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更新日:2022.11.18
登録日:2022.09.01

住替えストーリー 「等価交換がもたらした、親との同居」

住替えストーリー 「等価交換がもたらした、親との同居」

こちらでは、実際にマンションを住替えたことのあるR50 世代のインタビューを通じて、住替えに対する意識や最終的にどうして住替えに至ったのかについて、物理的側面、心理的側面の双方に着目して、住替えリアルストーリーを紹介して参ります。

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丸の内線の南阿佐ヶ谷駅を降りて、青梅通りを背にして歩くこと5-6分、突然、新しい街並みが見えてくる。

大規模開発されたこの一帯には、大きなマンションや戸建てなど、さまざまなタイプがあるが、いずれも統一感ある外観なので、周辺の緑との調和もとれて、美しい光景が広がっている。

その中にCさんが1年前に住替えたばかりのマンションはある。

 

今回、角部屋で風通しが良く、見晴らしの良いリビングで、Cさんに住替えストーリーを伺った。

 

ベランダからの眺め。ここからは都庁が見える。角度を変えると、スカイツリーも見える。

ベランダからの眺め。ここからは都庁が見える。角度を変えると、スカイツリーも見える。

 

まずは時間軸を昭和の半ば頃に戻そう。

今、新しいマンションが建っているこの場所に、米軍住宅のような2階建てのテラスハウスがいくつも建った。それは当時としては、かなり斬新な住居スタイルということで注目されていた。Cさん家族はそこに引越してきた。Cさんがまだ幼い頃のことである。

 

それから数十年経ち、整然とした姿を誇っていたテラスハウスに、乱れが生じ始めた。

各戸に広い前庭がついていたが、どの家も住居スペースの拡大ということで、庭に建て増しをするようになった。住民内のルールで、「建て増しは庭の半分まで」という取り決めができたが、建て方はそれぞれであり、それ以外の点でも好きなように家を改造したりするようになった。

そして更に年月が経ち、壁に亀裂が入るなどの、老朽化が目立つようになってきた。

 

そんな折、等価交換の話が舞い込んだ。20年以上前のことである。

ラッキーと思う人と、そうでない人がいた。当然であろう。それなりの数の人が暮らしていて、それぞれの事情を抱えているのだから、簡単に話がまとまるわけはない。反対運動が起きて、話がボツになったことは1度や2度ではなかった。

 

そうした状況が続く中、家はさらに老朽化し、住民の中には「いずれ等価交換になるのだから」と、壁の一部が落ちてきても直さない人が出てきた。

 

そして最初の等価交換の話が来てから15年以上経った頃、今回の等価交換の話が来た。

管理組合での討論は4-5年続いたが、住民の多くに「この話、これが最後かもしれない」という気持ちが芽生えたせいか、最終的には等価交換の話を受け入れることになった。

 

その頃、Cさん自身は既に結婚して実家には住んでいなかった。しかし母親には介護が必要なのと、このエリアが好きで近くに住んでいたので、Cさんは毎日、自転車で古びた実家へ通っていた。だから早くキレイになって欲しいと願っていたそうだ。

 

 

等価交換というシステムは魅力的ではあるが、オイシイ話ばかりではない。老朽化した家を建て替えてくれる代わりに、新しくマンションになった場合の面積は狭くなる。Cさんの実家も、そのままではかなり狭くなるはずであった。

 

当時、実家には母親と兄の2人が住んでいた。2人なら、狭くなっても住めなくはなかったが、今回、これを機会にCさんも実家に一緒に住む決断をした。Cさんがそれまで一緒に暮らしていた娘が、結婚して自宅を出ていったので、Cさんは独り暮らしをしていたのだ。毎日、介護に通うよりも、一緒に住んだ方が便利だと判断したからである。

 

 

引越す前に住んでいたマンションの間取り図

引越す前に住んでいたマンションの間取り図

そのためにはお金を足して、広い部屋を手に入れる必要があった。Cさんは自分のマンションを売ることにした。それでも足りない分はあったが、それはCさん家族が等価交換を見越して、かなり前から“備え”をしていたので、なんとかなった。

