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2023.11.02

千歳駅――2023年地価上昇率トップ!道産子半導体“ラピダス効果”がもたらす未来(北海道千歳市/JR千歳線)

千歳駅――2023年地価上昇率トップ!道産子半導体“ラピダス効果”がもたらす未来(北海道千歳市/JR千歳線)

 北海道ボールパークFビレッジに沸く北広島市に続く、北海道千歳市。新千歳空港を有する北海道の玄関口であるが、この地に半導体メーカー“ラピダス”が進出すると発表されたのが2023年2月。それから約半年、全国の地価上昇率トップとなったのが千歳市であった。今回は、前回の「北広島駅②未来編」の補完として、千歳市や周辺地域にとってラピダスが進出することはどういう意味合いを持つのか、また、それが不動産市場にもたらす影響について掘り下げていく。

前回「北広島駅――北海道ボールパークFビレッジと“レ・ジェイド北海道ボールパーク”に見る、これからのマンションのかたち(北海道北広島市/JR千歳線)②未来編」はこちら

5.ラピダス効果に沸く千歳市の地価上昇

・“北海道が2023年基準地価上昇ランキング上位独占”の衝撃

 北海道が2023年9月19日に発表した2023年の基準地価(7月1日時点)によると、千歳市内の住宅地・商業地で上昇率30%以上を記録したのをはじめ、JR千歳線沿線の地価上昇が鮮明となった。住宅地の上昇率は千歳市が全国1~3位、恵庭市が4・6位を占め、商業地でも千歳市が2~4位、北広島市が5・8位を占めるといったように、千歳市のみならずそれに連なる恵庭市、北広島市でも顕著な地価上昇が続いている。北広島市の伸びはいずれも商業地で、全国5位の共栄町4丁目(1㎡あたり57,000円・28.1%上昇)はボールパークから千歳線を挟んで反対の東側となる道道46号線(江別市方面へ続く)沿い、全国8位の美沢1丁目(同70,000円・27.3%上昇)はボールパークから南側の「北広島」駅へ続く“ボールパーク通り”と、道央道北広島インターチェンジへ続く道道1080号線(大曲通)の交差点近くであり、どちらもボールパーク関係と言える。

▲北広島市役所近くの道道1080号線大曲通。北広島市役所周辺は顕著な地価上昇を示している。

▲北広島市役所近くの道道1080号線大曲通。北広島市役所周辺は顕著な地価上昇を示している。

 住宅地上昇率全国1位の千歳市栄町5丁目(同98,000円・30.7%上昇)、2位の東雲町5丁目(同77,000円・30.5%上昇)、商業地全国1位の北栄2丁目(同102,000円・30.8%上昇)、3位の末広2丁目(同95,000円・30.1%上昇)はいずれも「千歳」駅周辺で、駅徒歩5~10分程度。商業地2位の東雲町1丁目(同80,500円・30.5%上昇)は「千歳」駅徒歩18分とやや駅距離があるが千歳市役所に近く、JR千歳線と概ね並行する国道36号線にも近い。「千歳」駅周辺は南口すぐ近くのイオン千歳店をはじめ、道内では珍しく駅徒歩圏内に商業施設が充実している。また「新千歳空港」へ2駅6分、「札幌」へも快速エアポートで30分と高い交通利便性を持つため、アフターコロナの経済活動再開、インバウンド観光増を受け、「千歳」駅周辺が住宅地・商業地とも地価上昇率全国1位となっている。

