住めば都も、遷都する2018/11/21

テレビ関係者から「恋愛ドラマが作りにくくなった」という嘆きの声を聞く。「テレビを見ている人が高齢化したから?」と聞くと、「いや、そうじゃない。若者も、恋に夢中にならないんだ」との答えが返ってくる。

 

調査もそうした傾向を裏付けている。「いくつになっても恋愛をしていたいと思う」という人が1998年5割いたが、20年後の今では3割弱 (博報堂生活総研「生活定点調査」20歳〜69歳の全体平均 以下同様)。男女差は無く、年代別では若い人の方が下落率は高い。

 

「人づきあいは面倒くさいと思う」という人が増えているのも気になる(23.2%・1998年→32.0%・2018年)。「自分は誰とでも友達になれる方だ」と答える人も減った(42.9%・1994年→28.2%・2018年)。同性異性を問わず、相手に対して最初のキッカケが作れないのかも知れない。

 

「お金を信じられる」と答えた人は74.3%(1992年)から84.8%(2018年)へと増えた。「愛を信じられる」という回答が86.6%(1992年)から80.5%(2018年)に減ったことと対照的だ。「運命を信じられる」も77.1%(1992年)から67.2%(2018年)に低下。「運命の恋」を信じる人も減ったと思われる。となると、恋愛ドラマが成立しにくいのも納得がいく。

 

一方、「身のまわりで楽しいことが多い」という人は、33.7%(1998年)から44.5%(2018)に上昇。経済的には厳しくても、毎日を楽しく過ごす人は増えている。

例えば、「自分へのごほうびとして自分にプレゼントを買ったことがある」という人は大幅に増えた(29.0%・1998年→44.3%・2018年)。好きな人から贈り物を貰わなくても、自分で自分に買っているのだ。

 

 

恋愛に関心が薄れた中でのテレビドラマ作りは、工夫を求められる。昔は、何らかの大きな壁を乗りこえて、ふたりの恋は成就した。だが、今では、「好きだ」と言えば「私も同じ」というか「いや、ダメです」というか、結論がすぐについてしまう。

 

そこで、ドラマの制作者は、ふたりをよほど変わったキャラクターにするか、とんでもない状況に追い込むといった工夫をするしかない。

 

 

ちなみに、刑事・弁護士・企業人のドラマは増えた(見ているでしょ?)。恋愛は、男女ともに心騒ぐ人生のひとコマだが、関心を抱くものは他にもあるのだ。

 

日常の生活で言うならば、恋とまでいかなくても、異性の参加する会に出席してドキドキするのは楽しい。だが、それよりも、自分のペースで、趣味、旅行、スポーツなどの時間を過ごすことがより求められている。

 

恋より楽しいことが増えたのは、生活の成熟が背景にある。確かに、誰かに興味を持って、何かを語り合うにしても、その人が趣味、旅行、スポーツ…と充実した毎日を送っている方が、互いに話が弾む(逆の場合を考えてみて下さい)。

 

そう、住まいの話で盛り上がるのも悪くない。「好きな時間は、朝の日差しのもと、トーストの焼ける匂いがしてくること」「私の場合は、テラスの向こうに夕日が沈む時かしら」とか、「あなたの部屋、窓から何が見えるの?」とか、とりとめもなくおしゃべりをする。その人の「居場所」について語り合うことは、互いに理解を深める。住めば都も遷都する。住まいの話をしていると「ああ、久しぶりに新しい家に転居するのもいいな」と思うかも知れない(もちろん、彼または彼女の家に転居するという意味ではなく一般論として。念のため)。

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

 

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