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更新日:2025.11.21
登録日:2025.11.28
調査員が行く世界のマンション事情潜入調査!(アメリカ:ワシントン州 ベルビュー編)

2025年夏、夏季休暇でアメリカはワシントン州にある、ベルビュー(Bellevue)を訪れる機会がありました。これまで日本で数多のマンションを調査してきましたが、世界のマンションをこの目で見るまたとないチャンス。バケーションで来たにも関わらず、家族の白けた顔をよそ眼に、どうしてもマンションを見たいという衝動は抑えきれず、現地在住の友人と不動産エージェントの方にお力添えいただき、早速調査に乗り出すのでした。
マンション図書館の物件検索のここがすごい!

- 個々のマンションの詳細データ
(中古価格維持率や表面利回り等)の閲覧 - 不動産鑑定士等の専門家によるコメント
表示&依頼 - 物件ごとの「マンション管理適正評価」
が見れる! - 新築物件速報など
今後拡張予定の機能も!
■アメリカ合衆国 ワシントン州 キング郡 ベルビュー(Bellevue)
ワシントン州の西部、シアトルの東側に位置するベルビュー(Bellevue)は、フランス語で「美しい眺め」を意味し、その名の通り、豊かな自然と洗練された都市機能が見事に融合した街です。ワシントン湖のほとりに広がるこの都市は、近年急速に発展を遂げ、今では全米でも屈指の住みやすい都市として知られています。
メイデンバウアー湾(ワシントン湖)
街の中心はInterstate 405(州間高速道路)の西側で、街の憩いの場として愛されている「Bellevue Downtown Park(ベルビュー・ダウンタウン公園)」や、街の生活に欠かせない複合商業施設「Bellevue Square(ベルビュースクエア)」などがあります。衣料品や宝飾・ブランド品、家具・家電、飲食店など多種多様な店舗が揃っており、人々の暮らしを支えた活気ある施設です。
ベルビューは、マイクロソフトやT-モバイルなどの大企業が拠点を構えるビジネスの中心地でありながら、街の至る所に緑が広がり、四季折々の自然を身近に感じる優雅な街並みです。教育水準も非常に高く、公立高校の中には全米トップクラスにランクインする学校もあり、子育て世代にも人気のエリアです。
また、国際色豊かな住民構成もベルビューの魅力のひとつ。街を歩けば、世界各国の料理を楽しめるレストランが軒を連ね、文化的なイベントも盛んに開催されています。美術館や劇場などの文化施設も充実しており、芸術を身近に感じられます。
安全性の面でも高く評価されており、FBIの統計では全米でもトップクラスの治安の良さを誇ります。
ショッピングやグルメ、自然、教育、ビジネス、どれをとっても高水準なベルビューは、どの分野でも満足度の高いバランスの取れた都市と言えるでしょう。
マンション一挙紹介
街中調査で目に留まったマンションをいくつかご紹介します。
なんと息をのむ美しさでしょうか。。。
豊富な緑と広い空のコントラスト、前面道路や隣地とのゆとりは、どのマンションも「ヴィンテージ」を思わせる素敵すぎる雰囲気です。建物自体も素敵ですが、その区画、街一帯と全体の調和が取れている様は本当に秀逸で、実際現地で感じた雰囲気は写真では伝えきれない何とも言葉で表現しがたいほどの衝撃を覚えました。日本では都心高級エリアなどの一部でしか見られない「ヴィンテージマンション」も、アメリカのマンションではそのほとんどが「ヴィンテージマンション」のような佇まいで、言うなれば、街全体がヴィンテージ化された“アート作品”のような印象です。世界は広い。。。“マンションカルチャーショック”です。。。
続いて市内中心部のタワーマンションです。
Avenue Bellevue The Estates
まるで「パークコート青山ザ・タワー」のような曲線が印象的な意匠
Avenue Bellevue The Residences
