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更新日:2024.09.12
登録日:2023.06.02

免震構造の特徴とは?仕組みや地震時の揺れ方をくわしく解説

免震構造の特徴とは?仕組みや地震時の揺れ方をくわしく解説

マンションを選ぶ際、気になるのが地震に対する安全性です。地震が多い日本だからこそ、地震が発生しても安全が確保されたマンションを選びたいと考えている人も多いでしょう。なかでも、免震構造は地震に対してもっとも被害を抑えることができる構造だと言われています。

本記事では、免震構造とはどのような構造か、仕組みや装置、耐久性などについて解説します。免震構造と非免震構造の震度別の揺れ方についても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

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免震構造とは

免震構造とは

免震構造とは

免震構造とは、建物に設置された免震装置によって、建物への地震エネルギーの伝達を遮断して揺れを低減する構造です。免震装置は、一般的に建物の基礎部分と地盤の間や1階と2階の間などに設置されています。

 

耐震構造では、建物そのものを強くすることで、地震による建物の倒壊を防ぎます。しかし、いくら建物を強くしても、揺れそのものをなくすことはできません。免震構造では揺れを低減できるため、建物へのダメージを抑えたうえで家具などが動いたり倒れたりすることを防ぐこともできます。

 

なお、免震については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

マンションの免震とは?耐震・制震との違いを詳しく解説

免震構造で使用される装置

免震構造で使用される装置

免震構造で使用される装置

免震構造では、主に下記2つの免震装置を用いて地震による揺れを低減しています。それぞれの装置の仕組みや役割について、詳しく見ていきましょう。

 

・アイソレータ

・ダンパー

アイソレータ

アイソレータとは、建物をゆっくり動かして揺れを低減する装置です。建物を支えると同時に地震が起きた際に周期の短い揺れを長い周期の揺れに変換します。

 

代表的なアイソレータとして、下記の3つがあります。

 

・積層ゴム

・すべり支承

・転がり支承

 

積層ゴムとは、ゴムと鋼板が交互に重ねられた装置です。硬い鋼板によって建物を支えて、ゴムによって揺れを吸収します。

 

すべり支承とは、建物の柱の直下に設置されたすべり材が、特殊な表面加工が施された鋼板の上をすべることで揺れを吸収する装置です。表面加工にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、いわゆるテフロンが利用されています。

 

転がり支承とは、建物をボールベアリングで支えて、地震の際にはボールベアリングがレールを転がることで自身の揺れを吸収する装置です。レールの配置によって、移動する方向を任意に決めることが可能です。レールの配置には、十字型やキ型、井型などがあります。

ダンパー

ダンパーとは、地震による揺れを抑える装置です。アイソレータとは異なり、ダンパーには建物を支える役目はありません。地震の際、アイソレータによって建物への揺れの伝達を低減可能です。

 

しかし、アイソレータは常に動いているため、それだけでは揺れが収まるまで長い時間がかかるのが弱点です。そこで、ダンパーによって少しずつ揺れを止めていきます。

 

ダンパーは、主に下記3つの種類があります。

 

・オイルダンパー

・鋼材ダンパー

・鉛ダンパー

 

オイルダンパーとは、オイルが充填された筒状の装置です。伸び縮みによって内部のオイルが移動することで、揺れのエネルギーが吸収されます。

 

鋼材ダンパーとは、U字型に加工された鋼材を組み合わせた装置です。揺れのエネルギーを、金属が軟化して曲がる時の熱エネルギーに変換して揺れを低減します。また、鉛ダンパーはくの字に曲げられた太い鉛の装置であり、鋼材ダンパーと同様に揺れのエネルギーを熱エネルギーに変換しています。

免震装置の耐久性はどれくらい?

免震装置の耐久性はどれくらい?

免震装置の耐久性はどれくらい?

