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更新日:2022.11.25
登録日:2022.11.25
白洲信哉 「観能の舞台装置」
コロナ禍の行動規制も緩んで2年ぶりの観劇、と言っても僕の場合は能楽になるのだが、古都奈良の興福寺本年29回目となる「塔影能」に足を運んだ。周知の通り能楽は、ユネスコの無形文化財に登録された伝統芸能で、能と狂言、及び式三番という翁(神事)を統括していう。が、「お能」と聞いただけで、「分からない、興味がない」と答える若者も沢山いる。続けて「なぜ観ないの?」と訊ねると、「何となく、退屈そう」と、一言で言えば「食わず嫌い」なのだ。
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確かに「謡い」と呼ばれる台詞は600年前、室町時代の古典であり、その上あくまで謡いが中心なので台詞は少なく、すぐ誰にでも理解できるという訳ではない。また、「囃子」という伴奏も、鼓や笛と耳慣れないものかもしれない。その上、多くの約束事もあって、いろんな知識がないと到底理解できないものだと決めつけているようだ。しかし、それらは舞とセットなものなので、いかに知識をつけ謡の台本を読んだとしても、それだけでは不十分で、お能全体から感じることこそ能の醍醐味なのだ。
昔、「能は黙って千番見ろ」と言った人がいたそうだが、忙しい現代にそんな時間などないであろう。この古語の意味は、「能の見方」とか準備万端整えてから入るのでなく、「難しい理屈は後にしてまず観ろ」ということなのだ。「お能の味」というものは、人によって千差万別で、「鯛の味」と思うかたもあれば、「チョコレート」と感じる人もあると思う。つまりは、食べて見ねばわからないし、「ぶっつけ本番」でどう感じるかも自由なのだ。
随分前のことだがビートたけしさんが、お能は「昔のロックコンサートだ」と評していたが、謡いや古典の意味など分かっていなくても、一つの洋風の舞台として観るのも一側面で、その証拠に英語の意味など理解出来ずともあちらの音楽などを聞いているのではないか。
一方、昨今は「場の力」が最も大切なことだと感じている。もともとお能は野外で催されており、現在のように屋根の付いた室内に、能楽堂という屋根のついた舞台が押し込まれたのは明治以降のこと。近代以前はまさに野外一日がかりのロックコンサートだった。
朝陽が昇るとともにまず「翁」という神事から始まり、日暮れまで飲食付きの観劇だったに違いない。そのテンポも今よりずっと早かったというし、何より野外は場の空気、興福寺なら再建された中金堂の背後、南円堂後方に夕日が沈み、それを浴びた東金堂や五重塔の美しさたるや、すでに気分は能楽以前の神仏に奉納する一観客と化してくるのだった。
確かに天候左右されることもあり、稀に雨天公会堂での観能になると、僕の場合は一気に白けてしまう。能楽を遠ざけている大きな要因である「気」を失った現代世界から、季節の風や匂いに星月夜など感じられる舞台にまず接してみれば、能楽の楽しみがずっと身近になること請け合いである。
僕自身昨今は野外での例えば薪能の舞台を選んで出掛けている。これから中止になっていたそれらも復活すると思うが、野外だからこそもうマスクなしでの観劇をお願いしたいと強く思い帰路に着いた。
文筆家/アートプロデューサー
白洲信哉(しらすしんや)
1965年東京都生まれ。細川護煕元首相の公設秘書を経て、執筆活動に入る。その一方、広く日本文化の普及につとめ、書籍編集、デザイン、展覧会などの文化イベントの制作に携わる。父方の祖父母は、白洲次郎・正子。母方の祖父は文芸評論家の小林秀雄。主な編著書に『骨董あそび』(文藝春秋)、『白洲次郎の青春』(幻冬社)『天才青山二郎の眼』『小林秀雄 美と出会う旅』(新潮社)『白洲家としきたり』(小学館)『かたじけなさに涙こぼるる』(世界文化社)『旅する舌ごころ』(誠文堂新光社)他多数。最新刊に『美を見極める力』(光文社新書)。
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