▲今回台風の目となっている「千歳」駅は「新千歳空港」から2駅・7分。快速エアポートが停車する主要駅。

▲今回台風の目となっている「千歳」駅は「新千歳空港」から2駅・7分。快速エアポートが停車する主要駅。

 一方、住宅地3位となった千歳市みどり台北4丁目(同40,000円・29.0%上昇)は千歳市街から5kmほど離れ、JR千歳線で「千歳」から2駅「札幌」寄りの「サッポロビール庭園」駅から徒歩15分ほど。駅周辺はその名の通り“サッポロビール北海道工場”をはじめ工業団地となっているほか、北海道らしい広大な農地が広がっており、“みどり台”の地名からもわかるように千歳市郊外の新興住宅地である。2022年に町内に“千歳市立みどり台小学校”が開校したばかりというから、いかに若い街であるかがわかる。また、住宅地4位の恵庭市柏木町3丁目(同32,500円・29.0%上昇)は千歳線「恵み野」駅から徒歩20分ほど、6位の恵庭市島松東町2丁目(同33,500円・28.8%上昇)は千歳線「島松」駅から徒歩7分程度と、駅徒歩時間の長短はあれど(こうしたエリアでは冬場に吹雪くこともあるためJR利用であっても駅までクルマ送迎ということも多い)、JR千歳線沿線の住宅地の地価上昇の波が千歳市を越え、隣の恵庭市にも及んでいる様子がわかる。こうした観光と関係ない住宅地の伸びはまさしく“ラピダス効果”だろう。

ラピダス(Rapidus株式会社)

 先端半導体の国産化を目指し、2022年8月設立。資本金73億円余りはトヨタ自動車・デンソー・ソニーグループ・NTT・NEC・ソフトバンク・キオクシア(旧・東芝メモリ)・三菱UFJ銀行からの出資により賄われ、政府からも2022年11月に700億円、2023年4月に2600億円の補助を受ける。次世代半導体の開発を巡ってはサムスン電子(韓国)やTSMC(台湾積体電路製造)と競合するが、ラピダスはIBMと提携し、次世代半導体の製造技術をライセンス購入の上、2025年4月の試作ライン稼働、2027年の量産化を目指す。なお、TSMCは熊本県菊池郡菊陽町への工場進出を決めており、菊陽町周辺でも顕著な地価上昇がみられる。

・ラピダスが掲げる“北海道バレー構想”

 ラピダスの進出は千歳市に非常に大きなインパクトをもたらす。雇用面では地元を中心に“毎月20~30人の技術者を採用しており、1,000人規模の採用を計画”しているといい、その中から技術者としてアメリカ・IBMへ200人を送り込むという。また、半導体メーカーの進出は関連産業の裾野も広い。半導体製造装置大手のASML(オランダ)が“2024年後半をめどに千歳市周辺に技術支援拠点を開設”し、約50名の技術者が新拠点に詰めるほか、日本国内の人員を4割増加させると発表した。加えて、新たに千歳へ進出する企業のみならず、既存の千歳市内の半導体部品メーカー(FJコンポジット)も人員を20人から40人に増やし、新工場の稼働も計画するという。千歳市内には“千歳臨空工業団地”など工業団地が11か所あるが、ラピダスに最も近い“千歳流通業務団地(約30ヘクタール)”では現時点で既に用地に空きが無い状態であるといい、既に事業用地や人材の争奪戦が起きているというから驚く。

半導体開発競争とは“微細化”競争

 半導体の性能は“2年で2倍に進歩する”といわれ(ムーアの法則)、これを先読みした製品としてiPhoneが挙げられる(3年後の進歩を見越し、3年前から企画・デザインを開始した)。微細化が進むと、薄型・小型製品の開発(例:スマートフォン→スマートウォッチ→AIグラス=眼鏡:開発中)や、同じ製品サイズであれば飛躍的な性能の向上が実現する。半導体の微細化は主にnm(ナノミリメートル)の単位を用い、1nm=100万分の1mm(ミリメートル)で、これは原子10個分に近いという微細ぶりである。2023年現在、TSMC・サムスン電子が5nmを実用化しており、TSMCは2025年に2nmの量産を目指すとしている。TSMCが熊本県の新工場で量産するのは最先端品ではなく、22~28nmの普及品となる予定。ラピダスは2027年の本格稼働時に2nmの量産を目指すと目標を掲げている。