「Avenue Bellevue」は、26階建ての「The Estates」と25階建ての「The Residences」からなるツインタワーで、「Bellevue Square(ベルビュースクエア)」のすぐ北側、「ノースイースト8thストリート」に面した街の中心に位置します。2024年7月に開業されたインターコンチネンタルホテルをはじめとする商業施設との一体複合開発プロジェクトとして、街の新たなシンボルとして注目されています。
「Avenue Bellevue The Residences」の北側、「ノースイースト10thストリート」に面した「Mari Bellevue」は、17階建てのガラスウォールと木目が印象的な吹抜けのエントランスとのコントラストが特徴のマンションです。開放的な開口面は、豊かな緑やワシントン湖を望む眺望を生み出し、自然と都市が調和するゆとりある街並みを象徴するかのようなデザインとなっています。
Bellevue市内のタワーマンション相場調査
2025年10月時点の売情報を確認したところ、市内中心部のタワーマンションで、概ね1,400~1,600ドル台/sq ft(日本円換算: 700~800万円台中盤/坪(1ドル=150円で計算)がボリュームゾーンになりそうです。もちろん日本同様に築年数や階層、見える眺望によって異なってきます。市内において最高価格帯のマンションは前述の「Avenue Bellevue The Estates」となりますが、現時点の売出し情報を確認すると、1,800~2,600ドル台/sq ft(900万円台後半/坪~1,300万円台後半/坪) ほどになりそうです(過去には3,000ドル/sq ft超の事例も)。
日本で比較すると、勝どきエリアのような価格相場に近いイメージでしょうか。勝どきでは駅直結のパークタワー勝どきミッド/サウス(概ね900万円台/坪~1300万円台/坪)を筆頭に、周辺をやはり700~800万円台中盤/坪のマンションが建ち並んでいます。日本では駅を基点に価格形成されることが多いですが、車社会のアメリカにおいては、商業施設やオフィスビル、有名ホテルなどが集積した地点が街の中心として価格(単価)形成されているようです。人が集まる場所を起点に価格形成される点は、やはり日本でもアメリカでも万国共通の傾向のようです。
■アメリカのマンションの特徴
以下は、現地マンション実地調査、内覧、現地エージェントのお話しを通して知ったこと、気づいた点、感じたことを列記していきます。
1.アメリカにおいて「マンション」とは「豪邸」という意味!?
日本で「マンション」といえば、鉄筋コンクリート造の集合住宅を指し、一般的には分譲型で、所有権を持つ住人が住んでいることが多いと思います。対してアメリカでは、「豪邸」・「大邸宅」を意味し、広い敷地に建てられた一戸建ての高級住宅で、ベッドルームがいくつもあるような家を指すことが多いです。日本でイメージする「マンション」はアメリカでは「Condominium(コンドミニアム)」もしくは「Condo(コンド)」と呼ばれことが一般的です。
2.アメリカの「不動産エージェント」とは?
ライセンスを持った個人が、売買や賃貸の仲介を行う専門職。多くは REALTOR®(リアルター) として、NAR(全米リアルター協会)に所属します。日本の不動産仲介営業(宅地建物取引士)に相当しますが、日本では宅建業者(法人)が免許を持ち、社員が宅建士資格を取得して業務を行います。ワイントン州でも個人がライセンスを取得し、Real Estate Firm(不動産会社)」のもとで活動することが前提ですが、一般的には所属する不動産会社への所属費やコミッションの一部を支払う代わりに、契約書類の管理、法務サポート、マーケティング支援などのサポートを受ける点が日本との違いです。
報酬体系は成果報酬型(コミッション制)が一般的で、売買成立時にコミッションを受け取ります。日本では固定給+歩合制の営業職が多く、報酬体系は会社によって異なります。
ただし、こういった仕組みも州や会社によって違うようで一概には語れないようです。
3.アメリカのマンションはマンション名がない!?
