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更新日:2026.08.26
登録日:2024.09.24

【専門家解説】「手付金」完全ガイド!不動産購入における相場や資金計画の注意点を解説

【専門家解説】「手付金」完全ガイド!不動産購入における相場や資金計画の注意点を解説

「手付金は不動産売買においてどんな役割がある?」
「手付金はどのくらいの金額を用意すべきかわからない」
「手付金と不動産売買で発生する他のお金との違いは?」

不動産売買を検討する際に、手付金について上記のような疑問や悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。

本記事では、手付金の役割をはじめ、不動産売買で押さえておきたい基本知識を解説します。手付金の相場や支払い方法、さらには注意したい設定パターンの見抜き方まで、不動産仲介やマンション調査の現場を知り尽くした東京カンテイのマンション専門調査員・今村浩一の
解説を交えながら詳しくお伝えします。

不動産売買を検討しており、手付金について正しく理解したい方はぜひ参考にしてください。

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手付金とは

手付金とは

手付金とは

不動産売買における手付金とは、売買契約を結ぶ際に、買主から売主へ支払われるお金のことです。最終的には売買代金の一部に充当されるのが一般的ですが、単なる代金の前払いではなく「契約成立の証」としての意味合いを持つ金銭です。

 

不動産取引では、契約後すぐに引渡しが行われるわけではなく、住宅ローンの審査や登記の準備などを経て、残代金の決済・引渡しに至るまで一定の期間を要します。手付金には、その間の法律関係を安定させる役割もあります。

 

手付金が授受される主な理由は、売買契約の安定性を保つためです。不動産は金額が大きく、契約から引渡しまでに期間が空くため、手付金を授受することで契約に重みを持たせる意味があります。

 

具体的には、「証約手付」「解約手付」「違約手付」という3つの重要な役割(種類)があります。詳しくは次の項目で解説します。

手付金の種類は3つ

手付金の種類は3つ

手付金の種類は3つ

不動産売買において手付金の役割は3つです。

 

1.証約手付

2.解約手付

3.違約手付

 

それぞれの内容をみていきましょう。

 

証約手付

証約手付とは、買主から売主に手付金が支払われたことで、不動産売買契約が成立したことの証拠となることです。

 

不動産売買はさまざまなステップを踏むため、当事者間で契約成立のタイミングが曖昧になるのを防ぐ効果があります。手付金の支払いが、双方が売買契約に合意したという明確な証拠になります。

 

解約手付

解約手付とは、手付金が支払われることで不動産売買契約の当事者である買主と売主それぞれに解約権が与えられることです。

 

買主と売主は、手付金を支払っていれば契約をキャンセルできる権利をもつことになり、具体的には以下の対応が可能になります。

 

 

対応

内容

買主

放棄

預けている手付金を放棄することで解約が成立する

売主

返還

預かっていた手付金の金額を倍にして返還することで解約が成立する

 

違約手付

違約手付とは、買主または売主が契約内容を守らなかった場合(債務不履行)に、違約金や損害賠償の基準として用いられる手付金のことです。契約の履行を確実にする役割があります。

 

違約があった場合の具体的な扱いは、以下のとおりです。

 

当事者

対応

内容 

買主

売買代金を支払わない 

手付金は返還されない 

売主

物件を引き渡さない 

手付金の倍額を買主へ返還する 

不動産売買における手付金と他の金額との違い

不動産売買における手付金と他の金額との違い

不動産売買における手付金と他の金額との違い

不動産売買では手付金以外にも、さまざまな費用の支払いが必要です。手付金と他の費用として支払うお金の違いを表にまとめました。

 

 

手付金

頭金

内金

申込証拠金

支払うタイミング

不動産売買契約時

不動産売買契約後

不動産売買契約後

不動産売買契約前

支払い義務

あり

なし

なし

なし

法的な効力

あり

なし

なし

なし

返金

解約手付として返金

不可

不可

契約解除時に返金されやすい

 

それぞれの違いについて見ていきましょう。

手付金と頭金の違い

手付金と頭金の違いは、不動産売買契約の際に「用意する義務があるお金かどうか」という点です。

 

