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更新日:2023.10.23
登録日:2023.10.22
ZEHマンション(ZEH-M)とは?メリットや特徴について詳しく紹介
「ZEHマンション(ZEH-M)って何?」
「ZEHマンションに住むとどのようなメリットがあるの?」
近年普及が促進されているZEHマンション(ZEH-M)ですが、はじめて聞くと上記のように感じる人もいるのではないでしょうか。
本記事では、ZEHマンションの特徴や、評価基準について詳しく解説しています。ZEHマンションに住むメリット・デメリットのほか、ZEHマンション開発で受けられる補助金制度についても紹介します。ぜひ参考にして、ZEHマンションへの理解を深めてください。
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ZEHマンション(ZEH-M)とは?
ZEHマンション(ZEH-M)とは?
ZEHマンション(ZEH-M)はNet Zero Energy House Mansion(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の略で「ゼッチマンション」と読みます。
ZEHマンションとは、建物全体で1年間に消費する一次エネルギー(自然界から得られるエネルギーのもと)の量を、おおむねゼロにできるマンションです。地球温暖化対策や、エネルギーを安定して需給することを目的に、ZEHマンションの普及が促進されています。
ZEHの意味や認定条件、メリット・デメリットなどについては以下の記事でも解説しているので、詳しく知りたい人は参考にしてください。
ZEH (ゼッチ)とは?基本知識やメリット・デメリットを解説
ZEHマンション(ZEH-M)の定義
ZEHマンション(ZEH-M)の定義
ZEHマンションでは、以下の2つの要素によって、建物全体の一次エネルギー消費量を実質100%以上削減しています。
・太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用する「創エネ」
・高断熱の外皮(壁や窓)、高性能省エネ設備などを導入する「省エネ」
しかし、すべてのマンションで100%省エネできるわけではありません。高層マンションなどの規模が大きい建物は、太陽光発電のみで全体のエネルギー消費量を賄うのが難しいためです。
ZEHマンションは、建物の階数に応じて4つの種類に分けられ、それぞれ以下のように評価基準が決められています。
※参照:資源エネルギー庁:ZEH普及促進に向けた政策動向と令和5年度の関連予算案
・ZEH-M
・Nearly ZEH-M
・ZEH-M Ready
・ZEH-M Oriented
4種類それぞれの評価基準について、詳しく説明します。
ZEH-M
ZEH-M(ゼッチマンション)は、1〜3階建てのマンションが目指すべき水準とされています。評価基準は以下の3点です。(※)
・外皮(壁・窓・ドアなど)の断熱性能が強化外皮基準(ZEH基準)を満たしている
・再生可能エネルギー設備なしで削減できる一次エネルギー消費量が20%以上
・再生可能エネルギー設備導入で削減できる一次エネルギー消費量が100%以上
Nearly ZEH-M
Nearly ZEH-M(準ゼッチマンション)も、ZEH-Mと同じく1〜3階建てのマンションが目指すべき水準です。評価基準には、以下の3点があります。(※)
・外皮(壁・窓・ドアなど)の断熱性能が強化外皮基準(ZEH基準)を満たしている
・再生可能エネルギー設備なしで削減できる一次エネルギー消費量が20%以上
・再生可能エネルギー設備導入で削減できる一次エネルギー消費量が75%以上100%未満
ZEH-M Ready
ZEH-M Ready
ZEH-M Ready(ゼッチマンションレディ)は、4〜5階建てのマンションが目指すべき水準とされています。評価基準は以下の3点です。(※)
・外皮(壁・窓・ドアなど)の断熱性能が強化外皮基準(ZEH基準)を満たしている
・再生可能エネルギー設備なしで削減できる一次エネルギー消費量が20%以上
・再生可能エネルギー設備導入で削減できる一次エネルギー消費量が50%以上75%未満
ZEH-M Oriented
ZEH-M Oriented(ゼッチ指向型マンション)は、6階建て以上のマンションが目指すべき水準です。評価基準は以下の2点です。(※)
・外皮(壁・窓・ドアなど)の断熱性能が強化外皮基準(ZEH基準)を満たしている
・再生可能エネルギー設備なしで削減できる一次エネルギー消費量が20%以上
6階建て以上のマンションには、再生可能エネルギー設備の導入は求められません。主に壁や窓などの外皮による断熱や、高性能な省エネ機器などの導入によってエネルギー削減を目指します。ほかのZEHマンションと比べると、導入しやすい基準です。
