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更新日:2024.09.12
登録日:2023.03.27
マンションの免震とは?耐震・制震との違いを詳しく解説

地震大国と呼ばれる日本では、マンションの耐震構造は免震・制震・耐震と3種類を採用しています。その中でも今回はタワーマンションなどの耐震に利用されている免震について詳しく紹介します。
制震、免震工法のとの違いも解説しているので、マンションの地震対策に興味のある方はぜひ参考にしてください。
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マンションの耐震構造とは?

マンションの耐震構造とは?
耐震構造とは、柱や梁など建物自体の強靭さで地震の揺れに抵抗する構造を指します。
一般的な建物で地震対策に用いられている手法です。
耐震構造は、建物全体の崩壊には強い一方、地震による揺れが直接伝わるため、家具の転倒や棚の物が落下するリスクが高いというデメリットがあります。
阪神淡路大震災にて建物の崩壊を避けられたことで一定の評価を得ました。しかし、地震のエネルギーがダイレクトに伝わってしまうため、壁や柱が大きく壊れたり、ひびが入ったりなど建物の破損が大きな課題です。
免震とは

免震とは
免震構造の建物は他の建物と比べて、建物自体が揺れにくく破損しにくいのが特徴です。
建物の基礎部分に免震装置というゴムを設置することで、ゴムが揺れを吸収して建物自体の揺れを抑えています。
免震装置の揺れの吸収率は約50〜80%(※)で、大地震でもかなり建物の揺れを受け流すことが可能です。室内の家具の転倒や破損が最小限に抑えられ、タワーマンションの上層階でも揺れが少ないところも特徴です。そのため、建物の損傷が少ないため、地震後の修繕コストはあまりかかりません。
しかし、地震によって建物の位置が移動するため、建物周辺に一定のスペースを設けたり、免震構造に適した配管を使用したりする必要があります。
免震構造のマンションが登場したきっかけは?
免震構造に用いられる免震装置が作られたのは1975年。免震装置が導入された建物が初めて完成したのが1983年です。
1995年の阪神淡路大震災をきっかけに免震構造が高く評価されたことで、免震マンションは一気に増加し、2011年の東日本大震災を経てさらに増加しました。
大きな地震のたびに免震構造が高い評価を得て、現在も免震マンションは増加を続けています。
制震とは

制震とは
制震構造は、建物の各階もしくは頂部にダンパーという制震装置を付けることで地震による揺れを吸収します。
制震構造のメリットは以下の通りです。
・建築費用が免震構造と比較して安い
・地震による高層ビルの各階の変形を抑えられる
・柱や梁のサイズを小さくしたり、本数を減らしたりできるため、耐震構造を用いるよりも広い空間が作れる
上記のメリットがある一方、 直下型地震のような縦揺れには弱い傾向があります。また強い風には弱いといった点もデメリットです。
制震構造はもともと地震対策ではなく、高層ビルが風で揺れるのを防止するための構造でした。地震対策に効果が見込まれたため、現在は地震の被害を防ぐための様々な技術が開発されています。
免震と制震との違い
免震と制震の違いは以下の通りです。
免震
・設置費用が高い
・設置条件がある
・設置後もメンテナンスが必要
・建物と基礎の間に免震装置を設置して揺れを遮断する構造
・鉄筋コンクリートマンションなど硬くて重い建築物に用いられる
制震
・設置費用は中程度
・設置条件はなし
・装置によっては設置後もメンテナンスが必要
・ダンパーなどの衝撃吸収する装置を設置して揺れによる衝撃を減らす構造
・鉄構造のマンションなど軽くて柔軟な建物に用いられる
免震構造は制震構造よりも地震への効果が大きい一方、設置費用が高く、設置条件により設置に制約があります。
免震のメリット

