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更新日:2023.09.21
登録日:2023.09.21
対抗要件とは?不動産で知っておきたいポイントをわかりやすく解説
マンションなどの不動産を購入する際、不動産の所有権などの物権について把握しておく必要があります。権利を有していることを主張するためには、「対抗要件」を有することが欠かせません。
本記事では、不動産の対抗要件とは何か、権利ごとの種類などについて詳しく解説します。不動産だけではなく債権に関する対抗要件についてもあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
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対抗要件とは
対抗要件とは
対抗要件とは、法律上の権利関係を他人である第三者に対して、自身の権利を主張するための要件です。不動産の場合は「不動産の登記」が対抗要件となります。
つまり、不動産登記を行っている場合は、第三者に対して不動産の所有者が自分であることを主張できるのです。なお、不動産売買における当事者である買主と売主の場合は必要なく、どちらも所有権を主張できます。
対抗要件が必要となるのは、二重譲渡のような場合です。不動産の売主であるAが、BさんとCさんに同時に不動産を売却していた場合、BさんとCさんそれぞれが所有権を主張するためには「不動産の登記」を行っておかなければなりません。不動産の登記は、基本的に「早い者勝ち」です。そのため、二重譲渡の場合は先に登記を行った人が対抗要件を有することになります。
対抗要件の種類
対抗要件の種類
対抗要件は、主張する権利によって異なります。代表的な対抗要件として、下記のようなものがあります。それぞれの要件について、詳しく見ていきましょう。
鑑定士コメント
「法律で対抗できない」というのはどういうことでしょうか?法律で対抗できないというのは、所有権などの物権が変更されたという事実を第三者に主張できないという意味です。民法177条で定められている通り、不動産の権利を主張するためには登記をしておかなければなりません。現状では、権利部の登記は義務ではなく、行わなくても罰則はありませんが、登記をしないことは様々なトラブルに巻き込まれるリスクがあることを肝に銘じておきましょう。
不動産登記がなくても対抗できる第三者とは
不動産登記がなくても対抗できる第三者とは
下記に当てはまる場合は第三者とは認められず、対抗要件を有していない場合でも対抗可能です。
・権利がない名義人やその譲受人・転得者
・不法行為や不法占拠をした人
・権利を持っていない人
・詐欺や強迫により登記を妨害した人
・他人のために登記を申請する義務がある人
・悪意を持って不動産の購入者に嫌がらせをする人(背信的悪意者)
不動産の権利に関する第三者とは、買主と売主以外のすべての人間という意味ではありません。一般に「第三者」とは、当事者とその包括承継人以外の者のことを指します。包括承継人とは、相続人のように権利や義務をすべて受け継ぐ人のことです。
第三者とは認められないそれぞれのケースについて、詳しく解説します。
権利がない名義人やその譲受人・転得者
無権利の名義人とは、何かしらの方法で不正に登記を行って名義人になった人です。「実質的無権利者」とも呼ばれ、不正に行った登記には国や政府など公的な信用がないため対抗できます。
また、権利がない名義人から不動産を譲受または、他人の取得した権利をもらった転得者に対しても、権利を対抗・主張できます。
不法行為や不法占拠をした人
対抗要件を有していない場合でも、他人の権利や利益を侵害する不法行為者や不法占拠者に対抗できます。民法(第709条)では、不法行為責任が問われるのは下記の要件を満たす場合であると規定されています。(※)
・故意・過失をともなう
・保護すべき他人の権利を侵害した
・損害が発生した
・行為と損害に因果関係がある
・責任能力がある
※参照:民法
権利を持っていない人
許可なく虚偽の登記を行った人など、無権利者に対しては対抗要件がなくとも対抗可能です。たとえ登記されていたとしても、登記の内容と真実が異なる場合、登記の内容よりも真実の権利が優先されます。
無権利者の例としては、下記のような人が該当します。
・登記簿上にて所有者として表示されている架空の権利者
・目的物の偽の譲渡人として設定された人
・遺言執行者がいる場合に相続人から遺贈不動産を譲り受けた人
