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更新日:2025.03.06
登録日:2025.03.07
社会実験「BATON PARK―KAWABATA-RYOKUDO―」‼まちづくりへバトンを未来へつなぐ:マンション図書館員が聞いてみた!

江戸時代から日本の中心として発展してきた東京・大手町エリア。今でも日本のビジネスの中枢を担い、大きく見上げたオフィスビルには名だたる企業が入居しています。そのような中でも随所で江戸時代の名残が見られ、歴史も感じさせるまち並みです。2014年に歩行者専用道として整備された「大手町川端緑道(川端緑道)」もその一つ。日本橋川沿いで、旧江戸城外堀の石積みが保存された全長約780mの大規模な親水空間が広がっています。都心では貴重な空間で、近隣のオフィスワーカー等には親しまれていましたが、更なる活用には課題がありました。 そこで、これからの川端緑道を見据えた社会実験「BATON PARK―KAWABATA-RYOKUDO―(BATON PARK)」が進められています。川端緑道の将来、そして周辺のまちづくりへバトンをつなぐために何ができるのか――エリアの都市再生を手がけ、BATON PARKにも関わってきた独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)の東日本都市再生本部 都心業務部 事業推進第1課の石射卓氏、三菱地所株式会社の都市計画企画部 都市政策・産学連携推進ユニットの久保谷鈴業務副主任、同 津田将輝氏(以下敬称略)にお話を伺いました。
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大手町のまちづくり
――これまでの大手町のまちづくりについて教えてください
石射:約40haある大手町エリアでは、戦後に多数のオフィスビルが建設され、日本のビジネスの中枢を担ってきました。2000年頃から、それらのビルは更新時期を迎えたのですが、企業活動の継続が必須であったため、なかなか更新が進んでいない状況にありました。しかし首都機能分散の一環で、大手町の合同庁舎がさいたま新都心に移転。その跡地(1.3ha)を2005年にUR都市機構が取得し、連鎖型の都市再生スキーム「大手町連鎖型都市再生プロジェクト」を構築しました。合同庁舎跡地に新しく建てたビルへ周辺企業を移転し、それにより空いたビルを建替え、まだ建替えしていないビルに入る企業を移転させていくという流れです。
UR都市機構はこのプロジェクトを、日本橋川沿いの大手町エリア一帯を対象とした、土地区画整理事業の施行者として推進してきました。また、連鎖型再開発の一つでは三菱地所と共同で施行者となり事業を推進しました。

大手町地域とその周辺
久保谷:当社は土地区画整理事業の区域内で、複数の再開発に取り組んでいます。日本一高いビルとなる予定の「Torch Tower」を含むTOKYO TORCHも、この連鎖型再開発に含まれています。ただし、こうした開発やまちづくりの思想を大手町の中だけで捉えるのではなく、日本橋川を挟んで向こう側の神田エリアで手掛ける「大手町ゲートビルディング」も含めてエリア全体を「面」として捉え、周辺エリア一体の価値が向上するようなまちづくりをしたいと考えています。
「BATON PARK」
石射:土地区画整理事業の区域内、日本橋川沿いでは、UR都市機構が歩行者専用道として「川端緑道」を整備し、2014年に完成しました。しかし、平日・休日ともにあまり利用されておらず、利用者の大半はワーカーとなっていました。これを課題として、外空間の使い方を検証するための社会実験「BATON PARK」が、エリアマネジメント団体と三菱地所の主催、UR都市機構らの後援で2022年にスタートしたわけです。

完成した当時の川端緑道
久保谷:最初の年は、誰に、どう使ってもらうかを決め込まずに、フラットに利用者の意見を聞いてみようと考えました。当時は川端緑道の一部が、人道橋の工事による仮囲いで閉鎖されていたので、隣接する大手町仲通りを実験場所として、自分なりの過ごし方を見つけられるよう、自由に配置できる椅子やクッションなどの様々な什器を用意しました。コンテンツとしては「職・住・楽・学」のテーマを設け、飲食の物販や子どもの遊び場イベントなどを企画しました。1週間の実験期間中、休日になると神田など周辺に住むファミリー層が子どもと一緒に訪れる様子が見られました。アンケートを見ると「コロナ禍で外遊びをする子どもが増えたので、近所の公園は人でいっぱい。子どもと一緒に遊べる場所があると助かる」とのことで、使われ方の選択肢が一つ見えてきたと感じました。子どもの遊び場イベントは大変好評で、次年度以降の実験でも継続的に取り入れています。また、物販では神田エリアのお店に出店してもらったのですが、実験でお店を知り、後日神田の実店舗に訪れた方もいたようです。
2年目の2023年は、期間を20日間に延ばし、実験場所も川端緑道まで拡げ、親水空間を活かした川床風ベンチを設置したことなどが前年との主な違いです。

