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2024.08.14

聞きたい!見せたい!マンション管理【マンション管理業協会】

聞きたい!見せたい!マンション管理【マンション管理業協会】

マンションの「コミュニティ」を意識したことはありますか? マンションコミュニティは、その価値にどれだけ影響しているのでしょうか。集まって暮らすマンションにおいては、濃淡こそあれ人と人とのつながりが不可欠。定期的な修繕や健全な会計、イベントの実施…これらはすべて、人(管理組合)なくしてはできません。管理に携わる方々への取材を通して、コミュニティがマンション価値に与える影響を探っていきます。初回は、マンション管理会社が会員となる一般社団法人マンション管理業協会の山田宏至調査部長・技術センター長(当時)、梅津潤業務部長(以下敬称略)にお話を伺いました。

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マンション管理の動向

――マンション管理について、近年の動向を教えてください。

 

梅津:かつては「住宅すごろく」の考えで、マンション住まいは戸建て購入に向けた前段階の位置付けでした。しかし現在は、以前よりもマンションが終の棲家として選ばれることが増えたと思います。その中で「マンションは管理を買え」と言われるようになってずいぶん経ちました。管理会社の団体である当協会は、終の棲家にふさわしい適切な管理ができているマンションを増やしていくことが務めだと考えています。

梅津業務部長

梅津業務部長

山田:国の施策を見ていても、一定の基準を満たしたマンション管理計画に対する「計画認定制度」の創設などマンション管理へ重点を置く流れをひしひしと感じます。これに伴って当協会でも、「マンション管理適正評価制度」を始めました。「計画認定制度」と「適正評価制度」の認定をワンストップで受けることのできるシステムがあり、認定件数はかなり増えてきています。

山田調査部長・技術センター長(当時)

山田調査部長・技術センター長(当時)

梅津:国でクローズアップされているのは管理組合の役員のなり手不足であり、管理会社や第三者が理事長の役割を担うマンションも出てきています。こうした状況に対応したルールづくりを国で議論しているところです。

終の棲家を買うからこそ、管理が重要になります。マンションの建て替え事例が出てきていますが、建て替えはそう簡単に進む話ではありません。敷地に余裕があって、かつそれを売って建て替え資金に充てられるようなマンションであれば議論もしやすいのでしょうが、ほとんどのマンションが難しい状況にあると思います。となると、いま住んでいるマンションをいかに適切に管理して長く住むかが、マンション全体の課題だと考えます。

マンション管理が直面する、「3つの老い」

――マンションを取り巻く環境としては建物の老いだけではなく、区分所有者、管理人を含め「3つの老い」も課題に挙げられます。

 

梅津:マンション管理員の仕事は、60歳定年の時代においては定年後の仕事として受け止められやすい状況にありました。しかし、65歳定年となった今は違います。70歳を目前に選択する仕事として、管理員は候補に挙がりづらくなっています。管理員とは別に、管理会社に所属するフロントも、上昇する管理のレベルに合わせて知識を増やしていかなくてはならない一方で、サービスの過剰要求や働き方の問題などがあり、採用に苦労している話をよく聞きます。

ただ、管理会社と区分所有者の関係は、少しずつ対等になってきたと感じます。具体的には、契約更新時に管理委託料の値上げをお願いするような場面です。もともと利益が出づらい状況でなんとかやってきましたが、そういう自分たちの会社の状況をきちんとお伝えするようになりました。もし値上げが難しいのであれば管理組合の方で新たな委託先を探していただく。管理組合としても、もっと安く、または良い管理ができるところはないか探すことができる。こういった対等な関係が最近の傾向かと思います。

より良い管理のためにできること

関心の必要性

――意識の高い管理組合の特徴は、何かありますでしょうか。

 

梅津:管理に関心を寄せている方が多いということですね。役員に就任する方々の熱量で変わってくるのかなと思います。一度そういった方が就くと全体に管理の意識が醸成され、輪番制で役員が交代した以降も、良い傾向となることは考えられます。