参照:資産エネルギー庁
鑑定士コメント
ZEH-Mと一般的なマンションの違いはなんでしょうか?一言で言うと、省エネ性能の高さです。ZEHマンションでは、建築時点で断熱効果の高い資材などが使われます。屋根や壁、窓自体に断熱効果があるため、室内が快適な温度に保たれやすくなるのがポイントです。また、再生可能エネルギーを利用するための設備があれば、太陽光発電などでエネルギーを創り出せます。エネルギー消費量を削減できるうえ、エネルギーの自給自足もできるため、ZEHマンションは一般的なマンションより省エネ性能が高く環境にやさしいといえるでしょう。
ZEHマンション(ZEH-M)の普及状況
ZEHマンション(ZEH-M)の普及状況
資源エネルギー庁によると、戸数ベースで見た場合、2021年度のマンション供給戸数におけるZEHマンションの割合は約7.4%(32,123戸/435,967戸)です(ZEHデベロッパー実績より)。
2021年度におけるZEHマンションの種類ごとの普及率については、戸数で比較した場合と棟数で比較した場合とで、以下のように異なります(※)。
また、2021年度のマンションの着工面積において、ZEHマンションが占める割合は約2.1%(478,038㎡/22,680,714㎡)です(BELS評価実績より)。そのうち種類ごとの割合は、棟数比較と床面積比較とで以下のように異なります(※)。
※数値はすべて以下を参照
鑑定士コメント
今後ZEH-Mは増加していくのでしょうか?ZEH-Mが今後さらに増加していくのは間違いないでしょう。なぜなら、日本では2050年脱炭素社会の実現に向けて、さまざまな取り組みを行っているためです。脱炭素社会とは、地球温暖化を防ぐために、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ全体としてゼロにすること。その方法のひとつとして住宅・建築物等の省エネ・再エネ導入が掲げられているため、今後もZEH-Mはますます増えていくことが予想されます。
ZEHマンション(ZEH-M)のメリット
ZEHマンション(ZEH-M)のメリット
ZEHマンション(ZEH-M)のメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。
・快適に暮らしやすい
・光熱費を抑えられる
・非常時に電力供給ができる
それぞれの内容について、詳しく解説します。
快適に暮らしやすい
ZEHマンションは室内が外気温に影響されにくいため、1年を通して気温による不快感が少なくなるのがメリットです。断熱性能の高い建築資材や、効率のよい空調・給湯設備などを使用することで、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を作れます。
部屋の温度差が小さくなるため、結露によるカビの発生や、ヒートショックが発生するリスクが少なくなるのも特徴です。ZEHマンションでは健康面や衛生面での悩みが軽減され、快適に暮らしやすいでしょう。
光熱費を抑えられる
ZEHマンションに住むと、高断熱・高効率設備によって光熱費が抑えやすくなります。室内の温度が一定に保たれやすく、エアコンや暖房機器の使用頻度が減ることで、電気やガスなどの使用量を削減できるためです。
再生可能エネルギーを利用するための設備があれば、太陽光発電などによってさらに一次エネルギーの使用量が減り、光熱費を抑えられるでしょう。
非常時に電力供給ができる
非常時に電力供給ができる
太陽光発電ができるZEHマンションなら、地震や台風などで停電が発生しても電力を供給できます。エアコンや冷蔵庫が通常通り使えたり、電気ポットでお湯を沸かしたりすることもできるため、災害時でも生活に困りにくいでしょう。
非常時にも電気が使えることは、ZEHマンションの大きなメリットといえます。
ZEHマンション(ZEH-M)のデメリット
ZEHマンション(ZEH-M)のデメリット
ZEHマンション(ZEH-M)のデメリットは、以下の3点です。
・建築費用が高め
・デザインに制限がかかる場合がある
・天候により発電量が変化する
それぞれの内容について、詳しく説明します。
建築費用が高め
ZEHマンションでは特別な建築資材や、再生可能エネルギー設備の導入が必要な分、通常のマンションに比べて建築費用が高くなります。導入した設備のメンテナンスにも費用がかかるため、初期費用だけでなくランニングコストも高くなりやすいでしょう。
しかし、光熱費を抑えられたり国による補助金制度があったりと、ZEHマンションには金銭面における利点もあります。メリットとデメリットを把握し、バランスを見て検討しましょう。
