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更新日:2025.04.25
登録日:2023.09.21
知っておくべき手付金の基礎知識!ルールや返還条件を詳しく紹介

「不動産を購入したときの手付金って返ってくるの?」
「手付金が返ってくる場合の条件とは?」
不動産を購入しようとするとき、手付金を支払うシーンではこのように疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
本記事では、不動産購入の際に支払う手付金が返ってくるのかどうかについて詳しく解説しています。手付金が返ってくる場合の条件や、注意点などもご紹介。不動産の購入を検討している人はぜひ参考にして、手付金の正しい知識を身につけましょう。
【この記事でわかること】
・手付金とは、売買契約を結ぶ際に買主が売主へ支払うお金のこと
・住宅ローン特約の適用や売主都合による手付倍返しなどの条件に該当すれば、手付金が返還される
・手付金を放棄して契約をキャンセルできるのは、原則として「履行に着手するまで」
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手付金は返ってくる?

手付け金とは
手付金とは、売買契約を結ぶ際に買主が売主へ支払うお金のことです。不動産売買では、契約の証明や解除のルールを明確にするため、手付金の支払いが一般的とされています。
手付金は大きく以下の3種類に分かれます。
・証約手付
・違約手付
・解約手付
手付金は特段の定めがない場合は「解約手付」として扱われます。解約手付は、買主・売主双方が解約権を確保するために支払われるものです。
買主は手付金を放棄することで、理由を問わず損害賠償などを支払うことなく契約を解除できます。売主は手付金の2倍を返すことで契約を解除することが可能です。
手付金の相場は物件価格の5〜10%程度が一般的で、4,000万円の物件なら200〜400万円が目安です。
詳しくは後述しますが、一定の条件を満たせば手付金が返還されるケースもあります。
なお、手付金とよく似た言葉に「頭金」がありますが、両者の意味は異なります。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
手付金と頭金の違いは?不動産購入時に知っておきたい知識を解説

知っておきべき手付け金のルール
手付金は、契約の証明や解除の際に重要な役割を果たします。しかし、支払った手付金が必ず戻るわけではなく、契約の進行状況や解除のタイミングによって扱いが変わるため、注意が必要です。ここでは、手付解除の期限や違約金、契約解除のルールについて解説します。
手付解除期日とは
手付解除期日とは、手付金を放棄することで契約を解除できる期限のことです。
民法第557条第1項では、「契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄し、売主は倍額を返還することで契約解除が可能」と定められています。(※)
しかし、上記の「履行に着手」とは何を指すのか明確な基準がないため、不動産売買では売買契約書に「手付解除期日」を定めるのが一般的です。
例えば、売買契約日が4月1日で、手付解除期日が4月15日に設定された場合、4月15日までなら手付解除が可能ですが、4月16日以降は一方的な解除ができなくなります。その後に契約を解除するには、相手が契約違反をした場合に限られます。
手付解除期日を設けることで、契約が途中で破棄されるリスクを減らし、取引を安定させる役割があるのです。
※ 参照:民法第557条第1項
手付け金が返金されない場合の違約金とは
手付金は契約の証拠として支払われるお金ですが、手付解除により、一定の条件を満たせば買主や売主は契約を解除できます。
しかし、手付解除の期限を過ぎたり、契約の履行が始まった後に解除したりする場合は、「違約金」が発生することがある点には注意が必要です。
違約金とは、契約を一方的に破棄した側が支払うペナルティのこと。売買契約書に「売買代金の◯%」といった形で事前に定められるのが一般的です。
例えば、売買代金が5,000万円で違約金を20%と設定している場合、契約解除時に1,000万円を支払う必要があります。
なお、「違約金」と「手付金」は別のものとされ、違約解除の場合でも手付金は返還(相殺)されます。契約解除の条件を事前に確認し、トラブルを避けることが重要です。
契約解除には履行着手前の解除意志が必要
手付解除を行うには、相手が契約の履行に入る前に、解除の意思を明確に伝えることが必要です。(民法540条1項)(※1)この意思表示は、相手に通知が届いた時点で効力を持つとされています。(民法97条1項)(※2)
通知は口頭でも可能ですが、書面(契約解除通知書)を用いるのが一般的です。書面を残すことで、「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。
契約解除通知書に記載すべき内容は、以下のとおりです。
・契約の詳細(契約日・物件情報・売主と買主の氏名)
・手付金の支払いに関する事実
・契約の履行が未着手であること
・手付金を放棄し、契約解除を求める意思
手付解除期日を過ぎると「違約金」が発生します。そのため、早めに相手方へ通知し、スムーズに手続きを進めることが大切です。
※1 参照:民法第540条1項
※2 参照:民法97条1項
マンション購入を検討する際、マンションのパンフレットを目にする機会が多いでしょう。しかし、正しい見方を知らないと重要なポイントを見落とす可能性があります。
マンションのパンフレットの読み方を詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。無料でダウンロード可能です。
手付金が返ってくる4つの条件

