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更新日:2025.12.25
登録日:2023.11.22
【専門家解説】長期修繕計画ガイドラインの基礎と最新改定内容|修繕積立金のリアルも紹介

マンションの大規模修繕工事を行ううえで、長期修繕計画の作成は必須です。そこで、参考となるのが、国土交通省が作成した長期修繕計画作成ガイドラインです。
マンション管理組合・理事会・管理会社など多くの人が長期修繕計画に関わります。この記事では長期修繕計画作成ガイドラインの最新の改定点や見るべきポイントなどを解説します。
東京カンテイのマンション専門調査員である今村の解説を交えながら、計画書の作成方法や修繕積立金額の設定方法、業界の「本音とリアル」も交えてお伝えします。計画書の作成や見直しの際にぜひ参考にしてください。
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【監修者】マンション専門調査員 今村 浩一
マンション管理会社にて管理組合の運営支援業務、その後、大手不動産仲介会社にて売買仲介営業に従事し、2016年に東京カンテイに入社後現在に至る。 マンション専門調査員として東京都心部を中心に、埼玉県全域、 名古屋市、宇都宮市、高崎市、札幌市、福岡市、広島市など、約10年間で延べ15,000棟以上のマンションについて現地/データの二面から調査を行う。 趣味はマンション関連のネットサーフィン、モデルルーム巡り、マンション将来価格予想。夢は歴代住んだマンションの模型を部屋に並べてお酒を飲むこと。
長期修繕計画作成ガイドラインとは
長期修繕計画作成ガイドラインとは
長期修繕計画作成ガイドラインは、平成20年6月に国土交通省が策定したマンションの適正な管理を推進するために定めた指針です。正しくは「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」という名称です。
主に以下のような内容をまとめた“長期修繕計画づくりの教科書”と言えるものです。
・標準様式
・計画期間・修繕周期・見直し頻度などの考え方
・修繕積立金の設定方法
長期修繕計画とガイドラインの基礎知識
まずは、長期修繕計画とガイドラインの基礎知識を確認していきます。
・長期修繕計画の目的とは
・サジェスト「いつから」を入れる
・長期修繕計画作成ガイドラインの対象
・長期修繕計画ガイドラインの周期
・長期修繕計画ガイドラインの使用方法
長期修繕計画の目的とは
長期修繕計画とは、マンションという巨大な資産を長期間にわたって維持管理していくための「羅針盤」のようなものです。
単に工事のスケジュールを決めるだけでなく、おもに以下の3つの重要な目的があります。
1.将来の支出を可視化し、資金不足を防ぐ
マンションの設備は、数年で交換が必要なものから、数十年単位で更新が必要なものまで様々です。「いつ・どのような工事が必要になり、いくら掛かるのか」をあらかじめ推定することで、将来の資金不足や、突発的な一時金の徴収を防ぎます。
2.資産価値と快適な居住環境の維持
適切な時期に適切な修繕を行うことで、建物の老朽化を遅らせ、資産価値を維持します。計画がないと、行き当たりばったりの修繕になり、「管理不全マンション」に陥るリスクがあります。
3.世代間の公平性の確保と合意形成
計画的に資金を積み立てることは、その時期に住んでいる人が消耗分を負担する「受益者負担の原則」を守り、世代間の不公平を防ぎます。また、積立金の値上げ等の際、根拠ある計画があれば合意形成もスムーズになるのです。
具体的には、工事や値上げの提案時に「なんとなく」ではなく「計画に基づく根拠」として機能します。
長期修繕計画については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
長期修繕計画とは?マンションの維持管理のために知っておきたい基本知識
長期修繕計画作成ガイドラインの対象
長期修繕計画作成ガイドラインは、おもに区分所有者自身が居住する住宅専用の単棟型のマンション(※)が対象です。
しかし、ひとくちにマンションといっても、規模・形状・立地条件などが異なります。
たとえ、ガイドラインを参考に計画表を作っても、内容が不十分な可能性があります。マンションの実情にあわせて、必要な事項を追加しましょう。
また、ガイドラインの対象は単棟型のマンションですが、団地型マンションの計画書の作成時にも利用できます。とはいえ、ガイドラインはあくまでも単棟型のマンションを想定しているため、団地型のマンションの長期修繕計画を作成する際には、その点に注意してください。
※参照:国土交通省