 ラピダスの新工場は最大4棟設けられるというが「工場1棟につき1万人(の人口)が増えるとの見方がある」(千歳市次世代半導体拠点推進室の森周一室長によるコメント、日本経済新聞)というから、4棟で4万人もの人口増に呼応する住宅需要が千歳市周辺に生まれることになる。日本経済新聞によれば、「千歳」駅前で建設中の賃貸マンションは1LDKで10万円の賃料を想定しているといい、札幌市中心部に匹敵する水準であるという。千歳市がこの状況なので既存の市街地では人口増を吸収しきれず、千歳市郊外や近隣の恵庭市、南側の港湾都市・苫小牧市にも高い住宅需要が及ぶというわけだ。苫小牧市ではJR千歳線「沼ノ端」駅周辺の人口増加が続き約3万人に到達しており、これは1990年比の4倍以上に及ぶ。人口増を受けて拓進小学校(2013年)、ウトナイ中学校(2019年)が周辺に開校するなど、ラピダス効果以前から勢いがある地域だ。

▲千歳市の街並みを南側から見る。左のベージュ色の建物が千歳市役所。中央をJR千歳線の高架が横切る。(Adobe Stockより)

▲千歳市の街並みを南側から見る。左のベージュ色の建物が千歳市役所。中央をJR千歳線の高架が横切る。(Adobe Stockより)

 ラピダスは苫小牧市から千歳市、札幌市、石狩市を結ぶラインを“北海道バレー”に育てたいと息巻く。千歳市内に“半導体総合大学”・医療センター・商業施設・居住エリアを包含する“北海道半導体センター”を設置、札幌市の北隣で石狩新港を有する石狩市へ“再生エネルギー100%のデータセンターの集積”(京セラコミュニケーションシステムによる“ゼロエミッションデータセンター”が石狩湾新港地域へ2024年秋開業予定)、また国際海底ケーブルと接続し、苫小牧港を有する苫小牧市でも、これを活かして大型データセンターの展開を目指す…等々、先端技術産業がベルト状に集積する未来図を描く。

(Adobe Stockより)

(Adobe Stockより)

 このように、“北海道バレー構想”は複数の市町や多くの関連企業を跨ぐことから、北海道庁は情報の窓口や調整役を担う。例えば、半導体の量産には大量の水資源が欠かせないが、これを千歳市だけで賄うのは困難なため、苫小牧市の安平川(あびら―)から取水することで調整している。千歳市を越えてオール道央圏でラピダスを支え、盛り上げていく機運が醸成されつつある。鈴木北海道知事も「重要な港湾を持ち、再エネのポテンシャルが豊富で主要な空港や大学を擁するこのエリアを線で結び関連産業の集積を図る」と、“北海道バレー構想”を強力に支える方針だ。

▲新千歳空港。北海道バレー構想でも中核に据えられている。

▲新千歳空港。北海道バレー構想でも中核に据えられている。

・「南千歳」が“北海道バレー”のハブになるか

 ラピダスの新工場はJR千歳線「南千歳」から南西へ3.5kmほど、新千歳空港のすぐ近くの工業団地“千歳美々ワールド”内に設けられる。予定地からJR千歳線と国道36号線を跨いだ先はもう空港敷地内で、空港ターミナルビルまで車で8分という近さである。実質的な最寄駅は先述の「南千歳」となるが、「南千歳」は「苫小牧」「東室蘭」「函館」方面への本線から「新千歳空港」への支線が分岐し、更に「帯広」「釧路」方面への石勝線(せきしょう―)も分岐する要衝であることから、快速エアポートに加え、全ての特急列車が停車する(深夜1本を除く)。駅周辺には多くの免税店を有する“千歳アウトレットモール・レラ”や、大規模なレンタカー店がある程度であり、大規模な国際空港すぐ近くの臨空地区であることを強く感じられる。駅の利便性は極めて高いものの、一般の店舗や住宅は存在しない。

