は、管理会社をとおして繋がりのある建設会社などに任せる場合が多いでしょう。
修繕積立金の額を決定し、住民から適切に集金することも大事なポイントです。修繕積立金の累計額が、推定工事費用より下回らないよう注意してください。積立金の額は、標準様式内の「積立金の額の設定」も参考にして決定しましょう。
長期修繕計画書作成時に注意するポイント
長期修繕計画書作成時に注意するポイント
長期修繕計画書を作成する際の注意点には、以下の2点があります。
・長期修繕計画書を定期的に見直す
・作成の外部委託を検討する
それぞれの内容について、詳しく解説します。
長期修繕計画書を定期的に見直す
長期修繕計画書は一度作ったら終わりではなく、その後も内容を定期的に見直さなければなりません。マンションでは、築年数が古くなるにつれて想定外の箇所の劣化が発覚したり、修繕積立金が不足したりするケースも考えられるためです。
国土交通省のマンション標準管理規約によると、長期修繕計画の内容はおおむね5年程度ごとに見直しが必要と記載されています(※)。トラブルを未然に防ぐためにも、作成した長期修繕計画が現状に合った内容になっているか随時チェックしましょう。
なお長期修繕計画の見直し方法については以下の記事でも紹介しています。
長期修繕計画の見直しは必要?タイミングや注意しておきたいポイントを紹介
作成の外部委託を検討する
長期修繕計画書を管理組合で作成するのが難しい場合は、外部の機関に任せることもできます。既存の管理会社のほか、第三者である施工会社や設計事務所なども、計画書作成を依頼できる機関のひとつです。
ただし、外部委託する場合には当然依頼料がかかります。委託先を選定する際は、総会などを開いて住民全体で決定しなければなりません。外部委託ならプロに任せる安心感が得られますが、費用や手間がかかることも理解したうえで検討するとよいでしょう。
まとめ:長期修繕計画書は余裕のあるスケジュールを作成しよう
まとめ:長期修繕計画書は余裕のあるスケジュールを作成しよう
長期修繕計画書とは、マンションの修繕工事の長期的な計画を取り決めて記しておくものです。工事の内容・周期・推定費用などが記載され、この内容を元に住民から集める修繕積立金の額が決められます。
長期修繕計画書は、マンションの管理組合に作成の義務があり、定期的な内容の見直しも必要です。作成の際は、国土交通省が公表している雛型やガイドラインを活用しましょう。
長期修繕計画書の作成は外部機関への委託もできますが、費用や委託先選定の手間がかかります。どちらにしても、余裕を持って作成に取り掛かるのがおすすめです。
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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