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2023.09.26

手付金は返ってくる?返還条件や返ってこないパターンを詳しく紹介

手付金は返ってくる?返還条件や返ってこないパターンを詳しく紹介

「不動産を購入したときの手付金って返ってくるの?」
「手付金が返ってくる場合の条件とは?」
不動産を購入しようとするとき、手付金を支払うシーンではこのように疑問に思う人もいるのではないでしょうか。

本記事では、不動産購入の際に支払う手付金が返ってくるのかどうかについて詳しく解説しています。手付金が返ってくる場合の条件や、注意点などもご紹介。不動産の購入を検討している人はぜひ参考にして、手付金の正しい知識を身につけましょう。

手付金は返ってくる?

手付金は返ってくる?

手付金は返ってくる?

不動産売買の際の手付金は、返ってくるケースがあります。ただし、いつでも自由に返してもらえるわけではなく、特定の条件のもとで返還されることを覚えておきましょう。

 

そもそも手付金とは、不動産を購入する際に、買主が売主に対して最初に支払うまとまったお金(現金)です。手付金には、不動産の売買契約をしたという証拠としての役割があります。

 

手付金の相場は、一般的に購入する不動産価格の5〜10%(※)です。手付金として支払った金額は購入物件の価格から差し引かれるため、手付金の分を余計に払わなければならないわけではありません。

 

手付金とよく似たものに、頭金があります。手付金と頭金の違いについては以下の記事で詳しく説明しているので、気になる人は一度目を通してみてください。

 

※参照:不動産売買の手引き|一般財団法人不動産適正取引推進機構

手付金と頭金の違いは?不動産購入時に知っておきたい知識を解説

手付金が返ってくる4つの条件

手付金が返ってくる4つの条件

手付金が返ってくる4つの条件

手付金が返ってくる条件は、以下の4つです。

 

・住宅ローン特約で返還される場合

・売主都合による手付倍返しとなった場合

・売主が契約違反をした場合

・売主が倒産した場合

 

それぞれの条件について詳しく解説するので、不動産を購入しようとしているならぜひ参考にしてください。

住宅ローン特約で返還される場合

手付金は基本的に買主の自己都合では返還されませんが、住宅ローン特約に該当するときは、買主都合での解約が認められ手付金が返還されます。

 

住宅ローン特約とは、住宅ローンを借り入れることを前提に不動産を購入したものの、実際にはローンの本審査に通らなかった場合の特別な規約のこと。住宅ローンが借り入れられなければ、物件の購入金額を支払えない場合が多いため、本審査に通らなかった場合は手付金が返還されたうえで契約を解除できることがほとんどです。

 

なお住宅ローン特約は、ローン契約時に特約をつけている場合にのみ適用されます。また嘘の申告をしていた場合など、本審査に落ちた理由が買主の責任によるものだと特約が適用されません。契約時にはしっかり内容を確認しましょう。

鑑定士コメント

災害によって引き渡しができなくなった場合は手付金は返還されるのでしょうか?原則として、災害によって建物に損害があったとしても、売主側が修繕などを負担する義務はありません。そのため、購入した物件が災害にあったからといって買主側が契約解除を申し出ても、手付金は返ってこない場合も多いでしょう。ただし、特約があれば別です。災害時のことを想定して、売買契約時に「売主・買主どちらにも責任がない損失の場合、引き渡し前は売主負担、引き渡し後は買主負担とする」という内容を特約内に盛り込めば、物件の引き渡し前に災害が起こって契約を解除したとしても、手付金を返してもらうことはできるでしょう。

売主都合による手付倍返しとなった場合

売主の都合で契約解除となった場合、買主は手付金を2倍にして返してもらえます。手付金の2倍を支払う理由は、手付金の返却に加えて解除の迷惑料として手付金と同額の違約金が発生するためです(※)。

 

売主側の都合による解約の内容としては、もっとよい条件で不動産を購入してくれる人が見つかったり、売主が途中で対象となる不動産を手放したくなくなったりした場合などが挙げられます。

 

なお、売買契約を解除したいと思った場合、買主側も売主側も解除を申し出られる期日が決まっていることには注意しましょう。売買契約をキャンセルできるタイミングについては後述します。また、手付解除について詳しく知りたい人は、以下の記事も読んでみてください。

 

※参照:民法第557条

手付解除とは?いつまで解除できるのか、手付金がどうなるかも解説

売主が契約違反をした場合

売主が契約違反をした場合

売主が契約違反をした場合

売主が契約違反をした場合、買主は売主に対して債務を履行することを要求するとともに、それまでに支払ったお金の返還と違約金の支払いを請求するのが一般的です。この場合の違約金は、不動産購入時の契約で取り決められた金額で、不動産価格の20%程度であることが多いでしょう。

 

売主の契約違反とは、契約が完了して契約金などを支払ったにもかかわらず、売主が物件を引き渡してくれない場合などが挙げられます。

 

ただし、自分が直面しているトラブルが売主側の契約違反に当たるのかどうかわからない場合は、裁判所の判断となる可能性もあります。売主との間でトラブルが起きてどうすればよいのか迷ったら、仲介不動産会社や消費生活センター、弁護士などに相談してみましょう。

売主が倒産した場合

売主側の宅建業者が、売買契約後に倒産してしまったり夜逃げしたりして物件の引き渡しができなくなったときにも、手付金が返還されることがあります。

 