▲「札幌」―「帯広」「釧路」を結ぶ特急おおぞら。「南千歳」は特急列車もすべて停車する。

▲「札幌」―「帯広」「釧路」を結ぶ特急おおぞら。「南千歳」は特急列車もすべて停車する。

 この「南千歳」とラピダス新工場の間に“公立千歳科学技術大学”がある。元々は公設民営大学として千歳市が全額出資して準備財団を設立、追って産学官の連携により(私立)学校法人に移行し1998年に開学したが、授業料は私立大学ベースであったこともあり2010年以降は定員割れの状況が続いていた。この状況を打開するため、2019年より千歳市を設立団体とする公立大学法人へ移行したのが“公立千歳科学技術大学”だ。公立大学化を受けて受験倍率はそれまで定員割れだったのが2.5倍前後となり、順調に歩んでいるようだ。名前の通り理工学部の単科大学で、主に光技術関連(ホトニクス)の研究を行っていることから、ラピダスの目指す方向性とも近い(半導体加工にはレーザー光線による加工=ホトニクスの技術が欠かせない)。世界に冠たる半導体メーカーがすぐ隣に立地するという環境は、学生にとって刺激になるばかりでなく、産学官の連携にも大いに資するはずだ。

(Adobe Stockより)

(Adobe Stockより)

 産学連携の動きは大学に留まらない。道内には函館、苫小牧、旭川、釧路と4つの工業高等専門学校(高専)があるが、すべての高専で2024年度から半導体専門科目が新設される。このうち旭川高専では2023年10月から先行して“半導体概論”の授業が始まるが、それも選択科目ではなく、全学科の4・5年生が対象というから驚く。道内の高専卒業生の7割前後が道外で就職するという現状を改め、卒業生を道内に留めるという狙いもある。道外就職の多さは北海道大学でも同じで、北海道大学宝金学長は「ラピダスがスタートアップ立ち上げへ最大の追い風になる」と期待感を示し、「(学部)卒業生の7割が道外で就職する。起業につなげてもらうためにも流出を何とか止めたい」と話す(日本経済新聞)。

▲北海道大学(Adobe Stockより)

▲北海道大学(Adobe Stockより)

 「南千歳」は単なる乗換駅に過ぎなかったが、ラピダス新工場に加え公立千歳科学技術大学の最寄駅という“北海道バレー駅”のような存在感を持つことになる。“北海道バレー構想”の中核に据えられる“北海道半導体センター”は千歳市内とされるが、千歳市内に他に適地はなく「南千歳」周辺と見るべきだろう。上述の通り大学、商業、住宅と様々な機能を有することになるため、北海道ボールパークと同等かそれ以上の開発になる可能性すらある。現状はアウトレットとレンタカー店がある以外、太陽光発電所や駐車場、山林が広がるばかりで、高度利用されているとはいえない。いずれにせよ、“北海道バレー”エリアでは既に人材の奪い合いとなりつつあるほどの活況を呈しているので、千歳科技大や道内高専で学んだ人材が“北海道バレー”を牽引し、「南千歳」がその中心地となる未来は案外と近いのかもしれない。

・“北海道バレー構想”がマンション市場に与える影響は

 現状では千歳市(26棟1,679戸)・恵庭市(8棟409戸)・北広島市(17棟1,451戸)ともマンションが多くないため、これら3市では中古マンション市場そのものが形成されているとは言い難い。苫小牧市だけは人口約17万人と他市の2倍ほどあるのでマンションも多いが(67棟2,311戸)、状況としてはほぼ同じである。千歳市内では2005年9月築の「ポレスターステーションヒルズ千歳」以来新築マンションの供給がなく、4市合わせても2010年代は供給がない。千歳市みどり台、苫小牧市沼ノ端といった人口増加地区でも殆ど戸建住宅で、これら地域の3駅(「サッポロビール庭園」「長都」および「沼ノ端」)を最寄りとする分譲マンションは存在しない。データセンターができる石狩市は市内に鉄道駅がないこともあってなお少なく「いしかり緑苑コーポ」(1990年9月築)の1棟73戸が存在するのみであるが、これはデータセンターが立地する石狩湾新港周辺からは4kmほど離れており、札幌市営地下鉄南北線の終点「麻生」(あさぶ)を最寄りとするバス便物件としての色合いが強い。