手付金は契約時に買主が用意して売主へ支払う必要がある一方、買主に頭金を支払う義務はありません。なお、頭金は買主が用意した自己資金の中から、購入代金の一部として支払うお金です。

 

また、解約時の返金についても違いがあります。売主から契約を解除された場合、買主は解約手付(倍返し)として手付金を返金してもらうことが可能です。一方、頭金は購入代金へ前払いした金額であり、法的拘束力がなく返金されません。

 

手付金と頭金の違いについて詳細を知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。

手付金と頭金の違いは?不動産購入時に知っておきたい知識を解説

手付金と内金の違い

手付金と内金の違いは、お金の支払いのタイミングと役割にあります。

 

手付金は不動産売買契約時に支払われ、契約を成立させるためのものです。一方、内金は不動産売買契約後に支払われる一部金額であり、契約の履行を確実にするために支払われます。

 

また、手付金は支払い義務がありますが、内金は支払い義務はありません。内金は契約から引渡しまでの期間に支払いの有無や金額などを売主と相談して決めます。

 

なお、内金は不動産売買契約後に支払われる購入資金の一部であるため、契約解除時には法的拘束力がなく返還もされません。

手付金と申込証拠金の違い

手付金と申込証拠金は、支払うタイミングや法的な効力をもつかどうかに違いがあります

 

申込証拠金は、購入の意思を示すために不動産売買契約「前」に支払う金銭であり、法的な効力がありません。反対に手付金は、不動産売買の契約「時」に支払うことで契約が成立し、その時点で法的な効力を持ちます。

 

申込証拠金は、契約が成立した際には手付金へ充当され、契約が成立しなかった際には返還されるのが一般的です。

 

不動産売買の契約プロセスでは、手付金や申込証拠金といった金銭に関する用語のほかにも、聞き慣れない専門用語が多数登場します。

 

契約書や重要事項説明書の内容を正しく理解し、安心して手続きを進めることが大切です。不動産専門用語をまとめた以下のホワイトペーパーもぜひご活用ください。

マンション用語集②不動産用語辞典

手付金の相場

手付金の相場

手付金の相場

不動産売買において、手付金は物件価格に対して一定の割合で設定されるのが一般的です。法律で具体的な金額が決まっているわけではありませんが、相場の目安や、宅建業者が売主となる場合の法的な上限が存在します。

 

ここでは、基本となる相場と、手付金の注意点について解説します。

 

・基本の相場は物件価格の5〜10%

・法的上限は20%

・注意したい 手付金の設定パターン

・新築と中古で異なる手付金の注意点

・都心部と地方の傾向の違い

基本の相場は物件価格の5〜10%

不動産売買における手付金の相場は、一般的に「物件価格の5〜10%程度」(※)とされています。たとえば3,000万円の物件であれば、150万〜300万円が目安です。

 

手付金の額に法律上の決まりはありませんが、低すぎると契約の安定性が損なわれ、高すぎると買主の負担が重くなります。そのため、双方が無理のない範囲で合意するのが一般的です。

 

手付金の傾向は物件タイプによって異なる(今村談)

実務上、中古物件の手付金は5%~10%がデフォルトとして設定されるケースが多いです。ランドマークマンション、タワーマンション、大規模マンションなどの人気物件や、第一種低層住居専用地域などマンションの供給が少ないエリアの物件は、売主側に売却の自信があるため、手付金が強気に設定される傾向があります。ただし、手付金が高いからといって必ずしも人気物件とは限らず、仲介会社の慣例として設定されている場合も多い点には注意が必要です。

 

なお、手付金の割合からマンションの市場評価を判断することは難しいとされています。市場評価を測るうえでは、物件価格そのものや経済状況などから総合的に判断するのが一般的です。

 

※ 参照:東京都住宅政策本部

法的上限は20%

宅地建物取引業者(不動産会社)が自ら売主となる売買契約では、手付金の額は「売買代金の20%を超えてはならない」と宅地建物取引業法第39条で定められています。(※)