・消滅した債権を被担保債権としている抵当権者
・相続を放棄した人から相続財産の受取人とされている人
詐欺や強迫により登記を妨害した人
不動産登記法5条において、詐欺または強迫による登記の妨げを行った人に対しては、対抗要件に関する民法177条が適用されないと定められています(※)。
登記上は名義人であったとしても、詐欺や強迫などの自身の不当な行為で登記を行っている場合などが該当します。
※参照:不動産登記法
他人のために登記を申請する義務を負う者
他人から依頼されるなどして登記を申請する義務を負った人に対しても、不動産登記法5条において対抗要件に関する民法177条が適用されないと定められています(※)。
例として、登記申請の依頼を受けた司法書士や、未成年代理人として申請を行う親権者などが該当します。
※参照:不動産登記法
悪意を持って不動産の購入者に嫌がらせをする人(背信的悪意者)
背信的悪意者とは、権利に変更があることを関知しており、悪意を持って権利者を害する人です。背信的悪意者は保護するに値しないとして、登記を行っていなくても対抗できます。
背信的悪意者の例として、二重譲渡において別の人がすでに物件を購入していることを知っている状態で、悪意を持って登記を先に行うというものがあります。この場合は、登記の内容は保護されません。
債務者への対抗要件
債務者への対抗要件
債務者への対抗要件は「債権の譲渡人から債務者への通知」もしくは「債務者からの承諾」です。債権を譲渡する際は、必ず債権を譲渡するという事実を債務者が把握できていなければなりません。
債務とは、債権者である金融機関にローンを支払う義務のことで、貸付を受けた人を「債務者」と呼びます。一方、債権とは債務者に対して支払いを求める権利を指し、貸付を行う銀行などの金融機関を「債権者」と呼びます。
金融機関が持つ債権は、場合によって第三者に譲渡されることがあり、これを債権譲渡と言います。債務者は債権者から支払いの要求を受けて金銭を支払いますが、債務者の知らないうちに債権が第三者に譲渡されていた場合、債務者は誰に支払うべきかがわかりません。
そのため、債権譲渡があった場合、債権を譲渡された人(譲受人)は債務者に債権者となったことを知らせなければならないのです。
不動産はローンを利用して購入する人も多いため、債権に関する対抗要件も知っておくと万が一の際に役立つでしょう。
債権の第三者への対抗要件
債権の第三者への対抗要件
債権の第三者への対抗要件は、「通知」と「承諾」に加えて「債権譲渡登記」の3つです。3ついずれかがあれば、第三者に対して債権の所有を主張できます。
不動産における第三者への対抗要件は、これまで解説してきた通り「不動産の登記」です。一方、債権に関しては、譲渡人からの通知、もしくは債務者からの承諾が必要です。
また、債権においても「二重譲渡」が発生する可能性があるため、第三者への対抗要件についても把握しておく必要があります。
鑑定士コメント
不動産登記には公信力はあるのでしょうか?対抗要件で注意しなければならないことは、不動産登記には第三者に主張できる対抗要件はあっても、公信力はないということです。真実である権利関係と登記の記載とが異なっているときは、仮にその記載を信用して取引を行っても、これを保護することができないのが原則です。つまり、登記簿の記載より真実の権利関係を優先させるわけです。不動産の登記には「公示力はあっても、公信力がない」と言われるのはこのことです。
まとめ:対抗要件は物権などを第三者に主張するために必要
まとめ:対抗要件は物権などを第三者に主張するために必要
対抗要件は、不動産の取引において把握しておかなければならない要素です。所有権などの物権を第三者に主張するためには、必ず対抗要件を有しておかなければなりません。
不動産の場合は、登記を行うことで第三者に対抗することができます。不動産の登記は、基本的に早い者勝ちです。二重譲渡などで売主が複数の買主と契約して売買した場合、初めに登記を行った人が有利です。
また、債権の場合は「譲渡者から債務者への通知」、「債務者からの承諾」または「債権譲渡登記」を有しておく必要があります。いつどのような場面で対抗要件が必要になるかは想定できないため、対抗要件について把握しておきましょう。
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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