▲札幌市周辺は駅から離れた住宅地もあるため、バス便となる住宅地も数多い(札幌駅バスターミナル)

▲札幌市周辺は駅から離れた住宅地もあるため、バス便となる住宅地も数多い(札幌駅バスターミナル)

 現状、札幌圏は新築・中古ともマンション価格の顕著な上昇が続いている。昨年のレポートで恐縮だが(以下リンク先参照)、札幌市の新築マンション平均坪単価は2012年:117.3万円→2021年:192.3万円、中古も2012年:50.7万円→2021年:90.3万円という値を示している。北広島市の中古マンションも2012年:31.0万円→2021年:59.7万円と、札幌市内よりはかなり割安ながらも2倍近くの上昇となり、変化率では札幌市を上回る。2021年段階ではまだボールパーク効果が限定的であり、札幌市の上昇に連動しての上昇と考えられるだけに、ボールパークが開業した昨今ではさらなる上昇が見込まれる。「レ・ジェイド北海道ボールパーク」はこれら地域にとって18年ぶりの新築マンションということになり、いかにこの地域に誕生する新築マンションが珍しいかがおわかりいただけるだろう。

▲レ・ジェイド北海道ボールパーク(右)。北広島市18年ぶりの新築分譲マンションとなった。

▲レ・ジェイド北海道ボールパーク(右)。北広島市18年ぶりの新築分譲マンションとなった。

 “北海道バレー構想”を受けてのマンション市場そのものの変化は、ラピダスの本格稼働が2027年となることもあって、現状まだ見受けられない。しかし、「千歳」駅前の新築賃貸マンションの高騰ぶりが示すように、住宅需要はこれから益々旺盛になっていくのは確実であり、アクセスや商業施設の利便性に優れる「千歳」駅前に新築マンションが建つ可能性は十分見込めるのではないかと考える。現状「千歳」駅前は平面駐車場など低利用の土地が散見される。これは、新千歳空港の駐車場に停めるよりは「千歳」に停めて電車で空港へ向かった方が安いので、空港関連の駐車場需要が多いという事情がある。ただ、地価上昇に沸く市の中心駅前が駐車場ばかりというのは、やはり違和感を覚える。

▲千歳駅北口。高い建物はあまり多くない(Adobe Stockより)

▲千歳駅北口。高い建物はあまり多くない(Adobe Stockより)

 そこに、札幌圏で進む“空中歩廊で駅に直結するタワーマンション”の増加という背景を合わせてみたい。札幌市内では「新札幌」や「苗穂」などのJR駅直結タワーマンションが増加しているが、ポイントとなるのが“空中歩廊によって外気に晒されることなく駅まで結ばれている点”である。「苗穂」の“ザ・グランアルト 札幌苗穂ステーションタワー”を訪ねてみたが、ホームこそ外気であるが改札口からは全て屋内で、駅舎から空調の効いた空中歩廊を介してマンションエントランス(導線を考慮して2階にある)へそのまま繋がっており、夏の暑さの中でも快適に歩ける構造が印象深かった。降雪地の札幌では、たとえ地下鉄駅から徒歩数分であっても、その数分が負担になるということも多い。ゆえに中心部では地下鉄4駅間にわたる地下街が発達したという経緯もある。コスト高となる地下道との折衷となるのが空中歩廊なのだ。