長期修繕計画ガイドラインの周期
一般的に、大規模修繕工事の周期は12年程度と考えられています。
ガイドラインでは、長期修繕の計画期間は「30年以上」(※)とされており、その中に少なくとも2回の大規模修繕工事が含まれていることが求められます。1回目と2回目では、工事内容や費用の水準が変わるため、長期の視点で資金計画を立てることが重要です。
また、マンションの立地条件や使用状況によって、経年劣化のスピードには差があります。「30年以上&大規模修繕2回」はあくまでベースラインであり、実際の実施タイミングは、専門家による診断結果を踏まえて調整していく必要があります。
適切な修繕計画を立てるためにも、マンションの劣化状態の定期的な診断・調査を行い、計画を現状に合わせて更新していきましょう。
※参照:国土交通省
長期修繕計画ガイドラインの使用方法
長期修繕計画ガイドラインは、現場においておもに以下の3つの場面で活用されています。
1.計画作成における「標準様式」として
管理会社の担当者(建築士など)が、計画案を作成する際のひな形として使用します。
2.合意形成と検討の場で
理事会や総会で計画案を検討する際、ガイドラインに沿った標準的な形式であることは、スムーズな合意形成のための共通ルールとなります。
3.計画内容の客観的な妥当性検証(ダブルチェック)
管理会社から提示された計画が適正か、外部の専門家にチェックしてもらう際の判断基準として機能します。
ここまでで、ガイドラインの位置づけや活用シーンの全体像はつかめたと思います。一方で、「実際の現場では誰が長期修繕計画を見直しているのか」「管理会社任せで本当に大丈夫なのか」と不安に感じる方も多いでしょう。
そこで、マンションの資産価値や管理状況を専門的に評価している不動産鑑定士にも、長期修繕計画の実務についてコメントをもらいました。
鑑定士コメント
マンションの長期修繕計画は誰が見直すのでしょうか?最も一般的なのは、日常や定期点検を行っている管理委託先の管理会社が計画案を作成し、その案を元に管理組合で判断する、というケースでしょう。また、最近では、管理会社でなく、コンサルティングの立場で中立である外部の専門家に依頼することも増えています。
【令和6年6月】長期修繕計画作成ガイドラインの改定点
【令和6年6月】長期修繕計画作成ガイドラインの改定点
近年の社会情勢の変化に伴い、ガイドラインも改訂されています。令和6年6月の改定内容について、おもなポイントを解説します。
・段階増額積立方式における引上げ幅が設定された
・標準様式活用がより重要視されるようになった
・計画期間と見直し頻度を再確認させている
段階増額積立方式における引上げ幅が設定された
令和6年6月の改定では、将来の積立金不足を防ぐため、計画期間全体を通した平均額(均等積立方式の額)に対して、「初期の積立額」と「将来の積立額」の差に上限が設けられました。
これまでのガイドラインでは、将来的に積立金額を値上げしていく「段階増額積立方式」について具体的な制限はありませんでした。
そのため、新築分譲時に売りやすさを優先して初期設定額を安くし、将来的に値上げを前提とする計画が多く見られました。
これにより、初期の負担を不当に低く設定して販売し、将来に過度な値上げを先送りするような計画は取りにくくなっています。簡単に言えば、「最初から安すぎない」「最後に跳ね上がりすぎない」範囲で積立金を設定しなければならない、という考え方です。
具体的な数値基準や計算イメージについては、後述する「修繕積立金ガイドラインの改定点」の章で詳しく解説します。
標準様式活用がより重要視されるようになった
長期修繕計画の作成にあたっては、国土交通省が提供する「長期修繕計画標準様式」の活用がこれまで以上に推奨されています。
背景には、令和4年から開始された「管理計画認定制度」があります。この制度で認定を受けるためには、ガイドラインに準拠した長期修繕計画の策定が要件の一つとなっており、標準様式を使用することで、認定基準を満たしているかの確認がスムーズになる点がメリットです。
標準様式を活用することで、専門的な知識が乏しい管理組合でも一定水準の計画を作成しやすくなり、区分所有者にとっても計画内容の透明性が高まることが期待されています。
計画期間と見直し頻度を再確認させている
改定ガイドラインでは、長期修繕計画の実効性を高めるために、計画の期間と見直しのタイミングについて、基本的な考え方が改めて整理されています。
計画期間そのものについては、前述のとおり「30年以上で、大規模修繕工事を2回含むこと」が基本です。そのうえで、次のような見直し頻度が推奨されています。
・見直し頻度:おおむね5年ごとに調査・診断を行い、その結果や物価動向を踏まえて計画を見直すこと