手付金が返ってくる4つの条件
手付金が返ってくる条件は、以下の4つです。
・住宅ローン特約で返還される場合
・売主都合による手付倍返しとなった場合
・売主が契約違反をした場合
・売主が倒産した場合
それぞれの条件について詳しく解説するので、不動産を購入しようとしているならぜひ参考にしてください。
住宅ローン特約で返還される場合
手付金は基本的に買主の自己都合では返還されませんが、住宅ローン特約に該当するときは、買主都合での解約が認められ手付金が返還されます。
住宅ローン特約とは、住宅ローンを借り入れることを前提に不動産を購入したものの、実際にはローンの本審査に通らなかった場合の特別な規約のこと。住宅ローンが借り入れられなければ、物件の購入金額を支払えない場合が多いため、本審査に通らなかった場合は手付金が返還されたうえで契約を解除できることがほとんどです。
なお住宅ローン特約は、ローン契約時に特約をつけている場合にのみ適用されます。また嘘の申告をしていた場合など、本審査に落ちた理由が買主の責任によるものだと特約が適用されません。契約時にはしっかり内容を確認しましょう。
鑑定士コメント
災害によって引き渡しができなくなった場合は手付金は返還されるのでしょうか?原則として、災害によって建物に損害があったとしても、売主側が修繕などを負担する義務はありません。そのため、購入した物件が災害にあったからといって買主側が契約解除を申し出ても、手付金は返ってこない場合も多いでしょう。ただし、特約があれば別です。災害時のことを想定して、売買契約時に「売主・買主どちらにも責任がない損失の場合、引き渡し前は売主負担、引き渡し後は買主負担とする」という内容を特約内に盛り込めば、物件の引き渡し前に災害が起こって契約を解除したとしても、手付金を返してもらうことはできるでしょう。
売主都合による手付倍返しとなった場合
売主の都合で契約解除となった場合、買主は手付金を2倍にして返してもらえます。手付金の2倍を支払う理由は、手付金の返却に加えて解除の迷惑料として手付金と同額の違約金が発生するためです(※)。
売主側の都合による解約の内容としては、もっとよい条件で不動産を購入してくれる人が見つかったり、売主が途中で対象となる不動産を手放したくなくなったりした場合などが挙げられます。
なお、売買契約を解除したいと思った場合、買主側も売主側も解除を申し出られる期日が決まっていることには注意しましょう。売買契約をキャンセルできるタイミングについては後述します。また、手付解除について詳しく知りたい人は、以下の記事も読んでみてください。
※参照:民法第557条
手付解除とは?いつまで解除できるのか、手付金がどうなるかも解説
売主が契約違反をした場合
売主が契約違反をした場合、買主は売主に対して債務を履行することを要求するとともに、それまでに支払ったお金の返還と違約金の支払いを請求するのが一般的です。この場合の違約金は、不動産購入時の契約で取り決められた金額で、不動産価格の20%程度であることが多いでしょう。
売主の契約違反とは、契約が完了して契約金などを支払ったにもかかわらず、売主が物件を引き渡してくれない場合などが挙げられます。
ただし、自分が直面しているトラブルが売主側の契約違反に当たるのかどうかわからない場合は、裁判所の判断となる可能性もあります。売主との間でトラブルが起きてどうすればよいのか迷ったら、仲介不動産会社や消費生活センター、弁護士などに相談してみましょう。
売主が倒産した場合
売主側の宅建業者が、売買契約後に倒産してしまったり夜逃げしたりして物件の引き渡しができなくなったときにも、手付金が返還されることがあります。
ただし、売主側が倒産したときのすべての場合で手付金が返ってくるわけではありません。手付金が帰ってくるのは、契約時に手付金の保全措置がとられた場合のみであることを覚えておきましょう。
なお、手付金の保全措置がとられるためには、いくつかの基準を満たしている必要があります。手付金の保全措置の基準については後述しています。
以上のように、売主である宅建業者が倒産や夜逃げをしても、手付金が返ってくるケースもあるので、諦めずに自分の契約状況を確認してみましょう。
鑑定士コメント
会社都合の転勤を理由に契約解除した場合、手付金の返還対象となるでしょうか?転勤は、会社都合であろうと自分の希望であろうと、買主側の自己都合と捉えられます。もし転勤を不可抗力と認めると、買主が会社と口裏を合わせて嘘の転勤話を作り上げることもできるため、契約解除権の乱用や悪用になります。したがって、売買契約後に転勤を理由に契約解除を申し出ても、手付金は返ってきません。もし転勤になる可能性が事前にわかっているなら、不動産を購入するタイミングはよく考えましょう。
手付金で注意しておくべきポイント