アメリカでは、基本的に番号(番地)がエントランスに記載されており、マンション名がない物件も多いです。前述の「Avenue Bellevue」や「Mari Bellevue」のようにランドマークとなっている有名な複合マンションなどはマンション名がついていることもあります。この点、日本では一棟一棟にマンション名がついているため物件を特定しやすいのではないかと感じました。ただ、日本でも京都や札幌の通りのように、きれいな碁盤の目の規則性ある通り名で場所の把握ができるという地域もあります。アメリカの住所については後者のイメージに近い気がしますので、慣れていればこちらの方が分かりやすいということなのでしょう。
マンション好きの個人的な一意見としては、名称がついている方がマンションに対する親しみと愛着がより湧く気はします。
ちなみに日本の各デベロッパーでは、地域ごとに汎用できる特定のブランドシリーズ(例:パークホームズ●●、ザ・パークハウス●●など ●●に地域名)を打ち出していることが一般的ですが、アメリカでは地域ごとに汎用できるシリーズ名があるというよりは、各マンションのプロジェクトごとに固有の名称が与えられているのが一般的なようです。
(アメリカの住所例)
※基本的に通り名が入る(一部例外を除く)
12345 NE 10th St #1234, Bellevue, WA, 98004
12345:番地
NE 10th St:通り名
#1234:号室
Bellevu:市名
WA:州の略称
98004:郵便番号
※マンション名が入る場合
12345 NE 10th St #1234, Bellevue Towers, Bellevue, WA, 98004
ちょうど10000番地のマンションのエントランス表記
4.間取り・広さについて
アメリカでは、住宅の面積を㎡(平方メートル)ではなくsqft(平方フィート)という単位を用いて表現するのが一般的です(1平方フィート(sqft)=約0.092903㎡)。
Bellevue中心部のコンドミニアムでは肌感として全体の約6割程度が600〜1,200 sqftのユニットのイメージです。このゾーンは 1〜2ベッドルームの住戸が中心で、単身者やカップル層に人気があります。1,300〜1,800 sqftのユニットは全体の約2割程度で、多くは広めの2ベッドルームですが、一部には3ベッドルームの住戸も含まれます。ただし、実際に「3 Bed」と表記されている物件は全体の数%程度にとどまり、供給は限定的です。さらに、2,000 sqftを超える大型ユニットも一部に見られ、最上階やコーナーユニットなどのペントハウスタイプでは 3,000〜4,700 sqftに達する物件もあります。このように、Bellevue中心部のコンドミニアム市場は、実用的な1〜2ベッド(約1,000 sqft前後)を中心としながら、コンパクトな住戸から高級ペントハウスまで幅広いタイプが共存しているのが特徴と言えます。
また、間取りについても、日本では「1LDK、2LDK」という表記を用いますが、アメリカではバスルームの数を「0.25」単位で表す独特のシステムが使われています。これは、トイレ・洗面・浴槽・シャワーの4つの設備のうち、どれだけ揃っているかで数値化する仕組みです。4点すべてが揃うと「1.0 Bath(フルバスルーム)」としてカウントされ、設備が一部省かれると 0.75(スリークォーター)、0.5(ハーフ)、0.25(クォーター)というように減ります。そのため例えば「シャワーとトイレのみ」でも0.5Bathになります。
日本人にとってただでさえ見慣れない表記に加え、小数点があることで混乱に拍車がかかります。
例:
・1 Bed / 1 Bath:1ベッドルーム、1バスルーム
・2 Bed / 2.5 Bath:2ベッドルーム、2つのフルバスルーム+1つのハーフバスルーム(トイレと洗面のみ)
5.設備や仕様について
・ディスポーザーの有無
多くのコンドミニアムにディスポーザーが設置されています。特にベルビューやシアトルなど都市部の物件では標準設備として備わっていることが多く、戸建てにも設置されているケースもよく見られます。ただし、築年数の古い物件や一部の地域では設置されていない場合もあります。
日本では大規模マンションや都心部のマンションでは設置されていることが多いですが、郊外の小規模マンションや戸建てでは設置されていないことが多い印象です。