特に近年は、建設資材価格や人件費の高騰(物価変動)が著しいため、古い計画のままでは資金不足に陥るリスクが高まっています。5年ごとの見直しにより、最新の社会情勢や劣化状況を計画に反映させることが強く求められています。
【令和3年9月】長期修繕計画作成ガイドラインの改定点
【令和3年9月】長期修繕計画作成ガイドラインの改定点
近年の社会情勢の変化に伴い、令和3年9月にも長期修繕計画作成ガイドラインが改定されています。
改定前と改定後の比較は以下のとおりです。
各項目を詳しく解説します。
・マンションの長期修繕計画期間が統一された
・大規模修繕工事の周期の目安に幅をもたせた
・省エネ性能を向上させる改修工事について言及した
マンションの長期修繕計画期間が統一された
これまで既存マンションの計画期間は「25年以上」とされていましたが、令和3年9月の改定後は新築マンションと同様に「30年以上」に統一されました。
計画期間を30年以上とすることで、大規模修繕工事を2回盛り込んだうえで資金計画を立てることが前提となります。マンションの高経年化が進むなかで、より長いスパンで修繕と資金の両方を見通す必要がある、という考え方です。
この統一により、既存マンションでも早い段階から2回分の大規模修繕を見据えた長期計画を立てやすくなり、将来の資金不足リスクを把握しやすくなりました。
大規模修繕工事の周期の目安に幅をもたせた
これまでのガイドラインでは、外壁塗装などの修繕周期が一律の年数(12年など)で示されていました。しかし、令和3年9月の改定では「12〜15年」のように幅を持たせた目安へと変更されました。
省エネ性能を向上させる改修工事について言及した
壁・屋上・窓の断熱改修工事のような、省エネ性能を向上させる工事の有効性に関する記載が加えられました。築年数が古く、省エネ性能が低いままのマンションが多く存在することが理由です。
省エネ住宅の関連用語として「ZEH」があります。ZEHとは、エネルギー収支がゼロ以下の省エネ性能の高い住宅です。
ZEHについて詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
ZEH (ゼッチ)とは?基本知識やメリット・デメリットを解説
修繕積立金ガイドラインの改定点
修繕積立金ガイドラインの改定点
修繕積立金ガイドラインのおもな改定点は次の4つです。
各項目を詳しく説明します。
・修繕積立金のm²単価が更新された
・修繕積立金額目安にかかる計算式が見直された
・段階増額方式の引上げ幅が制限された
・均等積立方式への移行を推奨している
修繕積立金のm²単価が更新された
令和3年9月の改定では、修繕積立金の目安となる「専有床面積あたりの単価」が更新されました。
旧ガイドライン(平成23年版)の基準では、近年の資材価格や人件費の高騰に対応できず、資金不足に陥る管理組合が増加していたためです。最新の実態調査に基づき、多くの規模・タイプで目安となる単価が引き上げられています。
修繕積立金額目安にかかる計算式が見直された
単価の更新に伴い、同じく令和3年9月に適正な積立金額を算出するための計算式も見直されました。従来は主に新築マンションのデータを前提としていましたが、改定後は既存マンションの修繕実績データも加味されるようになっています。(※)
これにより、機械式駐車場の維持費など、実務的なコストがより正確に反映されるようになりました。
※参照:国土交通省
段階増額方式の引上げ幅が制限された
令和6年6月の改定では、「段階増額積立方式(徐々に値上げする方式)」について、将来の引き上げ幅に初めて制限が設けられました。具体的には、計画期間を通した平均額(均等積立額)に対し、初期額を0.6倍以上、最終額を1.1倍以内に収める必要があります。(※)
これは、購入のハードルを下げるために、一旦極端に初期費用を抑え、その後の値上げ幅による負担が増大してしまうことを是正する目的があります。
※参照:国土交通省
均等積立方式への移行を推奨している
ガイドラインでは、将来にわたって積立金額を変えずに定額を集める「均等積立方式」への移行を推奨しています。
段階増額方式は、将来値上げの際に「払えない」「払いたくない」という住民が出たり、値上げ自体が決まらずに止まったりしてしまうリスクがあります。一方、均等積立方式なら最初から必要な金額を積み立てるため、資金不足の心配が少なく、安定した運営が可能です。
一方で、均等であれば値上げの心配が一切ない、ということではありません。マンションの管理状況や資産価値を日常的にチェックしている不動産鑑定士の視点から、長期修繕計画を考える際の注意点を紹介します。
鑑定士コメント
