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更新日:2025.01.31
登録日:2025.01.30
緑あふれる愛宕地区での再開発:マンション図書館員が聞いてみた!
オフィスビルが林立するビジネス拠点――新橋・虎ノ門エリアと聞くと、多くはこういったイメージを持たれる方が多いでしょう。地下鉄新駅も整備された虎ノ門ヒルズは、それを象徴する建物の1つです。しかし、虎ノ門ヒルズすぐ隣の街区に、緑に覆われた荘厳な空間があるのをご存じですか? 東京23区の自然の地形として最も高い標高26mの愛宕山、その山頂には1603年創建の愛宕神社があります。独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)では現在、この愛宕神社参道と連携した再開発事業を進めています。緑を保全しながら、新しい人の流れをどうつくっていくのか、都内では稀有な土地での事業に挑む、UR都市機構の東日本都市再生本部 都心業務部の関口智彦担当課長、同部事業推進第1課の大塚幸太主幹(以下敬称略)にお話を伺いました。
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2010年の検討開始からこれまで
――「愛宕地区第一種市街地再開発事業」に関するこれまでの経緯を教えてください
関口:今回は、UR都市機構が事業主体(施行者)となっています。地権者の方から土地をお譲りいただき、2010年から愛宕山周辺の一体再開発を検討開始しました。2013年にはまちづくり協議会が立ち上がり、地元の方々とさらに議論を進めていき、2022年に再開発事業が都市計画決定されました。2025年には、計画する2棟の建物のうち、高層マンションの建設工事に先行して着手します。
完成イメージ。左側が先行して着工する建物
都市計画決定までに長い時間がかかっていますが、やはり都心においては稀有な場所であること、愛宕神社が都市計画公園に位置付けられていることなどから、地元行政の港区を含め、さまざまな視点から協議が必要でした。
大塚:当地区の周辺では、すでに再開発が完了した愛宕グリーンヒルズや、これから事業を予定している東京虎ノ門東急REIホテル跡地があります。さらに視野を広げると、新橋・虎ノ門地区のまちづくりとして、国際水準のビジネス環境整備や交通機能強化といった方針が掲げられています。こうした周辺環境との関係性も考慮する必要がありました。
眺望に配慮した2棟構成
――愛宕地区の再開発では、どのような整備が行われますか?
関口:愛宕神社の参道を挟んで、街区を2つに分けています。愛宕山に向かって左側(F地区)には、低層部に事務所や店舗を備えた地上41階建てのマンションを、右側(G地区)には地上3階建ての店舗と寺院の2棟を建設予定です。マンションのある街区は、野村不動産が特定事業参加者・特定業務代行者として参画します。新橋・虎ノ門エリアというとオフィス街のイメージが強いですが、ここは駅から少し離れていることもあり、近隣で働く方などの居住ニーズを満たす目的で、住宅機能を主たる用途としています。F地区の建物高さが約160mと計画しているのに対し、G地区は約15mとかなりボリュームを抑えています。これは愛宕下通りや愛宕山山頂からの眺望を確保するためです。
配置図
大塚:山頂にある神社境内からの眺望は、愛宕神社関係者だけでなく地元の方々の大きな要望でした。また、F・G地区ともに敷地から建物をセットバックさせて、参道と一体になった広場を整備します。現在の参道の幅が倍程度に広がるイメージです。
関口:再開発完了後も、UR都市機構はエリアマネジメントという形で関わっていこうと考えています。建物の店舗部分が広場を含む参道空間へ滲み出してくるような設えで、神社の行事とも連携したにぎわいづくりをしていきます。
F地区の低層部とG地区には店舗を設け、神社参道と一体になった広場を形成する
緑を守りながらの災害対策
――緑の保全について教えてください。
関口:愛宕山の斜面は土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されていて、安全性の確保が急務となっていました。一方で、愛宕神社は専属の樹木医と協力しながら愛宕山の緑の管理・保全へ従来から力を入れているので、安全性の確保と緑の保全を両立する必要がありました。斜面の整備ではセメントやモルタルを吹き付けて固めるという方法もありますが、それには木を伐採しなければいけません。
大塚:そこで愛宕山では、斜面全体をワイヤーネットで覆い、アンカー杭でワイヤーネットを固定するという方法をとりました。植わっている木々を1本ずつ図面へプロットし、木の健康状態まで確認をしたうえで、アンカーの位置を検討しました。現場と図面を行き来しながら、先行して工事が完了したF地区側だけで約300ものアンカーでワイヤーネットを抑えています。夏には緑も茂ってくるので、見た目にはほとんど目立ちません。
