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更新日:2024.09.17
登録日:2024.09.17
聞きたい!見せたい!マンション管理【Jワザック両国】
「コミュニティ」がマンションの価値に与える影響を探っていく本企画。第2回は、東京都墨田区の「Jワザック両国」管理組合の片岡忠朗理事長(以下敬称略)にお話を伺います。同マンションは、マンション管理業協会による適正評価制度の評価を1年で大幅に向上させ、マンション・バリューアップ・アワード2023でグランプリを取得されました。管理状況の劇的な改善を率いた片岡理事長が考える「管理」「コミュニティ」とは? コンパクトマンションならではの苦労や、マンション管理士として展望するこれからの組合運営などもお答えいただきました。
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理事会主体の管理への変更
――Jワザック両国では2020年より理事会主体の管理に切り替えたとのことですが、具体的にどのような取り組みをされていたのでしょうか。
片岡:2020年5月に私は立候補によって初めて役員(副理事長)になりました。Jワザック両国は2年ごとに役員の半数が入れ替わることになっていたので、新任の私と、継続の役員の方で理事会が構成されていたわけですが、継続役員の方から当時の管理会社について「変えた方がいいのではないか」と相談を受けました。話を聞いて調べているうちに、改善すべき多くの課題があることを実感し、総会の承認を経て管理会社を変更しました。最初にまず行っていた管理改善は良くないところを直す、というマイナス点をゼロにするイメージの改善でした。管理会社の変更をきっかけに、理事会主体で資産価値や利便性の向上につながるプラスとなる改善へと切り替えていくことができてきました。修繕積立金を均等積立方式へ改定し、4倍以上の値上げを実施したことなどで、一般社団法人マンション管理業協会によるマンション管理適正評価制度の評価が星2つから星5つへ大きく上昇し、「マンション・バリューアップ・アワード2023」でグランプリを獲得しました。
マンション・バリューアップ・アワード2023でグランプリの表彰を受ける片岡理事長
踏み切った“値上げ”
――Jワザック両国のように、間取りがコンパクトで主に投資向けのシリーズとなると外部居住者の方が多いので、そのために合意形成が難しくなることが考えられます。また、投資目線では管理費や修繕積立金の値上げは、短期的には利回りが下がる要因となります。反対票が増えそうだと思うのですが、これに取り組んだ狙いは何でしょうか。
片岡:マンションのことを考えると、管理費や修繕積立金を上げないという選択肢はありません。それが第一にあります。修繕積立金は、国交省が推奨する均等積立方式にすることで適正評価制度の評価も変わってきます。この話に限らずですが、外部に居住している投資オーナー、Jワザック両国に居住する組合員、賃貸人、それぞれの最大公約数を見極めることを意識しているのです。
一方で、おっしゃる通りこの議案を通すのは大変だろうと予測はしていたので、議案書の作成にはかなり力を入れました。資料を別に添付するなどして「なぜ上げるのか」を分かりやすく説明しました。管理会社に任せるのではなく一から自分で作成し、議案書に気持ちを込めるイメージです。そうすると議案書が何ページにもなって、印刷するとなると費用も高額になってしまうのですが、そこはダウンロード方式を採用し解決しました。特に、投資目的のオーナーは複数戸を所有していることが多いので、スマートフォンで空き時間に見ることができる議案書の電子化が有効だったと思います。規約を変更して電子議決権の行使を可能にしていたことも効果的でした。IDもパスワードも不要のフォームを利用して、スマホでQRを読み込むとダイレクトにアクセス、投票ができます。セキュリティも大切ですが、組合員の立場になって考えてみればハードルは当然低い方が良いのです。
Jワザック両国 外観
合意形成の工夫
――総会の合意形成はどの組合も悩むところですが、スムーズに進めるための工夫は他に何かありましたか?
