三ツ星間取りを探して2018/2/13

国の調べ(※)によりますと日本では2005年頃に、両親と子世帯(ファミリー世帯)とひとり世帯(単身世帯)の全世帯数に対する割合が逆転しています。2005年以前は両親と子世帯の方が多い状態が続いていました。現在の2018年頭では、ひとり世帯が約32%、両親と子世帯が約26%と6ポイントほど差が生じています。年を追うごとにこの差が大きくなっていき、2030年には16ポイントほどの差になると予測されています。ひとり世帯の方が多い時代になっているのです。
※総務省調べによる

 

そのような変化が起こると、住宅も4LDKとか5LDKのような広い間取りはだんだん必要なくなっていき、小さな間取りのマンションの数がより求められているのです。ところが1LDKのような間取りは30㎡~50㎡の広さで供給されることが多いので、50㎡より小さい住宅はローン控除制度の対象外となってしまったり、固定資産税が高くなってしまったりと、ニーズがあるのに良質な分譲マンションの供給がしにくい環境となっていて、実際に売り出されるマンションの数は少ないのが現状です。

 

しかし数が少ない理由はそれだけではないような気もいたします。

 

“1LDK”という間取りはリビングに居室ひとつというこの上なくシンプルな構成の間取りです。その上面積が小さいという制約もあるため、間取りがどうしても単調になってしまいがちで、個性が出しにくいのです。これは誰もが知っている有名なピアノの練習曲ほど演奏者の個性を出し、ほかの演奏者との差を際立たせるのが難しくなるのと同じです。

 

ただ、今回採り上げるこの間取りを見て下さい。この間取りは一味も二味も違います。

 

まずマスター・ベッドルーム(以下MBルーム)が7畳と大きくなっていて、キングサイズのベッドを入れても問題ない広さがあります。そのMBルームから比較的大きなウォーク・イン・クローゼット(以下WIC)があり、そこを通り抜けてドレッシング・ルームに出られるようになっています。これは高級マンションによく見られるWICの設置をそのまま導入したものと思われます。

 

 

またユニットバスのサイズは“1418”(縦1.4メートル×横1.6メートルの意味)となっています。これは通常3LDKなどのファミリータイプに入れるサイズと同じものです。このひとまわり大きなユニットバスは“1620”サイズです。この大きさはおもに高級マンションに導入されるものなのです。普通1LDKのマンションのユニットバス“1317”か“1216”サイズが備え付けられることが多くなっています。その点もほかの間取りとの違いが感じられ、高級感も漂っています。

 

 

それに比べて、一般的なマンションでは「水まわり」と呼ばれるキッチン・バス・トイレ・洗面所を、一か所に集めた方が建築費がかからないので、通常の間取りでは一か所に集中して配置されます。

水回りが一か所に集められている1LDK。

しかし、この間取りではキッチンと、バス・トイレ等が分離してしまっています。

 

 

話を戻しましょう。

実は最初にご紹介した間取のある物件は、タワー型高級物件の低層階に存在するのです。このような物件は投資目的で購入する人が多く、引き渡されるとすぐに賃貸に出される物件が多いのです。

 

借りて住む人が間取りや広さを重視するなら、マンションではなく賃貸アパートを選び家賃を低く抑えることも可能です。従って“1LDK”は、たいへん競争が激しい間取りなのです。

 

しかし最初にご紹介した間取りを賃貸アパートで再現するのは相当むずかしいはずです。建築のコストが高くなり、取れる家賃と見合わなくなるためです。その意味でも差別化が成功した間取りだと思います。

 

“1LDK”のように限られた広さの中でどのように工夫ができるのか、これを突き詰めることが“1LDK”の美学だと思います。成功すればこのような差別化が可能なのです。結果として分譲価格が上がることにはなりますが、間取りが住み心地や快適性を向上させ、借主を魅了することでしょう。このような魅力的な間取りが増えていけば良いですね。

 

 

井出武 東京カンテイ上席主任研究員

1989年マンションの業界団体に入社、以降不動産市場の調査・分析、団体活動に従事。
2001年株式会社東京カンテイ入社、不動産マーケットの調査・研究、講演業務等を行う。