住めば都も、遷都する2018/12/5

あちらからも、こちらからも「カンパーイ!」の声がする。一緒に頑張った仲間たちと「お疲れ様〜」の今夜。うまくいったことも、ダメだったことも、ひとまず忘れて。みんなが元気にやってきたことを祝おう。

 

いつも顔を会わせているのに、こうした席になるとお互いの知らない面が見えてくる。「あれっ、あの二人、結構、気が合うんだ」「お子さん、留学から帰国されたのか」「よく見ると、おしゃれに気を使っている」「あんなに気が利く人だったかな、飲み会だから?」等々。どうでもいいことだけど、みんなが少し近づいた感じで、より仲良くなれる。

 

目では、ついつい、観察をしてしまうけれど、口の方は勝手におしゃべりの渦の中にいて。「そうそう」「言えてる!」「私の場合は…」と宴はたけなわ。みんなの声の音量も高くなって、部屋中が活気に包まれている。私も、少し酔ってきたかしら。

 

 

そういえば、夏目漱石の『吾輩は猫である』に忘年会という言葉が出てくる。

 

「その日は向島の知人の家で忘年会兼合奏会がありまして、私もそれへヴァイオリンを携えて行きました。十五六人令嬢やら令夫人が集まってなかなか盛会で、近来の快事と思うくらいに万事が整っていました」

 

当時だと、何を飲んで乾杯をしたのだろうか。まあそれはそれとして、今宵は、シャンパンから。「お久しぶり〜」の声が響く。都心の隠れ家のようなお店。誰の紹介なのだろう。今度、ランチにも来てみようかな。

 

普段も会っている人との飲み会と、たまにしか会わない人との飲み会は、雰囲気がちょっと違う。久しぶりの面々だと、SNSとかでいくらかの情報はあるけれど、お互いの生活に変化もあって気を使う。最初のうちは、「お元気?」とか、当たり障り無く…。

 

でも、段々に調子が出てきて、あちこちで、話し込むグループも。「えっ、うっそお、すごい。今度、お邪魔するわ。いいでしょ、みんなで押しかけましょうよ」と新しい家に引っ越した人を取り囲むグループから、盛り上がった声が聞こえてくる。

 

家族、旅行、趣味、ペット、お互いの住まい等を巡って、会話が弾む。もちろん、ある年齢になると、「若いわねえ、何かやっているの?」と美容法や健康法の話題も出てくる。

 

「今度の家は、朝日が寝室にも届いて、パッと目が醒めるの。だから、ウォーキングに毎日、出るようにして。散歩するのにもいい公園もあるのよね…」と新居の話を聞いているうちに、久しぶりに住まいのことを思っている私がいる。住めば都も、遷都する。そろそろ、引っ越しを考えるのも悪くないかな。

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

 

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