適正評価制度の価値

――適切な管理がなされていたり、活発なコミュニティが形成されていたりすると、そのマンションの資産価値に何かしら寄与するのではないかという仮説を持っているのですが、客観的なデータを示すことは難しいのが現状です。

 

山田:適正評価制度の登録状況から、適正な管理が市場価値に影響している結果が見えてくると、管理会社からお客様に認定取得を提案する際の強力な説得材料となるでしょう。登録数は順調に増えていますので、それらを分析して、評点と市場価値の関係を打ち出せていけたらと考えています。

 

梅津:何をもって「いい管理」なのかを見える化していくのが、本制度の役割だと思います。将来的には、市場価値に対するインセンティブと関係なく、「隣のマンションは星4つだけど、うちはどうなっているのか」とお客様から言っていただけるような制度を目指しています。登録があって当然の環境が、市場にとって良いと思います。かつ、登録情報が開示されていること。購入を検討されている方が、情報開示がきちんとされているマンションか否かを、ひとつの判断材料にできると良いですね。現在は、どこの地域でも登録マンションが見つかる環境ではありませんので、登録数を伸ばしていくことが最優先です。

 

山田:自分たちのマンション管理は、どこを改善する必要があるのかをあぶり出すというのも、評価制度のねらいの一つです。1年ごとに更新されますので、健康診断のように活用していただいて、評点が低い項目を見つけて改善していくことを繰り返し、適正評価制度の点数を伸ばしていく。急激に何かを変えるというよりは、毎日の管理を積み重ねて、区分所有者の方と管理会社で協力して高めていくことだと考えています。そこに加えて、計画認定制度も受けられると非常に良いですね。

マンション・バリューアップ・アワード

梅津:コミュニティに関しては、協会内で議論したことがあまりなく、良し悪しの判断は人によって変わってきます。各組合が良いと思ったものが、当協会主催の「マンション・バリューアップ・アワード」で優良事例として集積されています。過去には、このような事例がありました。

マンション・バリューアップ・アワード2023の様子

マンション・バリューアップ・アワード2023の様子

――これらの事例を見ていると、大人ではなく子どもたちの参加が、マンションコミュニティにおけるひとつのキーワードになりそうです。管理に関してこのほか、(公財)マンション管理センターが試験実施機関となっているマンション管理士制度の創設は、どのような影響をもたらしたとお考えでしょうか。

 

梅津:マンション管理士制度によって、それまで管理組合が頼る先は管理会社しかなかったところへ第三者的に相談できる先ができましたので、非常に有意義だと考えています。マンション管理士に相談して、自分たちが管理を委託している会社の仕事ぶりを客観的に振り返る。場合によっては、管理会社を変える選択肢もあるわけです。管理会社は組合に委託契約を更新してもらえるように、いい仕事をして、いい関係を築くという流れができるのだと思います。

これからのマンション管理に向けて

梅津:今ある課題を解決していった先に未来があると思います。まずは会員社と意見を交わしながら、建物の長寿命化を図っていきます。あとは社会の要請に応じて、昨今ですとDX(デジタルトランスフォーメーション)による人手不足対策がありますね。人手不足という大きな問題を抱える中で、長寿命化の促進をどう進めていくかを、協会として議論しているところです。

 

山田: DXの推進はもちろん重要です。一方で、お客様とのコミュニケーションの必要性を考えると、すべてを機械化することは難しい面もあります。デジタル化、IT化を進めながら、適性のある人材確保に向けて、魅力的な業界づくりを長い目で取り組まなくてはと思います。

 

 

<略歴>

山田 宏至 氏(写真右)

一般社団法人マンション管理業協会 事務局長(技術センター長兼任)

2010年マンション管理業協会入職。技術センターにてマンションの大規模修繕に関する調査および診断業務を担当。2013年技術センター長就任、2018年調査部長兼任。2024年4月より現職。

 

梅津 潤 氏(写真左)

一般社団法人マンション管理業協会 業務部長

2019年マンション管理業協会入職。指導部にて会員の法令遵守に関する実査、指導に関する事項を担当。2020年より現職。マンション管理ついての法制・税制等及び管理委託契約等に関する事項を担当。

 

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