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更新日:2024.09.12
登録日:2023.12.20

マンション建て替え円滑化法とは?難しい法律をわかりやすく紹介

マンション建て替え円滑化法とは?難しい法律をわかりやすく紹介

マンションを所有する以上、避けては通れない「老朽化」の問題。

老朽化したマンションを建て替える必要があるものの、「住民から賛同が得られず頓挫している」「権利関係の手続きに手こずっている」こういったマンション管理者の方は多いのではないでしょうか?

こういった悩みを解決するために制定されたのが、マンション建て替え円滑化法です。この記事では、マンション建て替え円滑化法の概要から建て替えの流れ、令和2年の法改正の内容まで、一通り解説します。マンション管理の予備知識として、ぜひ参考にしてください。

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マンション建て替え円滑化法とは

マンション建て替え円滑化法とは

マンション建て替え円滑化法とは

マンション建て替え円滑化法(正式名称:マンションの建替え等の円滑化に関する法律)とは、マンションの建て替えにまつわる手続きや規則を定めた法律です。主に、以下5種類の内容が定められています。

 

・マンション建替組合の設立

・権利変換に関する仕組み

・組合による権利の買い取り

・組合が行う一括登記

・危険なマンションの建て替え

 

ひとつずつ解説します。

マンション建替組合の設立

マンションの建て替えをする際の手続きのひとつとして、「マンション建替組合」を設立する旨が定められています

 

マンション建替組合とは、マンションの所有者や管理組合員によって設立される組織であり、マンションの建て替えに賛同する人や建て替え工事に関わる人が組合員として加入します。

 

設立にあたっては、マンションの区分所有者(住民)の3/4以上の合意と、都道府県知事の認可が必要です。

 

マンション建替組合は法人格を持つため、個人ではなく法人として、資金調達や工事の発注などをより柔軟に実施することが可能になります。

 

※参照:e-GOV法令検索|平成十四年法律第七十八号 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第二章 マンション建替事業 第一節 第二款 マンション建替組合

権利変換に関する仕組み

マンションの建て替えに伴い発生する「区分所有権」の移行をスムーズに進めるための諸手続きが定められています。これが「権利変換」の仕組みです。

 

区分所有権とは、分譲マンションにおいて、それぞれの契約者が専有する部分(住戸部分や敷地など)の所有権を指します。

 

権利変換の仕組みがあることで、建て替え前のマンションでの区分所有権を、建て替え後のマンションにスムーズに移行できるのです。

 

※参照:e-GOV法令検索|平成十四年法律第七十八号 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第二章 マンション建替事業 第二節 権利変換手続等

組合による権利の買い取り

組合による権利の買い取り

組合による権利の買い取り

マンションの建て替えに賛同しない区分所有者がいる場合、その人が持つ権利をマンション建替組合が時価で買い取るよう定められています

 

マンションの建て替え後も引き続き権利を持ちたいと考える住民もいれば、建て替えを機に、権利を譲渡・売却したいと考える住民もいるでしょう。

 

建て替え後の権利を必要としない区分所有者(住民)は、既存のマンションが取り壊される前に、マンション建替組合に対して区分所有権や敷地利用権の買い取りを請求できます

 

※参照:e-GOV法令検索|平成十四年法律第七十八号 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第二章 マンション建替事業 第二節 権利変換手続等 第一款 第二目 権利変換計画 (区分所有権及び敷地利用権の売渡し請求)

組合が行う一括登記

マンションの建て替えに伴い発生する区分所有権の手続きを、マンション建替組合で一括してできる旨が定められています

 

マンションの建て替えをする場合、建て替え前のマンションの区分所有登記をいったん解消し、建て替え後のマンションにて、各住戸の区分所有権を再登記しなければなりません。この手続きを個別に実施するとなると、膨大な数の手続きが必要となります。

 

一方、区分所有権にまつわる法的な手続きをマンション建替組合で一括管理することで、建て替えに伴う再登記の手続きを簡略化できるのです

 

※参照:e-GOV法令検索|平成十四年法律第七十八号 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第二章 マンション建替事業 第二節 権利変換手続等

危険なマンションの建て替え

安全性に問題があるマンションに関して、行政から指導・勧告を受ける旨が定められています

 

より具体的には、マンションの耐震性や耐火性などが国が定める基準に満たない場合、特定行政庁(自治体)から「要除却認定マンション」に認定され、建物の除却(取り壊し)を実施しなければなりません。

 

要除却マンションの認定を受けた場合、建て替え工事を実施するか、物件と敷地を一括売却する事になります。行政から勧告を受けた場合に取り得る選択肢については、後述します。

 

※参照:e-GOV法令検索|平成十四年法律第七十八号 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第三章 除却する必要のあるマンションに係る特別の措置

鑑定士コメント

マンション建て替え円滑化法によらない建て替え手法もあるのでしょうか?マンションの建て替え手法には、「マンション建て替え円滑化法」による建て替えと、「等価交換事業」による建て替えの2種類があります。両者の主な違いは、権利関係の手続きです。マンション建て替え円滑化法による建て替えでは、マンション建替組合が主体となって権利関係の手続きを一括で実施します。一方、等価交換事業では、それぞれの区分所有者と民間の開発事業者が個別に手続きをするという違いがあります。手続きが必要となる区分所有者数(住戸数)によって、2種類の手法を使い分けられることが多いようです。

マンション建て替え円滑化法制定の目的

マンション建て替え円滑化法制定の目的

マンション建て替え円滑化法制定の目的

マンション建て替え円滑化法制定の目的は、マンションの建て替え時の手続きを整備することで、建て替えを促進することにあります。マンションの老朽化が全国的に進んでおり、老朽化したマンションを放置しておくと、災害時などに倒壊のリスクが高まるためです。

