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更新日:2025.04.25
登録日:2025.05.02

聞きたい!見せたい!マンション管理【朝日パリオ浦和辻】

聞きたい!見せたい!マンション管理【朝日パリオ浦和辻】

「コミュニティ」がマンションの価値に与える影響を探っていく本企画。第3回は、さいたま市南区の「朝日パリオ浦和辻」管理組合の竹本和人理事長、寺内修一理事(以下敬称略)にお話を伺います。築30年ほどの同マンションは、2022年に2回目の大規模修繕を迎えました。修繕周期を延長する計画としたことにより修繕積立金の値上げなく、次世代に継承するための付加価値を高める内容となっています。大規模修繕と、元手となる積立金に対しては、課題を抱えるマンションも少なくありません。そこへ一つの答えを示した同マンションにおける「コミュニティ」の姿を探ります。

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管理組合で目指していること

――寺内さんは新築分譲時からお住まいとのことですが、区分所有者・居住者それぞれについて現在の世代構成を教えてください。

 

寺内:区分所有者は、2024年の時点で65歳以上が約38%を占めています。おおよそ、60代が最も多くシェアを占めていて、次いで50代となっています。住み始めた当初は子どもがたくさんいて、集団登校の班も10以上ありましたが、今はだいぶ減っていますね。

 

――マンションの管理やコミュニティ形成に対し取り組んでいることはありますか。

 

竹本:子育て世代の30~40代は少ないので、子どもを介したつながりは少ないです。分譲時からお住まいの上の世代はつながりがあるようですが、サークルやイベントの企画などはありません。

 

寺内:マンション内のニーズを受けて管理組合が支援するという形であれば良いと思うのですが、管理組合の理事会で主導するのでは長続きしないでしょうし負担が増える。当マンションの管理組合は、マンションの資産価値をできるだけ保全して、快適な住環境を整えるという本来の目的達成に注力しています。コミュニティは、その目的達成に向けた基礎的なものをどれだけしっかり維持していくか、ということだと考えています。

 

竹本:いろいろ話せる人がマンション内にいると良いと思う方がいる一方で、そうではない方もいる。ここでは、管理組合の理事会や管理会社のサポートを受けられるマンションならではのメリットを享受しながら、自分が住みよい家を持っていれば十分と考えている方のためのコミュニティに寄っているように思います。

 

竹本理事長と寺内理事

竹本理事長と寺内理事

寺内:管理組合の役員は、できるだけ多くの方に活動を理解してもらいたいとのことで、当初は輪番制をとっていました。しかし2007年頃から、業務の継続性や機動力などを検討し、輪番制をやめました。だいたい理事会の推薦で決まるのですが、大半の方は長く務められています。その中で、新任として若い世代や女性にも入っていただいて、幅広い意見が聞ける環境づくりは意識しています。

皆さんから預かっている修繕積立金をできるだけ効果的に使おうとすると、1つのことに数年のスパンで取り組んでいく必要があります。現在の竹本理事長も、理事から数えると10年以上活動しています。今回のような大規模修繕が実行できたのは、長く携わっている竹本さんのような方がいたからでしょう。

 

築100年を見据えた超長期修繕計画

――今回の修繕計画を策定するにあたり、理事会内で委員会の立ち上げなどはありましたか。

 

寺内:1回目の大規模修繕の時は、初めてということもあり修繕委員会を立ち上げました。しかし議論を進めていくうちに、理事会と修繕委員会との間で方向性にズレが生じていると感じるようになりました。そういった反省点があったため、2回目の大規模修繕にあたっては何か特別に委員会を立ち上げるのではなく、多少時間がかかっても理事会内で検討しようということになりました。その方が、外部とのコミュニケーション含め最適解だと考えました。

 

竹本:2回目は、1回目の時から管理組合員の年齢が進んで体力が落ちていることも踏まえて、もう少し肩の力を抜いていこうという方針がありました。設計事務所などプロの意見を存分に取り入れつつ、落としどころを決めていきました。

 

――修繕計画の内容や、2022年の大規模修繕で実施したことを教えてください。

 