デザインに制限がかかる場合がある
ZEHマンションの省エネ・創エネ機能を保つためには、デザイン面の妥協が必要なケースがあります。設備の導入を優先するため、ある程度決まった間取りになったり、壁・窓のデザインが希望に沿わなかったりすることもあるでしょう。
デザインにこだわりがあるなら、事前に不動産業者や施工会社としっかり打ち合わせしておくことが大切です。
天候により発電量が変化する
天候により発電量が変化する
太陽光発電を利用するZEHマンションでは、太陽が出ていなければ十分に発電できません。雨の日が続く時期・日照時間が短い冬場・寒冷地などの場合、発電量が不足することがあります。
とはいえ、1年を通して見れば発電量には大きな差がない場合がほとんどです。立地環境に合った太陽光発電システムを導入したり、蓄電池を活用したりすることで、電力不足に陥るリスクは軽減できるでしょう。
ZEHマンション(ZEH-M)の補助金制度
ZEHマンション(ZEH-M)の補助金制度
ZEHマンションを新築する際、条件を満たせば国による補助金制度が受けられます。個人が対象のものと開発事業者等が対象のものがあり、開発事業者が対象の補助金制度は、以下の4種類です。
・超高層ZEH-M実証事業
・高層ZEH-M支援事業
・中層ZEH-M支援事業
・低層ZEH-M促進事業
なお、現在は公募期間が終了している補助金制度もあるため、詳細は一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)のホームページを確認してください。それぞれの補助金制度の内容について、詳しく説明します(※)。
※補助金制度の条件はすべて以下を参照
超高層ZEH-M実証事業
超高層ZEH-M実証事業の補助対象となるための条件は、以下のとおりです。
超高層ZEH-M実証事業では、補助対象経費の2分の1以内の金額が支給され、事業期間は最長5年間とされています(上限:3億円/年、10億円/事業)。
高層ZEH-M支援事業
高層ZEH-M支援事業の補助対象となるための条件は、以下のとおりです。
高層ZEH-M支援事業では、補助対象経費の3分の1以内の金額が支給され、事業期間は最長4年間とされています(上限:3億円/年、8億円/事業、50万円/戸、補助事業の費用対効果)。また、以下の6つの設備などを導入すると、補助額が加算される決まりです。
・直交集成板(CLT)
・PVTシステム
・EV充電設備
・液体集熱式太陽熱利用システム
・地中熱ヒートポンプ・システム
・V2H充電設備(充放電設備)
中層ZEH-M支援事業
中層ZEH-M支援事業
中層ZEH-M支援事業の補助対象となるための条件は、以下のとおりです。
中層ZEH-M支援事業では、補助対象経費の3分の1以内の金額が支給され、事業期間は最長4年間とされています(上限:3億円/年、8億円/事業、50万円/戸、補助事業の費用対効果)。また、以下の6つの設備などを導入すると、補助額が加算される決まりです。
・直交集成板(CLT)
・PVTシステム
・EV充電設備
・液体集熱式太陽熱利用システム
・地中熱ヒートポンプ・システム
・V2H充電設備(充放電設備)
低層ZEH-M促進事業
低層ZEH-M促進事業の補助対象となるための条件は、以下のとおりです。
低層ZEH-M促進事業では1戸につき40万円が支給され、事業期間は最長3年間とされています(上限:3億円/年、6億円/事業)。また、以下の7つの設備などを導入すると補助額が加算される決まりです。
・蓄電システム
・直交集成板(CLT)
・PVTシステム
・EV充電設備
・液体集熱式太陽熱利用システム
・地中熱ヒートポンプ・システム
・V2H充電設備(充放電設備)
なお、ZEHの個人向けの補助金制度については、以下の記事で詳しく解説しています。ZEHマンションの購入を検討している人は参考にしてください。
まとめ:今後が期待されるZEHマンションに注目していこう
まとめ:今後が期待されるZEHマンションに注目していこう
ZEHマンションは、省エネ・創エネ設備の導入により、一次エネルギーの消費量を削減できる環境にやさしいマンションを指します。快適に暮らしやすく、光熱費を節約できたり非常時でも電力供給ができたりするのがメリットです。
国ではZEHマンションの普及を促進しており、個人向け・開発事業者向けの補助金制度も用意されています。今後ますます増えていくことが予想されるため、マンションの購入・開発の際にはZEHマンションに注目してみてください。
不動産鑑定士/マンションマイスター
石川 勝
東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。
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