ただし、売主側が倒産したときのすべての場合で手付金が返ってくるわけではありません。手付金が帰ってくるのは、契約時に手付金の保全措置がとられた場合のみであることを覚えておきましょう。

 

なお、手付金の保全措置がとられるためには、いくつかの基準を満たしている必要があります。手付金の保全措置の基準については後述しています。

 

以上のように、売主である宅建業者が倒産や夜逃げをしても、手付金が返ってくるケースもあるので、諦めずに自分の契約状況を確認してみましょう

鑑定士コメント

会社都合の転勤を理由に契約解除した場合、手付金の返還対象となるでしょうか?転勤は、会社都合であろうと自分の希望であろうと、買主側の自己都合と捉えられます。もし転勤を不可抗力と認めると、買主が会社と口裏を合わせて嘘の転勤話を作り上げることもできるため、契約解除権の乱用や悪用になります。したがって、売買契約後に転勤を理由に契約解除を申し出ても、手付金は返ってきません。もし転勤になる可能性が事前にわかっているなら、不動産を購入するタイミングはよく考えましょう。

手付金で注意しておくべきポイント

手付金で注意しておくべきポイント

手付金で注意しておくべきポイント

手付金について注意しておくべきポイントは、以下の3点です。

 

・キャンセルできるタイミングに注意する

・手付金は倒産や解約を考慮して低めに設定する

・手付金の保全措置の知識も持っておく

 

それぞれの内容について詳しく解説します。正しい知識を身につけて、手付金に関するトラブルが起きないようにしましょう。

キャンセルできるタイミングに注意する

不動産売買の契約をキャンセルできるタイミングは、契約のなかで決められています。いつでもキャンセルできるわけではない点には注意しましょう。

 

通常、不動産購入時の手付金は解約手付です。解約手付とは、最初に支払った手付金が返ってこなくてもよければ、売買契約のキャンセルができる手付金のことを指します。

 

しかし、手付金を放棄して契約をキャンセルしたいと思っても、多くの場合でキャンセルできるタイミングは「履行に着手するまで」です。具体的には、「物件を引き渡すまで」や「所有権移転登記の手続きが行われるまで」などのタイミングに設定されることが多いでしょう。

 

履行の内容については、売買契約ごとに異なります。また、万が一期日を過ぎた時点で契約のキャンセルを申し出た場合、多額の違約金や損害賠償金を支払わなければならない可能性も。トラブルを防ぐためにも、契約時はキャンセルできるタイミングについて忘れず確認しておきましょう。

手付金は倒産や解約を考慮して低めに設定する

手付金の具体的な金額は、売主・買主両者の合意のもとで決められます。手付金をいくら支払うかは、慎重に決定しましょう。

 

手付金を多く払えば払うほど、その後のローン返済額が減らせます。しかし、はじめに多く払いすぎると、予期せぬ事態が発生したときに損をしてしまうリスクがある点には注意してください。

 

予期せぬ事態とは、手付金を支払ったあとで売主側の企業が倒産したり、買主の転勤が決まって契約をキャンセルせざるを得なくなったりした場合などです。最初にたくさん支払った手付金が無駄になってしまう可能性もあるため、あとから解約することも考慮して、手付金はなるべく低めの金額に設定しておくことをおすすめします。

手付金の保全措置の知識も持っておく

手付金の保全措置の知識も持っておく

手付金の保全措置の知識も持っておく

売主側が倒産したり夜逃げしたりした場合には、手付金の保全措置がとられる場合があります。手付金の保全措置とは、銀行や保険事業者などの第三者によって手付金を保管してもらうことで、手付金が失われることを防ぐ措置です。

 

手付金の保全措置は、すべての場合でとられるわけではありません。保全措置がとられる基準は、以下のように設定されています(※)。

 

・不動産の売主が宅建業者で、買主が個人である

・工事完了前の不動産の場合、手付金・中間金の支払い合計が売買価格の5%以上または1,000万円以上

・工事完了後の不動産の場合、手付金・中間金の支払い合計が売買価格の10%以上または1,000万円以上

 

つまり手付金が上記の基準より少額の場合には、保全措置はとられず、売主側が倒産や夜逃げをしても手付金は返ってきません。不動産売買の際には、売主側企業の情報を仲介不動産業者に聞いたり自分で調べたりして、事前に把握しておきましょう。

 

※参照:宅地建物取引業法第41条

まとめ:手付金が返ってくる条件は、契約する前に確認しておこう

まとめ:手付金が返ってくる条件は、契約する前に確認しておこう

まとめ:手付金が返ってくる条件は、契約する前に確認しておこう

手付金は、返ってくるケースと返ってこないケースがあります。返ってくるケースは、買主が住宅ローンの本審査に通らなかった場合・売主都合で契約解除になった場合・売主が契約違反や倒産した場合などです。

 

手付金を放棄して契約をキャンセルする場合でも、キャンセルできる期日が決まっていることを覚えておきましょう。キャンセル可能なタイミングは、契約ごとに異なります。どのような内容での契約になっているかを、契約時に確認しておくことが大切です。

 

手付金は、決して安くない金額を支払うことになります。トラブルによって自分が損をしないためにも、手付金についての正しい知識を把握して、不動産購入時に役立てましょう。

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

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新築マンション購入希望者が売買契約を交わし、物件の引き渡しを終えるまでの手続きについて、正しいものを選びなさい。

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