施工直後の様子
関口:再開発の敷地内でも、F・G地区それぞれ斜面側に緑地を設け、愛宕神社の緑と一続きになるように計画しています。生物多様性に配慮した樹種の選定やしかけづくりをする予定です。緑道でもあるので、神社の参拝者がここを通って虎ノ門方面に抜けていくような回遊性の向上も期待できます。
大塚:F地区の建物は、マンションや事務所、店舗など複数の用途がありますが、すべて独立アプローチにしています。これを限られた敷地内に収めて、さらに緑地も十分に確保していく点に苦労しました。生物多様性については、専門家にアドバイスを受けながら、かつてこの場所にいた生き物たちが戻ってきてくれるような環境づくりを目指しています。生き物は成長フェーズによって土の中、水の中、木の上と生息場所が変わるので、そういったことまで考える必要があるのです。
関口氏「緑地はG地区隣のホテル跡地にも続いて、虎ノ門方面へ抜ける動線ができます」
開発工事後も続く、広域的なまちづくり
――今後の事業の流れと、エリアのまちづくりに対する展望を教えてください。
大塚:愛宕地区の再開発では、地域の営みができるだけ途切れないように、地区ごとにバトンを繋ぐ形で工事を進めていきます。先に着工するF地区の建物が完成後(2028年予定)、G地区の既存建物に入居している事業者の方々がF地区の事務所へ入居予定です。
G地区の既存建物(写真右)
関口:先ほど述べた斜面工事は、スペースの都合上、対面する地区の既存建物を解体してからでないと進められません。現在は、F地区の既存建物を解体しF地区側の斜面工事が完了、F地区の新築工事へ着手という段階です。G地区側の斜面工事は、G地区の既存建物を解体した後に行います。G地区の新築工事は2031年着工、2032年の完成を予定しています。
UR都市機構はこれまで、新橋・虎ノ門エリアのまちづくりにさまざまな形で関わってきました。第一に、港区による「新橋・虎ノ門地区まちづくりガイドライン」の策定・改定を支援しています。このガイドラインに基づいた、「虎ノ門一丁目東地区第一種市街地再開発事業」では参加組合員として、「虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業」では施行者として事業を推進しています。再開発のほか、地元の方々による「新虎通りエリアマネジメント協議会」も10年近く事務局業務などを担ってきました。
特に再開発事業は、皆さまの財産を扱うので、公平中立な立場で進めていくことが大切です。そういった意味で、我々を信頼して事業参画の依頼をいただけているのだと思います。愛宕地区は、緑豊かな愛宕山と出世の石段で有名な愛宕神社に隣接する恵まれた立地条件ですので、それを活かした事業計画とし、建物完成後も引き続き携わっていきたいと考えています。
<略歴>
関口 智彦 氏(写真左)
独立行政法人都市再生機構 東日本都市再生本部 都心業務部 担当課長
2005年独立行政法人都市再生機構入社。土地区画整理事業や市街地再開発事業などによる都市再生業務に従事。2024年から現職。事業計画、権利変換計画の作成や行政機関、地権者との協議、調整等を行っている。
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大塚 幸太 氏(写真右)
独立行政法人都市再生機構 東日本都市再生本部 都心業務部事業推進第1課 主幹
2012年独立行政法人都市再生機構入社。賃貸住宅部門、都市再生部門の業務に従事。2022年から現職。再開発のほかにリノベーションによるまちの再生も担当している。
マンション専門調査員
今村 浩一
マンション管理会社にて管理組合の運営支援業務、その後、大手不動産仲介会社にて売買仲介営業に従事し、2016年に東京カンテイに入社後現在に至る。
マンション専門調査員として東京都心部を中心に、埼玉県全域、 名古屋市、宇都宮市、高崎市、福岡市、広島市など、約9年間で延べ12,000棟以上のマンションについて現地/データの二面から調査を行う。
趣味はマンション関連のネットサーフィン、モデルルーム巡り、マンション将来価格予想。夢は歴代住んだマンションの模型を部屋に並べてお酒を飲むこと。
賃貸不動産経営管理士
佐伯 知彦
大学在学中より郊外を中心とする各地を訪ね歩き、地域研究に取り組む。2015年大手賃貸住宅管理会社に入社。以来、住宅業界の調査・分析に従事し、2020年東京カンテイ入社。
趣味は旅行、ご当地百貨店・スーパー・B級グルメ巡り。
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