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2023.12.20

修繕積立金の勘定科目は?経費で計上する条件も解説

修繕積立金の勘定科目は?経費で計上する条件も解説

「修繕積立金は経費として計上できる?」
「修繕積立金を経費にする際の勘定科目は?」
分譲マンションの不動産収入などがある場合、帳簿付けの際に上記のように悩んでしまう人もいるのではないでしょうか。

本記事では、修繕積立金の勘定科目や、経費として計上するための4つの条件などを詳しく解説しています。帳簿付けするときの仕訳方法についても、具体例を挙げて紹介します。ぜひ最後まで読んで、修繕積立金を経費として正しく仕訳できるようになりましょう。

修繕積立金の勘定科目は「修繕費」

修繕積立金の勘定科目は「修繕費」

修繕積立金の勘定科目は「修繕費」

分譲マンションを賃貸に出したり、事務所として使ったりしていると、支払った修繕積立金を経費にできる場合があります。その際、記帳するときの勘定科目は「修繕費」とするのが一般的です。

 

修繕積立金とは、マンションの大規模修繕工事などに向けて積み立てられる資金を指します。管理組合が毎月決まった金額を区分所有者から集め、設備の劣化や破損が起きたときの修繕・補修などに使用するのが通常です。

 

似ているものに管理費がありますが、管理費はマンションの価値を保つための掃除や点検に使われるもので、修繕積立金とは別に集められます。管理費も経費として計上でき、勘定科目は「管理費」や「雑費」などとする場合が多いでしょう。

 

なお、修繕積立金の消費税の取り扱いについては以下の記事で解説しているので、あわせて参考にしてください。

 

修繕積立金の消費税の取り扱いは?ルールをわかりやすく解説!

鑑定士コメント

不動産売却時、修繕積立金は返金されるのでしょうか?分譲マンションを売却することになっても、修繕積立金は原則として返金されません。それまで支払った修繕積立金は管理組合のものとなり、以降の修繕や補修に使われるためです。と聞くと損をしているように想いがちですが、しっかり積み立てられているマンションは、将来に渡り資産価値の維持が見込まれ、より高値で売却できる可能性があるため、一概に損失とはいえないでしょう。また例外として、マンションの建て替えなどによって管理組合が解散した場合は、修繕積立金が返金されることもあります。

修繕積立金を経費として計上するための4つの条件

修繕積立金を経費として計上するための4つの条件

修繕積立金を経費として計上するための4つの条件

国税庁によると、以下の4つの条件を満たしていれば、修繕積立金を支払った年の経費として計上できる決まりです。

 

・区分所有者が支払義務を負っていること

・管理組合に返還義務がないこと

・修繕積立金の使い道は修繕などに限定されていること

・修繕積立金は合理的な方法で算出されていること

 

それぞれの内容について、詳しく解説します。

 

区分所有者が支払義務を負っている

マンションの管理規約では、区分所有者に修繕積立金の支払義務があると定められています。修繕積立金はマンションの維持管理のために必要不可欠なので、支払義務がないケースはほとんどありません。

 

国土交通省のマンション標準管理規約にも、管理組合は各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとする旨の記載があります(※)。そのため、大多数のマンションがこの条件を満たしているでしょう。

 

※参照:国土交通省「マンション標準管理規約(第28条)」

 

管理組合に返還義務がないこと

管理組合に修繕積立金の返還義務がない旨が、管理規約に明記されていることも必要です。基本的に修繕積立金は、区分所有者がマンションを売却・退去する場合でも返金されません。

 

マンション標準管理規約の第60条によると、組合員が一度納めた管理費・修繕積立金などは返還請求できないこととされています(※)。この内容に沿って管理規約が作られていれば、区分所有者から修繕積立金の返還を求められても、管理組合が応じる必要はありません。

 

※参照:国土交通省「マンション標準管理規約(第60条)」

 

修繕積立金の使い道は修繕などに限定されている

修繕積立金の使い道は修繕などに限定されている

修繕積立金の使い道は修繕などに限定されている

管理規約にて修繕積立金の用途が修繕などに限定されている必要があります。修繕などの具体的な内容には、主に以下の5点が挙げられます。

 

・共用部分の定期的な修繕

・災害による破損など特別な理由で必要となる修繕

・敷地内や共用部分の増設・バリアフリー化など

・建物の建て替えの際に必要となる調査など

・そのほか共用部分において、区分所有者全員のために必要となる管理

 

修繕積立金の用途についても、マンション標準管理規約の第28条に記載があります(※)。用途はマンションごとの設備に合わせて加筆・修正されている可能性もあるので、内容を確認しておきましょう。

 

※参照:国土交通省「マンション標準管理規約(第28条)」

 