 

手付金が高額になりすぎると、買主にとって契約解除が事実上難しくなり、契約の拘束力が不当に強くなってしまうため、これを防ぐための消費者保護規定です。

 

仮に20%を超える手付金を支払った場合、超過分は手付金ではなく代金の前払い(内金または中間金)として扱われます。なお、この上限規制は「売主が宅建業者で、買主が一般消費者」の場合にのみ適用されます。

 

※参照:宅地建物取引業法

注意したい 手付金の設定パターン

手付金については金額そのものだけでなく、契約条件のなかに「買主に不利な内容が含まれていないか」を確認することも重要です。

 

手付金が不利益を被る 可能性があるパターンとして、以下のような点が挙げられます。

パターン

内容

法定上限(20%)を超えている

売主が宅建業者の場合、手付金の上限は物件価格の20%までと法律で定められている

ローン特約に不備がある

利用できる金融機関が特定のところに限定・指定されている、承認期間が極端に短く設定されている、そもそもローン特約が盛り込まれていない、など

契約書の記載がグレー

手付金の扱いについてわかりづらい書き方がされている

 

注意したい 設定パターンを見抜くポイント(今村談)

手付金が返ってこなくなる 典型例として、ローン特約の内容が不十分なケースが挙げられます。特定の銀行でしかローンを組めないよう指定されていたり、ローンの承認期間が異常に短く設定されていたりする場合は注意が必要です。そもそもローン特約が盛り込まれていなかったり、手付金の扱いについてグレーで分かりづらい書き方がされている契約書もまれにあるため、契約前にしっかり確認しましょう。

新築と中古で異なる手付金の注意点

新築マンションと中古マンションでは、手付金に関して注意すべき性質が異なります。

 

【中古マンションの場合】 

 

売主が個人であることも多く、契約内容が物件ごとに異なるため、ローン特約の解除要件など、契約の際特に注意を払う必要があります。契約書の内容に不備がないか、しっかりと確認しましょう。

 

【新築マンションの場合】 

売主がデベロッパーであり契約内容も定型化されているため、中古と比べると手付金そのものでのトラブル発生は比較的薄い傾向にあります。

ただし、物件が未完成の状態で契約・支払いを行うケースが多いため、業者の倒産リスクや完成の遅延が発生した際に手付金がどのように扱われるかという点が、新築特有の確認ポイントになります。

 

中古と新築では確認すべきポイントが変わる (今村談)

中古マンションでは、「ローン特約の解除要件」など契約上の注意点が主なポイントとなります。契約内容に不備がないかしっかり確認する必要があります。一方、新築マンションは売主がデベロッパーで契約内容が定型化されているため、悪意のある業者でない限り、中古と比べると手付金そのものに関するトラブルの可能性は薄い傾向にあります。ただし、業者の倒産や完成の遅延などが発生した際に手付金がどう扱われるかは、新築特有の確認事項になります。

都心部と地方の傾向の違い

手付金の相場や運用は、地域によっても多少傾向が異なる可能性があります。都心部では、本記事でこれまで紹介してきたとおり5〜10%を相場として扱う慣習が定着しています。

 

一方、地方では人間関係をベースにした柔軟な対応がされている可能性もあると言われています。ただし、地域ごとの実態には差があります。検討する物件の所在地で実際にどのような運用がなされているかは、不動産会社に確認するのが確実です。

手付金の交渉余地と値下げ時のポイント

手付金の交渉余地と値下げ時のポイント

手付金の交渉余地と値下げ時のポイント

手付金は売買契約の当事者間の合意で決まるため、状況によっては値下げや調整の交渉が可能です。

 

ここでは、交渉が通りやすい物件の特徴や、資金がすぐに用意できない場合の対処法について解説します。

 

・交渉余地があるかはマンションによって異なる

・すぐに用意できない場合は契約日を調整して資金を準備する

・親族からの援助も検討する

交渉余地があるかはマンションによって異なる

交渉が通るかどうかは、対象となる物件の人気度や販売状況によって大きく異なります。

 