マンションの長期修繕計画に関する注意点は何でしょうか?長期修繕計画が立てられていても、計画どおりに工事が進むとはかぎりません。想定よりも必要な工事が多く、修繕積立金が不足するリスクもあります。さらに、近年は工事費の高騰による計画の見直しが多くなっているようです。また、自主管理のマンションなどの中には、そもそも長期修繕計画がない場合があります。このケースでは、修繕積立金はないものの、突然修繕費を請求される可能性が高いでしょう。
長期修繕計画の構成
長期修繕計画の構成
長期修繕計画をゼロから作成するには専門知識が必要ですが、国土交通省が提供している「長期修繕計画標準様式」を活用することで、漏れのない計画書を作成できます。
標準様式に沿った一般的な長期修繕計画は、おもに以下の5つの要素で構成されています。(※)
1.マンションの建物や設備の概要等
マンションの所在地や構造、戸数、建築面積、設備の内容など、物件の基本情報を記載します。
2.調査や診断の概要
計画作成の前段階として行った、建物の現状や劣化状況の診断結果をまとめます。修繕の必要性を判断する根拠となります。
3.長期修繕計画の作成や修繕積立金額の設定の考え方
「どのような基準で修繕周期を決めたか」「積立金の計算期間や方式はどうするか」など、計画全体の方針や根拠を示します。
4.長期修繕計画の内容
具体的に「いつ」「どの箇所を」「いくらかけて」工事するのかを示した、計画の核心部分です。推定修繕工事項目の詳細や実施予定時期を記載します。
5.修繕積立金の額の設定
計画された工事を実行するために必要な資金計画です。現在の積立金残高や、将来の改定予定(均等積立方式か段階増額方式かなど)を含めた収支計画を設定します。
管理会社や外部の専門家に作成を依頼する場合でも、これらの項目が網羅されているかを確認し、透明性のある計画となっているかをチェックしましょう。
※参照:国土交通省
長期修繕計画作成の考え方
長期修繕計画作成の考え方
ガイドラインにある、計画書を作成する際の考え方は以下のとおりです。(※)
1.修繕・改修工事の内容、工事の時期や費用などを明確にする
2.計画的に工事を実施するために、修繕積立金額の根拠を明確にする
3.円滑に工事を進めるために、住民に長期修繕計画についての合意を取る
適切な大規模修繕工事を行うために、工事の内容・時期・費用を明確化することが重要です。必要になってから、工事の内容や時期を決めても、実施までに時間がかかるでしょう。
また、適切な修繕積立金額を設定していないと、途中で値上げが必要になります。住民が納得して支払えるように、その金額である理由や根拠を明確化しましょう。
工事の開始後に、居住者とトラブルにならないためにも、工事について合意形成をすることも大切です。
特に新築マンションでは、当初の見積もりとは異なる場合が多いため、定期的に計画書を見直しましょう。
※参照:国土交通省
ガイドラインを活用した長期修繕計画の作成手順
ガイドラインを活用した長期修繕計画の作成手順
長期修繕計画の見直しは、国土交通省のガイドラインに基づき、一定の手順で進めることが推奨されています。
一般的に、管理会社や専門家と協力しながら、以下の手順で進めます。
手順1:建物・設備の劣化診断(現状把握)
まず、現在の建物や設備がどのような状態にあるかを把握します。物理的な劣化状況(ひび割れ、塗装の剥がれ、設備の不具合など)を専門家が調査・診断。この診断結果に基づき、前回の計画で想定していた修繕時期を早めるべきか、あるいは延期しても問題ないかを判断します。
手順2:修繕項目の設定と費用の算出(計画案の作成)
診断結果をもとに、今後必要となる修繕工事の項目を洗い出し、それぞれの実施時期と概算費用を算出します。この「計画案の作成」は、管理会社に委託するのが一般的です。
手順3:外部専門家による客観的なチェック(ダブルチェック)
管理会社が作成した計画案で問題ないケースが大半ですが、近年では「本当にこの計画で適正なのか?」を確認するために、外部の専門家(セカンドオピニオン)を活用する事例が増えています。
手順4:修繕積立金の検証
計画された工事費用に対して、現在の修繕積立金の残高や将来の積立計画で資金が足りるかを検証します。
資金不足が見込まれる場合は、ガイドラインの「均等積立方式」への移行推奨などを踏まえ、積立金の増額改定を検討します。
手順5:総会での決議
完成した長期修繕計画案と、それに伴う修繕積立金の改定案を総会で決議します。理事会でしっかり検討し(場合によっては修繕委員会を立ち上げ連携)、その過程や外部専門家のチェック内容などを丁寧に説明することで、住民の理解と合意を得ていきます。
長期修繕計画書については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