一般的に、免震装置は60年相当の耐久性を誇っています。(※)免震装置は、国の基準に従って60年後の劣化条件で性能テストを行なっているため、同等の環境であれば60年以上使用できることになります。

 

とはいえ、実際に使用開始から60年経過した免震装置はないため、現状は実際に確認できません。しかし、建物と同じ期間は使用できる耐久性があることが予測されます。

 

また、環境によっては免震装置が通常よりも早く劣化することもあるため、定期的なメンテナンスが欠かせません。免震装置は地震が発生した際、装置の状況によって部品の交換が必要です。

 

積層ゴムや支承装置は、変形や亀裂などが発生していなければ、地震発生後も引き続き再利用できます。しかし、鋼材ダンパーは一度変形してしまうと元には戻らないため、交換しなければなりません。

 

※参照元:日立市

免震構造の高層マンションなどで利用される技術

免震構造の高層マンションなどで利用される技術

免震構造の高層マンションなどで利用される技術

一般的に、免震構造の効果がもっとも高い建物は中低層の建物です。しかし、近年は免震装置の性能向上や工法技術の発展によって、高層マンションにも多く採用されるようになりました。

 

高層マンションで用いられるのは、ウインカー工法です。ウインカー工法とは、積層ゴムを直接基礎に固定するのではなく、積層ゴムと基礎の間に鋼製のウイングプレートを設置して固定する工法です。

 

積層ゴムは引っ張る力に弱いという特徴があり、高層マンションは地震の際に引っ張り力がかかりやすいため、免震構造には不向きな建物でした。しかし、基礎と積層ゴムの間にウイングプレートを設置することで、引っ張り力の大半をウイングプレートが吸収します。

 

ウイングプレートが引っ張り力、積層ゴムが左右の揺れの力を吸収するため、高層マンションでも高い効果を発揮できるのです。

日本の耐震基準とは

日本の耐震基準とは

日本の耐震基準とは

地震の発生回数が多い日本では、建築基準法において耐震基準が設けられており、基準に沿って建物が建設されています。耐震基準は大きく分けて、1981年以降の「新耐震基準」とそれ以前の「旧耐震基準」の2つがあります。

 

新耐震基準は、「震度5程度の中規模地震で損傷を受けない、震度6〜7程度の大規模地震で建物が倒壊しないこと」です。現在は、旧耐震基準で建設された建物と新耐震基準で建設された建物の両方が混在しており、どちらの耐震基準が適応されているかは確認が必要です。

 

また、耐震基準は住宅性能表示にも用いられており、下記の通り耐震等級が定められています。

 

耐震等級

耐震性能

等級1

新耐震基準と同等

等級2

新耐震基準の1.25倍

等級3

新耐震基準の1.5倍

 

※参照:国土交通省

新耐震基準と旧耐震基準の違い

新耐震基準と旧耐震基準には、大きな違いがあります。新耐震基準は、先述した通り「震度5程度の中規模地震で損傷を受けない、震度6〜7程度の大規模地震で建物が倒壊しないこと」です。

 

一方で、旧耐震基準は「震度5程度の中規模地震で建物が倒壊しないこと」と決められていました。つまり、旧耐震基準では震度6〜7程度の地震に対する取り決めがなかったのです。

 

新耐震基準が制定された背景には、1978年に発生した宮城県沖地震があります。この地震において、旧耐震基準の家屋に甚大な被害が出たことにより、耐震基準の見直しが行われて新耐震基準が制定されたのです。

鑑定士コメント

新旧どちらの耐震基準が適応されているかは、ちょうどその境目付近で建てられた建物は気になりますね。登記簿の新築年月日では判別できないので、注意が必要です。建築確認通知書の発行日で確認できます。発行日が新耐震基準の制定前である1981年6月1日以降であれば新耐震基準、それ以前であれば旧耐震基準が適応されていることになります。所有者に提出してもらうか、役所の管轄部署で閲覧し調べましょう。

免震構造と非免震構造の揺れ方予想

免震構造と非免震構造の揺れ方予想

免震構造と非免震構造の揺れ方予想

免震構造と非免震構造では、揺れの感じ方や被害の程度が異なります。ここでは、震度ごとの揺れ方の違いについて詳しく解説します。

震度4の場合

震度4の場合に感じる地震の揺れは、それぞれ下記の通りです。

 

※横にスクロールできます。

免震構造

非免震構造

人の感じ方

室内の揺れ方

人の感じ方

室内の揺れ方

弱い地震の揺れに感じる

吊り下げ式の照明が小さく揺れる

驚くほどの揺れを感じる

寝ている人が目を覚ます

吊り下げ式の照明が大きく揺れる

棚の中の食器が音を立てる

座りの悪い置物が倒れる

 

免震構造の場合は、人と物はともに揺れを感じるものの、ほとんど気にならないレベルです。しかし、非免震構造の場合は、はっきりと地震と感じるほどの揺れを感じます。

震度5の場合

震度5の場合に感じる地震の揺れは、それぞれ下記の通りです。

 