片岡:例えば、総会の招集を通知するタイミングです。国土交通省による標準管理規約では開催の2週間前とされていますが、外部居住者が全体の約3分の2を占めるJワザック両国の場合、それでは出席票や委任状などは集まらないだろうと思いました。そこで、特別決議案のある総会においては、2ヵ月前に通知を出しました。出席通知や議決権行使書などの一旦の提出期限を1カ月前として、それまでに集まらなかった分は管理会社を通して回収に努め、とことん集めていきました。管理規約を変えるには特別決議の要件で「区分所有者の4分の3以上」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成が必要となるので、本当に全員から集めるくらいの気持ちでやらなくてはと思います。
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あとは、適切ではないと考える方も多くいらっしゃるかもしれませんが、総会の定足数を下げることも考えています。標準管理規約では議決権総数の半数以上を持つ組合員が出席することとなっていますが、区分所有法ではこういった定足数の定めはありません。(今後の区分所有法の改正で定足数を定めることも検討されており、それに抵触しない場合に規約変更を考える)Jワザック両国の場合は半数を集めることでさえ、これまで私が理事となった以降の総会においては必ず管理会社の方が議決権行使書などの提出催促業務を実施しております。管理会社の方は提出をお願いした組合員から嫌味を言われたり、着信拒否をされたりするようなことも珍しくなく、管理会社の方には多大な労力とともに、相当な精神的負担もかけてしまっています。そのような管理活動に無関心で権利を放棄している組合員のために貴重な管理会社の方の労力を割くことは組合にとって有益ではないと考えています。それならば他にやっていただきたい業務が多くあります。
――片岡さんのような方が役員であれば、思い切って自主管理に切り替えても良いのでは?
片岡:2023年のマンション管理士試験に合格して、これからは理事長としてだけではなく、マンション管理士としても関わっていこうと考えているのですが、それでも自主管理は大変だと思いますね。ただ、最近は管理組合と管理会社のパワーバランスが逆転していると感じています。これからの管理組合は、管理会社に選んでもらえる組合になるか、もしくは自主管理のできる組合になるか、この二択ではないでしょうか。マンションの着工戸数が減少しているとは言ってもストックは年々積み上がっており、管理会社は人手不足の状況にある。それに気づかないようであれば、管理を請け負ってもらえない組合が増えてくることは確実です。マンション管理士としては、管理会社と協力しながら、組合がどちらの選択肢もとれるような体制づくりをサポートしていきたいと考えています。
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マンションの管理やコミュニティが資産価値に与える影響
――管理が資産価値に与える影響が明確になれば、組合の意識も変わってくるかもしれません。マンションの管理やコミュニティが資産価値に与える影響について、どうお考えですか。
片岡:居住者間の顔が分かる関係だと、日常の音のトラブルなどは少なくなると思います。しかし今の世の中、特に単身者向けのマンションでコミュニティを構築していくのはとても難しい。ファミリー世帯が中心のマンションであれば、子ども同士が仲良くなって良い方向へ働くかもしれませんが、Jワザック両国では適切でないように思います。それでも、有事の際はやはりコミュニティが重要になります。今は、災害時など限定的につながりを持つことができるシステムの導入を検討していて、Jワザック両国にとっての良いコミュニティをつくろうとしているところです。みんなが顔見知りで日常的につながるコミュニティとは違いますが、ゴミ捨て場や建物内はきれいにされていますし、EV(電気自動車)充電器を設置するなど居住環境の向上にも積極的に取り組んでいます。
役員がリーダーシップをとって、自分たちのマンションのことを本当に考えた行動をとっていると分かってもらえれば、総会もスムーズに進行しやすくなり、選ばれるマンションになっていくのではないでしょうか。
Jワザック両国 片岡 忠朗 理事長
<略歴>
片岡 忠朗 氏
Jワザック両国管理組合 理事長/MLC片岡マンション管理士事務所 代表
機械メーカーでの会社員時代にマンション投資を実践したことをきっかけにマンション管理の重要性と奥深さを感じる。2019年には約19年間の会社員生活を卒業し、複数の管理組合での理事や100棟以上のマンションでの管理員を経験する。同時に複数のマンション管理組合で理事としての経験も積みながらマンション管理士や宅地建物取引士をはじめとする複数の不動産関連の資格も取得。現在では異業種からマンション管理業界に転身した強みを生かしてこれまでの業界の常識を覆す新しい視点と発想でマンション管理組合運営の専門家として東京都区部 城北・城東エリアのマンション管理組合支援を中心とした活動を展開している。
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