修繕積立金は合理的な方法で算出されている

修繕積立金の支払金額は合理的な方法で計算されていなければなりません。合理的な計算方法について、国税庁では各区分所有者の共有持分に応じて算出されることとしています(※1)。共有持分とは、区分所有者が持つ共用部分の所有権の割合です。

 

多くのマンションでは、区分所有者が修繕積立金を毎月いくら支払うかは、国土交通省のガイドラインに沿って計算されます。具体的な計算式は以下のとおりです(※2)。

 

(A+B+C)÷X÷Y=Z

 

A:長期修繕計画期間当初の修繕積立金の残高(円)

B:長期修繕計画期間全体で集める予定の修繕積立金総額(円)

C:長期修繕計画期間全体の専用使用料などからの繰入額総額(円)

X:マンション全体の専有床面積(㎡)

Y:長期修繕計画全体の期間(カ月)

Z:修繕積立金の㎡あたり月単価の平均額(円)

 

※1参照:国税庁「賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い」

※2参照:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(6ページ)」

 

鑑定士コメント

マンションを賃貸に出している場合も修繕積立金を経費計上することは可能でしょうか?マンションを賃貸に出している場合も、修繕積立金を経費として記帳可能です。修繕積立金は、実際に修繕工事などを行って完了した年に経費として計上するのが原則です。しかし、本文で述べているとおり、国税庁が示す条件を満たしていれば修繕積立金を支払った年の経費として計上できます。

修繕積立金の仕訳方法

修繕積立金の仕訳方法

修繕積立金の仕訳方法

修繕積立金を経費として計上する場合、記帳時の仕訳方法には以下の2パターンがあります。

 

①実際に修繕工事を施工・完了した年に経費計上する方法

②4つの条件を満たし、修繕積立金を支払った年の経費として計上する方法

 

以下に具体例を挙げてパターンごとの仕訳方法を解説するので、参考にしてください。具体例の状況設定は、修繕積立金として毎月15,000円を口座振替で支払っていることとします。

 

①実際に修繕工事を施工・完了した年に経費計上する方法

実際に工事を施行・完了した年に経費計上する場合、工事費として修繕積立金からいくら使われたかを把握しなければなりません。ここでは、工事費として200,000円が使われたこととします。

 

まず、修繕積立金を支払った時点では積立金として以下のように処理してください。

※横にスクロールできます。

借方勘定科目

借方金額

貸方勘定科目

貸方金額

摘要

修繕積立金

15,000円

普通預金

15,000円

修繕積立金

※「修繕積立金」は「前払費用」「長期前払費用」などのほかの資産科目でも可

 

その後、実際に修繕工事が施工され完了したときは、以下のように経費に振り替えます。

※横にスクロールできます。

借方勘定科目

借方金額

貸方勘定科目

貸方金額

摘要

修繕費

200,000円

修繕積立金

200,000円

修繕工事

 

ただし、自分が支払った修繕積立金のうち、実際の工事費に使われた金額を明確にするのは難しい場合が多いでしょう。また、前述した4つの条件を満たすマンションも多いことから、次に紹介する②のパターンで仕訳するのが一般的であるといえます。

 

②4つの条件を満たし、修繕積立金を支払った年の経費として計上する方法

②のパターンでは、修繕積立金を支払った時点で経費として帳簿に記録します。実際の処理の例は以下のとおりです。

※横にスクロールできます。

借方勘定科目

借方金額

貸方勘定科目

貸方金額

摘要

修繕費

15,000円

普通預金

15,000円

修繕積立金

 

上記の場合は、支払った時点ですでに経費として計上しているため、修繕工事を施行・完了したときの処理は不要です。自分がどちらの方法で仕訳するかは、早い段階で把握しておく必要があります。自分が住むマンションが4つの条件を満たしているか、管理組合や管理会社に確認しておきましょう。

 

 

まとめ:修繕積立金は条件を確認したうえで仕訳をしよう

まとめ:修繕積立金は条件を確認したうえで仕訳をしよう

まとめ:修繕積立金は条件を確認したうえで仕訳をしよう

分譲マンションを賃貸に出したり、事務所として使っていたりすれば、修繕積立金は経費に計上できます。仕訳の際の勘定科目は「修繕費」とするのが一般的です。

 

修繕積立金はマンションの修繕工事のために積み立てられる資金で、区分所有者が毎月支払います。支払った年の経費とするには、自分の住むマンションが国税庁の示す4つの条件を満たしていなければなりません。

 

条件を満たしていなければ、実際に修繕工事を施行・完了した年に経費計上することになります。自分がどちらの方法で仕訳しなければならないか、マンションの管理規約と条件を照らし合わせて事前に確認しておきましょう。

 

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

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