※横にスクロールできます。

免震構造

非免震構造

人の感じ方

室内の揺れ方

人の感じ方

室内の揺れ方

多くの人が地震に気づく

乗り物に乗っているような揺れを感じる

吊り下げ式の照明がゆっくり揺れる

浴槽などの水面が波打つ

揺れに恐怖を覚え、物につかまりたいと感じる

物につかまらないと行動が難しくなる

吊り下げ式の照明が激しく揺れる

固定していない家具が倒れることがある

 

免震構造の場合は、多くの人が地震だと気づくようになります。非免震構造では、強い揺れを感じて恐怖を覚える人もいるでしょう。また、物が落下したり倒れたりするなどの被害がでてきます。

震度6の場合

震度6の場合に感じる地震の揺れは、それぞれ下記の通りです。

 

※横にスクロールできます。

免震構造

非免震構造

人の感じ方

室内の揺れ方

人の感じ方

室内の揺れ方

揺れに恐怖を覚え、物につかまりたいと感じる

吊り下げ式の照明が大きく揺れる

浴槽などの水面が激しく波打つ

立っていることが困難になる

固定していない家具の大半が移動し、倒れることもある

ドアが開かなくなることがある

 

震度6程度の地震になると、免震構造でも揺れの恐怖を感じるようになりますが、まだ物が倒れるなどの被害は少ないです。一方、非免震構造では、立つことも困難になり家具の多くが移動して倒れ始めます。

震度7の場合

震度7の場合に感じる地震の揺れは、それぞれ下記の通りです。

 

※横にスクロールできます。

免震構造

非免震構造

人の感じ方

室内の揺れ方

人の感じ方

室内の揺れ方

物につかまらないと行動が難しくなる

吊り下げ式の照明が激しく揺れる

本棚や食器棚は揺れるが、倒れるまでには至らない

這わないと身動きできない

揺れによって飛ばされることがある

固定していない家具の大半が倒れる

家具が飛ぶこともある

 

免震構造では、非免震構造の震度5程度の被害が予測されます。一方で、非免震構造では家具の大半が倒れるなどの被害が発生し、物によっては飛散するなど大きな事故につながる恐れがあります。

鑑定士コメント

免震構造のマンションを選びたい場合、どうすればよいでしょうか。マンションが免震構造かは、広告や物件検索サイトなどで確認できます。「免震構造」や「制震構造」というのはマンションのアピールポイントなので、広告等にうたっていることが多いからです。もし記載がなく調べたい場合は分譲時のカタログを見てみるのも1つの方法です。新築マンションはモデルルーム、中古新マンションは不動産仲介会社で確認できるでしょう。

まとめ:免震構造を理解して地震に強いマンションを探そう

まとめ:免震構造を理解して地震に強いマンションを探そう

まとめ:免震構造を理解して地震に強いマンションを探そう

免震構造は、建物の揺れを低減することで地震の被害を最小限に抑える構造です。近年は、技術の向上により高層マンションなどでも活用されるようになってきました。

 

免震構造と非免震構造では、揺れの感じ方や室内での被害が大きく異なります。マンションを選ぶ際は、免震構造についてよく理解し、地震に強いマンションを選びましょう

石川 勝

不動産鑑定士/マンションマイスター

石川 勝

東京カンテイにてマンションの評価・調査に携わる。中古マンションに特化した評価手法で複数の特許を取得する理論派の一方、「マンションマイスター」として、自ら街歩きとともにお勧めマンションを巡る企画を展開するなどユニークな取り組みも。

本記事で学んだことをおさらいしよう!

簡易テスト

来たるべき大地震に備え、より地盤の強固なマンションを探したいと相談を受けた。確認すべき資料として一番規範性に乏しいものはどれか。
※ここでいう規範性とは上記問題文の判断をするために、評価基準に関連した情報が載っている資料がどれかを指します。

答えは 4

どれだけマンションが揺れるか、についてはその他の資料である程度の予測が可能ですが、住宅地図については他の資料に比べて得られる情報が少ないです。

  • 資産性が低くて
    売りたくても売れない
  • 安いという理由だけで
    中古マンションを
    買ってしまった
  • 修繕積立金が
    年々上がる
  • 子供が成人したから
    マンションを売って
    一軒家生活したいけど…
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