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更新日:2023.11.22
登録日:2023.11.22
長期修繕計画作成ガイドラインとは?基本的な内容や改正点について簡潔に解説
マンションの大規模修繕工事を行ううえで、長期修繕計画の作成は必須です。そこで、参考となるのが、国土交通省が作成した長期修繕計画作成ガイドラインです。
しかし、ガイドラインがあっても、どう計画書を作成すればいいかわからない人も多いでしょう。
そこで、本記事では、長期修繕計画のガイドラインについて解説します。計画書の作成方法や修繕積立金額の設定方法を紹介するので、計画書の作成や見直しの際に参考にしてください。
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長期修繕計画作成ガイドラインとは
長期修繕計画作成ガイドラインとは
長期修繕計画とは、長い期間をかけて行う、マンションの大規模修繕の計画表のことです。
マンションは経年劣化するため、居住者が快適に暮らし続けるために、長期修繕計画表は必須です。
そこで、平成20年6月に国土交通省が、計画表を作るうえで指針となる「長期修繕計画ガイドライン」を公開しました。
ガイドラインは、計画書の作成時だけでなく、計画書をチェックする際にも役立ちます。
マンションの購入を検討している人は、ガイドラインと照らしあわせながら、そのマンションの計画書の内容をチェックしましょう。
長期修繕計画作成ガイドラインの対象
長期修繕計画作成ガイドラインは、主に区分所有者自身が居住する住宅専用の単棟型のマンション(※)が対象です。
しかし、ひとくちにマンションといっても、規模・形状・立地条件などが異なります。
たとえ、ガイドラインを参考に計画表を作っても、内容が不十分な可能性があります。マンションの実情にあわせて、必要な事項を追加しましょう。
また、ガイドラインの対象は単棟型のマンションですが、団地型マンションの計画書の作成時にも利用できます。とはいえ、ガイドラインはあくまでも単棟型のマンションを想定しているため、団地型のマンションの長期修繕計画を作成する際には、その点に注意してください。
※参照:国土交通省
長期修繕計画ガイドラインの周期
一般的に、大規模修繕工事の周期は12年程度と考えられています。
ガイドラインでは、長期修繕の計画期間を30年以上かつ2回の大規模修繕工事を実施する期間以上と記載されています。
1回目と2回目では、工事内容や費用が異なるため、専門家に相談・依頼することも検討しましょう。
また、マンションの立地条件や使用状況によって、経年劣化の度合いには差が出ます。そのため、マンションの状態にあわせて、必要なタイミングで大規模修繕工事を行うことが重要です。
適切な修繕計画を立てるために、マンションの劣化状態の定期的な診断・調査を行ってください。
鑑定士コメント
マンションの長期修繕計画は誰が見直すのでしょうか?最も一般的なのは、管理組合が委託している管理会社に計画と見積りを発注し、管理会社が作成したものを管理組合で判断する、というケースでしょう。また、最近では、管理会社でなく、コンサルティングの立場で中立である外部の専門家に依頼することも増えています
長期修繕計画の構成
長期修繕計画の構成
長期修繕計画をゼロから作ることは難しいため、フォーマットにのっとって作成するのが基本です。
国土交通省がフォーマットとなる「長期修繕計画標準様式」を提供しているので、様式にしたがって計画書を作成しましょう。
ガイドラインに記載されている長期修繕計画の構成は以下のとおりです。
1.マンションの建物や設備の概要等
2.調査や診断の概要
3.長期修繕計画の作成や修繕積立金額の設定の考え方
4.長期修繕計画の内容
5.修繕積立金の額の設定
管理会社や外部の専門家に計画書の作成を依頼する場合でも、各項目を確認し、内容に問題がないかチェックしましょう。
※参照:国土交通省
長期修繕計画作成の考え方
長期修繕計画作成の考え方
ガイドラインにある、計画書を作成する際の考え方は以下のとおりです。(※)
1.修繕・改修工事の内容、工事の時期や費用などを明確にする
2.計画的に工事を実施するために、修繕積立金額の根拠を明確にする
3.円滑に工事を進めるために、住民に長期修繕計画についての合意を取る
適切な大規模修繕工事を行うために、工事の内容・時期・費用を明確化することが重要です。必要になってから、工事の内容や時期を決めても、実施までに時間がかかるでしょう。
また、適切な修繕積立金額を設定していないと、途中で値上げが必要になります。住民が納得して支払えるように、その金額である理由や根拠を明確化しましょう。
工事の開始後に、居住者とトラブルにならないためにも、工事について合意形成をすることも大切です。
特に新築マンションでは、当初の見積もりとは異なる場合が多いため、定期的に計画書を見直しましょう。
※参照:国土交通省
長期修繕計画の作成手順
長期修繕計画の作成手順