 

国土交通省によると、築40年超のマンションは平成30(2018)年時点で全国に81.4万戸あり、10年後には約2.4倍、 20年後には約4.5倍に急増すると予測されています。(※)

 

近い将来起こると予測されている巨大地震への備えとしても、マンションの建て替えが今後もより一層求められるでしょう。

 

※参照:国土交通省|マンション政策の現状と課題

マンションの建て替えの流れ

マンションの建て替えの流れ

マンションの建て替えの流れ

マンション建て替え円滑化法のもとで実際に建て替えを進める場合、次の流れで実施します

 

1. マンション管理組合の総会にて「建て替え決議」を行い、可決する

2. 「マンション建替組合」を設立する

3. マンション建替組合にて、権利変換計画の立案

4. マンション建替組合にて、権利変換の実行

(マンションの建て替えに賛成する住民の一括登記・マンション建て替えに賛成しない住民の区分所有権の買い取り)

5. 建て替え工事を実施する

6. 建て替え後のマンションに入居する

7. マンション建替組合を解散する

 

とくに難航しやすいのは、住民からの合意を得る段階です。建物の老朽化が進んでいたとしても、金銭的な問題や生活環境の変化などを理由に、建て替えに拒否感を示す住民も一定数いるでしょう。

 

建て替え時の合意形成の進め方に関しては、国土交通省が下記のマニュアルを公開しています。併せて参考にしてください。

 

※参考:国土交通省|マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル

鑑定士コメント

マンション建て替え円滑化法で可能になる建て替え以外の再生方法はあるのでしょうか?耐震性の問題などで建物の再生が必要となった場合、建て替え以外の選択肢として、マンションと敷地を一括売却する「マンション敷地売却制度」の利用が考えられます。この制度を利用する場合、最初のステップとして、行政による「特定要除却認定」を受けることが必要です。特定要除却認定を受けるには、認定申請書や構造計算書などの提出が必要です。

マンション建て替え円滑化法の改正点

マンション建て替え円滑化法の改正点

マンション建て替え円滑化法の改正点

マンション建て替え円滑化法は平成14(2002)年に施行されたのち、平成26(2014)年と令和2(2020)年に改正されています

 

主な改正点は、以下の3点です。

 

・建て替え後の容積率の緩和

・除却の必要性にかかる認定対象の拡充

・容積率の緩和特例の適用対象の拡大

 

ひとつずつ見ていきましょう。

建て替え後の容積率の緩和

平成26年の改正により、要除却認定を受けたマンションを建て替える場合の容積率の基準が緩和されました。(※)

 

容積率とは、敷地面積に対し延床面積(マンションの述べ面積)が占める割合のことです。

 

容積率の基準は建築基準法に従う必要がありますが、一定の条件を満たす建て替えについては、特定行政庁の許可のもと、より柔軟な設計が可能となりました。緩和基準は、都道府県によって異なります。

 

詳細は国土交通省の下記のサイトでご確認ください。

 

※参照:国土交通省|容積率の緩和特例について

除却の必要性に係る認定対象の拡充

令和2年の改正により、要除却認定を受けられるマンションの対象が拡充されました。(※)具体的には、以下の特徴を持つマンションは、除却認定の対象となります。

 

・耐震性が不足しているマンション(改正前と同様)

・耐火性が不足しているマンション

・外壁の剝落等による危険性があるマンション

 

※参照:国土交通省|マンション建替円滑化法の改正概要 P.3-5

容積率の緩和特例の適用対象の拡大

容積率の緩和特例の適用対象の拡大

容積率の緩和特例の適用対象の拡大

令和2年の改正により、「容積率の緩和特例制度」の適用対象も拡充されました

 

容積率の緩和特例制度とは、前述の通り、要除却認定を受けたマンションを取り壊し、新たにマンションを建設する際に、容積率の基準を緩和する制度です。

 

「容積率の緩和特例制度」の適用対象は従来、「耐震性が不足しているマンション」のみでしたが、令和2年の改正により、以下のマンションも適用対象となりました。

 

・耐火性が不足しているマンション

・バリアフリー基準に満たないマンション

・給排水管の腐食等による危険性があるマンション

・外壁の剝落等による危険性があるマンション

 

※参照:国土交通省|マンション建替円滑化法の改正概要 P.3-5

まとめ:マンション建て替え円滑化法の改正で安全なマンションが増加する

まとめ:マンション建て替え円滑化法の改正で安全なマンションが増加する

まとめ:マンション建て替え円滑化法の改正で安全なマンションが増加する

マンション建て替え円滑化法の改正により、建て替え時のハードルがより下がりました。これにより、今後、安全性・防災性の高いマンションが増加することが予測されます。

 

マンションを所有する以上、老朽化問題は避けては通れません。ただし、この記事でご紹介したように、老朽化したマンションを再生させる仕組みはいくつかあります。マンション建て替え円滑化法の知識を頭の片隅に置き、いざというときにぜひ役立ててください。

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

簡易テスト

第1問

マンションの価値に影響を与える要因について、正しい説明はどれか。

答えは 2

要因はマンションのタイプごとにその影響度合いは異なります。例えば、大規模マンションは住民コミュニティの充足度が、タワーマンションは免震・制振構造が重視されたりなどが挙げらます。

1 問 / 2

  • 資産性が低くて
    売りたくても売れない
  • 安いという理由だけで
    中古マンションを
    買ってしまった
  • 修繕積立金が
    年々上がる
  • 子供が成人したから
    マンションを売って
    一軒家生活したいけど…
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