物件の状況

交渉余地

人気物件・売り出し直後の物件

交渉余地は少ない

販売期間が長期化している物件

交渉余地が比較的ある

  

人気物件と長期販売中の物件で交渉余地は変わる(今村談)

人気物件の場合、手付金の交渉余地は限定的になる傾向があります。複数の申し込みが入る状況では、売主はローン審査が通っている人や現金一括で購入する人、提示価格より高く買い上がる人など、より条件の良い買主を優先する傾向があります。一方、販売期間が長期化している物件であれば、交渉余地は高くなる傾向があります。交渉が通る場合、10%から半分の5%、5%から3%などケースバイケースです。

 

交渉を希望する場合は、不動産会社を通じて売主の状況を確認したうえで、購入意思の高さを伝えながら誠意を持って相談することが大切です。ただし、必ずしも交渉が通るとは限らない点はあらかじめ理解しておきましょう。

 

ここで、不動産の適正価値を判定する専門家である「不動産鑑定士」からのアドバイスも紹介します。

鑑定士コメント

手付金は値下げ交渉できるのでしょうか?手付金は値下げ交渉できるケースがあります。必ずしも相場の額面通りに支払う必要はなく、立地条件や売却理由によっては売主と手付金を値下げ交渉する余地があるでしょう。但し、値下げ交渉の際は一方的に要求を突きつけるのはトラブルの元ですので、不動産会社を通じて、誠意を持って交渉のテーブルに載せるのが良いでしょう。

すぐに用意できない場合は契約日を調整して資金を準備する

手付金はまとまった金額を現金などで用意する必要があるため、契約のタイミングまでに準備が間に合わないケースもあります。

 

そのような場合は、無理をして契約日を迎えるのではなく、不動産会社を通じて売主と相談し、契約日を後ろ倒しにして資金を準備することを検討しましょう。売主との合意があれば、契約日を調整できる可能性があります。

親族からの援助も検討する

自己資金だけでは手付金の準備が難しい場合、両親や祖父母など親族からの援助を受ける方法も検討できます。ただし、援助の方法によって税務上の取り扱いが異なるため、事前の確認が大切です。

 

方法

注意点

親族からの借入

借用書を作成し、返済期限・利息などの条件を明文化する。口約束や返済期限のない借金は贈与とみなされる可能性がある

親族からの贈与

年間110万円を超える贈与には贈与税がかかる。(※1) ただし、住宅取得資金として直系尊属(父母・祖父母)から贈与を受ける場合は、一定の条件のもと省エネ等住宅で1,000万円、それ以外で500万円まで非課税になる特例がある(※2) 

 

贈与の非課税特例を利用する場合は、適用要件や手続きについて事前に税務署や税理士に確認しておくと安心です。 

 

※1参照:国税庁

※2参照:国税庁

手付金を支払うタイミング

手付金を支払うタイミング

手付金を支払うタイミング

手付金は、重要事項説明を受け、売買契約を締結するタイミングで売主に支払うのが基本です。住宅ローンの融資実行前に行われる手続きのため、手付金は自己資金から用意することになります。

 

マンション購入の一般的な流れは、以下のとおりです。

 

ステップ

内容

①購入申込み

購入の意思を示す。新築マンションなどでは申込証拠金を支払うケースもある

②住宅ローンの事前審査

借入の見込みを確認する

③重要事項説明

宅地建物取引士が物件や契約条件について説明する

④売買契約の締結・手付金の支払い

契約書に署名・捺印した後、手付金を支払う

⑤住宅ローンの本審査・契約

売買契約後に申し込む

⑥残代金決済・引渡し

手付金を差し引いた残代金を支払い、物件の引渡しを受ける

 

手付金の支払いは、重要事項説明を受けて契約内容に納得したうえで行うのが原則です。手付金の金額や扱いに関する取り決めは、重要事項説明書や売買契約書に記載されているため、その内容を確認する前に支払いを行うのは順序として適切ではありません。 

 

重要事項説明の前に手付金を求められた場合は要注意(今村談)