長期修繕計画を作成する専用ソフトがない場合は、Excelを使用して計画書を作成することが多いです。
計画書の作成手順は、以下のとおりです。
1.「長期修繕計画標準様式」のダウンロード
2.Excelにデータを変換
3.各項目の入力
4.修繕積立金額の設定
長期修繕計画書の詳しい作成の手順については、以下の記事を参考にしてください。
修繕積立金額の設定方法
修繕積立金額の設定方法
修繕積立金とは、大規模修繕を行うために区分所有者から毎月徴収し、積み立てるお金のことです。
修繕積立金額の計算には、必要な工事費用に対し、計画期間で均等に積み立てる「均等積立方式」を採用します。
具体的な計算方法は、次のとおりです。
毎月の修繕積立金額=推定修繕工事の累計額÷計画期間
毎月の一戸あたりの修繕積立金額は、毎月の修繕積立金額に各住戸の割合をかけると算出できます。
計画の見直しによって、工事に必要な費用が増加すると、修繕積立金の額も増加するため注意が必要です。
修繕積立金の累計額が必要な費用を下回る場合や、災害・事故のような不測の事態に陥った場合には、一時金の負担や借り入れなどの対応が必要になります。
長期修繕計画作成ガイドラインの改正点
長期修繕計画作成ガイドラインの改正点
ガイドラインは、マンション管理に関する制度の変化や社会情勢の変化を受け、令和3年9月に改訂されました。
ガイドラインの改正点は、大きく分けて3つです。
・マンションの長期修繕計画期間の統一
・大規模修繕工事の周期の目安
・省エネ性能を向上させる改修工事について
マンションの長期修繕計画期間が統一された
1つ目の変更点は、新築マンションと既存のマンションの長期修繕計画期間が統一された点です。
以前まで、既存のマンションの計画期間は、25年以上と定められていました。
改正後には、新築マンションと同様に「計画期間が30年以上かつ、大規模修繕が2回含まれる期間以上」に変更されました。
大規模修繕工事の周期の目安に幅をもたせた
2つ目の変更点は、大規模修繕工事の周期の目安についてです。
改正前は「◯年」と特定の年数が記載されていましたが、工事事例を踏まえ、下記のように幅を持たせた年数へと変更されました。
※参照:長期修繕計画ガイドライン
省エネ性能を向上させる改修工事について言及した
省エネ性能を向上させる改修工事について言及した
壁・屋上・窓の断熱改修工事のような、省エネ性能を向上させる工事の有効性に関する記載が加えられました。
築年数が古く、省エネ性能が低いままのマンションが多く存在することが理由です。
省エネ住宅の関連用語として「ZEH」があります。ZEHとは、エネルギー収支がゼロ以下の省エネ性能の高い住宅です。
ZEHについて詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
ZEH (ゼッチ)とは?基本知識やメリット・デメリットを解説
修繕積立金ガイドラインの改正点
修繕積立金ガイドラインの改正点
修繕積立金ガイドラインにも、2つの改正点があります。
・修繕積立金のm²単価が更新された
・修繕積立金額目安にかかる計算式が見直された
修繕積立金のm²単価が更新された
ガイドラインでは、専有床面積あたりの修繕積立金の目安が定められています。
適切な長期修繕計画にもとづく修繕積立金の事例から、以前のガイドラインに記載されている単価が増額されました。
増額した理由は、人手不足による人件費の高騰や、資材不足による建築費の高騰です。工事費が増額するため、修繕積立金も値上がりしています。
修繕積立金額目安にかかる計算式が見直された
以前のガイドラインでは、新築マンションのデータを参考に、修繕積立金額の計算式が立てられていました。
改正後には既存のマンションのデータも含まれるようになり、それに伴って計算式が見直されています。(※)
※参照:国土交通省
鑑定士コメント
マンションの長期修繕計画に関する注意点は何でしょうか?長期修繕計画が立てられていても、計画どおりに工事が進むとはかぎりません。想定よりも必要な工事が多く、修繕積立金が不足するリスクもあります。さらに、近年は工事費の高騰による計画の見直しが多くなっているようです。また、規模の小さいマンションでは、そもそも長期修繕計画がない場合があります。このケースでは、修繕積立金はないものの、突然修繕費を請求される可能性が高いでしょう。
まとめ:長期修繕計画ガイドラインを読んで長期修繕計画の知識を身につけておこう
まとめ:長期修繕計画ガイドラインを読んで長期修繕計画の知識を身につけておこう
長期修繕計画ガイドラインで、大規模修繕計画書の作成方法や修繕積立金額の設定方法の考え方を確認できます。
適切なマンションの維持管理をするために、ガイドラインを参考に計画書を作成しましょう。ただし計画どおりに進むとはかぎらないため、定期的に計画書の見直しを行うことが大切です。
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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