川床風ベンチ(2023年)。神田にある酒蔵の協力を得て、酒樽をリメイクした椅子とテーブルも設置した
久保谷:座れる場所を増やしたことで、実験前と比較した実験期間中の滞在人数は229%、大手町-神田間の人流は5.9%増加しました。3年目の2024年は、利用者の意見を取り入れて飲食のコンテンツを充実させたほか、ワーカー向けに働く・休憩できる場所を設けました。平日はワーカーを中心に、休日は近隣住民を中心として、同じ空間を曜日や時間帯で可変的に活用したことで、使われ方の幅が広がった印象です。

ワークスペース(2024年)

“神田らしさ”の一つ、藍染を体験できるコーナーも(2024年)
津田:「大手町ゲートビルディング」の開発では、日本橋川に歩行者用の橋を架けて、新ビルが川端緑道とつながります。ここから、大手町のにぎわいが神田をはじめとする周辺エリアにもにじみ出すことが期待できます。ただし持続可能性を考えると、大手町側からの一方的なものではなく、外からのにぎわいも大手町に呼び込むような双方向の働きかけである必要があります。「BATON PARK」では、だんだんと協力いただける神田のお店が増えており、2024年には、神田の町会の方に企画段階から参加いただきました。これまでの社会実験で得られた知見を踏まえつつ、今後はそれぞれの文化がどう混ざっていくかに注目しながら、川端緑道の役割や求められる機能を見極めていきたいと考えています。

「大手町ゲートビルディング」で整備される橋のイメージ
今後のまちづくりの方向性

多くの方の居場所になるように、川端緑道の将来へバトンをつなぐ!
――実験を踏まえて、今後のまちづくりの方向性をどのように考えていますか
石射:やはり川端緑道は、川に面した歩行者専用道である点が大きな特徴です。首都高速道路の日本橋区間で地下化事業が進められており、蓋をされていたような日本橋川の上空に青空が戻ってくる予定です。これに伴って、川沿いの空間づくりの機運が高まっていると感じています。ここで改めて、都心での親水空間に対するニーズをとらえ、人中心のにぎわいを創出していきたいと考えています。実験でも、川に向いたスペースで多くの方が居場所を見つけている様子が印象的でした。
津田:過年度の実験では、路面に水面のように揺れるライトアップを行うなど、水を感じる仕掛けはできる範囲で行っていますが、現状は川面まで下りていくハード面の設えがないので、川端緑道の沿川に立地するポテンシャルを最大限発揮できていない課題も感じています。「大手町ゲートビルディング」の開発に併せ、船着き場も整備される予定のため、今後更なる親水空間としての機能拡充やアクティビティの創出にも着目していきたいと考えています。
マンションにも活かせる考え方
――川端緑道の空間づくりで、マンションにも活かせる考え方はありますか
石射:比較的規模の大きいマンションでは、敷地内に複数の通路が設けられている場合があります。特に、主要な動線が交わる空間では人の交流も生まれるでしょう。そのきっかけを潰さず、交流を広げていくために、川端緑道で実験したような滞在・交流を促すしかけが有効だと考えます。
津田:にぎわいの程度は、時間や用途によって変化していくものだという認識を持つのが良いかと思います。例えば外構で、常ににぎわっている空間をつくろうとすると、大きな管理の手間とコストがかかる上、住民にとってネガティブな要素となることも考えられます。「BATON PARK」でも、時間帯や曜日毎に用途が変化する仕掛けを作りましたが、マンションでの広場空間においても、スポット的に各々がやりたいことをできる、もしくは皆でつくり上げていけるような余白や可変性があることが大切なのではないでしょうか。
<略歴>
石射 卓 氏(写真右)
独立行政法人都市再生機構 東日本都市再生本部 都心業務部 事業推進第1課
2023年独立行政法人都市再生機構入社(経験者採用)。入社後、大手町連鎖型都市再生プロジェクト(土地区画整理事業、市街地再開発事業等)を担当
久保谷 鈴 氏(写真中央)
三菱地所株式会社 都市計画企画部 都市政策・産学連携推進ユニット 業務副主任
2018年三菱地所株式会社入社(経験者採用)。「BATON PARK」のプロジェクトをはじめ、ウォーカブルなまちづくりやグリーンインフラなどのテーマを中心とした都市政策の推進を担当。
津田 将輝 氏(写真左)
三菱地所株式会社 都市計画企画部 都市政策・産学連携推進ユニット
2023年三菱地所株式会社入社。「BATON PARK」のプロジェクトをはじめ、環境やグリーンインフラなどのテーマを中心とした都市政策の推進を担当。
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