手付金の支払いが重要事項説明よりも先に行われることは基本的にありません。手付金に関する取り決めの詳細は、そもそも重要事項説明書や契約書に記載されるものであり、それらの説明や確認の前に支払いが発生するのは、順序として不適切といえます。もし重要事項説明よりも前に支払いを求められる場合は、手付金ではなく、内金や申込証拠金など、別の名目のお金と混同している可能性が高いと考えられます。

 

なお、手付金は契約書での取り決めにより、最終的には売買代金の一部に充当されるのが一般的です。残代金決済時には、物件価格から手付金を差し引いた金額を支払うことになります。

手付金の支払い方法

手付金の支払い方法

手付金の支払い方法

手付金の支払い方法は、現金または銀行振込が一般的です。それぞれの方法に注意点があるため、契約日までに準備の段取りを確認しておきましょう。

 

手付金支払時に覚えておきたいポイント

実務上は、売買契約の締結と同時に現金で授受されるケースが多くなっています。これは契約の成立と支払いを同じタイミングで完結させ、契約成立の事実を確実にする目的があります。

 

土日に契約が行われることが多く、銀行振込では金融機関の営業時間外で着金確認ができないこともあるため、現金での持参が原則とされています。

 

手付金が高額になる場合や遠方での取引、防犯上のリスクを踏まえて、銀行振込で対応するケースもあります。振込にする場合は、契約日の前後で着金確認が取れるよう、事前に売主・不動産会社と段取りを確認しておくと安心です。

手付金は分割払い・カード払い・住宅ローンには組み込めない

手付金の支払いについて、以下の方法は基本的に認められていません。

 

方法

理由

分割払い・後払い

売主が宅建業者の場合、宅建業法で禁止されている(信用の供与による契約誘引にあたるため)

クレジットカード払い

不動産取引の慣習として基本的に対応していない

住宅ローンへの組み込み

住宅ローンの融資実行は引渡し時のため、契約時点では融資金が利用できない

 

特に「住宅ローンへの組み込みができない」点は、資金計画上の重要なポイントです。住宅ローンの実行は物件の引渡し時に行われるため、それより前のタイミングで支払う手付金は、自己資金から用意する必要があります。

 

また、宅建業者が売主となる契約では、手付金の後払いや分割払いは宅建業法で禁止されています。営業担当者から「後日でも構いません」と提案されても応じないようにしましょう。

 

こちらについても、不動産鑑定士からのアドバイスを紹介します。

鑑定士コメント

ローンで手付金を支払えるのでしょうか?手付金は原則として現金で支払います。手付金の費用分をローンに組んで借り入れするのは避けましょう。住宅ローンの本審査時に借り入れ状況から手付金のための借金を把握されると落ちてしまう可能性があります。手付金を現金で準備できそうにない場合は親族などからの借り入れや贈与を検討しましょう。

手付金は戻ってくる?

手付金は戻ってくる?

手付金は戻ってくる?

手付金は契約成立の証として支払うお金ですが、契約解除の理由や状況によっては買主に返還される場合もあります。

 

ここでは、以下2点を解説します。

 

・解除の理由ごとに見る手付金の扱い

・返還トラブルにつながる注意点

解除理由ごとに見る手付金の扱い

支払った手付金が買主に戻ってくるかどうかは、契約解除の理由や契約書の特約によって変わります

 

一般的なケースは以下のとおりです。

 

ケース

手付金の扱い

住宅ローン特約に基づく解除(本審査に通らなかった場合)

全額返還される

売主の都合による解除

倍額が買主へ支払われる(手付倍返し)

買主の自己都合による解除

返還されない(手付放棄)

売主が宅建業者で、手付金保全措置の要件を満たす倒産など

保全措置に基づき返還される

 

手付金が返還される代表的なケースは、住宅ローン特約(融資利用特約)による解除です。住宅ローン特約とは、買主が住宅ローンの本審査に通らなかった場合に、違約金等の負担なく契約を解除でき、手付金が全額返還される仕組みです。