手付金で注意しておくべきポイント
手付金について注意しておくべきポイントは、以下の5点です。
・契約書の内容をしっかり確認する
・交渉次第で手付金の額が分かる場合がある
・キャンセルできるタイミングに注意する
・手付金は倒産や解約を考慮して低めに設定する
・手付金の保全措置の知識も持っておく
それぞれの内容について詳しく解説します。正しい知識を身につけて、手付金に関するトラブルが起きないようにしましょう。
契約書の内容をしっかり確認する
不動産の売買契約を結ぶ際は、契約書の内容を十分に確認することが重要です。
契約書には、手付金の金額や支払時期、解除条件などが明記されています。これらを正しく理解しないまま契約を進めると、手付金が返還されない、多額の違約金が発生するなどのトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
特に、手付解除の期日や売主・買主の解除権については慎重に確認しましょう。不明点がある場合は、仲介不動産会社や専門家に相談し、納得したうえで契約を進めることが大切です。
契約内容をしっかり確認し、リスクを理解したうえで契約を締結することが重要です。
交渉次第で手付金の額が分かる場合がある
不動産の手付金は、売買価格の5〜10%程度が相場とされていますが、明確な基準が決まっているわけではありません。そのため、交渉によって具体的な金額が変わることもあります。
手付金の額は、売主と買主の合意によって決まるため、物件の状況によっては相場よりも低く設定されることも珍しくありません。特に、売れ残っている物件や需要が低めの中古マンションでは、売主が早期売却を希望するケースが多く、手付金が抑えられる可能性があります。
手付金について確かめたい場合、売主に直接交渉するのではなく、不動産会社の担当者を通じて相談するのが一般的です。物件の状況や売主の意向を踏まえ、手付金の交渉余地があるかどうかを確認してください。
契約を進める前に、具体的な金額をしっかり確認し、納得したうえで手続きを進めましょう。
キャンセルできるタイミングに注意する
不動産売買の契約をキャンセルできるタイミングは、契約のなかで決められています。いつでもキャンセルできるわけではない点には注意しましょう。
通常、不動産購入時の手付金は解約手付です。解約手付とは、最初に支払った手付金が返ってこなくてもよければ、売買契約のキャンセルができる手付金のことを指します。
しかし、手付金を放棄して契約をキャンセルしたいと思っても、多くの場合でキャンセルできるタイミングは「履行に着手するまで」です。具体的には、「物件を引き渡すまで」や「所有権移転登記の手続きが行われるまで」などのタイミングに設定されることが多いでしょう。
履行の内容については、売買契約ごとに異なります。また、万が一期日を過ぎた時点で契約のキャンセルを申し出た場合、多額の違約金や損害賠償金を支払わなければならない可能性も。トラブルを防ぐためにも、契約時はキャンセルできるタイミングについて忘れず確認しておきましょう。
手付金は倒産や解約を考慮して低めに設定する
手付金の具体的な金額は、売主・買主両者の合意のもとで決められます。手付金をいくら支払うかは、慎重に決定しましょう。
手付金を多く払えば払うほど、その後のローン返済額が減らせます。しかし、はじめに多く払いすぎると、予期せぬ事態が発生したときに損をしてしまうリスクがある点には注意してください。