寺内:当初の大規模修繕計画は12年周期だったので、2回目は2018年となる予定でした。しかし、先んじて2016年に屋上防水工事を実施しています。これは、前年の大雪によって他のマンションで漏水事故が多発したことを踏まえ、前倒しするべきだと判断したのです。この頃から、長期的な目線を持った修繕計画の必要性を感じていたように思います。実際に当初の修繕計画を検証したところ、いずれ修繕積立金が不足することが分かりました。そこで、「永く安心して住める」ことを目指して、築100年までを想定した超長期計画の策定に着手しました。2022年の大規模修繕では、外壁塗装材などについて18年周期に対応する高耐久材料を採用。メンテナンスコストがかかる不要な設備も撤去しました。国からの補助金も積極的に活用し、修繕積立金の値上げを抑制しながら今後の大規模修繕の時期を迎えられるようにしています。一方で、防災性能向上のために主要電気設備を1ヵ所にまとめて防水扉を設置したり、駐車場にEV(電気自動車)充電用の配管を行ったりと、次の世代にも選ばれるマンションにするための工事も実施しました。

 

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    東京電力と協議のうえ、主要電気設備を一部移設し、防水扉のある電気室へ集約

    EV充電設備。今後の増設も可能に

    電動アシスト自転車などさまざまな自転車に対応でき、出し入れも容易な「垂直2段式」の駐輪機

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丁寧な情報発信と実績で、信頼できる理事会へ

――修繕計画に対する組合員の反応はいかがでしたか。

 

寺内:修繕計画は、理事会と設計事務所とで作成したものでしたが、ほとんどの方が賛同してくれました。2022年の工事までに2回の通常総会を開催しており、1回目で工事の時期と施工会社の選定を普通決議で、次の年の総会で補助金申請を含めた計画の細部を詰めて、大規模修繕工事の実施を特別決議しました。このように、1年以上かけて段階を踏んで決議したことが、組合員の理解促進に役立ったと考えています。

 

――合意形成にあたっての工夫などがあれば教えてください。

 

竹本:合意形成で苦労した記憶はほとんどありません。総会のたびに、当マンションで実施されている取り組みなどを発信しています。築30年ほどのマンションですが、必要な設備は随時取り入れていますし、管理会社・管理人さんによって周辺環境含めマンションはきれいに保たれています。居住状況を見ても、ほとんどの方が大きな不満なく暮らすことができているのだろうと思います。こうした情報発信と、何より実績が、理事会の信頼につながり、合意形成がスムーズにできているのでしょう。実際に、先日の総会で駐輪場・駐車場料金の値上げを決めたのですが、その際も反対票は片手で収まる程度でした。

 

寺内:理事会が独善的に物事を決めていると思われるのは本意ではありませんので、以前から情報発信は丁寧に行ってきたつもりです。どのような理由で、どのような工事が必要なのか、どのような補助制度を利用しているのか、といったことです。補助金を得るには審査があるため、取り組み内容に第三者の目が入り透明性が高まります。また、管理組合側の意識醸成にもつながればと思っています。早め早めに情報発信を行っていくことで、今後直面する課題や将来のあり方も共有していくことが大切です。

 

竹本:現状は寺内さんが中心となって情報発信をしてくれていますので、いつか寺内さんの役割を引き継ぐことも想定しながら、次の世代が知識を蓄えています。新しく管理組合に入る方がいれば、積極的に理事会にお呼びすることもしています。

 

つながりは程よく、必要なことは堅実に

――修繕積立金が不足するなど、今後に対して課題を抱えるマンションは少なくありません。そのような中で、積立金の値上げを抑制する計画の策定や長寿命化工事が実施できたことはひとつの成功例かと思います。成功までたどり着いた貴組合が考える「コミュニティ」をお聞かせください。

 

寺内:管理組合の活動に対し、居住者なり組合員がある程度関心を持ってくれているということが一番だと思います。関心があって、理解があって、協力ができる。“協力”には、いろいろな形があって良くて、実際に活動する協力もあれば、意思表示をする協力もあります。適度なつながりがあったうえで、管理組合の活動を支えてくれて、長期的な視点を共有できるコミュニティが“いいコミュニティ”と言えるのではないでしょうか。

 

竹本:日常的、もしくは深く関わったりするようなコミュニティを望むのであれば、共用部にカフェや子どもが遊べるスペースをつくると良いのかもしれませんが、私たちのマンションにはありません。つながりは程よく、必要なことは堅実に取り組む。これが朝日パリオ浦和辻のコミュニティの形です。

 

「朝日パリオ浦和辻」管理組合 竹本 和人 理事長

「朝日パリオ浦和辻」管理組合 竹本 和人 理事長

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