ローン特約の不備による返還トラブルに注意

ローン特約は買主を守る重要な仕組みですが、特約の内容や運用に不備があると、いざというときに手付金が返還されないケースもあります。トラブルにつながりやすい代表的なパターンは以下のとおりです。

 

パターン

内容

ローン審査の手続きに不備があった

申込書類の不備や、誠実な手続きを行わなかった場合は特約の対象外となる可能性がある

対象外の金融機関で申請した

特約で指定されている金融機関以外で申し込んだ場合は適用されないことがある

特約の期限を過ぎた

ローン特約には解除期限が設けられており、過ぎてからの申し出は適用されない場合がある

自己都合での解除

ローン審査に落ちたわけではなく、買主自身の判断でローン利用を取りやめた場合は適用外

 

ローン特約の認識のズレがトラブルの主な原因(今村談)

手付金に関するトラブルで発生しやすいのは、ローン特約に関する認識のズレです。「ローン特約付き」と思い込んでいたものの、実際には特定の条件が設けられていたケースや、特約の期限をわずかに過ぎてしまったケースなどが挙げられます。ローン特約をつけていたのに手付金が返金されない原因の多くは、特約の内容を正しく理解していないことにあります。契約前に特約の条件や期限をしっかり確認することが大切です。

手付流しと手付倍返しの仕組み

手付流しと手付倍返しの仕組み

手付流しと手付倍返しの仕組み

売買契約を結んだ後、何らかの事情でどうしても契約を解除したい場合の仕組みとして、「手付流し」と「手付倍返し」があります。それぞれ買主・売主のどちらが解除を申し出るかによって、扱いが異なります。

 

当事者

名称

内容

買主

手付流し(手付放棄) 

預けている手付金を放棄することで契約を解除する

売主

手付倍返し

預かっている手付金の倍額を支払うことで契約を解除する 

 

いずれも、相手方が契約の履行に着手するまでの期間内であれば、追加の違約金や損害賠償なしに契約を解除できる仕組みです。

「手付流し」「手付倍返し」が実際に起こる場面

手付流しや手付倍返しが選択されるのは、主に以下のような事情があるケースとされています。

 

【手付流し(買主側の事情)】

契約後に、より条件の良い別の物件が見つかった場合などに起こり得ます。手付金を放棄してでも別の物件に乗り換えたいと判断するような場面ですが、実際にはこうしたケースはまれだとされています。

 

【手付倍返し(売主側の事情)】 

受け取った手付金を倍にして返しても、さらに高い金額で購入を希望する別の買主が現れた場合などに起こり得ます。

 

たとえば、1億円の物件を手付金1,000万円で契約した後に、2億円で購入を希望する人が現れた場合、手付金を倍返ししても結果的により高く売却できるため、売主側にメリットが生じる構図です。

 

手付倍返しが起こる背景(今村談)

一時期、価格が高騰した湾岸エリアのマンションなどで、こうしたケースがあったと聞いています。最初から手付倍返しを狙って契約するわけではなく、結果として購入した物件が割安だったため、このような状況が発生するのだと考えられます。 

手付金の額と契約解除リスクの関係

手付金の額は、契約解除により発生するリスクとも関係します。手付金が高額になればなるほど、万が一手付流しで解除する場合の金銭的な負担が大きくなるためです。

 

一方で、手付金が高いことには別の側面もあります。手付金が高額であるほど、売主側にとって手付倍返しによる解除のハードルが上がるため、買主からすると一方的な契約解除をされにくくなるという見方もできます。

 

リスクの感じ方は、買主の余剰資金の余裕やローン審査の確実性などによっても変わります。自身のリスク許容度と手付金の額のバランスを踏まえて判断することが大切です。

 

手付解除は安易に考えるべきではない(今村談)

制度として手付解除が認められているとはいえ、軽い気持ちで判断するのは避けたいところです。売主側もその売却資金をあてにして次の住み替えなどを計画しているケースが多く、手付解除は売主の売却スケジュールや引いては資金計画に影響を及ぼす可能性があります。手付金を支払って契約を結ぶことには相応の重みがあります。「制度上は解除できる」という理由だけで購入判断を見直すのは、慎重に考えたほうがよいといえるでしょう。契約前に十分に検討し、納得したうえで契約に進むことが大切です。 