ガイドラインを活用した長期修繕計画の見直し手順
ガイドラインを活用した長期修繕計画の見直し手順
長期修繕計画は「一度作れば終わり」ではありません。ここでは実務的な手順と、現場のリアルな課題について解説します。
手順1:現状の劣化診断と計画の未更新リスクの確認
新規作成のときと同じく、まずは建物診断からスタートしますが、見直し時には「当初計画とのズレ」をチェックする視点が重要です。
手順2:物価上昇を踏まえた費用の再算出
次に、最新の単価を用いて修繕費用を算出します。ここで大きな問題となるのが「物価上昇」です。
手順3:資金計画の見直しと合意形成
費用の増加に伴い、修繕積立金の値上げが必要になるケースが多くあります。この段階が、見直しプロセスにおける最大の難所です。
長期修繕計画の見直しについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
長期修繕計画の見直しは必要?タイミングや注意しておきたいポイントを紹介
マンション専門家が伝える「修繕積立金」のリアル
マンション専門家が伝える「修繕積立金」のリアル
ここでは、修繕積立金にまつわるリアルをご紹介します。将来的に資金不足に陥るリスクが高いマンションを購入前に見極めるためのチェックポイントについても解説します。
マンションの購入を考えている方にもためになる内容なので、ぜひ参考にしてください。
均等積立方式と段階増額積立方式
修繕積立金の積立方式には、大きく分けて以下の2種類があります。
・均等積立方式
・段階増額積立方式
均等積立方式とは、計画期間中(30年以上など)の修繕積立金の額を均等にする方法です。
将来にわたって金額が変わらないため、家計の計画が立てやすく、資金不足に陥るリスクが低いのが特徴です。国土交通省のガイドラインでも、安定的な修繕積立金の確保の観点から、この均等積立方式への移行が推奨されています。
段階増額積立方式とは、当初の積立額を低く設定し、数年(5年程度)ごとに段階的に値上げしていく方法です。
多くの新築マンションで採用されていますが、将来的に大幅な増額が必要になった際、住民の合意形成が得られず、資金不足に陥るリスクが高いというデメリットがあります。
当初の金額はなぜ低いのか? 初期設定の実態
新築マンションを購入する際、修繕積立金が月額数千円〜1万円程度と、安めに設定されているケースは少なくありません。
これは、購入時に頭金や仲介手数料、引っ越し費用などで出費がかさむため、初期の負担を軽くする目的があるとされています。
つまり、多くの新築マンションは将来的な値上げを前提とした価格設定になっています。購入者は、デベロッパーから将来の値上げについて説明を受けていることが殆どですが、購入時は初期費用への意識が優先されがちです。その結果、数年後の大幅な値上げ通知を見て初めて驚くケースが多く見られます。
将来的に資金が不足するマンションの「初期サイン」
将来的に資金が不足するマンションの「初期サイン」
資金不足に陥るリスクが高いマンションを事前に見抜くことはできるのでしょうか?管理会社が発行する「重要事項調査報告書」や管理組合の資料を確認することで、ある程度の危険信号を察知できます。
【要注意!資金不足の予兆となる4つのサイン】
1. 修繕積立金の設定額が極端に低い
ガイドラインの目安や、近隣の同規模マンションと比較してあまりに安い場合、将来のしわ寄せが確定しています。国土交通省によれば、1万3054円/月が1戸あたりの平均修繕積立金と報告されています(※)。もちろん、マンション規模などによって積立金額は異なりますが、数千円の場合はどうして低いのかを確認したほうが良いでしょう。
2. 長期修繕計画が「未作成」または「長期間更新されていない」
計画がないのは論外ですが、6年以上更新されていない場合も危険です。この場合、物価高騰や建物の劣化進行が反映されておらず、計画上の数字が実態と乖離し、将来的に資金が不足するリスクが高まります。
3. 管理費・修繕積立金の滞納率が高い
滞納が多いマンションは二重の意味で危険です。単純に集まる資金が減るだけでなく、「住民が管理への関心が薄い」「大事なことを決めるときに話がまとまりにくい」といった問題を抱えている可能性が高いのです。こうした情報は、購入前に「重要事項調査報告書」で確認できます。
4. 過去に「借入金」や「一時金徴収」の実績がある
過去に借入金や一時金徴収の実績があるマンションは、計画的な積立ができていない可能性が高いです。ただし、一時金徴収で対応するケースは、段階的な増額と比べると割合としては少ないです。
※参照:国土交通省
積立金値上げで発生しがちな「理事会 vs 住民」の構図とは?