 

 

かくしてCさんは、幼少から大人になるまで過ごした実家のあった場所に建つ、新築マンションに戻ってくることになった。

等価交換ということで、それまで住んでいた家から一旦、仮住いへ引っ越しをしたが、工期が遅れて仮住まいが長引いたという想定外の事もあったが、「この住替えは大満足です」と語るCさん。

 

とはいえ、それまで住んでいた自分のマンションを売った件については、若干、心残りな点があったという。

まず価格の問題。築年数が古いマンションだったために、なかなか売れなかったので、値段を下げざるをえず、結果として不動産会社に売ることとなった。そして数年前に、自分のこだわりでキレイにリフォームしたばかりだったので、できればそれを好んでくれる個人に買ってもらいたかったそうだ。

売るときには、自分が住んでいたマンションの売買を手掛けたことのある地元の不動産会社に頼んだ。大手不動産会社は、あまり中古に関心を示してくれなかったためだとか。。。

 

 

現在の間取り図。窓が沢山!

現在の間取り図。窓が沢山!

新しいマンションの部屋を選択するにあたって、こだわったのは角部屋であること。

それまでCさんが住んでいたマンションでも角部屋だったので、そこにはこだわりがあった。きれいな夜景もCさんには譲れない条件だった。

そしてキッチンとお風呂に窓があることも、大きな決め手となった。明るいキッチンやお風呂は、気持ちまでも開放的にしてくれる。

 

 

明るいキッチン

明るいキッチン

部屋の間取りは、2部屋を1部屋とウォークインクローゼットに変更してもらった。それ以外に不動産会社からは山のようにオプションを提示された。しかし価格が割高に思えたので、色々落ち着いてから変更すべきところは変更していくことにした。焦らず、じっくり家を好みに変えていくつもりなのだ。

 

何棟かあるなかで、今いるマンションは、等価交換で戻ってきた人が多い。Cさんの感覚では、以前の方の8割は戻ってきているのではないかということだった。幼少の頃からの顔なじみも多いという。

 

新しい生活での利点はいくつかあるが、その中でも、母親と同居することによって、もう自転車で通う必要がなくなり、夜中に兄から「母が心配だ」と電話で呼び出されることもなくなり、常に安心できることが一番大きいと語る。

但し、ちょっと困った点も。

前の家は、玄関からエレベーターまですぐに出ていける感じがあったが、今はエレベーターまで一番遠い奥の角部屋なので、ちょっとした外出を億劫に感じてしまい、1日中、家にいることが増えてしまった。これでは自分の足腰が弱くなってしまうので、今はなるべく積極的に外に出るようにしたとか。

 

共有施設も充実

共有施設も充実

最後に、「お家だけでなく、このエリア全体新しくてキレイでいいですね」とお話したら、「前にいた頃は家が汚かったし、つっかけ姿で全然平気だったけど、今は家もキレイだし、新たに入居してきた人もいるから、下手な恰好では外に出られなくなったわねーと、昔からのお友達と話しているんです」と、冗談めいて笑いながら返答してくれた。

住替えは、住いだけを替えるのではなく、住む人の心や行動にも、変化をもたらすようだ。それも住替えの醍醐味と言えるだろう。

 

 

編集部より

リビングから外を見ていた時に、左の方を指さし「あそこが以前住んでいたマンションなんです」と教えてくださいました。それは自転車で5分ぐらいの距離でしょうか。生まれも育ちも、結婚してからも、そして今も、ずっと同じエリアに住みつづけるCさんは、地元愛あふれる住替えをされていました。

 

余談ですが、元からテラスハウスに住まれていた方のために、新しくテラスハウスも用意されていたらしいですが、元テラスハウスにいた方のほとんどがマンションを選択されたとか。若い頃なら2階建てもいいですが、年齢を重ねたら、階段の上り下りの不要なマンションが望ましいのは、当然かもしれませんね。

 

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