手付解除の「履行に着手するまで」の意味には注意する

手付解除の「履行に着手するまで」の意味には注意する

手付解除の「履行に着手するまで」の意味には注意する

手付金を支払った後、一定の期間内であれば手付解除によって契約を解消できます。買主は支払った手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を買主に提供することで、それぞれ契約を解除する権利が認められています。

 

ただし、手付解除ができるのは民法557条1項により「相手方が契約の履行に着手するまで」と定められています。(※)つまり、相手方が契約に基づく行為を進めはじめた後は、手付解除ができなくなる仕組みです。

 

※参照:民法

 

「履行の着手」とは何を指すか

「履行の着手」については、最高裁判例で「客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたこと」(※)と定義されています。

 

具体的には、以下のような行為が履行の着手にあたると考えられています。

 

当事者

履行の着手にあたる行為の例

買主

内金や中間金の支払い、残代金の準備をしての履行の催告 など

売主

物件引渡しや所有権移転登記の準備、抵当権抹消のための書類を司法書士に交付 など

 

ただし、何をもって「履行の着手」とするかは契約内容や状況によって判断が分かれることがあります。実務では、こうした不明確さを避けるため、契約書に「手付解除期日」を具体的な年月日で明記するケースも多くなっています。

 

※参照:全国不動産協会

 

手付解除ができる期間や、解除した際の手付金の取り扱いについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

手付解除とは?いつまで解除できるのか、手付金がどうなるかも解説

手付金の支払い後に必要な資金と家計管理

手付金の支払い後に必要な資金と家計管理

手付金の支払い後に必要な資金と家計管理

手付金を支払った後も、マンション購入には残代金や諸費用、各種税金などの支出が続きます。さらに、入居後の生活費や予備費まで見据えた資金計画を立てておくことで、購入後の家計を安定させやすくなります。

 

ここでは、手付金支払い後に発生する主な費用や、家計管理のポイントについて解説します。

 

・残代金や税金などの諸費用の清算

・固定資産税の清算金や不動産取得税

・入居時の家具・カーテン・エアコンなどの追加費用

・2〜3ヶ月分の予備費確保

残代金や税金などの諸費用の清算

物件の引渡し時には、物件価格から手付金を差し引いた残代金を支払います。これに加えて、登記費用や住宅ローンに関する手数料など、まとまった諸費用が発生します。

 

FPのひとこと:見落としやすい融資関連の手数料

一般的に見落とされがちな諸費用として、融資事務手数料や不動産担保手数料が挙げられます。名称は金融機関ごとに異なりますが、独自の手数料が発生するケースがあります。これらは金融機関によって必要の有無や金額が大きく異なるため、事前にしっかり確認しておくことが重要です。

 

住宅ローンの利用時にかかる手数料の種類や、保証料との違いについて詳しく解説した記事もご用意しています。ぜひ参考にしてください。

住宅ローンの手数料はいくらかかる?保証料との違いや諸費用もわかりやすく紹介

固定資産税の清算金や不動産取得税

物件にかかる税金関連の支出も、手付金支払い後にまとまって発生します。

 

代表的なものは以下のとおりです。

 

費目

内容

固定資産税・都市計画税の清算金

引渡し日を基準に日割りで精算される

不動産取得税

登記後、入居から半年〜1年以内に納税通知が届く

 

FPのひとこと:「忘れた頃にやってくる」税金に注意

年始に近いタイミングでの引渡しとなる場合、清算金が50万円を超えるケースもあります。また、高額物件(控除対象外)の場合は不動産取得税にも注意が必要です。納税通知は入居後、半年〜1年以内に届くため、「忘れた頃にやってくる費用」の代表例といえます。

入居時の家具・カーテン・エアコンなどの追加費用

入居時には、床コーティング・家具・照明・カーテン・エアコンなど、さまざまな追加費用が発生します。新築物件特有の出費もあるため、引渡し前から想定しておくと安心です。