免震のメリット
免震のメリットは以下の3点です。
・地震の揺れが小さくなる
・家具が倒れにくくなる
・建物の内部が傷つきにくくなる
順番に解説していきます。
地震の揺れが小さくなる
免震構造の建物は、他の構造に比べて地震の揺れが圧倒的に少ないのが大きなメリット。
免震装置が建物を浮き上がらせ、建物に揺れを伝えないようにしているため、ほとんど揺れず安定感があるのが強みです。
免震は耐震や制震よりも地震に対する安全性が最も高いと言えます。
鑑定士コメント
「免振構造」は他の構造よりも、圧倒的に大地震でも揺れを感じません。ゆらーり、ゆらーりと、ゆっくり長く揺れる感じで、大きな船に乗っているような、という表現をすることも多いです。これは、建物と地盤の間に免震層として「免震装置」を設置しているため、地震エネルギーを免震層で集中的に吸収し、建物への地震エネルギーの伝達を遮断するためです。
家具が倒れにくくなる
免震構造によって建物の揺れが小さくなるため、家具の転倒や横滑りなどが起きにくいところもメリットです。
そのため、家具の下敷きにより怪我をするなどの2次被害や、家具自体の損傷などの被害を最小限に抑えられます。
建物の内部が傷つきにくくなる
地震の衝撃が建物に伝わりづらいため、建造物自体がダメージを受けにくいところも強みです。
壁が柱以外の目に見えない建物部分も損傷しにくいため、建物の資産価値が傷つくのを防げます。
家具の移動による壁の被害も防ぐため、建物の目に見える部分、見えない部分の両方で被害が抑えられるでしょう。
免震のデメリット

免震のデメリット
免震には大きなメリットがある一方、デメリットもあります。
・地震の横揺れ以外での効果が少ない
・コストが高い
・新しい工法で長期の検証ができていない
詳しく説明します。
地震の横揺れ以外での効果が少ない
免震構造は水平方向に固定されていないため、横揺れには大きな効果があります。
一方、垂直方向には固定されているため、縦揺れの衝撃はダイレクトに建物に伝わってしまうところがデメリットです。
通常の縦揺れは被害が小さいため、対策はあまり必要ないといわれています。とはいえ、直下型大地震が起きた際は、縦揺れも深刻な被害となるリスクがあります。
最近は縦揺れにも対応する免震構造のマンションが開発され運用され始めています。
また、建物自体の強度は上げていないため、台風などの強風に対する効果は期待できないところも免震構造の弱点といえるでしょう。
コストが高い
免震工法ができる施工会社は限られており、耐震、制震工法と比べると設置コストが高くなります。
設置後もメンテナンスが必要であるため、ランニングコストがかかる点もデメリットといえます。
新しい工法で長期の検証ができていない
免震工法は耐震や制震工法よりも歴史が浅く、免震装置の耐久性や技術面ではまだ疑問点が残るとされています。
耐久性や技術面での安全性は長い年数をかけて検証する必要がありますが、免震構造の建物で長い年数を経ているものが少ないため、免震構造の長期検証に十分なサンプルが足りていません。
免震構造マンションの確認方法

免震構造マンションの確認方法
免震構造マンションかどうかは、「住宅性能表示」を確認すればすぐに分かります。
住宅性能表示は住宅の性能を客観的に評価する制度で、2000年に制定されました。現在、都心の分譲新築マンションの約70%(※)が住宅性能表示を取り入れているそうです。
住宅性能表示の評価基準のうち、「構造の安定」の区分で免震構造かどうかを表示しています。
「1-3その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)」で免震工法の建築物か確認する箇所があるため、建築関係者でない一般人でも簡単に確認可能です。
鑑定士コメント
免震マンションは30階を超えるような超高層マンションに多く導入されているため、タワーマンションが集中する首都圏等の一部エリアに偏っています。また、タワーマンションでも免振構造・制振構造が注目されたのは2011年の東日本大震災が契機と言え、これ以前は少ないと言えます。しかし、年々免振構造・制振構造はマンションの資産価値を高める要因と認知されてきていますので、今後はよりスタンダードになっていくでしょう。
まとめ:将来の地震に備えて免震マンションを検討してみよう

まとめ:将来の地震に備えて免震マンションを検討してみよう
免震構造はマンションの3つの地震対策の中でももっとも効果が高い方法です。
そのぶん耐震と制震工法と比べると設置費用やメンテナンスなどコストが高くなります。
安全性はもちろん、免震構造は資産性の面でもすぐれているところも特徴。
将来の大地震に備えて、マンションを購入する際はぜひ免震マンションを検討してみてください。

不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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