予期せぬ事態とは、手付金を支払ったあとで売主側の企業が倒産したり、買主の転勤が決まって契約をキャンセルせざるを得なくなったりした場合などです。最初にたくさん支払った手付金が無駄になってしまう可能性もあるため、あとから解約することも考慮して、手付金はなるべく低めの金額に設定しておくことをおすすめします。
手付金の保全措置の知識も持っておく
売主側が倒産したり夜逃げしたりした場合には、手付金の保全措置がとられる場合があります。手付金の保全措置とは、銀行や保険事業者などの第三者によって手付金を保管してもらうことで、手付金が失われることを防ぐ措置です。
手付金の保全措置は、すべての場合でとられるわけではありません。保全措置がとられる基準は、以下のように設定されています(※)。
・不動産の売主が宅建業者で、買主が個人である
・工事完了前の不動産の場合、手付金・中間金の支払い合計が売買価格の5%以上または1,000万円以上
・工事完了後の不動産の場合、手付金・中間金の支払い合計が売買価格の10%以上または1,000万円以上
つまり手付金が上記の基準より少額の場合には、保全措置はとられず、売主側が倒産や夜逃げをしても手付金は返ってきません。不動産売買の際には、売主側企業の情報を仲介不動産業者に聞いたり自分で調べたりして、事前に把握しておきましょう。
※参照:宅地建物取引業法第41条
手付金の授受は書面で行い、証拠を残す
手付金を支払う際は、必ず書面で証拠を残すことが重要です。手付金は契約成立の証であり、曖昧なやり取りでは後のトラブルにつながる可能性があります。
手付金を支払った際は、売主から「領収書」または「手付金受領証」を必ず受け取るようにしましょう。
領収書には、以下のような内容が記載されていることを確認してください。
・支払日
・手付金の金額
・支払い方法(現金・振込など)
・契約の対象(物件の所在地など)
・受領者(売主または仲介業者)の氏名・押印
手付金は、契約解除や違約金の計算に影響を及ぼすため、書類を適切に保管することが大切です。また、契約の履行状況を判断する重要な証拠にもなるため、トラブルを避けるためにも、書面での記録を徹底しましょう。
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まとめ:手付金が返ってくる条件は、契約する前に確認しておこう

まとめ:手付金が返ってくる条件は、契約する前に確認しておこう
手付金は、返ってくるケースと返ってこないケースがあります。返ってくるケースは、買主が住宅ローンの本審査に通らなかった場合・売主都合で契約解除になった場合・売主が契約違反や倒産した場合などです。
手付金を放棄して契約をキャンセルする場合でも、キャンセルできる期日が決まっていることを覚えておきましょう。キャンセル可能なタイミングは、契約ごとに異なります。どのような内容での契約になっているかを、契約時に確認しておくことが大切です。
手付金は、決して安くない金額を支払うことになります。トラブルによって自分が損をしないためにも、手付金についての正しい知識を把握して、不動産購入時に役立てましょう。
#手付金、#不動産、#売主、#契約、#買主

不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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