 

FPのひとこと:新築タワーマンションは「後出し費用」に注意

家具は新居に合わせて新調するケースが多く、想定以上に支出が膨らみやすいポイントです。新築物件ではエアコンが設置されていないことも多く、配管隠し工事などを含めると費用が高額になりがちです。さらに、カーテンやブラインド一式も見落としやすい費用のひとつで、タワーマンションや大規模物件では窓が大きく高さもあるため、費用が大きくなりがちです。

ワンポイントアドバイスとして、新築タワーマンションなどを購入する場合、引渡し時だけでなくその後1年以内に見落としがちな支出が集中する傾向があります。こうした「後出し費用」に備え、約200万円前後の余剰資金を現預金で確保しておくと安心です。

2〜3ヶ月分の予備費確保

手付金や諸費用、家具購入などの支出を済ませた後も、生活費の予備費は別途確保しておきたいところです。引渡し後に設備の不具合が発生したり、リフォームが必要になったり、場合によっては仮住まいの費用がかかることもあります。

 

特に築年数が経過した中古物件では、引渡し後に予期せぬ修繕費が発生する可能性も念頭に置いておきましょう。

 

FPのひとこと:手付金は「余剰資金」から捻出するのが健全

手付金は、生活費・教育費・老後資金といった使途が決まっている資金とは切り分けた「余剰資金」から捻出するのが健全です。契約後も諸費用やオプション費用、不動産取得税などの支出が続くため、手付金支払い後も十分な資金余力を維持できるかが重要な判断ポイントになります。また、手付金は現預金での支払いが基本ですが、諸費用ローン等で賄うケースもあります。ただしこの場合、「手元資金をあえて残したい」「投資資産を崩したくない」といった明確な戦略がない限り、借入総額の増加や金利負担の拡大につながるため、慎重な判断が求められます。

 

手付金の支払いから入居後の生活が落ち着くまでは、想定外の支出が発生しやすい時期です。生活費の2〜3ヶ月分を目安に予備費を手元に残しておくと、不測の事態にも対応しやすくなります。

 

マンション購入にかかる費用の全体像や、資金計画で後悔しないためのポイントについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

マンション購入にどれくらい費用がかかる?後悔しないための選び方も解説

まとめ:「手付金」は納得のいく契約への第一歩!リスク許容度と特約を見極め確かなマンション購入を

まとめ:手付金は適切な金額を設定することが大切

まとめ:手付金は適切な金額を設定することが大切

手付金は、不動産売買契約の成立を証明し、解約や違約時の基準となる重要な金銭です。「証約手付」「解約手付」「違約手付」という3つの役割を正しく理解しておくことが、安全な取引の土台となります。

 

また、手付金の金額設定は、安易な解約を防ぐ意味合いがある一方で、万が一解約が必要になった際のリスク(手付流しなど)にも直結します。一般的な相場(5〜10%)を参考にしつつも、ご自身のリスク許容度や「ローン特約」などの契約条件を契約前にしっかりと確認し、売主と適切な金額をすり合わせることが大切です。

 

手付金の支払い後にも、諸費用や税金、家具家電の購入費用などさまざまな支出が控えています。今回ご紹介した専門家のアドバイスも参考にしながら、余裕を持った資金計画を立て、納得のいく確かなマンション購入を実現してください。

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

簡易テスト

次のマンション購入に関する流れの文章の中から、正しいものを選びなさい。

答えは 3

手付金とは、マンション購入希望者が売買契約を結ぶ際に支払う金銭です。ローン返済時にはこの手付金を差し引いた残りの代金を支払うことになります。

  • 資産性が低くて
    売りたくても売れない
  • 安いという理由だけで
    中古マンションを
    買ってしまった
  • 修繕積立金が
    年々上がる
  • 子供が成人したから
    マンションを売って
    一軒家生活したいけど…
  • 資産性が低くて
    売りたくても売れない
  • 安いという理由だけで
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