甘い生活2018/11/14

ホテルのような部屋に住みたい……それは、多くの女性が何となく持ち続けているテーマ。だから女はワケもなく、シティホテルに泊まってみたりする。そういう心理を見込んでの、有名ホテルの”レディースプラン”は、どこも大盛況と聞く。

 

でも女はなぜ、ホテルのような部屋が好きなのか? 1つにそれは、全く生活感がないから。人は、生活感が嫌いである。自分が生み出すものにもかかわらず、できれば生活感の全くない家に住みたいと思っている。現実逃避という精神的な願望と、清潔な空間を求める生理的な願望がない交ぜになった形。そこに身をおくことによって、一時的にでも自分が浄化されたような気持ちになるから、生活感のない部屋こそ、1つの理想なのだ。

 

だからホテルに泊まるたび、いつか必ずこういう部屋に住もうと、心に決めるのだけれど、実際に新しい部屋に移り住んだり家を買ったりした時に、ホテルのような部屋を意識してリフォームしたとしても、何かその願望が満たされないまま、いつの間にか家中に生活感がしみついて行ってしまう。ホテルを意識して家を作ったとしても、何かが足りないという想いにとらわれるのだろう。

 

ソファーにテーブル、コンソール、書斎机。そして大きなベッドとナイトテーブル、ランプ……それがお決まりのホテルの部屋の設えだけれど、例えばそれと同じような要素を持ってきたとしても、なんだか足りない。ホテルのような部屋に住んでいると言う満足感に至らない。なぜだかわかるだろうか?

 

ホテルの部屋とは、基本的にバスルームの比率が極めて高い。高級ホテルなほど、バスルームが広くなってくる。そして大理石など、水回りにこそお金がかかってくる。逆にビジネスホテルのニットバスなどは、意味が全く逆になるわけで、ホテルの高級感は、ほとんどこの水回りの豪華さに比例してくるのだ。

 

だから、本当の意味でホテルのような部屋に住みたいなら水回りにこそお金をかけたいたい。広さ的にも設備的にも、バスルームを1つの部屋にする位の気持ち、そこに日々の暮らしのゆとりと充実が宿るのだと考えて欲しい。

 

1つ必ずクリアしてほしいのは、バスルームに椅子を置くこと。そして厚手のバスローブを用意すること。必然的にバスルームで過ごす時間が長くなる。少なくとも自分のメンテナンスを行うのはそこ。実は私生活において、そこに大きな精神的な比重がかかってくるのだ。

 

アガサ・クリスティーの「地中海殺人事件」に登場するようなホテルでは、バスルームがだだっ広く、そして何よりテラスも広い。多くの女性が夢に見ているホテルのような部屋とはそれなのだと思う。もちろん必要以上のバスルームの広さやテラスの広さは、予算内で家を作ろうとすれば、1番最初に削られるもの。でも比率的にこの2つを大きくした時にこそ、女の夢は叶うのだ。

 

いずれにしても、バスルームの贅沢こそが生活感を消し去ってしまうまでの力を持っているのだと、知って欲しい。バスルームが必要以上に広い部屋……大切なテーマである。

 

 

 

齋藤薫 美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーと幅広く活躍。新刊『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)、『されど“男”は愛おしい』(講談社)など著書多数。

甘い生活 についての記事

もっと見る