▲JR苗穂駅~ザ・グランアルト札幌苗穂ステーションタワー~アリオ札幌を結ぶ空中歩廊。

▲JR苗穂駅~ザ・グランアルト札幌苗穂ステーションタワー~アリオ札幌を結ぶ空中歩廊。

 ラピダス新工場の本格稼働と同時に到来する数万人分の住宅需要の受け皿として、“JR千歳駅直結(タワー)マンション”が登場する可能性はあるだろう。「千歳」駅前でも空中歩廊の萌芽はあり、駅舎から“千歳ステーションプラザ”を介し、駅前のメインストリートとなる道道258号を跨いだ先に降りる空中歩廊が既に設けられている。跨いだ先は現状2階建のレンタルビデオ店(ゲオ)やコンビニ(ローソン)、青空駐車場がある程度だが、駅とここを結ぶにしてはどうもオーバースペックな印象があり、これはもっと大きな施設に繋げる準備段階ではないか…というのは、うがった見方だろうか。近隣には11階建マンション「朝日プラザステーションスクエア千歳1」や14階建ホテル「ホテルルートイン千歳駅前」が既に建っているので、近隣の航空自衛隊千歳基地による航空法の高さ制限もクリアしている。ただし駅北東の駐車場は千歳基地の滑走路の延長上に位置し、航空法の制限に抵触する可能性があるためか、近隣に4~5階建程度の建築物しかない(隣のホテル『JRイン千歳』は外れるため9階建)。

▲千歳駅東口の「JRイン千歳」。駅東口では最も高い建物(Adobe Stockより)

▲千歳駅東口の「JRイン千歳」。駅東口では最も高い建物(Adobe Stockより)

・“日の丸半導体”はエルピーダメモリの過去を乗り越えて

 半導体産業は国際的な競争が激しい。かつて1980年代、“日の丸半導体”は世界で50%のシェアを誇ったが、今や10%程度しかないという。“日の丸半導体”復権を掲げてNECと日立がそれぞれの事業部門を統合し“エルピーダメモリ”を設立したこともあったが(1999年)、リーマンショック(2008年)による値崩れ(不況により過剰在庫を抱えた台湾などのメーカーが叩き売りし、価格が8割以上も落ち込んだ)や超円高、東日本大震災(2011年)による円買いなど為替リスクに晒され続け、2012年に会社更生法適用に至ってしまったという過去もある。半導体産業は投資金額が数千億円単位と巨額であり、リスクを取り過ぎて投資を躊躇すると技術革新から置いて行かれ、リスクを軽視すると過剰在庫に押しつぶされるという難しいかじ取りを要求される。故にラピダスは成功が約束されたものでは決してない。

(Adobe Stockより)

(Adobe Stockより)

 国内でも熊本県に進出するTSMCが先行しているのに加え、アメリカ・マイクロン社が広島県東広島市の広島工場にに5,000億円もの投資を行い、国(経産省)も1,920億円におよぶ支援を行うというニュースも飛び込んできた。マイクロン広島工場は元々エルピーダメモリ(会社更生法適用によりマイクロンが買収しマイクロンメモリ・ジャパンとなった)、その前はNECの工場であったから、時を越えて“日の丸半導体”同士がぶつかり合うということになる。経産省による支援決定の裏には、マイクロンメモリ・ジャパンが部材の8割を日本国内で調達し雇用にも貢献しているという事情があったと聞く。このような中、ラピダスは国内にTSMC(熊本)、マイクロン(広島)というライバルを抱えた状況で国際競争に打って出なければならないわけだが、それには“国内競争を敢えて起こし、競争力をつけさせたい”という政府の狙いも透けて見える。

(Adobe Stockより)

(Adobe Stockより)

 先端科学技術産業はまさに日進月歩である。産業あるところに人が集まり、人が集まるところに都市ができる以上、不動産業界も無関心ではいられない。むしろ、不動産業界は率先してイノベーションを起こす側に立ち回らなければ、市場での優位を保てない時代になりつつある。今までの常識では考えられなかったところにマンションが建ち、それが新しい価値を伴うということも、「レ・ジェイド北海道ボールパーク」を見ればわかることだ。不動産業界、中でもマンション業界のイノベーションは、既に北の大地から始まってきているのかもしれない。

佐伯 知彦

賃貸不動産経営管理士

佐伯 知彦

大学在学中より郊外を中心とする各地を訪ね歩き、地域研究に取り組む。2015年大手賃貸住宅管理会社に入社。以来、住宅業界の調査・分析に従事し、2020年東京カンテイ入社。
趣味は旅行、ご当地百貨店・スーパー・B級グルメ巡り。

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