・ 共用廊下の仕様
ワシントン州のコンドミニアムでは、多くの中・高層タイプで内廊下仕様が採用されています。特に高層コンドでは、ホテルのような内廊下が主流です。一方、2〜3階建ての低層コンドや郊外の集合住宅では、外廊下や外階段から各住戸に直接アクセスするタイプも一般的に見られます。
日本でも都心部ほど内廊下率は高く、郊外にいくほど外廊下が一般的な印象です。
6.ホームステージングについて
物件売却時のホームステージングについては、具体的な数字は不明ですが、現地エージェントの方のお話しや物件販売サイトの売情報を確認した肌感としては、アメリカの方が日本よりも多く行われている印象があります。日本では仲介会社のサービスにより一部ホームステージングが導入されていますが、まだまだ少ない印象です。この辺りは住宅に対する意識の違いが表れているのかもしれません。
7.学区や治安について
アメリカでは犯罪率や学区などの公開データが非常に整備されており、購入判断に大きく影響します。一部の不動産情報サイトでは、これら公開データを参考に添付されたものも目にします。「テスト結果」や「公平性」、「生徒の成長」など各項目についての州平均との比較や口コミレビューなど非常にシビアな情報が連携されていることもあります。情報の透明性から、物件購入者の目線が必然と厳しくなるのでしょう。人気学区とそうでない場所で明らかに価格差があるようです。
日本でも東京都文京区やさいたま市浦和区などの文教エリアでは、人気学区であることによる物件価格への影響はある程度存在しますが、特に駅距離など別の要因が大きく作用することで、学区による影響度は限定的な印象です。
まとめ
今回、日本国内ではなかなか得られない貴重な情報を肌で感じることができ、マンション好きとしては夢心地の旅となりました。現地調査ではマンションを目の前に、何度もため息を漏らしてしまったほど、衝撃と感動の連続でした。
最も印象的だったのは、アメリカにおけるマンション(住まい)に対する意識の高さです。情報の網羅性については、前述の通りシビアな事実と客観的データが日本以上に整っています。納得いく自宅購入の判断には、日本でもこうした情報環境をもう一歩踏み込んで整えていってもいいのではないかと個人的に感じました。
また、ホームステージング、築年の経過を感じさせないメンテナンス状態、景観に配慮された街との一体感、共用部に飾られた芸術品など、マンションを単なる“住む箱”で終わらせず、一棟一棟をまるでアート作品かのように、「住む」+αで「感性」や「心の豊かさ」が付け加えられた様は、そのマンション一棟一棟に住まう人の誇りと自信を感じました。
少し大袈裟な表現かもしれませんが、このような考え方が日本にも少しずつ浸透し、一人でも多くの人が「マンションに住まうこと」の意味をより深く捉えるようになれば、住まいの価値はさらに豊かに広がっていくのではないでしょうか。
ご協力者様
ウォーカー光紀 様_Windermere Real Estate所属 ワシントン州公認 Realtor®
ウォーカー光紀
Windermere Real Estate所属 ワシントン州公認 Realtor®
同志社大学を卒業後、パナソニックに入社し、海外マーケティング業務に従事。各国の市場で事業戦略やブランド推進を担当。UCLAで経営学を学んだ後、衆議院議員秘書として勤務し、のちに渡米。現在は、地域トップシェアを誇るWindermereの不動産エージェントとして、正確な価格分析と交渉力、丁寧な対応を強みとし、安心感のある取引を実現している。信頼に基づく誠実なサポートが評価され、紹介を通じたご依頼が多いのも特徴。滋賀県出身。

マンション専門調査員
今村 浩一
マンション管理会社にて管理組合の運営支援業務、その後、大手不動産仲介会社にて売買仲介営業に従事し、2016年に東京カンテイに入社後現在に至る。
マンション専門調査員として東京都心部を中心に、埼玉県全域、 名古屋市、札幌市、福岡市、広島市、宇都宮市、高崎市など、延べ15,000棟以上のマンションについて現地/データの二面から調査を行う。
趣味はマンション関連のネットサーフィン、モデルルーム巡り、マンション将来価格予想。夢は歴代住んだマンションの模型を部屋に並べてお酒を飲むこと。
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