積立金の値上げが提案されると、理事会への不信により対立してしまう管理組合もあります。しかし、適切な管理ができず、必要な資金が不足した場合、最終的に困るのは区分所有者自身です。
また、「管理会社が儲けようとしているのではないか」という誤った解釈により、不要な不信を管理会社に抱いてしまうケースも一部あります。しかし、そもそも積立金は管理会社へ直接支払うものではなく、マンションの維持管理に必要な資金を管理組合の口座で管理しているため、積立金が増額されても管理会社が儲かる、ということはありません。
必要な資金が不足し、適切なタイミングで修繕ができないと、建物は劣化が進みます。例えば、給排水管の修繕を延期したことで漏水事故が発生するなど、二次被害によってかえってコストが膨らむケースもあります。外壁の剥がれや配管の水漏れが目立つマンションになれば、住み心地が悪化するだけでなく、売却時の資産価値にも影響が出てきます。
「安く済ませること」と「資産を守ること」は別の話です。「自分たちの資産を守るために、適正なコストを支払い、適切な管理を行う」という視点が、長期的な計画の見直しにつながります。
適切な修繕計画を立て、資産価値を守るためには、現在の管理が適切に行われているかを把握することが重要です。マンションの管理状態を客観的にチェックするためのチェックシートをご用意しました。ぜひ、ご活用ください
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長期修繕計画はどのように実行されるのか
長期修繕計画はどのように実行されるのか
長期修繕計画は作成しただけでは意味がなく、実際に工事を実行して初めて効果を発揮します。
しかし、いざ実行する段階になると、住民の合意形成や具体的な実務の面で様々な課題が生じます。ここでは、計画実行の障壁となりやすい以下の点を解説します。
・居住者の高齢化問題
・大規模修繕工事の実務フロー
居住者の高齢化による影響
築年数が経過したマンションでは、居住者の高齢化が進み、合意形成が難しくなる傾向があります。高齢化が進むと、年金生活での負担増への抵抗感や、「自分がいなくなった後の資産価値なんて関係ない」という意見が出やすくなります。
また、在宅が必要となる「給排水管の更新工事」などを、生活への負担から拒否されるケースも。しかし、一部だけ未工事の場合、工事の効果は半減されてしまい、全体工事実施の意味が危ぶまれます。漏水事故のリスクを避けるためにも、粘り強く説得し、理解を得る必要があります。
大規模修繕工事を実行する場合の実務フロー
ガイドラインで立てた計画が、実際の大規模修繕工事でどのように実行されていくかをフローで確認しておきましょう。
大規模修繕に関しては以下の記事でも解説しています。特に費用面に興味のある方はこちらも読んでみてください。
マンション大規模修繕の費用はどれくらい?目安をわかりやすく解説
まとめ:長期修繕計画ガイドラインを読んで長期修繕計画の知識を身につけておこう
まとめ:長期修繕計画ガイドラインを読んで長期修繕計画の知識を身につけておこう
長期修繕計画ガイドラインは、マンション管理を適正に行うための重要な指針です。
特に近年の改定では、将来の資金不足を防ぐために「均等積立方式」への移行や、定期的な見直しが強く推奨されています。
理事会任せにするのではなく、区分所有者一人ひとりが「自分たちの資産を守る」という意識を持ち、ガイドラインを活用して現状の計画をチェックしてみてはいかがでしょうか。
適切な計画と運用こそが、将来にわたって安心できる住まいを守るためのカギとなります。

不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

マンション専門調査員
今村 浩一
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